生きていくなんてわけないよ

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『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー vol.3』僕はウジ虫だった、でももう「負け犬の日々」は終わり。

Guardians of the Galaxy Vol. 3: Awesome Mix Vol. 3

 

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー vol.3』(原題:Guardians of the Galaxy vol.3)を観ました。

 

MCUでも個人的に一番お気に入りのシリーズで、思い入れもかなりあるんだけど、

「もう終わりかー」と思ってしまうと非常に寂しく、そして「がっかりしたくないな」という気持ちが強くて逆にワクワクを高めずにドライな気持ちで臨みました。

 

結果、めちゃくちゃ大満足。

これまでのガーディアンズらしい馬鹿馬鹿しさも持ちながら、全体的にトーンはウェットでダーク。ただそのウェットさが「エモさ」に直結しているので、辛気臭さいところも嫌じゃない。

これまで3作と『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ:エンドゲーム』そして『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:ホリデー・スペシャル』で丁寧にその関係性を積み上げてきたシリーズの集大成としてふさわしい結末だった。

 

そういえば『ホリデースペシャル』の感想をクリスマスごろにあげようと思っていて忘れていた。そして『アントマン&ワスプ:クアントマニア』の感想も書いていない、

ま、いーか。いつものことだし。

 

※この記事は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーvol.3』のネタバレを含みます。

 

目次

ロケットの物語

製作当初からジェームズ・ガン監督によって伝えられていた通り、本作は「ロケットの物語」として描かれている。

そもそも、ジェームズ・ガン監督にとっては、自分自身とロケットというキャラクターを重ね合わせ、1作目製作当初からこのシリーズは「ロケットの物語」という認識であったという。

もちろん『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の主人公はスターロード/ピーター・クイルであることには間違いない。それでも、ジェームズ・ガン監督のその思惑や、本作に至るまで「謎」として温めておいたロケットの過去については過去作でも垣間見ることができる。1作目の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で、結託する以前のメンバーたちがノヴァ・コープに捕まった際の全身消毒シーンで、ロケットの背中に生体実験の痕跡があるのをスターロードが見つめるシーンが、意味ありげに描かれていたのである。

 

主人公スターロードは自身の確執である「母の手を取れなかったこと」に、新たな仲間であるガーディアンズたちと手を取ることで1作目の時点で決着をつけ、そして母の死の原因である「父」エゴを2作目ですでに倒している。

ドラックスの妻子を殺したロナンも1作目で死に、ガモーラ、ネビュラの憎むべき毒親のサノスも『アベンジャーズ:エンドゲーム』で倒された。

マンティスとエゴ(そしてスターロードと)の関係性も『ホリデースペシャル』で語られ、樹人グルートの過去や出自はわからないけど、特に何もなくても問題なさそうだし・・・。

となると、残るキャラクターはロケットのみだ。

 

果たしてどこまでが計画の当初の想定内だったのかは不明だが、vol.2の終わりにアダム・ウォーロックの展開を忍ばせておいたり、サノスがMCUというマーベルのシリーズ全体での大きな核となることを見越して、この3部作の結末のシナリオを描いていたのであれば、さすがはジェームズ・ガンというほかない。

 

徹底的にエモーショナル

本作のオープニングは、ケージに収容されている多くのアライグマの中から、謎の手(ハイ・エボリューショナリー)によってロケットらしき一頭が選ばれるところから始まる。画面が現代のノーウェアに切り替わり、流れる曲はRadioheadの"Creep"だ。

 

私は90年代オルタナファンなので、個人的にだが、レディオヘッドに強い思い入れがある。聴き覚えのある、辛気臭いギターのイントロに載せて、トム・ヨークの声に被せるようにロケットが鼻をすすりながら歌う様子を見ていたら、もうそれだけで泣きそうになって、大傑作確定してしまった。

 

この曲は、ディズニーアニメーションで言うならば、いわゆる「ウィッシュソング」で、誰にも語りたくないような過去を持つロケットの悲痛が、そのまま反映されているからだ。

 

(この曲は本来バンドバージョンなのだけど、映画で使われているアコースティックバージョンも公式がYouTubeに載せていたので貼っておきます)

 

「特別になりたい」「主導権を持ちたい」「完璧な肉体が欲しい」「完璧な魂を」

でも「でも僕はウジ虫で、変なやつなんだ、ここにはふさわしくない」

そう歌う、ロケットの思いが、自己嫌悪が映画冒頭からギュッと我々のこころを掴む。

 

そしてこの曲の歌詞の"She"を、ロケットの初めての友達、遺伝子実験のカワウソのライラと重ね合わせると、物語後半でもこの楽曲が響いていくる。

 

She's running out the door

Run,run,runrun......

 

本作は、物語序盤からクライマックスの直前に至るまで、回想のみで現在進行形ではロケットの活躍はほぼない。それでも間違いなくこの第3作の主役はロケットで間違いないと言わせる展開に持ち込める、納得の出来となっているのが素晴らしい。

それは彼らの感情や考え方の変化、成長を緻密に描いているからだ。

 

仲間以外の他者の命に徹底して無関心だったロケットが、命に向き合うことを選択する。自らの出自を認め、ありのままを受け入れる。そして、名実ともに「銀河の守護者」となる物語なのである。

 

命に向き合う

本作は、ロケットが「命に向き合う」ことを選択する物語であると書いた。

 

本作のヴィラン、ハイ・エボリューショナリーはそれこそサノスや、「正体が惑星そのもの」だったエゴ、これから強敵となり得るだろうカーンと比べると、非常に小物っぽく感じられるキャラクターではある。

 

「完璧な生命による理想郷の建設」という目的のため新たな生命を生み出すことに狂酔する遺伝子学者であり、ある種ロケットの生みの親である。

 

そのためにはあらゆる命を「実験台」として扱い、不良品と見なされればその世界丸ごと抹殺するという、生命に対する経緯の全くない人物だ。

 

彼がロケットを追うのは、ハイ・レボリューショナリーが理想とする「完璧な生命」への鍵がロケットの知能の中にあるということではあるが、

さらに創造主たる自分すらも超えてその「解」を導き出しえる可能性への嫉妬、そして、ロケットが脱出した際に彼の顔面を、原型を留めないレベルで引っ掻き回したことに対する恨みが垣間見える。

それゆえ、部下の警告も聞かず、堕ちゆく宇宙船の中で舵すらも破壊するほどに取り乱してしまう。

 

ロケットのことを実験隊番号の「89P13」と呼ぶハイ・エボリューショナリーに対し、これまで「俺はアライグマじゃない」と頑なに否定していたロケットが初めて「俺はロケット・ラクーンだ」と宣言する。

かつては「アライグマ」というありのままの存在だった自分を、実験台として生命を冒涜し、都合のいいように扱うハイ・エボリューショナリーに対し、ロケットは自らでつけた名前と、生まれた時の種族である「アライグマ(ラクーン)」で宣言することで、「自分が何者であるか」を自分自身で選択する。

 

完璧を求めるハイ・エボリューショナリーに対し、

ロケットは「お前は完璧を完璧を求めたんじゃない、ありのままを否定しただけだ」と突きつける。

 

これは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』という作品が、チームが、どこか欠点のある「クズどもの寄せ集め」みたいなチームであるからこそ、より説得力がある。

だからこそ、その前にある、いつも判断を間違えるドラックスやマンティスにネビュラが怒り狂うシーンで、マンティスが言い返す言葉や、その後のドラックスの行動が響いてくる。

 

そんな「クソみたいな野郎」であるハイ・エボリューショナリーの命ですら、ロケットは奪わない。

そしてそれを、ロケットは「だって俺たちはガーディアンズ・オブ・ギャラクシーだからだ」というのである。

 

そしてロケットは、ハイ・エボリューショナリーに囚われていた実験台を、人類だけでなく動物たちも全て生かすことを決断する。

これは「ノアの箱舟」のオマージュだろう。

創造主ごっこで命をもてあそぼうとするハイ・レボリューショナリーと、そこから生命を導くために行動するロケットの対比である。

(聖書っぽい描写で言うと、その後にスターロードが宇宙空間に投げ出されるシーンでアダム・ウォーロックと「アダム創造」のパロディみたいなシーンがあるけど、あれはギャグ以外でどういう意味があったのかはよくわからない)

 

またこれは、同じように自らの理想のために神のように命を半分消し去ったサノスに対するカウンターでもある。

 

スター・ウォーズへのオマージュとビートルズ

本作、過去作と比べても結構露骨に、スター・ウォーズへのオマージュがあった。

カウンターアースにおいてドラックスの言う "I have a bad feeling about this." はあまりにも直接的でもうギャグだったけど、ガーディアンズたちのボウイ号にラヴェジャーズたちが乗り込んでくるシーンは『フォースの覚醒』のハンの船に賞金稼ぎが乗り込んでくるシーンみたいだったし、オルゴ・スコープの巨大なデータベースからロケットの情報を探すシーンは『ローグ・ワン』のデス・スターの弱点を探すシーンを思い出した(似てないっちゃ似てないが)。そういえばクラグリンたちがサバックみたいなカードゲームしていたのも気になった。

そして、ハイ・エボリューショナリーの船でネビュラ、マンティス、ドラッグスが捕まりアビリスクと戦わされるシーンは、まんま『ジェダイの帰還』のジャバの要塞でルークとランコアが戦うシーンを再現しているみたいだった。

 

そもそもスター・ウォーズのシリーズは、そのほとんどが何らかの理由で田舎に縛り付けられていた少年・少女が、ある日宇宙へ飛び出し運命を変えていく物語である。

アナキンも、ルークも、そしてレイもである。

そこにロケットの出自を重ね合わせたのであろう。

 

また、私がビートルズが好きすぎることによる妄想的偏見もあるのだが、本作はビートルズへのオマージュもあったように思う。

 

聞くところによるとそもそもコミックスにおいて、ロケット・ラクーンは初登場時「ロッキー・ラクーン」という名前で、それはビートルズの楽曲から取られていた。


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その後、あまりにもそのまんまだからということで「ロケット」という名前が付けられたのだとか。

 

ロケットの友達としてカワウソのライラとセイウチのティーフスが登場するが、どちらも原作コミックに登場するキャラクターらしく(ウサギのフロアはわからない・・・)ロケットが"Rocky Raccoon"由来ということもあり、セイウチも"I am the Walrus"から着想を得ているという。(なお原作のセイウチの名前は「ウォー・ラス」とのこと)

 

ハイ・エボリューショナリーに捕まっていた子供達が「ジュブジュブ」しか話せないのも、"I am the Walrus"の歌詞っぽい。

 

そして劇中でビートルズの楽曲こそ使用されてはいないが、映画全体の「ロケットが自身のありのままを受け止める」というテーマが"Let It Be"っぽくもある。

ってのは、さすがに安易すぎか。

 

でももう「負け犬の日々は終わり」

そんなこんなで、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は本作で最後の作品となる。

 

物語の最後で、ガーディアンズのメンバーからスターロードとマンティスが抜けることとなる。

『アベンジャーズ:エンドゲーム』で一度地球に戻った後も、ずっと宇宙でガーディアンズとして生きてきたスターロード=ピーター・クイルが、唯一残された家族である祖父のジェイソン・クイルに会いに行くことを決めたからだ。

(そもそも、宇宙船があるのだからクイルはその気になりさえすれば地球に帰れたはずだが、やはり決断ができなかったのであろう)

マンティスも手懐けた3匹のアビリスクを連れ、エゴからも、そしてガーディアンズからも解放された人生を「自らの手で」歩んで行くことに決める。

別の時間軸から来たガモーラはラヴェジャーズの元に戻り、ネビュラとドラッグスは今回救った人々の保護も含め、改めてノーウェアの再建に動き出す。

そして、ガーディアンズの新たなキャプテンはロケットが引き継ぐこととなるのだ。

 

スターロードからロケットに託された音楽プレイヤーZUNEで、ロケットが最後にかける曲はFlorence + the Machineの"Dog Days are Over"という、祝祭感豊かな楽曲だ。


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長い暗闇の時代から抜け出し、幸せが訪れることを歌う楽曲。

ロケットの気持ちを反映するように、レディオヘッドの"Creep"の暗さから始まった映画が、「もう負け犬の日々は終わり」と、明るい未来に向けて走り出す。

 

センチメンタルで、エモーショナルなのに、湿っぽくない。

本当にガーディアンズらしいエンディングだった。

 

 

非常にディズニー的

さて、私のブログはディズニーがテーマでもあるので、この視点からも語るが、

まぁMCUはディズニーが作っているから当たり前でもあるんだけど

本作は本当にディズニー的なテーマが込められた作品だなと思った。

 

まず本作はずっと「ロケットがありのままを受け入れる話」と語っている。

『アナと雪の女王』で歌われた「ありのままで」は英語版ではLet it goであり、「放っておいて」という意味ではあるが、物語のテーマとしてはエルサがうまく扱えない魔法=欠点を個性として受け入れる物語であり、「ありのまま」というテーマが非常にしっくりくる。

『モアナと伝説の海』では、自分が何者であるかを決めるのは自分自身であるというメッセージを放っていて、その選択の尊さや責任を尊重している。

そしてピクサーの『ソウルフル・ワールド』や『バズ・ライトイヤー』でたとえ失敗を犯してしまうような、平凡な生命であっても「生きていていい」と肯定している。

マーベル作品でも『エターナルズ』でそれらは語られていた。

 

劇中のスターロードとマンティスのやりとりが思い出される。

「人間なんて地球じゃ50歳で死ぬ!」

「そんなの、生まれてくる意味ある!?」

 

でも、瀕死のロケットの世界の中で、ロケットとライラは話す。

「まだやるべきことがある」

「俺は無意味に生まれて来て、捨てられた」

「生み出す手もあれば、導く手もある」

 

誰だって、生きている意味はある。

望んで生まれたわけではないかもしれないが、

生きていることで、誰かと関わることで、誰かを導くことになるかもしれない。

 

ありのままを受け入れること、個人を尊重すること、命を尊重すること、多様性を認めること。

これらが近年のディズニー作品でずっと描かれて来たことであり、

前述の通り『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』のサノスの理想などはこれらを否定するものであり、逆説的にディズニーが描きたいメッセージを訴えかけているとも言える。

 

生命は儚くて、失敗を犯す。

そんなポンコツの負け犬の、ガラクタの寄せ集めである人々も、一つの命であり、生きる価値があるものなのである。

どんな小さな命も犠牲にしない。

そんなの理想でしかなくて、脳内お花畑の考えだと、保守的な人は言うかもしれない。

でもディズニーはその高い理想を訴え続ける。

だって「ディズニー」だから。信じれば夢が叶うと、大声で宣った人物が創った会社だから。

 

 

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MCUドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』禁じ手を繰り出す異色展開、爽快感よりもメッセージを。

She-Hulk: Attorney at Law

 

観ましたか?『シー・ハルク:ザ・アトーニー』

どうでもいいけどジ・アトーニーじゃない?ちょっと英語わからないです。

 

わからないといえばこの作品そのものが結構わからない感じでした。

いやわかるんだけど、わからないというか。

 

途中まで結構楽しみながら観ていた気がする、というか確実に途中までは楽しかったんですが、後半不穏な空気が漂いすぎて最終回でダメでした。

 

 

いや嫌いって言ってもうてるがな。

 

※当記事はDisney+で配信中のドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』のネタバレを含みます。

 

 

目次

 

なんやかんや楽しんでいたMCUドラマ

『ワンダヴィジョン』『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』『ロキ』『ホークアイ』『ムーンナイト』そして『ミズ・マーベル』

それぞれ賛否両論ありつつ、コアなファンの中には「つまらん」とか「MCU終わった」とか色々言われたりしながらも、私個人としては全体的に楽しんでいたこれらのMCUドラマシリーズ。

そして、さらに初期アベンジャーズの一員「ハルク」の後継者たる女性ヒーローの登場とくれば、期待値も高まる。

そうして始まった『シー・ハルク:ザ・アトーニー』私自身ツッコミどころこそいくつかあるが、「まぁこんなもんでしょ」という気持ちもあり普通に楽しんでいた。

 

が、最終話ちょっと、私には、というか多くの視聴者にはひっかかってしまった。

 

楽しめた『シー・ハルク』

『シー・ハルク』の良かったところは(それが物足りなさでもあったのだが)主人公ジェニファー・ウォルターズ(ジェン)が「ヒーローとして」ではなく「弁護士として」、日常生活における「スーパーパワーを持つものの厄介さ」を描いていたところにある。

これはMCUドラマ『エージェント・オブ・シールド』でも度々描かれていたが、物語の主軸ではなく展開もシリアス。この『シー・ハルク』はそのノリがあまりにも軽快で、「スーパーヒーローの日常」を楽しく見ることができた。

それこそ先日公開された『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:ホリデー・スペシャル』のような(には負けるがの間違い)軽さ、面白さだった。

 

とはいえ、MCUはMCUなんだから、もっとシリアスな展開も欲しい、バトルっているところも欲しい、なぜかジェンはこと男性関係においてなかなか幸せを掴んでくれなくてむず痒さとしんどさがやばい、そもそも他の歴代アベンジャーズならともかく今回初登場の彼女の日常、そもそも楽しいだろうか?という不満も、あるにはある。

 

そして「主人公が弁護士の法廷コメディ」というには、「スーパーヒーロー専門」という設定の歪みもあって、コメディ要素が実に強く、ジェニファーが凄腕弁護士に全く見えず、なかなか締まらない展開が多かったというのもちょっと物足りなさを感じた部分でもある。

「スーパーヒーローと法律」でいえば『シビル・ウォー:キャプテン・アメリカ』で観たような「ソコヴィア協定」に対してヒーローたちが意見を交わし合うシーンみたいな、シリアスかつヒーローたちの思いのぶつかり合いみたいな熱いシーンが観れたっていいじゃない・・・と思ったものである。

 

辛くて残念すぎるジェンのプライベート

ラブコメとか、アメリカの日常ドラマに見慣れていないからかもしれない。

にしても、ジェンの恋愛が報われなさすぎるの、観ていてちょっと辛かった。

 

主人公ジェニファー・ウォルターズは一応、「仕事はできるけどダサくて冴えないモテない、のに性欲を持て余している残念なキャリアウーマン」みたいな設定ではあるんだけど、あまりにもだめんずウォーカーすぎて、最初の数話は笑えたけど、だんだん本当に観ていてかわいそうになってきた。

 

そして極め付けが「めちゃくちゃいい感じになったと思った男がセックステープを流出」からの「ハルクの力を手に入れることができるジェンの血液を盗まれる」という展開。

 

いやもう、あんなモニターくらいぜんぜんぶっ壊していいよ。正当防衛になるよ。

ブチギレて当然というか、あれで敵をコテンパンにすることができない胸糞悪さの方が後に残った。

 

「スーパーパワーを持つものはどんな理不尽なことがあっても一般人にその力を行使してはいけない」みたいな、スーパーヒーローであるがゆえの苦悩・・・っていうのはわかるし、

これが実際「セックステープを流出させられた女性がなすすべもなく生きていかなきゃいけない苦しみ」を描いているんだとしても、フィクションの中でくらい、ちょっとスッキリしたかった。

 

これは私の甘えだろうか。甘えかもしれないな。

 

デアデビルのキャラ変

ドラマ『ホークアイ』にキングピンが出てきたことや、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』にピーター・パーカーの弁護士としてマット・マードックが登場したのは記憶に新しい。(それでも1年前だ)

 

それらのキャストはNetflix配信版(現在はDisney+で視聴可能)『デアデビル』に登場するキャラクターで、かつ同一キャストが役を務めている。

今回は「法廷コメディ」として、チャーリー・コックス演じるマット・マードックが再登場。そして、Disney+でのドラマとして『デアデビル:ボーン・アゲイン』が配信されることが発表されている。

www.cinematoday.jp

MCUドラマとしてスタートした『デアデビル』が、大人の事情で打ち切りになり、クオリティは高いにも関わらず「なかったこと」にされたが、それがMCU復活。は非常にめでたいことだと思っていた。

けど、いざ復活したマット・マードックは、Netflix版『デアデビル』よりも妙に明るく、陽気で、ちゃらい。そしてデアデビルのスーツもなんか金ピカっぽい。

そういえば、『ホークアイ』にでてきたキングピンも、なんか派手なアロハシャツを着ていたような・・・。

 

この衣装チェンジは結局原作オマージュではあるんだけど、原作を一回シリアスに落とし込んだ『デアデビル』を私たちは知っているので、しかも配役が全く同じなので、このキャラ変には心底驚いてしまった。

別にジェンとマットがセックスするのはいいけど、マットが目が見えないから外見にとらわれずジェンの心の良さに惚れた、という行間読みも気持ちいいんだけど、ヒーロー衣装で朝帰りみたいな面白ネタはやめてください。

 

物議を醸した最終回の「禁じ手」

シー・ハルクというキャラクターはマーベルコミックスでは意外と古いキャラクターで、それでいて昔から第四の壁を破って読者に語りかけてきたりするキャラクターだったのだという。

本作のドラマ版もその要素は十二分に受け継がれていて、キャラクターが軽くてちょっと下品なだけでなく、しっかりと画面越しの私たちにメタ的な語りかけを行ってくる。

 

別にそれに関しては、MCUでは今までなかったというだけで、普通のドラマではよくあることで、今後MCUに合流する『デッドプール』もあるし、「別にいいじゃない」という感じだった。

 

感じだったんだけど、最終回がダメだった。少なくとも私には。

 

影でシー・ハルクを心身ともに破滅させようと企む集団のボス、ハルク・キングが、ジェンの元に婚活男性風なスパイを送り込み、ワンナイトでセックステープの録画、個人情報の収集、そして「ハルク」のパワーを持った血液の入手までやってのける。

スパイのおかげで「ハルク化できる血液」を手に入れたハルクキング(中身はキモ男)は、政府によりシー・ハルクへの変身を禁じられたジェンを倒すべくその血液を投与。

そこには講演を行うアボミネーション(エミル・ブロンスキー)がいる上に、宿敵タイタニアも乱入、宇宙から帰ってきた従兄弟のスマート・ハルク(ブルース・バナー)も合流して、舞台はクライマックスへ・・・。

 

「面白い?」

 

とジェンが聞くと、画面は突然Disney+の作品選択画面に戻る。だが、ドラマは続いている。スーパーパワーの制御装置を外しシー・ハルクになったジェンは『Assemble(番組の制作秘話を語るドキュメンタリー)』に侵入し、なんと、バーバンクのウォルト・ディズニー・スタジオへ・・・。

『シー・ハルク』製作陣に文句を言うと「すべてはケヴィンの決断」とあしらわれ、今度はマーベル・スタジオの「ケヴィン」のもとへ。

だがMCUの全ての作品を統括する「ケヴィン」の正体は、なんとA.Iロボットだった・・・!

 

なんだろう、MCUがするギャグにしては寒すぎる。

ここでいう「ケヴィン(=K.E.V.I.N.)」とは、マーベル・スタジオ社長ケヴィン・ファイギのことだ、それが実はA.Iで、全ての作品はアルゴリズムによって組まれたシナリオです。というギャグである。

 

そしてMCUのこのクライマックスで要素てんこ盛りにして盛り上げるのは「ありきたり」だから変えましょう、とジェンは提案する。

 

私は、このジェンの提案自体は一理ある、と思う。

私は事あるごとに映画の感想で「もっと驚かせてほしい」「意外な展開が欲しい」と常々言っている。これだけクオリティの高いMCUに対しても、だ。

だから納得はする。するんだけど。

それをMCU的ロジックの上で普通に見せることはできなかったのか?と思ってしまう。

 

ジェンは変身を禁じられている、最大のピンチ!を、アボミネーションやハルクに頼るでもなくクリアして、かっこいい結末を持ってくることはできなかったのか?(そして結末を変えてもとりあえずスーパーパワーの制御装置はなかったことになっている)

私たちが普段から言っている「意外な結末を!」という、意外な結末を実際に持ってこられて、全然面白く無くなっている、というか普通に展開として無茶があるの、本気でやっているとすれば、私が恥ずかしいし、

本気じゃなく茶化すつもりで「ほら、面白く無くなったじゃん、ありきたりな展開の方がいいんだよ」というつもりなのであれば、心底腹がたつ。

 

そして何よりMCUってそういう「ロジックを破壊してしまう」ことを一番避けなきゃいけないジャンルだと思うのだ。

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を経て『アベンジャーズ/エンドゲーム』に至るまでの間に、どれだけ多くの人が「あれほど絶望的な状況をどうやって乗り越えるのだろう??」と考察しただろうか。そして実際にその考察に応える、いやそれ以上の結果を『エンドゲーム』は、MCUは残してきたはずだ。MCUの中でしか通じないかもしれないが、彼らなりのロジックを突き通して。

この『シー・ハルク』の結末は、『シー・ハルク』限定のつもりなのかもしれないし、もう一回やったら死ぬほど寒いけど「ロジックを通さなくても結末に持っていける」前例をMCUに作ってしまった、いわゆる禁じ手じゃないかと思ってしまう。

 

もちろんこの無茶な展開に、何も考えていない、メッセージ性が込められていないとは言わない。

ジェンが自ら言うように『シー・ハルク』の見所は「ジェンとシー・ハルクの両立に悩む人生の迷走」そして「法廷コメディドラマ」だ。

男性優位社会の中で「ケヴィン」(=男性)という最高決定権を持つ存在が決めた、ありきたりな結末に「No」を提示して、「主人公(=ジェン/女性)にとって一番大切なことを好きなようにやる」そのためには「ドラマの結末すらスマッシュ(破壊)する」ということだ。

 

やりたいことはわかる。でもここまで、全て主人公本人の口から語らせる、その必要性があると言うことが、ちょっとドラマとして出来が悪い気がするし、「ヒーローの迷走する日常」も「法廷コメディドラマ」も序盤はそこそこおもしろくて、でも全然もっと面白くすることができる伸び代はあったと思う。

だからこそこの結末や、彼女の言葉が響いてこない。

 

そして、「改変した結末」でも法廷コメディらしい展開は起きず「法廷で会いましょう」という言葉だけが残される。

その一言に、これまで散々苦しめられてきた、不快極まりないヴィランへを倒した爽快さは果たして宿っているだろうか。

 

シー・ハルクは帰ってくる?

さて、今後のMCUは果たしてどうなるのか。

結末を改変、しかも製作陣のもとに乗り込んで、というロジックの通らない展開が、まさかデッドプールじゃないところで繰り広げられるとは思わなかったから、まぁ意外ではあったが、結局目の前で起きていることを全然楽しめなかったのは素直に残念です。

ケヴィンがA.Iでした〜というギャグとかはそれこそありきたりだったよね、という感じもします。

 

今後、シー・ハルクが帰ってくるとして、これ以上の無茶展開は難しいだろうし、やらなくていいと思うけど、やったからには(やるからには)ハードルは高く掲げられると言うことは製作陣はよく考えていてほしい。

まぁK.E.V.I.N.が「スクリーンで会おうーーー嘘だ」と言っていたので、ないのかもしれないけど。

 

ハルクの息子の話はもうわりとどうでもいいです。

 

それでは。

 

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『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』ずっと「正しい理想」を追い求めている。

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『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(原題:Black Panther/Wakanda Forever)を観ました。

 

非常に象徴的な作品だと思う。

アフリカの架空の国家ワカンダを舞台にアフリカ系黒人ヒーローと、その国民たるアフリカ系の人々が織りなす、スリリングで、カッコよくて、メッセージ性の強い作品、それが前作だった。

2018年に公開された1作目『ブラック・パンサー』はBlack Lives Matterにポジティブな側面で勇気を与えつつ、かつて先進国がアフリカの発展途上国に対し行ってきた仕打ちを再度認識させる映画となった。

 

その1作目から4年。

主人公ティ・チャラを演じたチャドウィック・ボーズマンは2020年に映画撮影の始まる前に亡くなり、喪失の中で、期待と不安の入り混じる作品となった。

 

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』傑作でした。

 

※この記事は現在公開中の映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のネタバレを含みます。

 

 

目次

 

喪失を越えるために

『ブラックパンサー2』は、当初チャドウィック・ボーズマンがティ・チャラ役を続投する前提で脚本の執筆がなされていた。

2020年8月にチャドウィックの訃報が知れ渡ったあと、本作の脚本は大きく方向転換をすることになったであろうことは想像に難くない。

 

俳優を変えて引き続きティ・チャラの物語を描くことも選択肢のひとつとしてあったはずだし、ルーカスフィルムが『ローグ・ワン』でやったようにCG俳優によりティ・チャラをこの世に甦らせることもできただろう(『ローグ・ワン』のCG合成によるターキンの復活は多いに批判を浴びたが)

だが、彼らはそれらを良しとせず、「チャドウィックの死」を劇中の「ティ・チャラの死」として映像に呼び起こし、劇中の登場人物共々喪に服し、追悼することにした。

 

前作とはうってかわって、喪失と悲しみを纏い、その隙を狙う大国の不作法にイラつき、ヒリヒリとした空気感が漂う本作。

チャドウィックの死亡以前より、本作はセンチメンタルな物語となることは決まっていたようだが、その原因が「サノスのデジメーション(指パッチン)による喪失」から「ティ・チャラの死」に変わった事は、現実世界のチャドウィックの死の悲しみと相まって、より重く、切なく、苦しいものになっている。

 

ティ・チャラの後を継ぐ者

そして、そのティ・チャラの後を継ぐのは妹でありワカンダの王女であるシュリだ。

前作『ブラックパンサー』でも『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』や『エンドゲーム』でも戦闘に参加していたが、どちらかといえば頭脳派で、華奢で身体の小さな彼女は決して戦闘向きではない。ワカンダのスパイのナキアや、ドーラ・ミラージュの将軍オコエのほうがまだ、戦闘能力も高く、実戦向きだろうし、ブラックパンサーの超人的能力を手に入れることができるハーブは、前作でエリック・スティーブンスにすべて焼かれてしまった。

 

そんな状況下で現れるヴィランは、海底帝国タロカンの王、ネイモア。ワカンダのハーブに似た、ヴィブラニウムの影響を受けた水生植物を食べ、水呼吸できるようになった種族の子孫である。

羽の生えた足で空を飛ぶ超人で、とてつもないパワーと野望を持っているネイモアを、一体どうやってシュリは倒すのか。

 

失われた「ハーブの力」を手に入れる方法も、ロジカルだし、その戦い方もシュリの小さい身体ながら、頭脳派であり、科学者かつ医学にも長ける、実に彼女らしい作戦だった。

 

来る「反撃の時」に向けて、着々と準備を進めていく様は初期の『アベンジャーズ』の頃を思い出してワクワクしたし、戦闘シーンも前作よりスケールアップしたと思う。

 

無宗教でリアリストなシュリというキャラクター

またシュリの話。

 

彼女は科学者であり、ワカンダいちのリアリストであると言ってもいい。

ワカンダの伝統的な儀式を知らず、胡散臭いものだと思っているし、

ティ・チャラの死を真正面に受け止めてすぎて、宗教的な「祖先の平原」の存在も信じてはいない。

 

だからこそ、彼女が自らの手でワカンダのハーブを復活させ、儀式を行った時も、彼女の前に現れたのはティ・チャラでも、ティ・チャカ元王でも、ラモンダ女王でもなく、同じくリアリストであるキルモンガーであった。

 

彼女がネイモアを倒す理由が、「世界を守ること」ではなく「復讐」にすり替わってしまっていることを、儀式の時にキルモンガーは言い当てる。

シュリは戦闘のギリギリまで、勝利のギリギリまで、この「復讐」に囚われている、かなり危うい状況だった。

 

だが彼女は、その勝利の目前で「復讐」という目的を捨てるのである。

 

ずっと「政治的正しさ」の話をしている

私が『ブラックパンサー』のシリーズを愛する理由は、前作もそうだが、ずっと「政治的正しさ」の話をしているからだ。

英語にすれば「ポリティカル・コレクトネス」だが、私が言いたいのは「黒人が主人公だから多様性を表現している」とか、そういう話ではない。

 

黒人を主人公にするだけではなく、知られざる大国ワカンダという特殊な立場から、アフリカの植民地時代の悲劇的な重圧を見つめ、世に訴えかけていくから好きなのだ。

本作冒頭でも、国連の議会で大国が戦争での優位性を得るためにヴィブラニウムを持つワカンダをなりふり構わず襲う。

その襲撃班がフランス語を駆使するのは、かつてのアフリカの植民地の多くがフランスによるものだったことを呼び起こさせるのには十分だろう。

 

また第1作では、黒人差別や迫害に対し、ワカンダの持つ強力なヴィブラニウムの武器を与えて彼らを救うべきだとするキルモンガーと、

本作では、植民地支配により祖国を追われたネイモアたちタロカンの人々による先進国への復讐、

そのどちらも「悲劇」や「恨み」や「絶望」から生まれた過激な思想であり、

実際に、私たちの世界で起きた「歴史」の一部だ。

「被害者」の立場からしてみれば、正当性のある復讐に見えなくもないのだ。キルモンガーも、ネイモアも「やられたから、やりかえす」という信念と、辛く悲しい過去があるからこそ、敵であろうと魅力的で、感情移入できてしまうのだ。

 

だが、ワカンダの回答はいつだってNoだ。

どんな理由があろうと「復讐」を言い訳にした戦争行為が正当性を持たないことを、ワカンダは、ティ・チャラもシュリも、知っている。

ワカンダが戦うのは、いつだって「より大きな悲劇」を産まないためだ。

そして、「それがヒーローのあるべき姿」だからだ。

 

現実には、思想的・宗教的ないざこざや、その国の豊かさ、地理的な優位性を得るためが理由に戦争が起きる。

だからこそ、『ブラックパンサー』的な戦いの理由や、復讐の否定は、「平和的な解決」を追い求める姿勢は、現実的ではないと思われるかもしれない。

それでもヒーロー映画として、架空ながら一国家を扱う映画として、この「政治的な正しさ」を恥ずかしげもなく主張するのが、私は好きだ。

 

ワカンダは続く

シュリは無宗教でリアリストである話はした。

ラストの王位継承のシーンでは、シュリは王位継承ための戦闘の儀式に参加せず、バクに代理を依頼する。彼女は、王位継承にすら興味がないのだ

 

唯一の王位継承者と思われたシュリがそんな感じで、果たしてワカンダはやっていけるのか、と感じるかもしれないが、

エンドロールの後、シュリの前に登場するのは、ティ・チャラとナキアの子だった。しかもハイチで育てられた彼は「トゥーサン」というハイチ革命の英雄、トゥーサン・ルーベルチュールを名前の由来としている。

ハイチ革命も、フランスの植民地で黒人が奴隷として扱われていた自体で唯一成功したと言われている反乱で、ハイチは初めての黒人共和国でもある。

 

たとえシュリがワカンダの伝統や文化に興味がなくとも、ティ・チャラの意思、弱いもののために世界と戦う守護者としての、ブラックパンサーの意思が受け継がれ、生き続ける限り、ワカンダは永遠に続いていくはずだ。

 

それはきっと、トゥーサンという名前をつけられたティ・チャラの息子もそうだし、シュリも、きっとそうだろう。

 

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『ソー:ラブ&サンダー』の悪ふざけを、ずっと受け止めきれずにいる。

ソー: ラブ & サンダー (字幕版)

 

結構前の話ですが、『ソー:ラブ&サンダー』を観たよ。

ちゃんと劇場で見たのだけど

なんやかんやで感想を書くのがこんなにも遅くなってしまいました。

 

タイカ・ワイティティ監督の作品は『マイティ・ソー:バトルロイヤル』("Thor:Ragnarok")はそれなりに面白いかな、という感じで

サーチライト・ピクチャーズで作った『ジョジョ・ラビット』がとても良くて大好きだったので、本作もまぁまぁ期待はしていたのですが

何となく求めていたものとは違っていた上に、私の価値観と相違する部分もあり、結構苦しい作品でした。

 

目次

 

もっとジェーン・ソーが見たい

アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ハルク、ブラック・ウィドウ、ホークアイといった初期アベンジャーズの面々が、次々とヒーローとしての継承と引退を行なっているMCUフェーズ4、『ソー:ラブ・アンド・サンダー』も、予告から大々的に「ジェーン・ソー」を登場させることでその継承を行うものかと思っていた。

 

ところがナタリー・ポートマン演じるジェーン・フォスター博士=女性版マイティ・ソーは本作で登場して、本作でその役目を終えるキャラクターであった。

これはコミック原作に比較的忠実な描写であるらしく、

確かに現代医学で治癒不可能なガンを宣告されたジェーンが、超医学的なムジョルニアによる代替療法で病を克服しようとして、むしろそのパワーを受け止めきれずに蝕まれていくという流れは理解に容易いし、

いくらアメコミファンタジー映画とはいえ、「神の力で病気が治って無敵になっちゃいました!みんなも信仰を大事にしましょう!」みたいな流れになってしまうのは絶対的に危うい。

 

もうこれは、「ただの人間であるジェーン・フォスター博士が、どうやってソーの力を手に入れたのか?」を描く上で、どうあがいてもリアリティを欠いてしまう中で「死という代償」を条件にその力を与えるというのは、理性的で仕方ない。

少なくともこの映画の中でナタリー・ポートマン演じるジェーン・ソーはその魅力を余すことなく表現できていたので、飲み込むしかない。

 

ただ、他のヒーロー達が継承と引退を描いて行く中で「クリヘムソー、まだやるの?」という気持ちもなくはなく、ジェーン・ソーの活躍を今後も期待しながら映画を観ていた身としては少し残念でもある。

 

まぁ、私の想像とは全く異なるながらも、結果として「継承」に関して言えばこの映画の最後にきちんと描かれてはいるし、

ムジョルニアのパワーを一時的でも手に入れたジェーンは「神としての死」によってヴァルハラへ行けたので、ヴァルハラから新たな冒険が始まる可能性も無きにしも非ず・・・それこそ、このタイムライン上ではロキもサノスに殺されていてヴァルハラにいる可能性があるので、やろうと思えばロキとの絡みも見せられるのではないかな。

ディズニー+オリジナルドラマの『ムーンナイト』で死後の世界への言及があり、さらにはそれと『ブラックパンサー』の「祖先の平原」との繋がりも示唆されたので、死後の世界を渡り歩くユニバース、できんこともないんではないか。妄想だが。

 

「救いようのない神」を殺すソーとゴア

本作の着目すべきポイントは、ヴィランのゴア・ザ・ゴッドブッチャーの存在である。

 

これまでの『マイティ・ソー』シリーズのヴィランは、ソーの身内であるロキ(『マイティ・ソー』)、もしくはヘラ(『マイティ・ソー:バトルロイヤル』)。そしてソーの父親に恨みを持つダークエルフのマレキスという面々で、中でもマレキスが登場する『マイティ・ソー/ダークワールド』はMCU内でも1、2を争う不人気作でもある。

今後の作品の重要なキーとなる「インフィニティ・ストーン」のひとつ「リアリティストーン」というアイテムを登場させながらイマイチその石の効力もパッとせず、それを手に入れようとするマレキスらダークエルフらもパッとせず、キャラが立っていない。マレキスによって殺される「ソーの母フリッガの死」という重要局面をもってしても、ソーというキャラクターの葛藤と成長が描かれるのは『アベンジャーズ/エンドゲーム』まで待たねばならず、一方で「母の死」に向き合うキャラクターとしてはロキにその役割が担わされていた(一瞬で終わったけど)

 

一方でゴアというキャラクターは、実を言えばソーとは全く接点のない、ごく一方的な逆恨みによってソーの前に立ちはだかる。

黄金の神ラプーによって裏切られ、愛すべき娘を失ったゴアは神を殺せる剣「ネクロソード」の力を手に入れて(むしろ取り憑かれるように操られて)、神殺しの復讐を行う。その神殺しの一環に、アスガルドの(元)王ソー・オーディンソンがいたというだけなのである。

このゴアを怪演しているのが名優クリスチャン・ベールである。絶望的なまでに重く、暗く、恐ろしく、そして悲しいキャラクターであるゴアを迫真の演技で演じて見せ、この映画の序盤から視聴者を引き摺り込むのである。

 

また、物語中盤、ソーの一行は最強の神々のチームを作りゴアに対抗すべくオムニポテンツ・シティへ行き、援軍を要請しようと目論むが、ソーは憧れの神ゼウスに援軍を拒否されてしまう。

憧れのヒーローであったゼウスの、保身のための甘い発言と臆病さに失望し、怒りをあらわにしたソーは最強の武器サンダーボルトを手に入れるためにゼウスを殺してしまう(最終的には生きていたことが明らかになるが)

 

これは、ゴアとソーという、基本的にはなんの繋がりもないヴィランとヒーローが、「救いようのない神」によって裏切られて失望し、怒りに任せて「殺す」ところまでを反復させ描くことで、この物語の本質を描いている。

ゴアでこそ、本来は「悪人」ではないのである。

 

その手に入れた力を「復讐」のために使うのか、しかも自分が失った「子供」を人質に取ってまで。

そこがゴアがヴィランたる所以であり、その逆で、手に入れた力を子供達に分け与え、ぬいぐるみですら「反撃の武器」に変えてしまう、守るべき命のために身を呈して戦うという行動が、ソーのヒーローたる所以でもあるのだ。

 

ヴィランの悲しさや、残酷さを描きつつ、その対比としてのソーのヒーロー論を描く。そこにジェーンという恋人との絡みも込めて、ソーという「子供のまま育ってしまったような男」の成長を描く。

こうまとめると、すごくいい映画のように思えてくる。

 

けど実際は、クリスチャン・ベールの怪演が嘘みたいに思えるくらい、シリアスな場面をぶち壊すギャグシーンが合間合間に登場して辟易するし、

ソーがゼウスに裏切られるシーンも、ゼウスの無駄に長すぎるシュールな見せ場シーンに長尺をつかった他、(子供達がゴアに人質に捕らえられているとはいえ)ソーが「裏切られた」とするにはあまりにも展開として弱い。絶大な力を持っているのはわかるが、戦いを嫌がっている人を無理やり戦場に連れて行くのは賢明とは言えないし、だから殺すのもどうなんだ。まぁ、すっぽんぽんにされて恥はかかされたので怒る気持ちはわかるが。

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  • クリスチャン・ベール, マイケル・ケイン, ヒース・レジャー, ゲーリー・オールドマン, アーロン・エッカート
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子供を政治の犠牲にするな

私はこの映画が始まって、ゴアの神殺しのオリジンを見た時、こう思った。

「子供を政治の犠牲にするな」っていうテーマなのかな?と。

 

ゴアの種族は金の神ラプーを信仰する一族の生き残りで、彼は荒廃した砂漠で水も食料もなく、愛娘を失う。

だが、ゴアの世界には実際に神、ラプーが存在していて、その気になれば彼の一存で水や食料を与えることもできたのである。

ラプー自身は「信仰する人々が神のために死ぬことは当然のことだ」と考えていて、ゴアの娘はその犠牲となったのである。

神を統治者とすれば、ゴアは民衆の一人で、私はこの物語の冒頭に政治批判的な側面を見た気がするのだ。

 

それでも、この勘は間違っていたのかな・・・と思ってしまったのが、主人公、およびヒーローであるソー自身が、率先して子供達を戦争に巻き込んでいるような描写である。

 

ニューアスガルドの子供達は、100歩譲っていい。

彼らはただ単にゴアに誘拐され、なすすべもなく怯えていたところを、ソーによって「身を守る術」を与えられたにすぎないのだから。

私が気になったのは、ゴアの娘「ラブ」の描写である。

 

ネタバレすると、物語の結末で、ゴアの娘「ラブ」は生き返る。

「永久」にたどり着いたゴアが本当に願うのは「すべての神の死」ではなく「愛する娘が生き続けること」だったからである。

 

ゴアにより娘のラブを託されたソーは、またもやタイカ・ワイティティの悪ノリコメディ展開に乗っかって、海外ドラマみたいなアットホームなパパを演じつつ、ラブとともに戦場へ向かう。

 

戦場へ向かう?

マーベル世界において「大いなる力には大いなる責任が伴う」のがセオリーではあるけれども、いくらスーパーパワーを持っているからといって、ゴアがあらゆる神を殺して、ソーからストームブレイカーも奪って、「永久」にたどり着いて、自身の悲願であった「娘の蘇生」を成し遂げたのに、その娘を託されたソーはその子を戦場に向かわせるのか?倫理観どうなってんの?

 

本当に「ふざけすぎてるけど、まぁタイカ・ワイティティだから仕方ないか」くらいの感じで、まぁまぁ楽しんではいたのだけど、最後の最後で私の価値観との相違がハンパなくて、一気に嫌いになりました。

 

素材はいいのに、調理の仕方を間違った

というわけで、今回は「割と期待していた分、失望がすごかった」作品かな、と思います。

期待していたっていうほど期待もしていなかった気がするんだけど、本当に失望がすごい。

 

ジェーン・ソーにしろ、チャンべのゴアにしろ、ヴァルキリーやクロナン人のさりげないクィア要素にしろ、素材はいいのだけど、結果的にできたものがふざけすぎてとっちらかっていて、少なくとも読解力のない私には何が言いたいのかわからなかった、です。

 

もう一度、『ジョジョ・ラビット』みたいな作品を作ってくれよ。

 

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『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』あり得た「幸せ」に別れを告げて。

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス (字幕版)

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(原題:Doctor Strange in the Multiverse of Madness)を観た。

すごい濃度だったね。

 

まだ『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』やもっと言うと『ブラック・ウィドウ』の感想も書いてないのだけど、そもそも求められてない気もするので良いことにする。

 

ここずっと心にも時間にも余裕がなかったこともあり、どういう話になるかあんまり予想もできてなかったので、その分衝撃展開に「なんだってーー!」と楽しめたので良かったです。

 

語るね。

 

※この記事は映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』のネタバレを含みます。

 

目次

全く予想していなかった

今回、事前予想を一切しておらず、トレーラーもそんなに繰り返し見ていなかったこともあり、

それが功を奏して新鮮に劇場で楽しむことができた。

 

当初から本作は、アベンジャーズのメンバーであるスカーレット・ウィッチことワンダ・マキシモフの登場が発表されており、その前日譚とも言えるDisney+オリジナル・シリーズ『ワンダヴィジョン』が公開されていた。

そのドラマでは、ワンダの悲劇的なバックグラウンドの説明と、彼女が力を抑えられなくなってしまって発生した暴走(ウェストビューでのヘックス事件)、そして彼女がさらに新たな力を手に入れ「スカーレット・ウィッチ」となるまでを、シットコム風のコミカルかつ不気味な演出で描いている。

 

その『ワンダヴィジョン』を全話見た上でも、私は本作でワンダがヴィランとなる事を予想できていなかった。なんてこった!

 

前述の通り、この予想外はサプライズとして映画を観ながら楽しめたので結果オーライなわけだが、よくよく考えるとトレーラーでもワンダがストレンジに「あなたはヒーローなのに私は悪役なの、不公平よね?」みたいなセリフを言っていた気がするので、「もしかしてみんな気づいてたのか…?」とちょっと恥ずかしかったりもするのであった。

 

ワンダは初登場の『エイジ・オブ・ウルトロン』から(正式なデビュー作は『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』のエンドクレジット映像だが)「強大なパワーを持ちながらも、若さと精神的な揺らぎによりパワーをコントロールできない女性」として描かれており、それはシリーズとして一貫していた。

これまでは、サノスとタイマン張れるレベルの力を持ち合わせていながらも、そういう「弱点」を持っているという、パワーバランス調整的な要素を制作側の意思からも感じられたし、それはそれで受け入れられていた。

サノスが倒れ、『ワンダヴィジョン』で自身の理想や喪失、過ちに真正面から向き合って、さらに強大なパワーを手に入れた今、

「どうしてまだ『ワンダは精神的に弱い女性』扱いを受けなくてはいけないの?」という、ファンの気持ちもとてもよくわかる。

 

しかしながら、だ。

『エンドゲーム』時点でサノスとタイマン張れるパワーを持ったワンダが、さらに強力なパワーを手に入れて、理不尽に襲いかかってくる姿は、ヴィランとしてあまりにも魅力的であった。

 

そして、ワンダのファンには非常に申し訳ないが、本作は同じく「強大なパワーを持ちながらも、コントロールできない若い女性」であるアメリカ・チャベスという新キャラクターのオリジンでもあるのだ。

ワンダにはいつかどこかで報われてほしい、と願いながらも、本作におけるエリザベス・オルセンの熱演は本当に素晴らしかったし、アメリカ・チャベスという新たなるキャラクターの誕生を私は純粋に祝福したいと思う。

 

 

MCU初のホラー要素

本作『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』は、MCU映画初のホラー映画テイストの作品として発表された。

これは制作発表段階から大々的に伝えられており、多くのファンが興奮し、あるいは「観れるかな・・・」と不安に思っていたりした。当初1作目を監督したスコット・デリクソンはもともとホラー出身の監督でもあった。

そしてその後、スコット・デリクソンが降板し(制作総指揮として名を残す)、初代『スパイダーマン』3部作を制作した監督サム・ライミが引き継ぐ。彼もまた『死霊のはらわた』等のホラー映画を作った監督として有名だ。(地味に『オズ はじまりの戦い』というディズニー映画も作っている)

そして本作の音楽は『スパイダーマン』3部作でサム・ライミとタッグを組み、またティム・バートン作品などのカルト色の強い作品の作曲でおなじみのダニー・エルフマンが担当。MCUとしては『アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン』以来のカムバックとなった。

 

そんな体制下で作られた本作は、正直全然怖くはなかったものの、所々に「ホラー映画」を思わせる展開とシーンが散りばめられ、

また「次の瞬間絶対に驚かされる・・・」というようなタメの演出が多用されており、いろいろな意味でニヤニヤしながら楽しめた。

中でもカマー・タージの寺院を『エクソシスト』よろしく関節バキバキで這い回るワンダとか、初代『ターミネーター』みたいに無心でストレンジたちを追うワンダとか、さらにはゾンビ・ストレンジの登場は、序盤の伏線がバチっと繋がった上にディズニー+配信の『What if...』のうちの一作やコミックの『ゾンビ・アセンブル』の実写化のようで実に楽しめた。

『What if...』といえば、その他闇落ちストレンジや中盤登場するエージェント・カーターなど『What if...』を見ているとより楽しめる要素が盛り込まれていたのも、ホラー関係ないけどよかった部分だ。

 

 

イルミナティのサプライズ

本作でストレンジがアメリカ・チャベスとともに迷い込むマルチバースのひとつ「アース838」にはアベンジャーズは存在しておらず、その代わりと言えるヒーロー集団「イルミナティ」が存在した。

そのメンバーとは、ストレンジの兄弟子であり、前作終盤に「魔術師殺し」を誓ったヴィランのバロン・モルド、MCU最大の失敗作とも言えるドラマ『インヒューマンズ』に登場するブラックボルト、スティーブ・ロジャースの代わりに超人血清を打ちファースト・アベンジャーとなったエージェント・ペギー・カーター、キャロル・ダンバースの代わりにキャプテン・マーベルとなったマリア・ランボー、ファンタスティック・フォーのリーダーであるリード・リチャーズ、そして『X-メン』シリーズでおなじみのプロフェッサーXことチャールズ・エグゼビアだ。

 

これらのキャラクターたちは、ストレンジたちの世界(アース616)とは無関係であるほか、『インヒューマンズ』『X-メン』そしてこれから制作される『ファンタスティック・フォー』や過去の作品とも関係のない「全く別の存在」とされている。

だが、皆に馴染みのある、同じ俳優が、少し異なった設定の同じキャラクターを演じるということは、それだけでそのオリジナル作品のスピリットを引き継ぐ役目を果たしているし、本作においては「マルチバース」という作品設定も功を奏して、オリジナル作品がMCU世界の裏に実在したマルチバースのひとつとしての解釈の余地も与える。全く異なる作品が繋がる瞬間の爽快感。

最初に『アベンジャーズ』を見た時の感覚を改めて呼び起こすようなお祭り感覚を感じるのだ。

 

このイルミナティのサプライズは、同じくサプライズでお祭り騒ぎとなった『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の、過去のスパイダーマン勢揃いというミラクルがあったにも関わらず、決して同じ印象に感じなかったのは、『NWH』が湿っぽくドラマティックに彼らを登場させたのに対し、

本作は満を辞して登場した彼らを、あくまで「無数にあるバースのひとつ」として、無惨にも皆殺しにしてしまうというサバサバした演出が効いているからだろう。

アース838においてサノスすら倒したイルミナティたちを瞬殺するワンダもえげつない。

 

そして、MCUとは別の作品で登場したキャラクターを「ちゃんと同じキャラクターで登場させた」というのも、

『ワンダヴィジョン』にエヴァン・ピーターズ演じる『X-メン』シリーズのピエトロ・マキシモフ(ピーター・マキシモフ)が、同一原作のMCUキャラクターのピエトロ・マキシモフとしてサプライズ登場した際、結果的には「同じピエトロじゃないどころか、ピエトロですらない」というストーリーが付けられてしまった事によって、大いに反感を買った事を思うと、非常に誠意のある登場だったように思うのだ。それがたとえ瞬殺される役目であっても。

 

ファンはマルチバースの本格始動を『ワンダヴィジョン』で期待し、大いに肩透かしを喰らい、『ロキ』で肩透かしを喰らい、『スパイダーマン:NWH』と本作でやっと、その楽しみを実感できたのだ。

 

あり得た「幸せ」に別れを告げて

 

ドクター・ストレンジというキャラクター、そして作品は「時間」というテーマに密接に結びついている。

1作目では「アガモットの眼」=「タイムストーン」というインフィニティ・ストーンを司る至高の魔術師として世界の危機を救い、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』では、サノスにタイムストーンを奪わせる事により、逆にサノスに勝つための道を切り開く。

 

だが彼は世界を救うための唯一の判断を下した人物であるにも関わらず、物語冒頭で元同僚のドクター・ウエストに「他の方法はなかったのか?」と問いかけられる。

本作のヴィランとなるワンダ・マキシモフは、ドクター・ストレンジが渡したタイムストーンによりサノスが時間を巻き戻し、愛するヴィジョンの死に様をもう一度見せつけられたことになる。

 

何かを失った者たちにとって、彼の下した決断は「本当に最善唯一の方法だったのか」

「他の方法はなかったのか」と疑問をもたらす。

 

本作はタイムストーンを失ってから初めての『ドクター・ストレンジ』の単独作品となるが、この「不可逆性」を提示することにより、タイムトラベルや時間の巻き戻しをすることなく、改めて彼の物語に「時間」が密接に結びついていることがわかる。

 

そしてドクター・ストレンジもまた、デシメーション(サノスの指パッチン)により消えていた空白の5年間の間に、愛するクリスティーン・パーマーとの恋愛関係が完全に解消されてしまう事となる。

それでも彼は言う「私は幸せだ」と。

彼が彼自身で選んだ全世界の運命を「正しい選択だった」と言い聞かせるために。

 

それが、「マルチバース」の登場により、どこかに別の人生を歩んだもう一人の自分がいる事をストレンジは知る。

ワンダはドリームウォークにより、あり得た「子供たちと幸せに暮らす世界」を手に入れようとする。シニスター・ストレンジは「クリスティーンと結ばれる世界」を求めてドリームウォークし、自分の住むユニバースを崩壊させてしまう。(インカージョン)

ストレンジ自身も、幾つものユニバースを渡り歩き、たどり着いたアース838において、そのバースでストレンジを失ったクリスティーンと出会う。

 

もしかしたら、アース838のクリスティーンとならば、結ばれる運命を辿れたのかもしれない。

それでも彼はあえてアース838のクリスティーンに別れを告げる。

彼自身がユニバースを渡り歩き、「どの世界でもスティーブン・ストレンジは同じ」と実感を持って知るからだ。

シニスター・ストレンジが言ったように「クリスティーンと幸せになるユニバースはなく」アース838のイルミナティのメンバーが言うように、勝利のために手段を選ばずドリームウォークを使用してしまう。

思い返せば1作目では好奇心から禁断の魔術を使っていたし。

 

それでも彼が他のユニバースのストレンジと違ったのが、彼がクリスティーンの言う「自分でメスを握らなければ気が済まない人」から、一歩前進し、最後の一撃をアメリカ・チャベスを信じて託すようにした事だ。

これによりワンダが起因となるインカージョンを防ぎ、他のユニバースであり得た「アメリカを殺そうとするストレンジ」という構造を脱したのである。

また、全てが解決したあと、ストレンジはクリスティーンにこれまでなかったほど素直に、彼自身の本音を吐露する。

あり得た、他の世界の「幸せ」を掴むためではなく、ただ想いを伝えるためだけに。「伝えない後悔」を払拭して今の世界で本当の幸せを掴むために。

 

アース616のストレンジの選択は、いつだって、誰よりも正しい。

それは他のユニバースと比べてもだ。

だからこそ、『アベンジャーズ/エンドゲーム』において、エンシェント・ワンは彼を信じてブルース・バナーにタイムストーンを託したとも言える。

 

「ノー・ウェイ・ホーム」くらいエモかった

サム・ライミマジで映画撮るのが上手い。

 

制作初期から過去のスパイダーマンが集結する噂が流れ、実際に結実した『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』ももちろんエモかったし、お祭り騒ぎの楽しさというのはかなりあった。

 

私にとって『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』はそれに匹敵するくらい、いやそれを超えるくらいのエモさを感じられた作品だった。

序盤に話したように、どんな物語になるのか全く想像せずに挑み、まったく予想しなかった展開が繰り広げられていた。にもかかわらず、「観たかった、期待した何か」が映画の中にはふんだんに詰まっていた。

主人公スティーブン・ストレンジのパーソナルな想いや、決断をしたことによる後悔、あり得た「幸せ」そして「それを手に入れる力」を持ちながら、世界のために、自分のためにそれを手に入れるという決断はしない、

ストレンジの至高の魔術師としての相応しさを物語る内容であった事に感動を覚えた。(本作では至高の魔術師の座をウォンに譲っているが)

 

『ワンダヴィジョン』を経て以降のワンダの扱い方に関しては批判こそ多かった本作だが、私としては大きな矛盾も感じず、エリザベス・オルセンの怪演もあってMCU初の「闇落ちするアベンジャーズ」が最高の形で観れたことが嬉しかったし、むしろ「スティーブン・ストレンジ」という人物をこれほどまでも理解して描いてくれた事に感謝している。

 

結果としてドクター・ストレンジが行った「ドリームウォーク」の代償が、今後どういう形でアース616に影響を与えるのかは、これ以降の作品次第となるが、

たとえむちゃくちゃな選択をしても、きっと最後はストレンジが正しいとわかる。

きっとそんな気がする。

 

 

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『エターナルズ』ではじめる人類愛。個に触れること、個に向き合うこと。

Eternals (Original Motion Picture Soundtrack)

 

公開されてからもう1ヶ月経ったので、ええとこの映画レビュアーのええ感じのレビューはもう出るだけ出ただろう。

それはそれとして僕は僕で、『エターナルズ』の話をしようと思う。

「この作品はこう読み解く!」とか「こういう見方の映画!」とかではなく、

もう、ただ好きだった話をしていくことにしよう。

 

『エターナルズ』すごく好きだった。

すごく僕はしっくりくる作品だった。

 

※この記事は現在公開中の映画『エターナルズ』のネタバレを含みます。

目次

 

宇宙人だけど、人間臭い、魅力的なヒーローチーム

10人のヒーローたちを、2時間半の一本の映画で、誰一人余すことなく、キャラクターを際立たせて完成させる。

この映画の難しさはそこだろう。

『エターナルズ』はセルシ、イカリス、セナ、ギルガメッシュ、スプライト、キンゴ、ファストス、マッカリ、ドルイグ、エイジャックの10人の新ヒーローが初登場して、物語を紡いでいく。

「ディヴィアンツ」と呼ばれる怪物に対する守護者として地球にやってきた10人のエターナルズの物語はメソポタミアの文明に始まり、実際の人類史と重ね合わせながら展開していく。人類の歴史は戦争の歴史であり、過ちの歴史である。

エターナルズは人類をディヴィアンツから守り、人類の文明を発展させるという使命を託されながらも、人類同士の戦いには介入してはいけない。それは戦争が文明、発明、医療を飛躍的に発展させるからだ。

エターナルズの、少なくとも彼らに名を下したセレスティアルのアリシェムの考える「人類の発展」には、そこで生きる人々「個人」は存在しない。ただ「数」としての、人口増加のみを目的とした「発展」が彼らの使命である。

 

だが、実際に命を受けて地球にやってきたエターナルズらは異なっていた。

アリシェムにより意図的にデザインされた宇宙人であるにも関わらず、無機質でなく、実に人間らしく、ウェットな感情の起伏を持った面々なのである。

人々と言葉を交わし、打ち解け、共存の道を探る主人公のセルシ。人類の戦争に介入し、人々に争いをやめさせ、平和をもたらすべきだと主張するドルイグ。成長しないこと、セルシとイカリスの関係に嫉妬をするスプライト。目立ちたがり屋で、俳優としての名声を求めるキンゴ、等々・・・。

 

私個人の意見ではあるが、本作の面白さは十人十色のキャラクターの面白さと人間臭さ、それらと歴史的事実を重ねた上に浮かび上がる、映画全体にはびこる「人類愛」というテーマの大きさにあると思う。

 

多国籍ヒーローチームなんかカッコいいに決まってるだろ

 

あんまり詳しくないので多くは語れないけど私は石ノ森章太郎の『サイボーグ009』が好きだ。

平成版『サイボーグ009』のアニメシリーズが放送されていたのはちょうど私が小学生くらいの時である。

 

多国籍なメンバーからなり、メンバーそれぞれが個性と特殊能力を持ち、それぞれが自らの生い立ちやサイボーグとなった経緯に葛藤や悩みを持ちながら、自らを創造した悪に立ち向かっていく。時には戦場に生きる仲間として、時には生活を共にする家族として。

多国籍といっても彼らの人種は欧州や米国に偏っているし、特に中国系の張々湖などの描写は露骨なステレオタイプ描写でもある。

石ノ森章太郎のキャラクターやストーリー描写の秀逸さが素晴らしいことも本作が好きな理由のひとつだが、そもそも「色んな国から色んな特徴を持った人達が集まったチーム」って、私個人はどうしようもなくかっこよさを感じるのだ。

『ザ・ドラえもんズ』然り。

 

『エターナルズ』の彼らは宇宙人種のエターナルズなので、地球人のもつ「国籍」は存在しないが、パキスタン系アメリカ人のクメイル・ナンジアニが演じたキンゴは現代でインドのボリウッド・スターとして活躍しているなど、人種的背景を踏襲した設定も意識されている。

 

また、『サイボーグ009』のように、『エターナルズ』もそれぞれが攻撃手段や特殊能力を持っている。マッカリは009、イカリスは002、キンゴは003、ギルガメッシュは005、のように(逆に言えば共通する能力はそれだけなんだけど)

だから『エターナルズ』の予告を見た時から、ずっとワクワクしていたのだ。

 

歴史的出来事から「愛を説く」

発明の能力を持つエターナルズのファストスは、人類の文明の発達過程において、さまざまな「ヒント」を提示することで、人類を手助けしてきた(ということになっている)食物の生産を安定させるための農耕器具などが例だが、時には順序をすっ飛ばしてレオナルド・ダ・ヴィンチ的な発明を古代人類に教えてしまいそうになり制止される。タイムトラベル・パロディみたいだ。

そんなファストスが人類に「失望」し、自らのエターナルズとしてのあり方を見つめ直す出来事が、なんと、第二次世界大戦における広島・長崎への原子爆弾投下という歴史的事実であった。

原爆投下以前、それこそドルイグと決別をした、エターナルズ解散の時には

「戦争は医療の発展に必要不可欠」と言っていたファストスが、

広島の焼け野原で涙を流しながら「私たちは間違っていた」と訴える。

 

アメリカ文化圏において、「原爆投下」は「戦争をやめるために必要不可欠な行為だった」とする考えが主流であるとはよく聞く。

アメリカ映画において、しかも2021年現在もっともヒットしたフランチャイズのマーベル・シネマティック・ユニバースにおいて「原爆投下」を「間違いだった」と表現する。このこと自体が、実に挑戦的であったことを改めて理解したい。

 

セレスティアルズにしてみれば、地球人だってマイノリティ

多様性のあるチームを描くにあたって、一部の人たちは「その人種や属性をキャスティングする必然性」を求めるらしい。

すごい馬鹿らしいんだが、そもそも『エターナルズ』って宇宙人の話なので、そんなことを言い出すと本物の宇宙人を連れてくる以外は、全部不自然だろう。

 

彼らの中には男女の違いだけでなく、地球人で言うアジア系の顔立ちであったり、有色人種であったり、スプライトのような子供にデザインされた者、ファストスのような同性愛者、マッカリのような聴覚障害をもつキャラクターもいる。

7000年もの間、様々な時代、様々な文明において、彼らは守護者として、そして指導者のような立場でそれらの文明に影響を及ぼしてきたという設定である。

そんな超人類的な存在を、逆に白人ヘテロセクシャルの美男美女で固める必要性ってどこにあるだろうか。

 

これらのキャスティングやキャラクターの設定は、明らかに制作側が意図したものだ。

これまで偏見であったり、興収のために無視され蔑ろにされてきた存在に「ヒーロー」としての役割を意図的に与える。

「違和感」をもし感じるのであれば、その違和感の正体や原因が、制作側にあるのではなく自分の中の偏見にあることを、こっそりとでいいから見つめ直してほしい。「こんなキャスティングおかしい」と言う前に。

そもそも本作の説く「人類愛」は「地球人」という大きなカテゴリで判断するのではなく、「個」に触れ合っていこうよ、というのがテーマである。

これらのキャスティングを非難する人たちが見ているのは「有色人種」であったり「同性愛者」であったり「障がい者」というカテゴリでしかなく、それらを演じる俳優や、キャラクターを見てはいない。

何か、映画にとてつもない欠陥があるだろうか?取り返しのつかない自体が起きているだろうか?

彼らはそれらの属性である以前に、「個人」であることを忘れてはいけない。

 

そもそも、カテゴリとしてみることを善とするならば、

アリシェムに個人は見えていないから、

「地球人」は滅ぼされるべき存在なのだ。

 

 

これもまた「優しさ」の映画

本作、『エターナルズ』はざっくり言えば「優しさ」についての映画だ。

MCU世界における広大な宇宙の、ほんの小さな一部である地球における物語である。

この映画、いやMCU世界でセレスティアルを中心とするならば、地球人でさえも「マイノリティ」であることを思い出してほしい。

そんな滅ぼされる運命だった弱小惑星の地球人を「過ちを犯す生き物だけど、全体としてではなく、個人として見れば、全員が悪い奴じゃない。生きていてもいい」と、存在価値を認めていく物語なのだ。また「エターナルズ」自信が、「人類の命を奪い滅ぼすことの傲慢さ」について向き合い、それを阻止することを目指す物語である。

 

彼らは神のような存在でありながら、その内面は実に人間くさくて憎めない存在である。強大な力を持ちながらも完璧ではない。

 

他のマーベル映画とどう絡めていくのか、ちょっとまだ想像つかないし、

解決したようで全く解決してない心残りを引きずったままエンディングになって、そりゃそうだと思わなくもない展開ではあったが、

 

少なくとも私はこの映画、めちゃくちゃ好きだ。

 

ギルガメッシュを殺したのだけは許せないが。

拡大するユニバースにおいては、地球なんて本当にちっぽけで、

そのちいさなちいさな地球で、肌の色が違うとか、誰がどの性別が好きかとかで差別しあってるのなんか、本当にくだらないと思うぜ。そのうち取り残されちゃうぜ。

 

世界は狭い。世界は同じ。世界は丸い。ただ一つ。

そうか。エターナルズは「イッツ・ア・スモールワールド」だったんだな。

 

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『シャン・チー/テン・リングスの伝説』「ありのまま」は負の面をも受け入れること。

シャン・チー/テン・リングスの伝説 (オリジナル・スコア)

『ブラック・ウィドウ』の感想も、早く書こうね。

 

というわけで、観て来たぜ『シャン・チー/テン・リングスの伝説』

IMAXで観るのは『アナと雪の女王2』以来な気がするな。

 

で、この『シャン・チー』

主演はほぼ無名のアジア人俳優、コテコテのステレオタイプ中華色全開のあのトレイラーなどで、不安要素もあるにはあったのだが、

 

もう、文句のつけようがないくらい快作であった。

いや、多少の文句は言うけど。

 

※当記事は現在公開中の映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』の内容に触れます。

 

目次

 

存在自体に価値のある映画

身も蓋もないことを言う。

『シャン・チー/テン・リングスの伝説』は存在自体に価値のある映画だ。これはもちろん、ポリティカル・コレクトネスの文脈において。

 

これまでMCUのメインおよびサブ・キャラクターを演じたことのあるアジア系俳優は、ファラン・タヒール、浅野忠信、ケネス・チョイ、キム・スヒョン、ポム・クレメンティエフ、ジェマ・チャン、ジェイコブ・バタロン、ランドール・パーク、真田広之、そして本作にも出演するベネディクト・ウォンやベン・キングスレーなどがいる。

それでもいわゆる「ヒーロー」にあたる役柄を与えられているのはホーガンを演じた浅野忠信、マンティスを演じたポム・クレメンティエフ、ウォンを演じたベネディクト・ウォンくらいまで絞られる。

 

急速に成長する中国映画市場と、『クレイジー・リッチ!』や『フェアウェル』などのヒット作で描かれる「アジア系アメリカ人」のアイデンティティの追求、そして主要キャストをアフリカ系アメリカ人で固めたマーベル・シネマティック・ユニバース作品『ブラックパンサー』の大成功もあり、この『シャン・チー』を主要キャストをアジア系で固めて制作するのは「作る側としても」「観る側としても」求められている作品と言えるだろう。

実写版『ムーラン』で、作品内容とは関係ないところでいろいろとやらかしてしまったディズニーにとって、この『シャン・チー』は肝入りの作品だっただろう。

(の割に、社長自ら「壮大な実験」とか言っちゃって主演俳優に叩かれる失敗を早速犯しているが)

 

天下のディズニーが制作する、社会現象を巻き起こしたマーベル・シネマティック・ユニバースで、ビッグバジェットをかけて、無名といってもいい中国系俳優が主演を務め、その他メインキャストもほぼアジア系で固められたヒーロー映画。

 

このブログでも何度か繰り返し伝えているが、これは映画の存在自体が「あなたのような人たちが存在していい」という、ポジティブなメッセージとなる「Representative Matters」を体現しているのである。

 

だからもう、内容を鑑みるまでもなく、この映画の存在は「強い」のだ。

 

今後公開予定の『エターナルズ』ではジェマ・チャンが別の役柄で再出演、韓国俳優のドン・リー(マ・ドンソク)とパキスタン系のクメイル・ナンジアニらが出演予定であるし、監督は『ノマドランド』を監督しアカデミー賞に輝いた、中国人のクロエ・ジャオが務めるとあって、実に楽しみである。

 

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軽快な、エンターテイメント&アクション

『シャン・チー』は前述した主要キャストがほぼアジア系、だからこそ存在自体に意味があるという「強み」を完璧に活かした映画である。

 

この映画は、アフリカ系アメリカ人をメインキャストに据え、黒人社会の現実や問題点、それらとどう関わっていくかという「問題提起」を行い大傑作となりアカデミー賞作品賞にまでノミネートされた『ブラックパンサー』や、女性の自己決定権について改めて宣言し直した実写版『ムーラン』やMCUの『ブラック・ウィドウ』とは、かなり性質が異なっている。

 

純粋に「面白い映画」を追求し、それを軸にストーリー構築し、展開やアクションを繰り広げていったような、エンターテインメント全振り映画なのである。

そこには鑑賞後にうんうん唸りながら考えるような「問題提起」はなく、映像に魅入られるがままに楽しむことができる。

コメディ色の強かった『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』や『アントマン』とも、近いようで今までになかったテイスト。いい意味でシンプルに何も考えずに楽しめる映画として、迷わず人に勧められるような作品だ。

 

それは、ちょっと考察とかしたいタイプの映画ファンである僕には(MCUだからこそそういうのを期待していただけに)ちょっと残念でもあるのだが

『ゴジラ対キングコング』や『ザ・スーサイド・スクワッド "極”悪党、集結』『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』といったような、「それ系」作品(厳密には「それ系」でもなんでもないのだが、言いたいことはわかって欲しい)が次々押し寄せる中で、このエンターテイメント全振りっぷりは、MCUだからこそ新鮮で、「攻めて来たな!」と思わせる。そして、このアクションや展開の「インフレっぷり」は、これまでのMCU作品とも引けを取らないどころか、史上最高なんじゃないか?とすら思わせる。

 

これまでもMCUは『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』でポリティカルスリラーを、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』ではスペースオペラを『アントマン』でクライムアクションを、『スパイダーマン:ホームカミング』では学園モノを・・・といった具合に、それぞれの映画で単なる「ヒーロー映画」に留まらない映画スタイルを取り入れて来た。

では『シャン・チー』は?というと、「カンフー映画」「香港映画」のテイストを取り入れているのは目に明らかだろう。

「カンフー映画」の要素を取り入れるに当たって、しっかりと肉弾戦のアクションを描いて来た他、そこはかとない「胡散臭さ」も映画から感じられるようになっている。カラオケは日本発祥だけど、もしかしたら中国かなんかの文化と思われているのかもしれない。

 

それはともかくとして、本作にさらに要素が付け加えられるとすれば、それは「ファンタジー」とMCUにありそうでなかった「怪獣映画」だろう。

中盤、「私はハリー・ポッターやファンタスティック・ビーストでも観ているのだろうか?」という気にさせられたし、終盤はなかなかクライマックスらしいクライマックスがこないな・・・とうずうずしたところに、あの怪物VSドラゴンの激突である。カロリーが高い。

一足早く公開された『ザ・スーサイド・スクワッド "極”悪党、集結』が予告の時点で宇宙怪獣スターロをガンガンに登場させていた分、観客動員という意味ではちょっともったいない気もするが、知らずに観た私としてはビッグサプライズでもあり、「なんか大変なことになっているぞ」と大興奮できる展開でもあった。

 

てっきり、ムキムキの超強いおっさんが戦うだけの映画かと思ったぜ・・・やられたよ。

 

 

「ホワイトウォッシュ」への反省

本作はタイトルにもある通り、「テン・リングス」という組織が再び登場する。

「テン・リングス」は、本作に登場するヴィラン、ウェンウーが設立したテロ組織であるが、MCUにおける初出は『アイアンマン』に遡る。

MCU第1作『アイアンマン』において、主人公トニー・スタークを拉致・監禁した集団であり、『アイアンマン3』においては、そのリーダー・マンダリンが爆破テロを行なっている、という設定であった。

そう、これはあくまで設定なのである。『アイアンマン3』に登場する「テン・リングス」そしてそのリーダー「マンダリン」もどちらも偽物で、犯行予告に使われた映像で「マンダリン」を演じていたのは単なるイギリス人俳優・トレヴァー・スラッテリー、そして、彼に「マンダリン」を演じさせていたのはトニーに個人的な恨みを持つアメリカ人研究者、アルドリッチ・キリアンであった。

 

「テン・リングス」も「マンダリン」も、原作コミックで人気のヴィランだったこともあり、このいわゆる「スカし」の展開はコミックのファンからかなりの批判を受けた。

トレヴァー・スラッテリーを演じるベン・キングズレーはインド系イギリス人でアジア系ではあるが、真の黒幕であるキリアンはアメリカ人だ。(演じるガイ・ピアースはイギリス人)東洋をルーツに持つ「マンダリン」を白人が「演じさせる」というのは、ホワイトウォッシュに対する皮肉とも取れなくもない。

だがそもそも、コミックで人気だった中国人ヴィラン・マンダリンが、映画においてはハッタリでしかなく、その正体は白人だった、というのはホワイトウォッシュ以上の屈辱ではないだろうか。

 

この「偽マンダリン」に対する反発はかなり大きく、MCUではこれを弁明するために、『マーベルワンショット』というミニシリーズで、当時まだ姿を見せていない本物の「マンダリン」が、刑務所から「偽マンダリン」ことトレヴァー・スラッテリーを誘拐するという映画を作っている。『王は俺だ』という作品である。(『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』のボーナスコンテンツに収録)

 

『シャン・チー』において、「テン・リングス」を再び描きなおすというのは、ただの伏線回収ではない。

MCUが自ら犯した過ちである「偽マンダリン騒動」をホワイトウォッシュに抗う形で、尻拭いしているのが本作の肝でもある。

主要キャストをアジア系で固めたからこそ、この「反省」も、ある種の決意に見えてくる。

 

父と母、そして子

MCUではもはや定番になりつつあるが、本作もまた「父と子」が軸にある物語である。

本作のヴィラン、トニー・レオン演じるウェンウーは妻を亡くした恨みと悲しみから、退いていた闇の世界へ舞い戻り、復讐と亡き妻を取り戻すために世界を危機に陥れてしまう。ウェンウーの息子であるシャン・チーは、父を止めるために彼と戦うのである。

 

この構造は実に『スター・ウォーズ』旧三部作的であり、日本で言えば『エヴァンゲリオン』的でもある。

妻を亡くした悲しみで暴走する父を止める息子の物語。最強の父と、弱々しい(く見える)息子、息子の力を自分のものにしようとする父、といった要素がそっくりである。

これらが多くの作品で定番として描かれるのには、ひとえに冷徹非道なヴィランであるキャラクターに人間味を持たせることや、観客に同情の余地を与える効果があるからだろう。

 

ディズニーはつい最近『クルエラ』で「毒親に同情の余地なし」という映画をやったばかりだ。

愛する妻を失ったからとはいえ、息子を暗殺者に育て上げたヴィラン・ウェンウーは、誰がどう観ても「毒親」だ。

それでも、「妻が生きている間はいい父親だった」描写や、ウェンウーの最期、シャン・チーをかばう描写などで、「どれほどの悪人でも家族は大事」という表現を織り込んでいる。

 

中国を舞台として中国人をヴィランに据えているからこそ、ただの冷徹非道なキャラクターでは好ましく思われないと政治的判断が働いた可能性もなくはないだろうが、トニー・レオンの名演もあって、ウェンウーというキャラクターは実に魅力的になっている。

 

『シャン・チー』が描く「ありのまま」

冒頭で少し触れたが、この『シャン・チー』は、彼のアイデンティティにせまる物語でもある。

シャン・チーは父親のウェンウーに暗殺者として鍛え上げられ、その初の任務で実の母親を殺した相手を殺害するという任務を請け負う。そしてそれを、「実際に遂行してしまったこと」がトラウマとなり、単身アメリカに逃亡して、身分を偽って暮らすこととなる。

身分や自分の本来の姿を隠すこと、偽ることは「自身が何者であるか」の一時的な喪失でもある。それは同時に、癒しでもあるからこそ、しがないホテルの駐車場係という仕事でも過去の傷を癒しながら生きていくことができるのである。それもある意味では一つの処世術だろう。

 

それでも、シャン・チーという人間は、自分や、友人や、家族や、世界の危機において「立ち向かう力があるのに何もしないのは間違いである」ということを、本能的にわかっているのだろう。

これは「スパイダーマン」のシリーズで繰り返し語られる「大いなる力には、大いなる責任が伴う」の体現でもある。

自らが持つ力で誰かを守るということは、「自分が何者であるか」に改めて向き合うことだ。そして、「自分が何者であるか」と向き合うことは、自分が過去に犯した罪も、世界を闇に陥れんとする父の存在をも背負って、自分の一部であると受け入れるということである。

 

シャン・チーは、自分のもう一つのルーツである、母の故郷「ター・ロー」の探索を経て、自らの文化と力を改めて学び、そして「負の側面をも受け入れる」という訓示を受ける。

 

『クレイジー・リッチ!』や『フェアウェル』などで描かれたように、アジアとアメリカの文化の大きな違いから、自らのアイデンティティを模索し続けるアジア系アメリカン人たち。

彼らを主役とするこの映画は、自らのルーツがなんであろうとも、どういう組み合わせであろうとも、どれほどの闇に包まれていようとも、それぞれがそれぞれに、「自分は自分である」と認めていいのだと、メッセージを送ってくれている。

「アジア人」であることも、「アメリカ人」であることも、誇りに思っていい。

 

反省は教訓に、教訓は生きるための力になる。過去に囚われて行動できなくなることよりも、「過去をもとに、今どういう行動をするのか」こそが何よりも重要だと、この映画は教えてくれる。

 

クレイジー・リッチ! [Blu-ray]

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  • オークワフィナ
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まとめ

にしても、『シャン・チー』面白かった。

中国政府に対する忖度がないとは言えない作りだけど、それを超えてエンターテインメントにしてきたのは本当にすごい。そして結局検閲なのかなんなのか、こんだけやって中国で公開してもらえないというのもすごい。

 

深く考えなくてもいい作りにはなっているけど、うっすらと感じるメッセージはやはり「ありのまま」に集約される。ディズニーらしい作りの映画だなと思った。

 

そしてオークワフィナが良い。

今回紹介した『クレイジー・リッチ!』も『フェアウェル』もオークワフィナ出てるしね。全然違うテイストの映画だけど『フェアウェル』のオークワフィナはすごいぞ。

『クレイジー・リッチ!』にはミシェル・ヨーも出てる。

 

 

ベン・キングズレー演じるトレヴァー・スラッテリーの再登場も、しっかりクロスオーバーで伏線回収なのにオリジンの邪魔をしない超良いバランスだったし、あのキャラ自体も良くて超よかった。

アボミネーションとウォンはどういう経緯で仲良くあそこで喧嘩してたのか教えて欲しい。

 

とにかく、マーベル・シネマティック・ユニバースのフェーズ4、『ブラック・ウィドウ』で始まったけど、正直ブラック・ウィドウはフェーズ3までのキャラクターだし、もはやインフィニティ・サーガだと思うんだ。(素晴らしい映画だけど)

 

そういうわけで、『シャン・チー』は真の意味で「フェーズ4の始まり」を告げる映画だったような気がする。

楽しかったね。これからもわくわくするね。

 

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【MCUに出てくる楽曲まとめ その5】アイアンマン/スパイダーマン:ホームカミング

鬼クソひさしぶりですが、地味にアクセスのあるMCUで流れる既存曲紹介シリーズです。

 

なんでこの2作やねん、というと

とりあえずDisney+にないやつからやっていこうかなと思ったというだけです。

目次

 

アイアンマン

アイアンマン (2枚組) [Blu-ray]

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  • 発売日: 2009/03/18
  • メディア: Blu-ray
 

 武器商人の億万長者トニー・スタークはアフガニスタンで新作武器販売の交渉中にテロリスト集団に拉致される。致命傷ながら同じく捕虜にされていた医師ホー・インセンに一命を取り留められ、テロリストのために武器を作るふりをしながらパワードスーツを開発し、脱出に成功する。

自社の製造した武器が米軍だけではなくテロリストの手にも渡っていたことを知ったトニーは、責任を負うため武器の製造を取りやめ、テロリストの本拠地を破壊する自警団としてパワードスーツを着て戦うことを決意する。

 

監督はジョン・ファブロー。『アイアンマン』で一躍有名になりディズニープラスのスター・ウォーズドラマシリーズ『マンダロリアン』の脚本と製作総指揮を執り行っています。

本作の作曲家はラミン・ジャワディ。

ドラマ『プリズン・ブレイク』や映画『パシフィック・リム』などを手がけています。

Back In Black /  AC/DC

Back in Black (Dlx)

Back in Black (Dlx)

  • アーティスト:AC/DC
  • 発売日: 2003/02/18
  • メディア: CD
 

マーベル・シネマティック・ユニバースの始まりを告げる曲。

『スパイダーマン:ファーフロムホーム』にも使用され、「アイアンマンといえば」という曲になりましたね。

 

ちなみに『ファー・フロム・ホーム』でこの曲を聞いたピーターが「レッド・ツェッペリン!」っていうのは「単純にピーターが間違えてる」というだけのギャグ。

AC/DCもツェッペリンもイギリスを代表するハードロックバンド。

レッドツェッペリンは『マイティ・ソー/バトルロイヤル』で「移民の歌」が流れます。

Immigrant Song (Remaster)

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  • 発売日: 2015/11/06
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

Damn Kid / DJ boborobo

Damn Kid (Featured in Iron Man)

Damn Kid (Featured in Iron Man)

  • 発売日: 2008/08/01
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

トニーが賞を受けるときのパワポ(?)の裏で流れている曲。

 

Iron Man(Theme from the animated series) / John O'Brien and Rick Boston

アイアンマン

アイアンマン

  • 発売日: 2008/05/19
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

トニーがカジノで遊んでいるシーンはアニメ版アイアンマンのアレンジ曲。

元ネタも調べてみたけどわかんねぇや。

 

Institutionalaized / Suicidal Tendencies 

Suicidal Tendencies

Suicidal Tendencies

 

ワンナイト女性新聞記者クリスティン・エヴァハートを追い出した後、トニーが地下で車をいじっているときに流れる曲。

ハードコア。AC/DCとかBlack SabbathとかClashとか『アベンジャーズ』なり他の映画でトニーが来ているバンドTシャツから、トニーのパンク、ハードロック、ハードコア好きな音楽的趣味が透けて見えるような気がします。

って考えるとやっぱ『アイアンマン3』だけなんか違うんだよな。

 

Slept On Tony With Dirt(Explicit) / Ghostface Killah 

GhostDeini The Great (Bonus Tracks) [Explicit]

GhostDeini The Great (Bonus Tracks) [Explicit]

  • 発売日: 2016/06/07
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

トニーの自家用機でスチュワーデスがなんかエッチな感じになってるシーンで流れる曲です。

WikiによるとこのGhostface Killahというアーティストが別名「トニー・スターク」らしく、それこそ「IRON MAN」というアルバムも発表しているとか。当然映画より前(コミックの影響?)です。

Groovetronic / Terry Devine-King

Groovetronic

Groovetronic

  • 発売日: 2008/11/17
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

地下でアーマーの調整中(マーク3製造中)、「消防士家族基金」のニュースの裏で流れる曲。

音量激小さいからわかりづらい。

 

Kool Katz / Chucho Merchán

www.extrememusic.com上記リンクの7曲目。

 

「消防士家族基金」の慈善パーティでコールソンとトニーとの会話〜ペッパーとのダンスシーンで流れている曲。

 

チューチョ・メルシャンというかわいい名前のアーティストですが、ググるといかついヒゲのおじさんが出て来ます。

 曲自体はなかなかググっても出てこないんですが、いろいろ調べてみると、彼はピート・タウンゼント(ザ・フーのメンバー)のアルバム『アイアンマン』でロンドンフィルハーモニックオーケストラの指揮をやったとか、ベーシストとして参加しているとかなかなか興味深いことがwikiに書かれているんですよね・・・。

 

Licorice / Emanuel Kallins And Steve Skinner

www.firstcom.com上記リンクの17曲目。

 

「消防士家族基金」の慈善パーティで トニーとペッパーがダンスした後、トニーがバーでドリンクを注文するときに背後でかかっているときの曲。

ワンナイト女性新聞記者クリスティン・エヴァハートがグルミラでの情報を教えに来るシーンですね。

正直聞こえねぇ。

 

リコリスはハーブの一種で、海外でよくリコリス味のキャンディ(サルミアッキとか)が売ってたりするんですけど、クソマズ激苦で「タイヤの味」とか言われてたりします。

そうか、苦いニュースを伝えられてるからとか、そういうことか。

 

Iron Man / Black Sabbath

Paranoid (2009 Remastered Version)

Paranoid (2009 Remastered Version)

  • 発売日: 2017/03/01
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 エンディング曲。

ですが使用されているのはボーカルなしバージョン。

 

ブラックサバスはもう50年以上活動しているイギリスのロックバンド。

『アベンジャーズ』かなんかでトニーがTシャツ着てたりもしたので、トニーのお気に入りバンドであることは間違いないでしょう。

スパイダーマン:ホームカミング

 『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の後の出来事。

スパイダーマンことピーター・パーカーは、トニー・スタークからの次の依頼を待ちながら学生生活を送り、放課後は「親愛なる隣人」としてクイーンズの自転車泥棒を捕まえたりして過ごしていた。

ある日、銀行強盗を捕まえようとしたピーターは、アベンジャーズが戦った後の戦争ゴミから作られた兵器によって、地元に大損害を与えてしまう。

彼らを捕まえてトニー・スタークに認めてもらおうとするピーターだったが、機械仕掛けの翼で空を飛ぶヴィラン・ヴァルチャーが現れ、失敗してしまう。

 

本作の音楽は『アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン』や『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』『ジュラシック・ワールド』『Mr.インクレディブル』などがお馴染みのマイケル・ジアッキーノ。

 

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Can't You Hear Me Knocking / The Rolling Stones

 「8 years later」の直後。

戦争ゴミを利用してハイテク武器を開発するトゥームスの部下たちと、ヴァルチャーの初登場シーン。

 

ローリング・ストーンズは労働者階級のバンドって感じですよね。

曲は「俺がノックしているのが聞こえないのか?」という意味で、

なんとなく資本家たち(=トニー・スターク)に無視されている労働者(=トゥームス)の視点が表現されているように感じます。

 

『エージェント・オブ・シールド』の設定がもし生きているのであれば、チタウリの所有物は宇宙由来のウィルスがついてるので突然死する可能性があるよ、怖いね。

 

Theme From Spider Man (Orignal Television Series) / Michael Giacchino

マーベルスタジオロゴで流れる曲。

サントラに入っていると思いますが、元々はTVアニメ版スパイダーマンの曲をアレンジしたもの。 

 

The Underdog / Spoon

Ga Ga Ga Ga Ga

Ga Ga Ga Ga Ga

  • アーティスト:Spoon
  • 発売日: 2007/07/10
  • メディア: CD
 

ピーター・パーカーの登校シーンで流れる曲。彼が聴いている設定でしょうね。

 

Spoonはアメリカのインディーロックバンド。

そしてUnderdogは「負け犬」

アベンジャーズのように活躍できないピーターのフラストレーションを表した曲。

 

A Buena Vista / Soneros de Verdad

Soneros De Verdad

Soneros De Verdad

 

ピーターがサンドイッチとグミを買いに行く、デルマーのお店でかかっている曲。らしいですが正直全然聞こえません。

 

キューバ出身のルイス・フランク率いるバンド。

ちなみにデルマー氏を演じたヘムキー・マデーラさんはドミニカ共和国出身。

Blitzkrieg Bop / Ramones

RAMONES

RAMONES

  • アーティスト:RAMONES
  • 発売日: 2016/09/09
  • メディア: CD
 

序盤のスパイダーマンのクイーンズ人助けシーンで流れる曲。

また、エンディングでもう一度流れます。

 

ラモーンズのデビュー曲でもあり、初期衝動全開な感じがいいですね。

 

The Queens Community Bank Jingle / Andrea Datzman

全く聞こえませんが、銀行強盗シーンでATMコーナーで流れている曲、らしい。

 

クイーンズ・コミュニティ銀行はググっても出てこないので(おそらくニューヨーク・コミュニティ銀行がモデル)この曲もわざわざ作ったのでしょう。

しかし聞こえねーよ!

 

DJ フラッシュMIX

リズのパーティーでフラッシュがDJでかけている曲たち。

In The Air / Craig Craig

ピーターたちがちょうど家に入ったあたりで流れている曲。

ラップの部分じゃなく、間奏の部分をミックスしてかけている感じかな?

僕は素人ですが、フラッシュめちゃくちゃDJ上手いんじゃないだろうか

In the Air

In the Air

  • 発売日: 2019/02/13
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

Maximum Effort / Flipbois

ピーターたちがリズに会うあたりの曲。

 

Rise To The Top / Kil The Giant
Rise to the Top

Rise to the Top

  • 発売日: 2018/05/11
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 ピーターがスパイダースーツに着替えるときに流れる曲。正直わからん。

 

Do It Betta / Scip The Great

 ネッドがピーターに電話している際に背後でかかっている曲。わからん。

 

Aye Yo Gee / Ict Black
Aye Yo Gee

Aye Yo Gee

  • 発売日: 2018/11/30
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 「ペニス・パーカー」のコールらへんでかかっている曲。わからん。

Oh Yeah / Yello

Oh Yeah

Oh Yeah

  • 発売日: 2020/09/07
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

スパイダーマンがトゥームスの部下たちを追いかけるシーンで、民家のプールサイドで映画『フェリスはある朝突然に』が流れている。

その映画のBGMがこの曲。

そのまんまだけど、スパイダーマンが庭をぶち破りながら走るシーンはこの映画のパロディ。

 

フェリスはある朝突然に [Blu-ray]

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  • 発売日: 2019/04/24
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Going Up Country / Canned Heat

Going Up The Country (Remastered 2005)

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  • 発売日: 2005/05/24
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

全米学力大会に出るためワシントンD.Cへ向かうバスの中で流れる曲。

60年代の曲です。

 

Cineramascope / Galactic feat. Trombone Shorty and Carey Henry

Cineramascope feat. Trombone Shorty

Cineramascope feat. Trombone Shorty

  • 発売日: 2011/04/27
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 ワシントン記念塔の騒動の後、校内ニュースのBGMとして流れている曲。

 

La Consequencia / SWJ Mafia

ドナルド・グローヴァー演じるアーロン・デイヴィス登場シーンで流れる曲。

関係ないけど、ドナルド・グローヴァー自身もチャイルディッシュ・ガンビーノというヒップホップアーティストですね。

 

余談ですがアーロン・デイヴィスはスパイダーマンコミックや『スパイダーマン:スパイダーバース』において「プラウラー」というヴィランになる男。

「反重力クライマー」に反応したのがプラウラーが壁を登る怪人だから?

そして彼が語る「近くに住んでいる甥」は『スパイダーマン:スパイダーバース』主人公でお馴染みマイルス・モラレス。

この設定は今後どこまで有効活用されるのかな。

 

Save It For Later / The English Beat

Special Beat Service

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  • アーティスト:English Beat
  • 発売日: 2012/09/18
  • メディア: CD
 

リズとホームカミング・パーティーに行くことが決まり、メイおばさんと一緒に準備するときの曲。

80年代のヒットソング。

 

The English Beatは米国とカナダでのアーティスト名で、正式なバンド名はThe Beatだそうです、ややこしいな

 

The Low Spark of High Heeled Boys / Traffic

Low spark of high-heeled boys
 

パーティまで行く道中、トゥームスの車の中で流れる曲。

70年代の曲です。

 

Space Age Love Song / A Flock of Seagulls

A Flock Of Seagulls

A Flock Of Seagulls

 

 ホームカミングパーティーで流れる曲。

ニューウェーブ感漂う80年代UKロック。

フラック・オブ・シーガルズの代表曲は「I Run」で、映画『La La Land』にも使われました。

 

片思いの曲ですがI was falling loveと過去形になっているのが、

映画におけるピーターのリズへの気持ちとリンクします。

学園生活への別れ、そして決意の瞬間。

 

Flashdrv / Eugeane Thompson

フラッシュがホームカミングパーティーに女の子を乗せて向かうときにかかっている曲。フラッシュがドライブしているときの曲だから「フラッシュドライブ」

作曲は監督のジョン・ワッツ。

そしてフラッシュの本名はユージーン・トンプソン。

フラッシュ、ミュージシャンとしてかなり才能あるんじゃない?

 

Spider-Man: Homecoming (Original Motion Picture Soundtrack)

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  • 発売日: 2017/07/07
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MCUに出てくる楽曲まとめ

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『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』想定外の連発、スパイダーマンとMCUは新たなステージへ。

Spider-Man: Far from Home (Original Motion Picture Soundtrack)

 

期待値を超えてくる映画っていうのは本当に存在する。

『アベンジャーズ/エンドゲーム』という、シリーズ史上最高、そして全世界の映画史上最高の売り上げに今にも辿りつかんとする勢いの作品の、まさに直後のシリーズ最新作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』

正直『エンドゲーム』により、今後の展開に期待が高まった勢よりも、『エンドゲーム』により燃え尽きて、今後の展開に不安しか抱かない人達の方が多かったんじゃないだろうか。

なんせシリーズ最新作は『スパイダーマン』である。

前作『ホームカミング』は一部MCUディープファン的には比較的低評価で、スパイダーマンというキャラクターこそ抜群の知名度を誇れど、アイアンマン、ソー、キャプテン・アメリカ、ハルクなどの強力すぎるアベンジャーズの面々に加わると、まだ戦闘経験の少ない、ちょっと頼りない16歳の少年になってしまう。

 

シリーズとしては間違いなく『エンドゲーム』がピークであり、シリーズを支えたジョー&アンソニー・ルッソ兄弟監督もシリーズから離れた。今後の展開を何も考えずに終わらせることだけを目的として『エンドゲーム』は作られた。

そんなパスを受けたジョン・ワッツ監督や製作陣は、どう『ファー・フロム・ホーム』を作ったのか。

 

 

※この記事は現在公開中の映画『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』のネタバレを含みます。

 

 

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何だかんだ言って『スパイダーマン:ホームカミング』は良かったと思うのよ。

スパイダーマン:ホームカミング (字幕版)

 

僕みたいな、アメコミをきちんと読んできたわけではないミレニアル世代にとって、一番親しまれたアメコミヒーローってやっぱりスパイダーマンだと思う。

 

ティム・バートン版『バットマン』が1989年でちょうど僕の生まれた年。

クリストファー・ノーランの『バットマン・ビギンズ』が2005年、『ダークナイト』で社会現象となるのが2012年。ジョン・ファヴロー『アイアンマン』でMCUがスタートするのが2008年だけど、MCU開始当初は日本では客入りが芳しくなかったのはよく言われている通り。

2000年に『X-men』が公開されているので、映画好き・アメコミ好きな友人たちはそれらも追いかけていたけど、社会現象となるほどにヒットした作品といえば2002年のサム・ライミ版『スパイダーマン』になってくると思う。

2002年といえばちょうど中学生くらいの頃。ライミ版『スパイダーマン』は幾度となくテレビ放送されていて、映画館で見たことがなかった僕らでもみんな知っていた。

関西在住の僕としては、2004年にユニバーサル・スタジオ・ジャパンに『アメージング・アドベンチャー・オブ・スパイダーマン・ザ・ライド』がオープンしたことにも、スパイダーマンを身近に感じるきっかけになっていたと思う。

 

僕らの世代にとっては、一般人でも映画好きでなくても「格好良さも生い立ちもヒーローになったきっかけも知っている」ヒーローがスパイダーマンである。

 

そんな『スパイダーマン』映画の最新作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』が6月28日に世界に先駆け日本で先行公開される。

今回はその前作『スパイターマン:ホームカミング』について話そう。

 

目次

 

いびつなヒーローオリジン

ヒーロー映画のシリーズ第1作は、主人公がどうやってヒーローのなるのかを描く「オリジン映画」から始まることが多い。

前述した『バットマン・ビギンズ』や『アイアンマン』などはもちろんMCUの主要ヒーローたちはほぼオリジンが描かれたし、サム・ライミ版『スパイダーマン』もマーク・ウェブ版『アメイジング・スパイダーマン』も第1作はどのように能力を得てヒーローになるかが描かれる。

もちろん例外もあり、複数のヒーローたちが登場する『X-men』シリーズは主人公ローガンがなぜその能力を得たのかをシリーズの一つの大きな謎として描くことで個人のオリジン描写を省きつつ、様々なキャラクターたちを共演させることに成功し、主人公ひとりではないヒーローチーム『X-men』としてのスタートを描いている。

 

ではこの『スパイダーマン:ホームカミング』はどうかというと、そもそもMCU世界のスパイダーマンのデビュー作は『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』なのである。

メインタイトルではないクロスオーバー映画にサプライズゲスト的な出演を果たしたスパイダーマンの「どうやって能力を得たか」「なぜヒーローになったのか」は数分のシーンでさらっと説明されるのみに留まる。

過去5作に渡り『スパイダーマン』が映画で描かれてきたことを逆手に取り、繰り返しになるオリジン描写を省き、その尺を使ってすぐさまMCU世界のストーリーへと視聴者を引き込ませる作りはいびつでありながらも軽快さに溢れていて見やすい。

それでありながら主人公スパイダーマン/ピーター・パーカーが「真のヒーローとして腹を括る」という精神面でのヒーローオリジンとしての要素もうまく取り入れている。

 

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軽快で甘酸っぱい語り口

『スパイダーマン:ホームカミング』は全体的に「明るいヒーロー映画」が多いMCUの中でも明るめの作風である。(『ガーディアンズ〜』や『アントマン』には敵わないが)

『キャプテン・アメリカ/シビルウォー』以降アベンジャーズたちがバラバラになり、クライマックスへ向けての鈍重な雰囲気が漂い始めたMCUのなかで、『ホームカミング』が描くものはズバリ、ティーンの学園生活とヒーロー世界の中で生きる一般人・弱者たちの姿である。

 

それこそ『シビルウォー』で描かれる「ソコヴィア協定」の直接原因になったように、世界を守るためのヒーロー活動による、二次的な被害を直接被るのは一般市民である。

世界を守るための活動が人々の生活を脅かし、恨みや貧困から新たな悪を生んでしまう。それをよりミニマルな視点で描いたのがこの『ホームカミング』である。

MCUの映画というよりはMCUスピンオフドラマの『エージェント・オブ・シールド』的であるこの手法を、誰もが知るスパイダーマンというキャラクターに用いることにより、宇宙からの脅威だとか世界の危機以前に、彼が自称「親愛なる隣人」であることを意識づけることに成功しいるほか、彼がただ悪を罰するだけでなく「救い」を与える存在であるという、ちょっと青臭く10代らしい爽やかさを描いている。

 

そして「学園生活」である。

過去の『スパイダーマン』映画シリーズは役者が成熟していたためか、学園生活の描写は短いシーンにまとめられることが多かった。

『ホームカミング』ではヒーロー業に加えてピーターの学園生活がしっかりと描かれるほか、歴代映画と同じように恋愛も描かれる。

どれほど強くてイケてるヒーローであっても、その正体は誰にも知られてはいけない。(一部の人には知られているが)

学校では好きな子にまともに話しかけられないような、ウブでダサい奴なピーター。家は貧乏だし、親友はイケてるとは言い難いふとっちょのオタク。憧れの子は大きな家でパーティー、クラスメイトは親の高級車を乗り回し、パーティーでピーターをイジりながらDJ。

そんな日常生活&恋愛とヒーロー業との葛藤は、スーパーパワーを持っていない我々でもわかるほどに甘酸っぱい青春映画に仕上がっている。

 

そしてこの軽快な語り口と、アットホームな学園生活描写を逆手に取ったクライマックスの展開は衝撃的で、あの「驚き」は劇場で体験した時に思わず声が出そうになったくらいだ。

それがあるからこそ、その後のピーターの「ヒーローとして意思を固める」シーンが映え、その決意に震える。

ヒーローとして生きることは周囲の人間に危害が及ぶ可能性があるというのは、これまでも『スパイダーマン』映画で幾度となく言及されてきた通りで、それを言い表す劇中の有名な言葉に「大いなる力には、大いなる責任が伴う」というものがある。

『ホームカミング』はスパイダーマンのオリジンを描かず、この言葉も登場しないが、主人公ピーターの生き様を見れば、その精神が踏襲されていることは目に明らかである。

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スパイダーマン (字幕版)
 

 

 謎が謎を呼ぶ「時系列問題」

だから、僕は『スパイダーマン:ホームカミング』が大好きだし、いい映画だと思うのだ。

もちろん『アベンジャーズ』のシリーズや『シビル・ウォー』などと比べるとスケールが格段に下がり実にミニマルで、『アベンジャーズ』シリーズに繋がる重大な伏線を期待するようなファンの中には「今このタイミングでこの話やる必要ある?」という人がいるのも事実だ。『アントマン』のシリーズや『キャプテン・マーベル』などもそういう面で槍玉に上がりがちである。

そういう面白さはわかりつつも、僕自身は単独ヒーロー映画は単独ヒーロー映画として基本的には評価したいし、それを鑑みると『ホームカミング』は十分アリな作品だと思う。

 

一方で物議を醸して当然、と言える部分もある。それが「時系列問題」である。

同じ世界観を共有するMCUというシリーズのうちの1作でありながら、本作は『アベンジャーズ』の8年後として劇中で記される。

8年後。『アベンジャーズ』のニューヨークの戦いは2012年の出来事として描かれているため、8年後は2020年。

 

一方で『ホームカミング』は『シビル・ウォー』の2ヶ月後という言及も劇中で描かれている。『シビル・ウォー』が勃発したのは2016年である。シビル・ウォーが冬が舞台だとすれば、その2ヶ月後で2017年の可能性もあるが、それを考慮しても3年近いタイムラグが存在する。

これは矛盾ではないのか?

 

この解釈は、マーベルスタジオ社長ケヴィン・ファイギは「間違っていない」としているが、一方で『シビル・ウォー』や『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ/エンドゲーム』を監督したジョー・ルッソ監督は間違いだと発言しているとのことである。

theriver.jp

 

ただし、現在公開中の『エンドゲーム』の出来事や、最新作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』で起きるであろう出来事を鑑みると、もしかすると超ミラクルが起きてこの矛盾が解消される可能性も無きにしもあらずで、謎が謎を呼ぶといった状態だ。

いや、社長や監督が「間違えました」とさらっと言ってくれてblu-rayで修正していてくれれば、すくなくとも僕は普通に受け入れるんですけど。ミラクル伏線回収できるのであればそれはそれで観たいです。

 

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圧倒的映像美と情報量のジレンマ『ドクター・ストレンジ』

ドクター・ストレンジ (字幕版)

 

人生初のIMAX 3D体験は『ドクター・ストレンジ』だった。

マーベル・シネマティック・ユニバース第14作目。『アベンジャーズ』映画はすでに2作作られ、その鉄壁と思われていたチームは『シビルウォー/キャプテン・アメリカ』で崩壊する。ヴィジョン、スカーレットウィッチ、アントマン、ブラックパンサー、スパイダーマンなどの、フェーズ3以降を担う新たなるヒーローたち登場の後、続く『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー 』や『エンドゲーム』へのある種切り札となる存在として登場したのが彼、ドクター・ストレンジである。

 

サイケデリックで驚異的な映像美、今まで西洋中心だったMCU(『エイジ・オブ・ウルトロン』には韓国や南アフリカも登場したが)の舞台を東洋へと向け、オリエンタルな要素を取り入れた世界観・・・。

この作品の魅力は語りつくせないが、意外にもMCUのシリーズにおいては比較的評価が低い作品とも思える。

メガヒット連発で傑作揃いのMCUにおいて、クオリティが高いヒーロー単独作品が相対的に評価が下がってしまうのは仕方がない。

『ドクター・ストレンジ』地上波公開直前ということで、本作を改めて振り返りたい。

 

目次

 

あらすじ

ニューヨークに住む、神の手を持つ天才外科医ドクター・スティーブン・ストレンジは脇見運転が原因の事故により、その両手の機能を著しく損傷してしまう。

外科医としての名声に拘るストレンジは様々な治療法を試すも、有効な方法は見つからない。財産のほとんどを使い果たし、八方ふさがりとなった彼は、藁にもすがる思いで噂に聞いたネパール、カトマンズの「カマー・タージ」と呼ばれる寺院を訪れる。

ストレンジはカマー・タージで謎の女性指導者エンシェント・ワンに出会い、魔術による未知なる世界「多次元宇宙(マルチバース)」を見せつけられ、彼女に弟子入りすることとなる。

独自の記憶力、学習能力と旺盛な好奇心により魔術師としての能力を徐々に開花させていくストレンジは、次第に魔術の闇の側面とかつてカマー・タージを襲った魔術師変えシリウスの存在を知ることとなる。 

ドクター・ストレンジ MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー+MovieNEXワールド] [Blu-ray]

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ドクター・ストレンジが切り開く新たな世界

『ドクター・ストレンジ』という作品はマーベル・シネマティック・ユニバースにおいて、「魔術」という側面から新たな世界を切り開いた。

それまでの作品にもロキ、ヴィジョンやスカーレットウィッチなどの魔法のような能力を使うキャラクターは数多く登場してきたが、ロキは宇宙のアスガルド育ち、ヴィジョンは人造人間でスカーレットウィッチ改造人間。どちらも宇宙由来の「インフィニティストーン」のひとつマインドストーンからその能力を得ている。

一方ドクター・ストレンジは生まれも育ちも地球の一般人で、彼が操る魔術の由来は「多元宇宙(マルチバース)」からである。

多元宇宙に関しては劇中多くの言及がなされるが、どうやら「現実世界とは異なる別次元の世界」というもののようで、彼ら魔術師たちは魔法陣を描くことにより現実世界より力を得て魔術を操るのだそうである。

 

医師という職業柄、極めて現実主義であるストレンジが、カマー・タージの指導者エンシェント・ワンと出会うことで多元宇宙という異次元を認識し、魔術を習得していく。

 

また『ドクター・ストレンジ』はマーベル・シネマティック・ユニバース初参戦の新入りヒーローのオリジンストーリーとなっているため、『アベンジャーズ』などセリフでの言及はあるものの基本的には他のヒーローが登場しない完全なる単独作としてもk楽しめるかなり初心者向きの作りとなっている。

圧倒的映像美

 映画『ドクター・ストレンジ』において特筆すべきところはやはり圧倒的な映像美であろう。

特に多元宇宙の描写は、それこそストレンジが劇中エンシェント・ワンに問いかけるような「LSDを盛られた」かのようなサイケデリック描写が強烈に脳裏に焼きつくとてつもないシーンとなっている。

カマー・タージが存在するカトマンズや、香港サンクタム周辺のオリエンタルな風景も魅力的だ。

これらは原作コミックスのサイケデリック表現を原点とし、『マトリックス』や『インセプション』からヒントを得たと言われる。

 

また原作コミックスを忠実に再現した、ドクター・ストレンジやエンシェント・ワン、カエシリウスなどの「誰がどう見ても魔法使い」なコスプレ的な風貌を見事に現実世界に溶け込ませる役者陣の演技、そしてストーリーテリングに圧倒される。それらどこか一つでも欠けていれば一気に嘘くさくなるだろう。

特にティルダ・スウィントン演じるエンシェント・ワンの実在感は異様なほどで、彼女の全能感、そして時間を超越していると信じ込んでしまいそうな美しさとその裏の奥行きは言葉では言いつくせない。

 

ヒーローコミックスという説得力の薄い素材をどこまで観客に信じ込ませるかという挑戦において、マーベル・シネマティック・ユニバースは本当に群を抜いている。

インセプション (字幕版)

インセプション (字幕版)

 

 

説明過多なのに説明放棄

一方でイマイチな点もある。

「多元宇宙(マルチバース)」という概念は本作『ドクター・ストレンジ』で初登場した概念であり、本作ではそれらの説明に加え彼らが操る魔術、アガモットの眼(=タイムストーン)の力と危険性、エンシェント・ワンの謎、宿敵カエシリウスの存在、ミラー・ディメンション、ダーク・ディメンション、そしてドルマムゥなど、本編115分という短い時間の中で多くの事柄について解説される。これらは『アイアンマン』や『キャプテン・アメリカ』のような作品とは大きく異なる。

またそれらの説明的なシークエンスと、前述した圧倒的な映像シークエンスがそれぞれ独立した部分が多く、せっかくの視覚的な説得力をイマイチ活かしきれていない気がしてしまう。語りの部分は動きも少なく淡々と話し続けるなど、情報量の割に頭に入って来ず印象に残りづらい。

説明量が他の作品に比べて多いとはいえ、演出的な部分で、例えば宇宙から来た神のような存在を描いた『マイティ・ソー』や、量子世界を描いた『アントマン』のように説明を簡略化・ないし省略し軽快に見せることもできたのではないかと思ってしまう。

何と言っても、この作品の多元宇宙に関する会話を全て整理してみても多元宇に関しては到底理解できそうもなく、エンシェント・ワンも「理解できなくて当然」「理解する必要もない」と言ってしまうのだから、ならばもっとシンプルにさせてしまっても良いのではないかという印象を受ける。

多くの映画レビューで「映像の割に中身がない」と言われてしまうのも、こういう「長々と語った割に最終的に説明放棄」する部分にあるのではないかと思う。

 

ストレンジの戦いはこれから

本作でストレンジは天才外科医から魔術師として大きく成長するが、もともと天才的な学習能力の持ち主なので、映画ではあっという間に魔術を習得してしまう。

一方で戦闘に関してはその時々の運の良さや、たまたまあった道具や設備を活用して勝利を導くパターンが多く、彼の魔術師としての力量は「アガモットの眼を使用できる」という部分以外に見いだすことが難しい。初見では「アガモットの眼」のスペックもイマイチよくわからないので、ストレンジが本当に強いのかどうか気づけないだろう。

またヴィランを強力にしすぎた結果、ある種チートな解決法で戦いを終わらせてしまう。そのやり方も「知恵を武器にした」と言えば聞こえは良いが、かっこいい戦闘を期待していた観客にはがっかりだったろう。

 

そんな不満を一気に解消してくれたのがジョー&アンソニー・ルッソ兄弟が監督を務めた『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』である。

『インフィニティ・ウォー』において『アベンジャーズ』シリーズに初参戦したドクター・ストレンジは、全宇宙最強の敵サノス相手に互角とも言える戦闘を繰り広げるだけではなく、魔術を活用した様々な戦い方を見せてくれる。

『ドクター・ストレンジ』での彼はまだまだ序の口でしかなく、さらに大きく成長した彼の姿を見れるのだ。本作では世界観の表現に拘った結果、ドクター・ストレンジという魅力的な素材を完全に活かしきれていなかったと言っても良い。

 

そして『インフィニティ・ウォー』のおかげで、今後製作されるであろう『ドクター・ストレンジ』の続編は大いにハードルが上がっている。『インフィニティ・ウォー』のルッソ兄弟のような神がかった戦闘アクションシーンを構築するのは難しいとしても、本作と同レベルのアクションではファンは納得しないだろう。

スコット・デリクソン監督はそんな我々の期待に応えてくれるのか否か、非常に楽しみである。 

 

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無印/アメスパ/MCU/スパイダーバース…ややこしい4種類の『スパイダーマン』映画の話。

『スパイダーマン:ホームカミング』初の地上波放送!と『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』日本先行上映決定!と先日アカデミー賞長編アニメーション部門受賞した『スパイダーマン:スパイダーバース』のblu-ray発売決定!とスパイダーマン映画が盛り上がりつつある昨今。

『スパイダーマン:ホームカミング』を再評価する記事を書こうと思っていたのだけどその前にハリウッドに溢れるスパイダーマン映画について、あまりよくわかっていない方のために説明してもいいのかなと思って書くことにした。

 

こういう記事は巷にたくさんあふれているけど、自分の理解を深めるためにも新たに書き残しておくのは意味があると思いまして。

 

これを理解することにより

↓この記事とかもちょっとわかりやすくなるんじゃないかな。

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目次

マーベルの倒産・再始動・映画化権の販売

今でこそ日本でも知らない人がほとんどいなくなったマーベル・コミックスだが(一部の人にはファッションブランドと勘違いされてるっぽいが)実は1997年、20年前という比較的最近に、経営難で一度倒産している。

会社を立て直したマーベルは資金を得るためにとある暴挙に出る。

それが「マーベルキャラクターの映画化権の販売」である。

 

これにより「X-men」「ファンタスティック・フォー」などが20世紀FOXへ。

「ハルク」がユニバーサル・スタジオへ。

そして「スパイダーマン」がソニー・ピクチャーズへと権利が売買される。

 

 

マーベルは同時に「アイアンマン」などのキャラクターも販売しようと交渉していたが知名度の関係から購入する会社はなかったようである。(これが後に功を奏する)

X-MEN (字幕版)
ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]  (字幕版)
ハルク (吹替版)

サム・ライミ版『スパイダーマン』シリーズ 2002〜2007

スパイダーマン (字幕版)
スパイダーマン2 (字幕版)
スパイダーマン3 (字幕版)

そして2002年にソニー・ピクチャーズにより製作されたのが最初の『スパイダーマン』映画シリーズである。

監督は『死霊のはらわた』などのホラー映画出身のサム・ライミ。(そのため「ライミ版」などと呼ばれる)主演はトビー・マグワイヤがスパイダーマン=ピーター・パーカーを演じ、ヒロインはキルスティン・ダンストがメリー・ジェーン"MJ"・ワトソンを演じる。

それまでは実現不可能だったCG映像技術により、マンハッタンの摩天楼を縦横無尽に飛び回る姿が話題を呼んだ。またコメディ要素も多く含み、「ヒーローとしての生活と日常生活・恋愛との両立」など原作にも通じるティーンの葛藤を描き人気を博し、内容的にも高い評価を受け「名作」と呼ばれることも多い。ピーターとピーターの親友ハリー・オズボーン(ジェームズ・フランコ)の間で行ったり来たりを繰り返すヒロインのMJのビッチぶりも話題となり、ここまで嫌われたヒーロー映画のヒロインもそうそういないんじゃないかと思われる。

また『スパイダーマン2』では監督の特性が生きたホラー風の演出が登場するなど作品の特徴もある。

 

この映画は世界的なヒットを産み、先に公開された2000年の20世紀FOX『X-men』とともに「アメコミ映画ブーム」をもたらす。日本でも何度も地上波放送されていたのでこの『スパイダーマン』を知っている人は多いだろう。

各社揃って『ファンタスティック・フォー』『ハルク』『デアデビル』『パニッシャー』『エレクトラ』など様々なマーベルコミックス原作の映画を製作するも、ほとんどは映画としての爆発的ヒットには至らず、持続的に続編が作られたのはこの『スパイダーマン』と現在まで続く『X-men』のシリーズぐらいだった。

 

映画は3作作られ「追加でもう3作作って6部作にしない?」と計画されたがサム・ライミ監督が辞退。主演のトビーもさすがに「若者」を演じる歳ではなくなってきたこともあり、企画は途中まで進むものの打ち切りになり、設定を新しくして始めからやり直すリブート作品として『アメイジング・スパイダーマン』シリーズが始動する。

(ちなみに途中まで製作が進んでいた『スパイダーマン4』のヴィランはヴァルチャーだったらしい)

 

死霊のはらわた (字幕版)

死霊のはらわた (字幕版)

 

 

ちなみにこの時期のディズニーは何をやっていたかというと、経営陣の派閥争いや交代のゴタゴタ、提携していたピクサーの好調と裏腹に天下のアニメーション部門は暗黒期に突入し。テーマパーク部門でカリフォルニア・パリ・東京に「第2パーク」をオープンするも(フランチャイズの東京以外は)予算が少なく業績不振、かろうじて実写映画の『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズが大ヒットしているという状況だった。

 

マーク・ウェブ版『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ 2012年〜2014年

アメイジング・スパイダーマン (字幕版)
アメイジング・スパイダーマン2 (字幕版)

 製作が進んでいた『スパイダーマン4』のサム・ライミ監督辞退を受け、これまでのシリーズを一旦白紙にして再始動するリブート作としてスタートしたのがこの『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ。

監督は『(500)日のサマー』で一躍有名となったマーク・ウェブ監督。『アメスパ』以降は『ギフテッド』などを製作、なんとハリウッド版『君の名は。』の監督にも任命された。

主演は『ソーシャル・ネットワーク』『ハクソー・リッジ』などのアンドリュー・ガーフィールドがピーター・パーカーを演じ、ヒロインには『ラ・ラ・ランド』『女王陛下のお気に入り』のエマ・ストーンがグウェン・ステイシーを演じる。共演後、ガチで付き合い始めたというのだからかなりお似合いの演技が観れるのもこの映画の醍醐味である(すでに破局)

コスチュームはよりギラギラ感が増し、蜘蛛の力で指から糸が出た前作とは異なりピーター自身がウェブシューターを開発する科学者としての一面も見せる。ピーター・パーカーの両親の「謎の死」について追求したりとミステリー要素もある、前シリーズよりもダークでシリアスとかなり毛色が違いながらも、恋愛ドラマを得意とするマーク・ウェブ監督ならではのストーリー描写も魅力的で根強いファンが多いのも本作だ。

 

 

 

一方で2008年にスタートした『アイアンマン』から始まる一連のシリーズ『マーベル・シネマティック・ユニバース』が2012年『アベンジャーズ』で人気が爆発、また同じく2008年はクリストファー・ノーラン監督によるバットマン(マーベルのライバル会社DCコミックス原作)のシリーズ2作目『ダークナイト』が大ヒットし、2012年はシリーズ完結作『ダークナイト・ライジング』が公開。

マーベルもDCも切磋琢磨しながらアメコミ映画ブームがより本格化するなかで『アメイジング・スパイダーマン』シリーズは当初ソニーが予想していたヒットには及ばず、3部作で予定されていたシリーズを2作で終了してしまう。

 

 

アイアンマン(字幕版)
アベンジャーズ (字幕版)
ダークナイト (字幕版)
ダークナイト ライジング (字幕版)

 

補足:DCコミックス 

DC 5フィルムコレクション(初回仕様/5枚組) [Blu-ray]

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 DCコミックスはマーベルのライバル(決して喧嘩しているわけではない)のヒーローコミック会社であるとだけ覚えていただければOK。

歴史的にはマーベル社よりも数年歴史が古く、スーパーマンとバットマンという超有名2大キャラクターを抱えている。DC自体がワーナー・ブラザースの完全子会社のため、早くからメディア展開で成功して現在の知名度と人気ぶりを得ている。

2005年〜2012年にクリストファー・ノーランの『ダークナイト』三部作が内容的にも興行成績的にも高い評価を得るも、その後リブートしMCUの後追いをする形でユニバース展開をしたためにいろいろとしっちゃかめっちゃかになっている印象。

オススメは『ワンダーウーマン』『ジャスティス・リーグ』『アクアマン』そして現在『シャザム!』が劇場公開中(もうすぐ終わっちゃうよ!)

(観たことなくて恐縮ですが『バットマンVSスーパーマン』もファンには人気が高いです)

 

 『マーベル・シネマティック・ユニバース』2008年〜

 

マイティ・ソー/ダーク・ワールド(字幕版)
アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン (字幕版)
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(字幕版)
ブラックパンサー (字幕版)

 1990年代後半にマーベルがいろんな会社に映画化権を販売したのは最初にお話しした通り。

『スパイダーマン』や『X-men』の映画の大ヒットのおかげで経営も安定したマーベルは大きな賭けに出る。

「マーベルがマーベル自身で映画を作ったら?」

ここからスタートしたのが映画制作会社「マーベルスタジオ」

しかしながら人気のヒーローたちはとうの昔に他の映画会社に権利を売ってしまったため、残ったのはアイアンマンやソーなど、コミックファンしか知らないようなキャラクターばかり。

一方でコミックを知り尽くしたスタッフらが全力を尽くして製作することで映画はとてつもないスケールで、そしてとてつもないディテールで完成する。

『アイアンマン』のエンドロール後、突如現れたS.H.I.E.L.D.長官ニック・フューリーにより『アベンジャーズ』計画が語られ、様々なヒーローたちが同じ世界観で活躍する『マーベル・シネマティック・ユニバース』(Marvel Cinematic Universe:MCU)が爆誕する。

 

その後のシリーズの大盛況ぶりはご存知の通りである。

2009年にはマーベルコミックス自体がディズニーに買収され、コミックスの制作から映画制作・宣伝・配給・グッズ・テーマパーク展開に到るまでまで絶大な拡散力をもつようになる。

『ハルク』は権利をユニバーサルに残したまま『インクレディブル・ハルク』としてリブートされ、(映画ではなくドラマで展開されたが)『デアデビル』『パニッシャー』『エレクトラ』『ゴーストライダー』などの権利もマーベルの元へと戻ってきた。

 

そして2016年『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で"彼"が帰ってくる。

 

MCU版『スパイダーマン』2016年〜

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ (字幕版)
スパイダーマン:ホームカミング (字幕版)
アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー (字幕版)

2016年、アベンジャーズが2陣営に分かれて衝突する、コミックスでも人気のイベント『シビル・ウォー』がキャプテン・アメリカシリーズの最終作として実写映画化される。

この映画にはそれまで『アベンジャーズ』シリーズに登場したキャラクターに加え、ウィンター・ソルジャー、アントマン、そして本作初登場のブラックパンサー、さらに今まで権利上の都合で登場が絶望視されていたスパイダーマンが登場する。

 

本作でスパイダーマン=ピーター・パーカーを演じるのはトム・ホランド。

10代に見える若々しさと、止まらないおしゃべりはいかにもコミックスのスパイダーマンと言った感じであり、蜘蛛の糸は自ら開発したウェブシューターからという高校生ながら科学者要素も持ち合わせている。無印の『スパイダーマン』と『アメイジングスパイダーマン』のハイブリットのようなキャラクター性に加えて、アイアンマン=トニースタークが開発したスーツを身につけるという無敵感。

単独映画が過去に2回も作られた経緯から「もう説明しなくてもスパイダーマンは知ってるよね?」という大前提で進むテンポの良さと、過去作であれだけ必死に隠してきた正体がトニー・スタークにバレ(てい)るところが初登場シーンという意外性もあり、「馴染みがあるのに新しい」というめちゃくちゃバランスのいいスパイダーマンが誕生した。

 

『アベンジャーズ』や『シビルウォー』の後日譚的な軽快さで彼のヒーロー活動と日常生活での葛藤を描いた『スパイダーマン:ホームカミング』は制作マーベル・スタジオ(ディズニー)、配給ソニー・ピクチャーズにより2017年に公開された。

監督はジョン・ワッツ。

本作には『アイアンマン』のトニー・スターク、ハッピー・ホーガンなども登場し、配給は別ながらもMCU作品のひとつとしてしっかり位置付けられている。

 

また『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ/エンドゲーム』にもスパイダーマンは再度登場し、6月28日日本公開予定の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』以降はアベンジャーズに変わる新ヒーローチームのリーダーとして、MCUの中核を担う存在になるのではと予想されている。

 

 

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スパイダーマン:スパイダーバース 2018年

アート・オブ・スパイダーマン:スパイダーバース (SPACE SHOWER BOOKS)

そして2018年(日本では2019年)に公開されたばかりの『スパイダーマン:スパイダーバース』配給はソニー・ピクチャーズ。

監督はボブ・ペルシケッティ/ピーター・ラムジー/ロドニー・ロスマン。制作に『レゴ・ムービー』を大ヒットさせたフィル・ロードとクリストファー・ミラーが参加している。

こちらは他の『スパイダーマン』映画と大きく違うのは「アニメ映画」だというところで、あまり混乱はしないと思う。

 

当然これまでのスパイダーマン映画とは設定が異なる。主人公はピーター・パーカーの意思を継ぎ2代目スパイダーマンとなったマイルス・モラレスである。

CGと手描き、そしてアニメ的表現とコミック的表現をミックスし、今までにない映像表現を生み出した他、ストーリーとしても歴代のスパイダーマン映画に劣らない完成度で「スパイダーマン映画至上最高傑作」と言わしめる作品である。

1作のみで容易に見れる映画でありながら、これまで歴代のスパイダーマン映画を楽しんできた層にもビビッとくる要素も盛りだくさん、そしてなによりこの記事で説明しているような「スパイダーマン映画っていろいろあってわけわかんないよね」という状況を逆手に取った作りになっており、この複雑な「スパイダーマン事情」の説明にもなっているというとんでもない映画である。

 

 ↓作品レビュー

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おまけ:『ヴェノム』

ヴェノム (字幕版)

『スパイダーマン』の映画化権を持っているソニー・ピクチャーズは、同時に『スパイダーマン』に登場するキャラクターたちの権利も持っている。

ということでスピンオフ的な立ち位置で登場したのがスパイダーマンに登場する悪役『ヴェノム』をダークヒーローとして主人公にしたこの映画。(『スパイダーマン3』に悪役として登場もしているが、もちろん設定はリセットされている)

監督はルーベン・フライシャー。主人公エディ・ブロックをトム・ハーディが演じる。

 

スパイダーマンは登場しないものの、ソニー的には「続編でトム・ホランドのスパイダーマンと共演させたい」意思も少しはあるようで、果たして今後どういう立ち位置になってくるかは謎。

エンドロール後には『スパイダーバース』の特別映像も流れ、本当に何がしたかったのか読めず混乱してしまった。

「ソニーズ・ユニバース・オブ・マーベル・キャラクター」としてユニバース構想があり、スパイダーマンの悪役たちがチームを組む『シニスター・シックス』の映画化企画もあるようで今後の展開は見ものだが、DCコミックスのユニバースみたいに中途半端にならないかだけが不安である。

 

スパイダーマン映画はややこしい

と、いうわけで巷にあふれるスパイダーマン映画についてまとめてみた。

結果余計ややこしくなったかもしれないが、早い話が「スパイダーマンはいっぱいいるよ」ということなのである。

twitterで話題になっていたが「『金田一少年の事件簿』がドラマ化されるたびに配役が変わるのと一緒」というのがまさにその通り。

それぞれの映画にそれぞれの良さがあり、ヒットしたりしなかったりこそするものの、そのどれもがクオリティの高い作品ばかりなので見て損することはないと思って間違いない。

 

今度地上波放送される『スパイダーマン:ホームカミング』や劇場公開される『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』は前述の通りMCUスパイダーマンのため、スパイダーマンのあれこれを追いかける以上にMCUの前提知識が必要な部分があるのでかなりハードルが高いが、スパイダーマン以上にマーベル映画作品を楽しむきっかけにもなると思う。

 

ただ今の所一番おすすめしたいのは『スパイダーマン:スパイダーバース』

アニメ映画としてもスパイダーマン映画としても、他の作品を凌駕する大傑作といって過言ではない面白さなので、是非とも楽しんでほしい。

blu-rayは8月7日発売。6月26日にデジタル先行配信開始。

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【ネタバレ版】それぞれの長すぎた旅の終わり。『アベンジャーズ/エンドゲーム』

映画 アベンジャーズ エンドゲーム 約90cm×60cm シルク調生地のアートポスター 001

『アベンジャーズ/エンドゲーム』は『インフィニティ・ウォー』以上に語りつくせない思いが生まれる映画だと思う。

大方のファンが「『エンドゲーム』内で彼らが何をするのか」の予想はだいたいついていた一方で、そのプロセスや目的、様々に仕掛けられたサプライズは予想をはるかに超えてくるものだったと思う。

 

だからこそ「これはネタバレではないと思うのだけど・・・」というような甘い考えが通用せず、「何を話してもネタバレ」になってしまうくらい、そこには何物にも替え難い体験が詰まっている。

 

と、いうわけでネタバレなし(のつもり)のレビューも書いたが、これでは私の気がすまない。なので今回はネタバレ全開のレビュー/感想をどうぞ。

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※この記事は現在公開中の映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』のネタバレを含みます。

 

 

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それぞれの長すぎた旅の終わり。『アベンジャーズ/エンドゲーム』

Avengers: Endgame (Original Soundtrack)

 

 

『アベンジャーズ/エンドゲーム』を観た。観てしまった。

マーベルコミックスのキャラクターたちを同一世界観で共演させる映画シリーズ『マーベル・シネマティック・ユニバース』の11年、21作品の総まとめとなる本作。

 

総まとめといっても、シリーズ自体はまだまだ続く。

『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』が7月に公開を控えているし、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』も『ドクター・ストレンジ』も『ブラックパンサー』も続編の製作が決まっている。

そんな中、続編の製作が決まっている、比較的近年登場したばかりのキャラクターが次々と消えていった『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の衝撃の結末から早1年。

失意のヒーローたちの姿のその後を、彼らの逆襲、やっと目にすることができた。

 

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目次

 

11年、21作+αの厚み

『アベンジャーズ/エンドゲーム』はこれまでのMCU作品の総決算である。

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』とそれに関連した『アントマン&ワスプ』と『キャプテン・マーベル』のポストクレジットシーン(エンドロールの中盤、もしくは後にある映像)の直後を描く物語であるために、それらの作品を見ておかないと、話を理解するのはなかなか難しいかもしれない。

 

それでも前作の物語の経緯や、シリーズの鍵となっているインフィニティ・ストーンの解説などもきちんと入れてくれる。またパンフレットには本作のネタバレがほぼない状態で『インフィニティ・ウォー』の解説も入っているため理解の助けになるだろう。

 

ただし、この映画の1番の魅力はストーリーやアクションそのものよりも、「21作品すべてを追いかけてくれたファンに贈る」とでも言いたげな、強烈なファンサービスでもあるのである。

 

もちろんストーリーがつまらないわけではないし、複雑すぎて理解が追いつかないわけではない。ただファンにとってはある種予想の範囲内のストーリーだった本作を、11年・21作+αすべてのキャラクターや物語への思い入れで、冒頭から感情を飽和状態にしていく。

予定調和が予定調和で終わらないサプライズと、ベタすぎとも言えるファンサービスの連続、過去作で葛藤し続けてきた彼らの思いを、戦いを、友情と愛情を全力でぶつけてくる。 

 

これほどの超大作でありながら、シリーズを追いかけてきた「個人」へ向けて、それぞれの追いかけたMCUをフラッシュバックさせてくる。

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僕自身、こんな記事も書いた。

 

書いたけど、今思えばこんなのは映画を見た今でははっきりいって陳腐そのものだ。

僕のこの記事を読んで見れないことはないと思う。

ないとは思うけど、それでは圧倒的に勿体無く、この映画の旨味はほとんど感じられないのだ。

時間はある。だから、全て観てから臨んでほしい。(『キャプテン・マーベル』は難しいかもしれないが)

 

超高予算のブロックバスター映画で、過去作を観ていないと100%楽しめない 、新参者置いてけぼりの映画を作ることには賛否両論もあると思う。

それでもこのMCUというシリーズは、絶対に失敗できない、一作でもコケると上から軌道修正が指示されるような映画業界で、前人未到の20作をメガヒットで提供してきた。

その上での22作目の本作は広がりに広がった「ユニバース映画」という新たなジャンルの総決算として、最大最高のアンサーを放ってくる。

 

長すぎた旅の終わり

『アベンジャーズ/エンドゲーム』は『アベンジャーズ』の中心となった主要メンバーを演じる俳優たちの卒業作品でもある。

これは単に契約の都合でもあるし、俳優たちの老いや成熟から、新しいヒーローたちに世代交代するという意味合いもある。

 

『アベンジャーズ』の最終作ではあるが、もちろん『アベンジャーズ』がそれぞれのキャラクターの第1作ではなく、2008年の『アイアンマン』から続くMCUの積み重ねだ。

それらの作品で単独作やクロスオーバーを重ねながら、彼ら自身の感情や目的、信念もまた変化し成長してきた。

バラバラの方向性でありながらも、同じ方向へ団結したのが『アベンジャーズ』であり、それがほころび始めたのが『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』

そして見事に決裂したのが『シビルウォー/キャプテン・アメリカ』である。

それ以外の作品でも彼らの生き様や信念はぶれることなく描写されている。

 

そのひどく不器用で人間らしい彼ら超人たちの、それぞれの長すぎた旅の終わりを、彼らの達した結末を、是非とも受け止めてほしい。

 

 

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ネタバレ版も書きました。映画を見た方はこちらもどうぞ。

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MCUを一切見ていない人が『アベンジャーズ/エンドゲーム』を見るための総解説・フェーズ3

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー (字幕版)

前回の続き。

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今回はフェーズ3。『アントマン』以降の作品を紹介します。

 

 

重要登場人物の☆はおそらく『アベンジャーズ/エンドゲーム』に登場するであろう人物を表しています。

ストーリー重要度はあくまで『エンドゲーム』を見るにあたっての重要度であり、MCU全体での重要度は考慮していません。

 

本記事はMCU公開済み全作のネタバレを含みます

 

目次

 

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(2016)

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超簡潔あらすじ

新生アベンジャーズがラムロウ逮捕のため訪れたラゴスで戦闘中、ワンダは爆発事故を起こしワカンダ人を含む犠牲者を出してしまう。事態を重く見た国連はアベンジャーズを国連の管理下に置く「ソコヴィア協定」を提案し、アベンジャーズの意見は分裂。ナターシャが調印のためにウィーンを訪れるが、国連を狙った爆発事故が起きワカンダ国王ティ・チャカが死亡、監視カメラの映像から犯人はバッキーとされ国際指名手配を受ける。バッキーが犯人ではないと信じるスティーブはサムやテロ対策本部で働くシャロンの協力を経て違法ながらバッキー救出へ向かう。バッキーの命は助かったが、復讐に燃えるワカンダ王子ティ・チャラ扮するブラックパンサーに阻まれ、3人は確保されバッキーは精神鑑定にかけられる。その精神鑑定の最中、鑑定医にヒドラの暗号を唱えられ洗脳が蘇り脱獄、スティーブとサムによって保護される。鑑定医の目的がシベリアの旧ヒドラ基地にいるウィンターソルジャー軍団だと考えた彼らはワンダとクリント、スコットを集めシベリアへ向かおうとする。それに対し彼らを捕まえるためトニー、ナターシャ、ローディ、ヴィジョン、ティ・チャラそしてトニーにスカウトされた少年ピーター・パーカー(=スパイダーマン)が空港に集結し、キャプテン・アメリカ陣営とアイアンマン陣営で戦闘となる。仲間達を犠牲にしシベリア行きのクインジェットへ乗るスティーブとバッキー。ローディは負傷し半身不随、ナターシャは直前でスティーブらを手助けしたため姿を消し、サム、ワンダ、クリント、スコットらは危険な超人犯罪者が収容される海の底の刑務所「ラフト刑務所」へ収容される。

報道で国連爆破の犯人が鑑定医に扮したヘルムート・ジモなる人物だと知ったトニーはサムから居場所を聞き、スティーブらを追いかける。たどり着いたシベリアで3人でジモを追い詰めるが、ジモからトニーの両親ハワードとマリアを殺害したのが洗脳されたバッキーだと知らされトニーの怒りが爆発。またしてもトニー対スティーブ&バッキーの戦闘となり彼らの仲は決裂する。スティーブは勝利するがトニーの言葉でシールドを放棄、ラフト刑務所を破り仲間を解放し、世間から身を隠して活動することにする。

事の成り行きを見ていたティ・チャラは復讐をやめバッキーをワカンダへ迎え入れ、洗脳が解けるまで眠るという彼を冷凍保存する。

 

重要登場人物

TEAMキャプテン・アメリカ

  • ☆スティーブ・ロジャース(=キャプテン・アメリカ)・・・ソコヴィア協定に反対、またバッキーを庇ったため追われる身となる。
  • ☆バッキー・バーンズ(=ウィンター・ソルジャー)・・・罠にはまり国連爆破の罪を着せられ追われる身となる。
  • ☆サム・ウィルソン(=ファルコン)・・・ソコヴィア協定に反対し、スティーブと同じくバッキーを庇ったため追われる身となる。
  • ワンダ・マキシモフ(=スカーレット・ウィッチ)・・・ラゴスでの任務中ラムロウの爆弾を誤ってビルにぶつけてしまい多くの犠牲者を出す。トニーに軟禁され反発、スティーブら側に付く。
  • ☆クリント・バートン(=ホークアイ)・・・ウルトロン事件後引退していたが、スティーブやワンダのピンチに駆けつける。
  • ☆スコット・ラング(=アントマン)・・・サムの「オーディション」で力を見込まれスティーブ側に付く。キャプテン・アメリカのファン。

TEAMアイアンマン

  • ☆トニー・スターク(=アイアンマン)・・・ウルトロン事件の反省からソコヴィア協定に賛成し、スティーブと仲違いする。
  • ☆ナターシャ・ロマノフ(=ブラック・ウィドウ)・・・ソコヴィア協定に不満がありつつも世間の信用を得るために賛成する。空港での戦闘はトニー側に付くが、最終的に裏切り、スティーブらをソビエトへ逃がす。
  • ☆ジェームズ・(ローディ)ローズ(=ウォーマシン)・・・ソコヴィア協定に賛成。空港での戦闘中、ヴィジョンの攻撃が誤って命中し落下、脊椎損傷により半身不随となる。
  • ☆ヴィジョン・・・ソコヴィア協定に賛成。ワンダに気を取られ、サムを狙ったレーザー攻撃がウォーマシンのアークリアクターに命中してしまう。
  • ☆ティ・チャラ(=ブラックパンサー)・・・ワカンダ王子(次期国王)。ワカンダの国王は代々ブラックパンサーとして戦い国を治める。国連爆破で父を失いバッキーに復讐しようとする。誤解が解けた後はスティーブらと和解。バッキーの洗脳を解くため彼を冷凍保存する。
  • ☆ピーター・パーカー(=スパイダーマン)・・・超人的な力と頭脳をもつ高校生。自作の蜘蛛糸とスーツで人助けをしており、YouTubeを見たトニーにスカウトされる。

その他

  • ブロック・ラムロウ(=クロスボーンズ)・・・元S.H.I.E.L.D.のヒドラ党員。『ウィンターソルジャー』の事件以降テロリストとして活動しており、生物兵器を盗もうとしたところ新生アベンジャーズに阻止される。自爆して死亡。
  • サディアス・ロス・・・国務長官。アベンジャーズらにソコヴィア協定を提案する。『インクレディブル・ハルク』に登場した。
  • ペギー・カーター・・・スティーブの元恋人。老衰で死亡。
  • シャロン・カーター(=元エージェント13)・・・元S.H.I.E.L.D.エージェント。Cテロ対策本部に所属。ペギーの姪でスティーブらを手助けする。
  • ティ・チャカ・・・ワカンダ国王。ラゴスでの事件を機にソコヴィア協定の調印式に出席するが、爆破テロを受け死亡。
  • エヴェレット・ロス・・・テロ対策本部所属。シャロンの上司。バッキー、スティーブ、サムらを拘束する。
  • ハワード・スターク・・・トニーの父。1991年に洗脳されたバッキーに暗殺される。
  • マリア・スターク・・・トニーの母。1991年に洗脳されたバッキーに暗殺される。
  • メイ・パーカー・・・ピーターの叔母。ピーターがスパイダーマンであることを知らない。
  • ヘルムート・ジモ・・・ヴィラン。アベンジャーズ分裂を企てる黒幕。ソコヴィア人で、ウルトロン事件の際に妻と子供、父を亡くしている。

登場ストーン・・・ヴィジョン(=マインド・ストーン)

ストーリー重要度

★★★★★

『インフィニティ・ウォー』での敗北の原因の一つとも言えるアベンジャーズの分裂が描かれ、『ウィンター・ソルジャー』『エイジ・オブ・ウルトロン』とストーリーをつなげる重要な役割を果たします。

ストーンについて触れられるのは一瞬のみ。

本作から初登場したスパイダーマンとブラックパンサーはのちに単独作が作られます。

ピーター(・パーカー)とピーター(・クイル『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』)と主要登場人物の中で名前被りが始まるのもここからなので要注意。

また、『インクレディブル・ハルク』からブルース以外の再登場人物であるサディアス・ロスが登場。そして今後『ブラックパンサー』に再登場するエヴェレット・ロスと「ロス」の名前被りもややこしいので注意。

『キャプテン・アメリカ』単独作としてのシリーズはこれにて一応の終了します。

ドクター・ストレンジ(2016) 

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超簡潔あらすじ

超高圧的で自信家の天才外科医スティーブン・ストレンジは事故により両手を思うように動かせなくなり医者としての道を閉ざされる。藁にもすがる思いで半身不随から復活した人物の話を聞き、ネパールのカトマンズにある「カマー・タージ」という寺を訪ねる。そこで多次元宇宙(マルチバース)の存在を説かれ、至高の魔術師(ソーサラー・スプリーム)のエンシェント・ワンに弟子入りし魔術を習う。

知的好奇心からより多くの魔術を取得するために規則を無視し「アガモットの眼」を使用した彼はかつて同じように規則を破り禁断の魔術を奪ったカエシリウスの話を聞かされる。世界を守る3つのサンクタムのひとつであるロンドンのサンクタムが破壊され、それに巻き込まれるようにストレンジはニューヨークサンクタムでカエシリウスと戦闘になる。一時は動きを封じ込めるものの再び不利な状況になりエンシェント・ワンが死亡。カエシリウスは香港で禁断の魔術で暗黒次元(ダーク・ディメンション)と繋がり、暗黒次元の支配者ドルマムゥを呼び寄せる。

ストレンジはアガモットの瞳を用いてドルマムゥを無限ループの中に閉じ込め、ループから抜け出させることを条件に地球から手を引くという取引を行い、ドルマムゥを無効化する。

カエシリウスは暗黒次元に飲み込まれ、ストレンジはニューヨークサンクタムの新たな守護者となる。

 

重要登場人物

  • ☆ドクター・スティーブン・ストレンジ・・・元天才外科医の魔術師。事故で失った両手の機能を取り戻すために修行を始めるが、魔術にのめり込むようになる。アガモットの眼を利用し時間を操る。物語の終わりにニューヨークサンクタムの守護者となる。
  • エンシェント・ワン・・・カマー・タージを治める至高の魔術師。年齢不詳だが、実は暗黒次元から力を得て不老不死となっていた。カエシリウスとの戦闘で死亡、その後をストレンジに託す。
  • モルド・・・ストレンジの兄弟子。カエシリウスと戦うが、自分たちを騙していたエンシェント・ワンに失望し、物語の最後にはストレンジたちと袂を分つ。
  • ☆ウォン・・・カマータージの図書館司書。ストレンジらとともにカエシリウスと戦う。
  • クリスティーン・パーマー・・・ストレンジの元恋人。劇中ストレンジやエンシェント・ワンの治療も行う。
  • カエシリウス・・・ヴィラン。エンシェント・ワンに疑念を持ち暗黒次元の魔術を追い求める魔術師。自ら呼び出したドルマムゥに暗黒次元へと飲み込まれる。

登場ストーン・・・アガモットの眼(=タイム・ストーン)

ストーリー重要度

★★★★☆

ストーリー的には『エンドゲーム』につながる要素は多くないものの、タイムストーンの登場は重要。また「多次元宇宙」の映像描写は『アントマン』の「量子世界」と酷似しており、「量子世界」と同様に『インフィニティ・ウォー』で消えてしまった人々を取り戻すための鍵になるのではという噂があるので要注意。ストレンジ自身『インフィニティ・ウォー』では他のキャラクターと比べかなり重要なキャラクターとして描かれているので観ておいて損はない。

 

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス(2017)

超簡潔あらすじ

宇宙の用心棒となったガーディアンズ・オブ・ギャラクシー達は惑星ソヴリンでモンスターを倒し報酬としてネヴュラの身柄を引き受ける。ところがロケットが手癖でソヴリンのバッテリーを盗んだことから女王アイーシャの怒りを買う。なんとか追っ手を逃れ惑星ベアハートにたどり着くがミラノ号は大破。ガーディアンズたちはベアハートでソヴリンの追っ手から逃げるのを手助けした謎の男エゴと出会い、彼がピーターの実の父親だと知らされる。ガーディアンズ達は二手に別れ、ピーター、ガモーラ、ドラッグスはエゴの星へ、ロケット、グルート、ネビュラはベアハートに残りミラノ号を修理することになる。そんな折アイーシャから依頼を受けたヨンドゥらラヴェジャーズがロケットらを襲撃、仲間割れの末にヨンドゥとロケットは拘束され、ネビュラはガモーラへの復讐のためにエゴの星へ向かう。ロケットはヨンドゥからエゴの危険性を知らされ、グルートとクラグリンのおかげで牢を脱出、ラヴェジャーズの船を破壊したのちエゴの星へ向かう。

エゴの星ではエゴが天人であり、彼が惑星そのもので、彼自身の「拡張」のため星々に分身を植え付けていたことがわかる。「拡張」により星々はエゴに取り込まれ滅ぼされる。「拡張」にはエゴ以外のもうひとりの天人が必要であり、そのために様々な種族と子作りを行なっており、ピーターもそのひとりであった。ピーターがエゴの「拡張」を手助けできる唯一の生き残りであるとわかったエゴは彼を取り込むが、エゴがピーターの母メレディスを殺した張本人であることを聞きピーターが逆上、ガーディアンズも合流しエゴとガーディアンズの戦闘となる。

死闘の末爆弾でエゴを破壊し、エゴの拡張を止めたガーディアンズはヨンドゥを失う。

 

重要登場人物

  • ☆ピーター・クイル(=スター・ロード)・・・半地球人。幼少期母を亡くした際にヨンドゥに拉致され宇宙海賊として育てられる。エゴの拡張を手助けできる唯一の生き残りであることがわかるが、エゴが母に腫瘍を植え付けたことを知りエゴを倒す。
  • ☆ガモーラ・・・サノスの養女。サノスに両親を殺され暗殺者として育てられる。
  • ☆ロケット・ラクーン・・・アライグマ型のクリーチャー。
  • グルート・・・樹木型ヒューマノイドでロケットの相棒。前作で死亡したが小枝から生まれ変わる。「I am Groot.」(もしくはWe are...)しか話せない。
  • ☆ドラッグス・ザ・デストロイヤー・・・妻と娘を殺された復讐者。
  • ヨンドゥ・ウドンタ・・・宇宙海賊。エゴと知り合いで、幼少期のピーターを誘拐する。エゴの目的を知りピーターを引き渡さずに自らの手で育てる。
  • ☆ネビュラ・・・サノスの養女。ガモーラの義理の妹。幼い頃からガモーラと競わされ、負けるたびにサノスに全身を改造された改造人間。
  • マンティス・・・エゴに仕える女性。共感覚を用いて人の感情を読めたり、人を眠らせることができる。ドラッグスに触れた時彼の悲しみに触れ、エゴの本当の目的を話そうとする。
  • エゴ・・・ピーターの父。天人であり惑星そのもの。人間の姿は惑星から生み出した分身であり本体ではない。世界を破滅させる「拡張」のため、星々に分身を植え付け、異種間で子供を作りもう一人の天人を生み出そうとした。しかし天人として機能したのはピーターが唯一であった。ピーターの母メレディスと恋をし、未練のため目的が果たせないことを恐れて彼女を殺害した。

登場ストーン・・・なし

ストーリー重要度

★★☆☆☆

『インフィニティ・ウォー』や『エンドゲーム』へとつながるストーリーの重要度は前作に比べるとかなり低め。

マンティスというキャラクターが加わっていること、グルートが小枝からだんだんと成長していること、前作で敵だったネビュラが『インフィニティ・ウォー』で仲間になっていることなどのポイントを抑えれば最悪飛ばしてしまっても問題ない。

ただしガーディアンズの面々の心境は『インフィニティ・ウォー』でも濃く描かれているため、『リミックス』での彼らの成長や性格づけは意識しておいてもいい内容。特にピーターとロケット。本作をMCU最高傑作に挙げる人も少なくないので是非ともチェックしたい作品である。

スパイダーマン:ホームカミング(2017)

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超簡潔あらすじ

『シビル・ウォー』で助っ人として戦闘に参加したスパイダーマン(=ピーター・パーカー)はトニー・スタークから特別製のスーツを譲り受け、クイーンズで強盗などを捕まえるヒーローとなる。一方で小さな事件しか扱えない彼は欲求不満だった。

ある時彼は怪しい取引現場を目撃しあとをつけると、謎の集団がニューヨークの戦いなどの宇宙由来の戦争ゴミから武器を製造していることがわかる。その集団のリーダーであるバルチャーにやられ取り逃がしてしまうものの、調べていくうちに彼らがフェリーで取引を行うことをつきとめ、現場を抑えようと目論む。ところがヴァルチャーの銃が暴発し、ヴァルチャーらを逃した上にあわや沈没の大惨事を起こしてしまう。アイアンマンの助けによりその場は収まるが、ピーターはスパイダーマンスーツを没収されてしまう。

落ち込んだピーターはヒーロー活動をやめ、学校生活に専念するが、ホームカミングデーのパーティーの当日、ヴァルチャーの正体がピーターが想いを寄せるリズの父親であることが発覚する。ピーターはパーティーを離れ、ヴァルチャーを倒す覚悟を決める。

ヴァルチャーの目的はアベンジャーズタワーからNY北部の新アベンジャーズ基地へ武器を輸送する無人航空機から武器を盗むことであった。

ピーターは自作の旧スーツでなんとかヴァルチャーを倒すことに成功する。

トニーはピーターを認め、アベンジャーズへ正式勧誘するが、ピーターはそれを拒否し、「親愛なる隣人」としてニューヨークの平和を守ることに決める。

重要登場人物

  • ☆ピーター・パーカー(=スパイダーマン)・・・ミッドタウン高校に通う高校生。学校生活の傍、スパイダーマンとしてニューヨークの困った人々を守るヒーロー活動を行なっている。ハッピーやトニーが自らを認めてくれないことにイラつき、単独行動でトゥームスらの違法な武器販売を止めようとする。
  • ネッド・リーズ・・・ピーターの友人。スパイダーマンの正体を知る数少ない人物の一人。プログラミングやハッキングの知識は優秀で、自らヒーローを支える「椅子の男」を志願する。
  • メイ・パーカー・・・ピーターの叔母。
  • リズ・トゥームス・・・ピーターの片思いの相手。のちにバルチャーの娘であることが発覚し、ピーターの葛藤の原因となる。
  • エイドリアン・トゥームス(=バルチャー)・・・ニューヨークの戦い以後、戦場の後処理を担っていたがトニーが出資する「ダメージコントロール」に仕事を奪われたためトニーを恨んでいる。その後アベンジャーズ達の戦いで出た戦争ゴミを再利用し、武器を製造し犯罪者らに売って生活している。物語の終盤にリズの父親であることがわかる。
  • ☆ハッピー・ホーガン・・・トニーのボディーガード。ピーターの目付役をトニーから任されるが相手にしていないため、ピーターの単独行動の原因になる。
  • ☆トニー・スターク(=アイアンマン)・・・ピーターにスパイダーマンスーツを託す。「補助輪機能」でスーツ着用時のピーターの行動を記録し、彼や市民に危険が及ばないよう監視している。物語の最後にピーターをアベンジャーズにスカウトするが断られ、記者会見を急遽ペッパーとの婚約発表に切り替える。
  • ☆ペッパー・ポッツ・・・トニーの恋人。物語の最後に登場。ピーターがアベンジャーズ加入を断ったため、記者会見をトニーとの婚約発表へと切り替える。

登場ストーン・・・なし

ストーリー重要度

★☆☆☆☆

あくまでも『シビル・ウォー』後日談、そして『スパイダーマン』の単独作という感じ。シンプルで楽しめる作品であり、アイアンマンも登場するが『エンドゲーム』へ向けての重要度は高くない。「8年後」というミス字幕も登場するので混乱をきたす可能性もある。(ニューヨークの戦いは2012年のため、8年後の表記が正しい場合本作は2020年の出来事になる)

ラストの「アイアンスパイダースーツ」は『インフィニティ・ウォー』で登場する。

トニーとペッパーが今作で結婚記者会見を行うので、『エンドゲーム』でそれ関連のほのぼのシーンが入る可能性は考慮しておくといいかも。

 

マイティ・ソー/バトルロイヤル(2017)

超簡潔あらすじ

予言されているアズガルドの滅亡「ラグナロク」を阻止したソーはアズガルドに帰還し、国を治めているオーディンがロキのなりすましであることを暴く。オーディンを探しに地球を訪れ、ドクター・ストレンジの助けで彼を見つけると、彼はソーやロキに姉ヘラがいたことを伝える。凶暴すぎて封じ込めていたが、オーディンの死とともに蘇り、ソー達を襲う。アズガルドへ逃げ帰る途中、ヘラにビフレストから投げ出され、ソーとロキはサカールへたどり着く。

サカールはグランドマスターが治めている星で、戦士達を戦わせる『コンテスト・オブ・チャンピオン(字幕では「バトルロイヤル」)』が行われている。ソーはヴァルキリーという女性に捕まり戦闘への参加を余儀なくされるが、現在のチャンピオンはなんとウルトロンの事件以降行方不明となっていたハルクだった。

戦闘はグランドマスターの不正によりソーが敗北するが、目を覚ましたソーはハルク、ヴァルキリーやロキの助けを借りてサカールを抜け出す計画を立てる。

ヘラはアズガルドを圧倒的な武力で制圧し、今にも支配を完成させようというところだった。そこへソー達が現れ反撃を開始するが、勝ち目がないことを悟ったソーは炎の巨人スルトを呼び出し「ラグナロク」でヘラもろともアズガルドを破壊することを思いつく。ロキはスルトを蘇らせるためにアズガルドの宝物庫へと向かうが、その途中でテッセラクトを持ち出す。生き残ったアズガルド人たちとソーらは宇宙船「ステイツマン」で避難し、地球へと向かうが、道中でサノスの乗る船「サンクチュアリⅡ」に出会ってしまう。

重要登場人物

  • ☆ソー・・・アズガルドの次期国王。アベンジャーズの一員。今回初めて姉がいることを知らされる。サカールに飛ばされるが、ヴァルキリーらの手を借りて帰還。世界を滅ぼさんとする姉ヘラを倒すため、自ら炎の魔人スルトを呼びアズガルドを破壊する。
  • ☆ロキ・・・ソーの義理の弟。死を偽装し父オーディンになりすましていた。サカールに飛ばされるが戦士にはならず、グランドマスターに気に入られて友人となる。裏切りを繰り返しつつも、最終的にはアズガルドを救いに宇宙船ステイツマンで戻ってくる。アズガルド破壊の際、テッセラクトを密かに持ち出す。
  • ☆ブルース・バナー(=ハルク)・・・アベンジャーズの一員。ウルトロンの事件以降行方不明となっており、サカールで2年間ハルクの状態のままだった。サカールではチャンピオンとして人気者であり特別扱いを受けていた。クインジェットのナターシャの映像を見てブルースの姿へ戻り、地球へ帰るためにソーを手助けする。
  • ☆ヴァルキリー・・・アズガルドの戦争の英雄の生き残り。ヘラに恋人を殺されている。現在はサカールで戦士をグランドマスターに売り生計を立て、酒浸りの生活をしているが、ソーの話を聞きアズガルドを守る戦いに参加する。「ヴァルキリー」は本名ではなく部隊の名前。
  • コーグ・・・ソーと戦士を収容される牢で出会う。全身が岩のヒューマノイド。革命を起こし戦士たちを解放し、ロキとともにステイツマンでアズガルドに駆けつける。
  • ヘラ・・・ソーやロキの姉でアズガルドの王位継承者。死の女神であり、あまりにも好戦的なためオーディンに封印されていたがオーディンの死により復活。アズガルドや9つの世界を支配しようと企む。炎の魔人スルトによりアズガルドごと破壊され死亡。
  • グランドマスター・・・サカールの支配者。戦士たちを戦わせるコンテストを開いている。劇中言及はないがタニリーア・ティヴァン(=コレクター)の兄。
  • ヘイムダル・・・アズガルドのビフレストの番人だが、ロキに失職させられており、アズガルドの難民たちを保護していた。

登場ストーン・・・テッセラクト(=スペース・ストーン)

ストーリー重要度

★★★★☆

『インフィニティ・ウォー』の冒頭へ直結するラストとなっている。

ソーが短髪となっている理由やハルクが宇宙にいる理由、ロキの心境の変化、ヴァルキリーやコーグの存在などを考慮すると観ておいてもいいかな、と思いつつ飛ばしても問題ないような気もする。また本作で登場するヴァルキリーやコーグらは『インフィニティ・ウォー』に何故か登場せず、『エンドゲーム』で何らかの切り札として帰ってくる可能性も考慮に入れたい。

良くも悪くも『マイティ・ソー』シリーズの殻のようなものを破り自由な作風になっているのが楽しめる。一方でそれまでの設定をバッサリと断ち切る部分もあるので好き嫌いは分かれる。

ブラックパンサー(2018)

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超簡潔あらすじ 

『シビル・ウォー』の事件から数ヶ月後、ティ・チャラは正式にワカンダ国王として王位継承を行う。王位を継ぐものだけが飲めるハーブを摂取し、超人としてよりパワーアップした彼は、ブラックパンサーとしてユリシーズ・クロウに盗まれたヴィブラニウムの調査を行い、彼の逮捕のため韓国釜山へと向かう。クロウ確保には成功するものの、CIAの尋問中に仲間からの襲撃を受け取り逃がし、尋問に立ち会っていたエージェントのエヴェレット・ロスが撃たれ、治療のためにワカンダへ連れて帰る。

任務失敗のため責められるティ・チャラの元にクロウの死体を持ったエリック・スティーブンス(=キルモンガー)が現れ、自らがティ・チャラの従兄弟であること、自らに王位継承権があることを告げ、ワカンダの風習に則りティ・チャラとエリックの決闘となる。決闘の場でティ・チャラは敗北。エリックが新たな国王&ブラックパンサーとなり、開国し世界中で不当な差別と戦うアフリカ系の人々にワカンダの強力な武器を与える政策を開始する。

ティ・チャラの恋人ナキアは女王のラモンダと王女シュリ、ロス捜査官を連れてジャバリ族の集落に避難し、そこで族長のエムバクが見つけたティ・チャラをハーブで蘇生させる。死の淵から戻ったティ・チャラはエリックを止めるために戦い、戦闘ののちエリックを倒す。自ら死を選んだエリックの無念を汲んだティ・チャラはワカンダの技術を平和利用に活用するための開国を宣言する。

ポストクレジットではバッキーが冷凍から目覚め、新たな任務が近いことをシュリから告げられる。

重要登場人物

  • ☆ティ・チャラ(=ブラックパンサー)・・・ワカンダ国王。ハーブにより超人に強化される。王位継承の儀式で従兄弟のエリックに負け王位を奪われるが、復活してエリックを倒し、ワカンダを開国する。
  • エリック・スティーブンス(=キルモンガー)・・・ヴィラン。ティ・チャカの弟ウンジョブの子で父をティ・チャカに殺されている。ワカンダのことは父から故郷として聞いているが入国したことはなくティ・チャラを倒し王になった後は父の目的であった虐げられている黒人のために武器を配布する政策をとる。再び現れたティ・チャラに敗北し、自ら死を選ぶ。
  • ☆シュリ・・・ティ・チャラの妹。16歳にして天才発明家であり、ブラックパンサースーツやワカンダの武器のほとんどは彼女の発明。
  • ☆オコエ・・・ワカンダの国王親衛隊隊長。王であるティ・チャラとも対等に接する。エリックの王位継承後はエリックに仕えるが、ティ・チャラ復活後はティ・チャラ側に付き戦う。
  • ナキア・・・ティ・チャラの恋人。スパイとして活動し普段は国外にいるが、ティ・チャラの王位継承を見届けるために帰国する。
  • エムバク・・・ジャバリ族の族長。当初ティ・チャラの王位継承に異を唱え決闘し、敗北する。ワカンダ王家とは仲違いしていたが、エリックに負け死にかけていたティ・チャラを保護していた。最終的にはジャバリ族を連れ戦いに参加し、ティ・チャラ側につく。
  • エヴェレット・ロス・・・CIAの捜査官。クロウと囮取引を行うために釜山に潜入しティ・チャラと再開する。エリックに撃たれ意識不明の状態のままワカンダへ連れていかれることになりワカンダの真実を知る。ワカンダのため、武器輸送用のジェットを墜落させる。
  • ユリシーズ・クロウ・・・ヴィブラニウム専門の密輸武器商人。ウルトロンに切り落とされた腕はアームキャノンとなっている。エリックとともに大英博物館に侵入し、展示品のヴィブラニウムの鉄器を盗む。釜山で一度身柄を確保されるがエリックの手で脱出。その後ワカンダへの「土産」としてエリックに殺される。
  • バッキー・バーンズ(=ウィンターソルジャー/ホワイトウルフ)・・・ポストクレジットに登場。洗脳が解けるまでの間冷凍保存を受けていたが、新たな任務(=インフィニティ・ウォー)のために蘇る。シュリからは「ホワイトウルフ」と呼ばれる。

登場ストーン・・・なし

ストーリー重要度

★★★☆☆

アカデミー賞ノミネートで話題となった本作。政治的メッセージ性は保守的・民族差別的なトランプ政権を大いに批判する内容で一見の価値あり。 『インフィニティ・ウォー』の一部舞台はワカンダのため、見ておくとキャラクターや武器、ワカンダ兵らの戦い方の理解にはなると思われる。それでも物語自体は独立しているため関連性はそれほど大きくない。

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(2018)

超簡潔あらすじ

 

導入

ソーらの乗る船「ステイツマン」がサノスの襲撃にあう。サノスはインフィニティストーンを全て集めるため、数日前にザンダー星のノヴァ軍を襲撃しパワー・ストーンをすでに手に入れていた。勝ち目のない戦いを悟ったヘイムダルはビフレストでハルクを地球へ送る。ヘイムダル、ロキは殺され、テッセラクトはサノスに奪われ、船は壊滅する。

地球(NY)

地球へ飛ばされたハルクはニューヨークサンクタムに落ち、ブルースの姿に戻ったのち、ストレンジとウォンにサノスの脅威について説明する。トニーが呼び寄せられブルースと再会、インフィニティストーンとサノスの関係について話したのち、行方不明になっているマインドストーンの宿主ヴィジョンの居場所を知るため、スティーブと連絡を取る流れとなる。その瞬間にニューヨークへサノスの手先のエボニー・マウとカル・オブディシアンが現れ戦闘になる。ピーター・パーカー(=スパイダーマン)も駆けつけるがストレンジごとタイムストーンが奪われ、トニーとピーターはマウを追いかけて宇宙船へと乗り込む。地球に残ったブルースはスティーブに連絡を取る。

宇宙

宇宙ではガーディアンズたちがステイツマンの救難信号に駆けつけるが船は爆破された後であり、唯一の生き残りのソーを船内に引き上げる。ソーからサノスの襲来と彼がストーンを全て集めようとしていることを聞き、彼らは別行動をとることにする。ソー、ロケット、グルートはサノスを殺せる新たなハンマーを手に入れるためにニダベリアへ、ピーター・クイル、ガモーラ、ドラッグス、マンティスは先回りしてリアリティ・ストーンを手に入れるべくノーウェアへと向かう。

地球(スコットランド→アベンジャーズ基地→ワカンダ)

地球ではヴィジョンとワンダがサノスの手下プロキシマ・ミッドナイトとコーヴァス・グレイブに襲われているところをスティーブ、ナターシャ、サムらが助ける。アベンジャーズ基地でローディ、ブルースらと再会を果たしたのち、ヴィジョンを殺さずにマインドストーンのみを破壊する方法を求め、彼らはワカンダへと向かう。

シュリがヴィジョンを解析している間、他のメンバーはヴィジョン防衛のために戦線を張る。

宇宙(ノーウェア→ヴォーミア→タイタン)

ノーウェアではすでにコレクターはおらず、サノスがリアリティストーンを手に入れていた。ガモーラはサノスに捕まり、ガーディアンズらは途方に暮れる。

サノスは「サンクチュアリⅡ」でネビュラの拷問を見せつけ、ガモーラからソウル・ストーンの居場所惑星ヴォーミアを聞き出す。ヴォーミアで「ソウルストーンを手に入れる方法は愛する者の魂と引き換え」であることを知ったサノスは涙を流しながらガモーラを犠牲にし、ソウルストーンを手に入れる。

ネビュラはその隙にサンクチュアリⅡを抜け出し、ガーディアンズに伝言を送って惑星タイタンへと向かう。

トニーらの乗る宇宙船ではストレンジ奪還のため、ピーター・パーカーの案でマウを宇宙に放り出すことに成功する。トニーはストレンジに辿り着いた先でサノスを迎え撃つことを提案し、自動操縦に任せ惑星タイタンへとたどり着く。そこで待ち構えていたピーター・クイル、ドラッグス、マンティスらと誤解のため交戦し、誤解が解けた後はサノス撃退のための作戦を練る。作戦を練っている間ストレンジはタイム・ストーンで1400万605通りの未来を見て、勝利する未来がたったの1通りであることを知る。

ソウルストーンを手に入れたサノスが到着し、戦闘が始まるとネビュラも到着し加勢する。マンティスの能力で一時はサノスの動きを封じるが、ガモーラの死を知ったクイルの怒りが爆発し、作戦が失敗に終わってしまう。圧倒的な武力差でトニーが死を覚悟したその時、ストレンジがトニーを生かすことを条件にタイムストーンを渡してしまう。

タイムストーンを手に入れたサノスはスペースストーンでワカンダへと消える。

宇宙(ニダベリア)

ニダベリアへついたソーたちは工房のドワーフのエイトリからサノスにガントレットを作らされたこと、彼以外は皆殺しにされたことを聞き、復讐のために武器を作ることを頼み込む。ソーは工房を動かすために死にかけながらも惑星のエネルギーを炉に照射し、ムジョルニアの能力にビフレストの役割を加えた最強の武器、ストームブレイカーを作り上げる。

地球(ワカンダ)

ワカンダのヴィジョン防衛戦ではプロキシマ・ミッドナイトとカル・オブディシアンがコーヴァス・グレイブが軍を連れてやってくる。苦戦を強いられるがソー、ロケット、グルートの到着から形勢逆転し始める。プロキシマはワンダ、ナターシャ、オコエが倒し、カルはハルクに変身できないブルースがハルクバスターを用いて倒す。コーヴァスはヴィジョンが倒す。そんな時サノスがスペースストーンを用いてワカンダへ到着。最後の手段としてワンダがマインドストーンもろともヴィジョンを破壊する。これにてサノスの策略が防げたと思ったのも束の間、サノスはタイムストーンを用いてヴィジョンを復元、彼を殺しマインド・ストーンを手に入れてしまう。

その瞬間、ソーの最後の一撃がサノスに命中する。ところがサノスは即死にはならず「頭を狙うんだったな」と言い残し、ガントレットを発動(スナップ)してしまう。

サノスは逃げ、何が起こったかわからず放心するアベンジャーズたちだったが、しばらくすると仲間たちが次々灰になって消えていくのだった。

重要登場人物

  • ☆サノス・・・タイタン人。ガモーラとネビュラの養父。インフィニティストーンを使って宇宙の人口を半分にし、世界の均衡を保とうと考えている。

アベンジャーズ

  • ☆トニー・スターク(=アイアンマン)・・・NYでストレンジらに呼ばれ、マウらと交戦、ストレンジ救出のために宇宙、そしてタイタンへ。タイタン戦で唯一サノスの顔面に傷を付けた。命を奪われそうになるがストレンジがタイムストーンと引き換えに彼を救う。スナップで生き残る。
  • ☆ピーター・パーカー(=スパイダーマン)・・・偶然NYでの戦闘に参加する。ストレンジを追いかけ宇宙まできてしまいそのままタイタンへ。スナップで灰になる。
  • ☆ブルース・バナー(=ハルク)・・・ステイツマンでサノスと戦い敗北。ヘイムダルにNYへ送られる。以降なぜかハルクに変身できなくなり、ワカンダ戦ではハルクバスターを着用して戦う。スナップで生き残る。
  • ソー・・・ステイツマンでサノスと戦い敗北。ガーディアンズらに助けられ、ロケットとグルートを連れニダベリアへ。ストームブレイカーという新しい武器を手に入れワカンダ戦に参戦する。ワカンダ戦で唯一サノスに一撃を与えるが、復讐を味わせるために即死を避けたのが災いしサノスにスナップをさせてしまう。スナップで生き残る。
  • ヴィジョン・・・人造人間。マインドストーンの宿主。スコットランドでコーヴァスらと交戦、スティーブらに助けられる。ワカンダで彼を殺さずにストーンを取り除く方法を探るが間に合わずサノスに殺害されストーンを奪われる。
  • ☆ワンダ・マキシモフ(=スカーレットウィッチ)・・・スコットランドでの戦闘に参加、スティーブらに助けられる。ワカンダ戦ではプロキシマを倒す。最後の手段でヴィジョンを破壊するが、サノスがタイムストーンを用いたことにより再生されてしまう。スナップで灰になる。
  • ☆スティーブ・ロジャース(=キャプテン・アメリカ)・・・スコットランドでワンダらを救出する。ヴィジョンを殺さずにマインドストーンを取り出すため、ワカンダへいくことを提案する。ワカンダ戦ではリーダーとして戦う。スナップで生き残る。
  • ☆ナターシャ・ロマノフ(ブラック・ウィドウ)・・・スコットランドでワンダらを救出する。ワカンダ戦ではワンダとオコエとともにプロキシマを倒す。スナップで生き残る。
  • ☆サム・ウィルソン(=ファルコン)・・・スコットランドでワンダらを救出する。ワカンダ戦に参戦。スナップで灰になる。
  • ☆ジェームズ・(ローディ)ローズ(=ウォーマシン)・・・アベンジャーズ基地で戦犯扱いのスティーブらを迎え入れる。ワカンダ戦に参戦。スナップで生き残る。
  • ☆バッキー・バーンズ(=ウィンターソルジャー/ホワイトウルフ)・・・ワカンダで冷凍保存されていたが戦闘のため蘇る。ティ・チャラにはホワイトウルフと呼ばれている。ワカンダ戦に参戦。スナップで灰になる。

魔術師

  • ☆ドクター・スティーブン・ストレンジ・・・NYでの戦いに参戦。マウに誘拐され宇宙に連れ出される。タイタンで1400万605通りの未来を見て1通りの勝利法を見つける。タイムストーンをサノスに渡し、トニーの命を救う。スナップで灰になる。
  • ☆ウォン・・・NYでの戦いに参戦。劇中生死不明だがスナップで生き残っている。

ワカンダ

  • ☆ティ・チャラ(=ブラックパンサー)・・・ワカンダ国王。ヴィジョンを守るため国を挙げてスティーブらに協力する。ワカンダ戦に参戦。スナップで灰になる。
  • ☆シュリ・・・ヴィジョンからストーンを取り出すために研究するが間に合わずコーヴァスに襲われる。劇中では生死不明だが、スナップで灰になっている。
  • ☆オコエ・・・国王親衛隊隊長。ワカンダ戦に参戦。プロキシマをナターシャ、ワンダとともに倒す。スナップで生き残る。
  • エムバク・・・ジャバリ族のリーダー。ワカンダ戦に参戦。スナップで生き残る。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー

  • ☆ピーター・クイル(=スター・ロード)・・・救難信号を受けソーを助ける。ノーウェア、タイタンでサノスと交戦、作戦成功まであと一歩のところでガモーラの死を知り激昂し、敗北の原因を作ってしまう。スナップで灰になる。
  • ☆ガモーラ・・・ノーウェアでサノスと交戦、捕まる。ヴォーミアでサノスがソウル・ストーンを手に入れるための代償として殺害される。
  • ☆ロケット・ラクーン・・・ソーと合流後ニダベリアへ、その後ワカンダで戦闘に参加。スナップで生き残る。
  • ☆グルート・・・ソーと合流後ニダベリアへ、その後ワカンダで戦闘に参加。スナップで灰になる。
  • ドラッグス・ザ・デストロイヤー・・・ソー合流後はクイルらとノーウェア、タイタンでサノスと交戦。スナップで灰になる。
  • マンティス・・・ソー合流後はクイルらとノーウェア、タイタンでサノスと交戦。タイタンでのクイルの作戦の要となる。スナップで灰になる。
  • ☆ネビュラ・・・サノスの軍艦で拷問を受けたのち、ガーディアンズへ連絡し自らもタイタンへ、サノスと交戦する。スナップで生き残る。

その他

  • ☆ロキ・・・ステイツマンでサノスにテッセラクトを渡す。その後サノスに殺害される。
  • ヘイムダル・・・ステイツマンでビフレストを使いハルクをNYへと送る。その後サノスに殺害される。
  • ☆ペッパー・ポッツ・・・トニーの婚約者。物語序盤に登場。トニーとランニング中にストレンジと出会う。劇中での生死は不明だがスナップで生き残っている。
  • ネッド・リーズ・・・ピーター・パーカーの親友。パーカーがバスを抜け出すためにバスで騒ぐ。劇中での生死は不明。
  • サディアス・ロス・・・国務長官。アベンジャーズ基地で映像として登場。劇中での生死は不明。
  • タニリーア・ティヴァン(=コレクター)・・・リアリティストーンの幻影として登場。ノーウェアでリアリティストーンを保管していたがサノスに奪われている。劇中での生死は不明。
  • ヨハン・シュミット(=レッドスカル)・・・『ファースト・アベンジャー』に登場した人物。70年前スペースストーンにより宇宙へ飛ばされ行方不明となっていたが、ヴォーミアでストーンキーパーとして、ヴォーミアにたどり着いたものにストーン取得の条件を伝えている。
  • エイトリ・・・ニダベリアのドワーフ。工房で様々な武器を作っていたがサノスにガントレットを作らされた後は彼を残して仲間を全員殺されている。ソーのためにストームブレイカーを作り上げる。劇中での生死は不明。
  • ☆ニック・フューリー・・・ポストクレジットで登場。危機を察知し、ポケベルを起動させる(=キャプテン・マーベルに信号を送っている)その直後、スナップで灰になる。
  • ☆マリア・ヒル・・・ポストクレジットで登場。スナップで灰になる。

登場ストーン・・・全て/テッセラクト(=スペース・ストーン)、オーブ(=パワー・ストーン)、エーテル(=リアリティ・ストーン)、ソウル・ストーン、アガモットの眼(=タイム・ストーン)、ヴィジョン(=マインド・ストーン)

ストーリー重要度

★★★★★★★

マジで時間がなくてもせめてこれだけは観てから行って欲しい作品。書いていても混乱するほどの情報量、そして登場人物の交錯。それでいて全く破綻していないストーリー展開は驚異のレベル。

重要ポイントは

  • ヘイムダル、ロキ、ガモーラ、ヴィジョンは物理的に死亡
  • ブルースなぜかハルクに変身できなくなる
  • ソー新たな武器ストームブレイカーを手に入れる
  • サノス全てのストーンを手に入れる
  • 指パッチンにより全生物の半分が消える(アベンジャーズ含む)
  • トニーとネビュラ、タイタンに取り残される

というところでしょうか。ただし細かい重要ポイントところをあげればキリがなく、また現時点で何が重要かもはっきりわからない部分もあり、やっぱり見ないに越したことはないと思います。

 

アントマン&ワスプ(2018)

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超簡潔あらすじ

『シビルウォー』の事件以降、スコット・ラングは司法取引により保釈され、自宅軟禁を受けていた。自宅軟禁が解かれる3日前、奇妙な夢を見てハンク・ピムに連絡。その夢が量子世界からのジャネットからの呼びかけだと気づいたハンクとホープは密かにスコットを連れ出しジャネットの救出作戦を実行する。

量子世界へ行くための部品を闇市場のディーラーから購入する際、ホープは物をすり抜ける謎のスーツの女ゴーストに邪魔され、部品と縮小し持ち歩き可能になったラボを奪われてしまう。

危機に瀕したハンクらは元S.H.I.E.L.D.の同僚ビル・フォスターを尋ね、ビルの位置を特定するがゴーストにあえなく捕まってしまう。ゴーストの正体はエイヴァ・スターで、彼女の父はハンクの元助手であり、実験に失敗し両親を亡くし体が物をすり抜けるようになってしまう。自らの体を治療するため、ビル・フォスターと手を組み量子世界の力を利用しようとしていた。

混乱に乗じてエイヴァらから逃げたハンクらは、FBIと争いになりながらも、ハンクがラボで量子トンネルを起動し量子世界へと向かう。現実世界ではスコット&ホープ、ゴースト、闇市場のディーラーとラボの奪還争いになってしまう。

ハンクは無事量子世界からジャネットを救い出し帰還し、ジャネットは自ら量子世界で得た能力でエイヴァの状態を安定化させる。スコットも無事軟禁が解かれる。

ポストクレジットシーンではスコットがエイヴァ治療用の量子エネルギーを確保するため、量子世界に飛び込むが『インフィニティ・ウォー』で描かれたサノスのガントレットが発動(スナップ)。現実世界にいるハンク、ジャネット、ホープが灰になり、スコットは量子世界に取り残される。

重要登場人物

  • ☆スコット・ラング(=アントマン)・・・ソコヴィア協定違反のためラフト刑務所に収監されていたが司法取引により自宅軟禁を受けている。ジャネット視点の夢を見たことでハンクに連絡を取り、再びアントマンとして活動する。サノスのスナップでは生き残っている。
  • ☆ホープ・ヴァン・ダイン(=ワスプ)・・・スコット不在の間ワスプとして活躍している。羽があるため飛行が可能。母ジャネットを量子世界から救うため任務を行う。サノスのスナップで灰になる。
  • ☆ハンク・ピム・・・元アントマン/元S.H.I.E.L.D.エージェント。量子世界から妻ジャネットを救うために量子トンネルを開発する。サノスのスナップで灰になる。
  • ☆ジャネット・ヴァン・ダイン・・・元ワスプ。任務中に量子世界へ飛び込み帰還できなくなる。量子世界からスコットへ信号を送り夢を見せたり、憑依して量子トンネルの計算を行った。本作終盤でハンクに助け出され現実世界へ帰還。量子世界で得た能力でエイヴァの身体異常を安定化している。サノスのスナップで灰になる。
  • エイヴァ・スター(=ゴースト)・・・ハンクに見限られたS.H.I.E.L.D.エージェントの父を持つ。父の量子世界実験に巻き込まれ両親を失い、自らは物をすり抜ける能力を得るが、同時に寿命を縮めてしまう。自らの治療のためにビル・フォスターと共謀してハンクの研究を盗もうと企む。終盤エイヴァにより身体異常を安定化されるが完全に治癒したわけではなく、ポストクレジットシーンで彼女の治療のためにスコットらが量子エネルギーを収集する場面が描かれる。サノスのスナップでの生死は不明。
  • ビル・フォスター・・・元S.H.I.E.L.D.エージェントでハンクの元同僚。ゴライアス計画(ジャイアントマン)に携わる。事故後の幼いエイヴァの面倒を見て育て、彼女の治療法を探る。
  • キャシー・ラング・・・スコットの実娘。「ヒーローになりたい、アントマンのパートナーになりたい」と原作を思わせる発言をする。(コミックスでは「スタチュア」と呼ばれるヒーローになる)

登場ストーン・・・なし

ストーリー重要度

★★★★☆

あの『インフィニティ・ウォー』の後とは思えないレベルのアッサリ爽快軽快な作風となっており拍子抜けする人々が多いが、マーベルがこの作品をこのタイミングで公開した理由は考えておくべきだと思う。多くの人々が「量子世界」が『エンドゲーム』のキーとなると考えている。一方でスコットは量子世界に取り残され、ハンク、ホープ、ジャネットも灰になってしまったところまで描かれているため、彼がどのように生還するのか、彼が量子世界を活用できるのかなど様々な疑問が残る。(トニー・スタークとブルース・バナーが後を引き継ぐ可能性は大いにあるが)

キャシー・ラングの存在は無視できないが、スタチュアが登場するとしても『エンドゲーム』以降だろうか。

キャプテン・マーベル(2019)

キャプテン・マーベル (オリジナル・サウンドトラック)

キャプテン・マーベル (オリジナル・サウンドトラック)

 

超簡潔あらすじ

1995年。クリー人の特殊部隊スターフォースに所属するヴァースは、宿敵スクラルが棲む星に潜入任務中に捕まり、彼女が失っていた記憶を覗かれる。

逃げ出すことに成功し脱出するも、彼女が落ちた先は地球だった。S.H.I.E.L.D.エージェントのニック・フューリーとフィル・コールソンに取り調べを受けるが、スクラルに襲われ彼女はそれを追いかける。半信半疑のフューリーもスクラルがコールソンに化けていたことに気づき反撃、殺害し遺体をS.H.I.E.L.D.へ持ち帰る。

ヴァースとフューリーは個人的に接触し、彼女の失われた記憶からアメリカ空軍のプロジェクト・ペガサスの基地へと向かう。資料を閲覧した彼らはヴァースが夢の女性ウェンディ・ローソン博士の実験に参加した女性ではないかと疑い、ローソン博士を知るマリア・ランボーを尋ねる。そこで彼らはヴァースが地球人キャロル・ダンヴァースであることを知る。スクラルのタロスから、キャロルはローソン博士が研究していたエネルギーを吸収した超人で、スターフォースの上官ヨン・ロッグから別の記憶を植え付けられたことを知る。倒すべきはクリーであり、スクラルは侵略されていたのだった。

真実を知ったキャロルらはローソン博士が宇宙に残したラボを見つけ、タロスらは難民として保護されていたスクラル人の家族と再会する。ラボにはローソン博士がエネルギー源として研究していたテッセラクトがあり、フューリーらはそれを回収する。そこへスターフォースが現れ襲いかかるが、キャロルがついに全ての力を解き放ちスターフォースを倒す。

地球へ戻ったキャロルはヒーローとして宇宙の難民たちを助ける旅に出ることに決め、フューリーにピンチの際彼女を呼ぶためのポケベルを託す。

フューリーはS.H.I.E.L.D.でアベンジャーズ計画の立案を始める。

ポストクレジットでは現代の地球(『インフィニティ・ウォー』以後)が描かれ、アベンジャーズ基地でフューリーの残したポケベルの反応が止まり、スティーブ、ナターシャ、ブルース、ローディの前にキャロルが現れる。

重要登場人物

  • ☆キャロル・ダンヴァース/ヴァース(=キャプテン・マーベル)・・・主人公。ヴァースとしてクリー人の特殊部隊スターフォースに所属するが、正体は地球人キャロル・ダンヴァースであった。ローソンが研究していたライトスピードエンジンのエネルギーを吸収し、超人となる。ヨン・ロッグに記憶を修正されていたが記憶を取り戻し、スターフォースを倒しヒーローとなる。劇中「キャプテン・マーベル」と呼ばれることはない。サノスのスナップでは生き残り、フューリーの招集を受けアベンジャーズ基地にやってくる。
  • ☆ニック・フューリー・・・S.H.I.E.L.D.エージェント。本作時点ではまだ長官ではない。ヴァース(キャロル)とともに彼女の過去を探り、スターフォースを倒す。物語の終わりにキャロルを招集するためのポケベルを託される。(『インフィニティ・ウォー』で使用)キャロルとの出会いにより『アベンジャーズ計画』を計画する。
  • フィル・コールソン・・・S.H.I.E.L.D.エージェント。本作時点では新人。
  • ヨン・ロッグ・・・スターフォースのリーダー。クリーを裏切ったウェンディ・ローソン(=マー・ベル)を殺害し、キャロルの記憶を書き換えヴァースとしてクリー人の兵士に仕立て上げる。
  • ウェンディ・ローソン/マー・ベル・・・マー・ベルと言う名のクリー人であるがスクラルを侵略するクリーを裏切り、密かに地球へ亡命しスクラル人を保護している。ウェンディ・ローソンという名前でプロジェクト・ペガサスに参加、テッセラクトを利用して「ライトスピード・エンジン」開発するがヨン・ロッグに殺害される。
  • グース・・・猫の見かけをしたクリーチャーで「フラーケン」と呼ばれる種族。敵と認識した者を丸呑みするほどの危険生物で、クリー人にもスクラル人にも恐れられている。不安定なテッセラクトを飲み込んで収納する。
  • タロス・・・スクラル人のリーダー。ローソンに保護されている家族を見つけるため、キャロルの記憶を探索する。
  • マリア・ランボー・・・キャロルの元同僚で親友。ヴァースの正体がキャロルであることを伝え、パイロットとして戦いに参加する。
  • ロナン・・・クリー人の過激派。ヨン・ロッグによりキャロル打倒のため呼ばれるが、彼女の圧倒的な戦力を見て撤退。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のメインヴィランで、ガーディアンズらに倒される。
  • コラス・・・スターフォースのメンバー。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』ではロナンの直属の部下で、ドラッグスに殺される。

登場ストーン・・・テッセラクト(=スペース・ストーン)

ストーリー重要度

★★★☆☆

MCU史上最強のヒーローの登場という意味では『エンドゲーム』の切り札ともなりうる彼女。

重要なポイントとしては「彼女がテッセラクトのエネルギーを吸収している」ということ。

『インフィニティ・ウォー』でサノスのストーンの能力を抑えられたのはスカーレット・ウィッチであり、彼女の能力はマインド・ストーン由来。またヴィジョンのマインド・ストーンを破壊したのも彼女である。

それを考えるとストーン由来のキャロルの能力はストーン破壊の切り札になり得るため、サノスのガントレットを破壊できる可能性があると考えられるだろう。

またプロジェクトペガサスは『アベンジャーズ』冒頭でS.H.I.E.L.D.が研究していたテッセラクトの兵器利用のことであり、破壊されたローソン博士の発明「ライトスピード・エンジン」の研究をフューリーがアレンジしたのであろう。

観ておいたほうがいい作品ではあるが、本日公開終了(記事公開当時)なのでまだ観てなければ観るのは難しいか。

用語解説

  • ソコヴィア協定・・・アベンジャーズを国連管理下に置き、国連の可決の元で平和維持活動を行うための協定。アベンジャーズ分裂のきっかけの一つとなり、これにより多くのヒーローが戦犯扱いを受ける。
  • ラフト刑務所・・・超人的能力を持った危険な犯罪者を収容するための刑務所。普段は海の底に沈んでおり、脱出はほぼ不可能。『シビル・ウォー』での空港戦の後、サム、クリント、スコット、ワンダが収容される。スティーブによりワンダとサムは脱獄、クリントとスコットは司法取引により自宅軟禁扱いとなる。
  • 多元宇宙(マルチバース)・・・現実世界と異なるあらゆる次元の総称。ストレンジらカマー・タージの魔術師らは多元宇宙からエネルギーを得て魔術を使う。
  • アガモットの眼(=タイム・ストーン)・・・インフィニティストーンのひとつ。時間を自在に操る能力を持つ。
  • ダメージ・コントロール・・・スタークインダストリーズとアメリカ政府の共同機関。アベンジャーズら超人の戦闘時に置きた被害を回復させる役割を持ち、宇宙由来の戦争ゴミなどを回収・保管している。
  • ラグナロク・・・予言にあるアズガルドの崩壊。炎の魔人スルトがアズガルドで保管されている永遠の炎で蘇りアズガルドを焼き尽くす。ヘラを倒すため、あえてこれを利用する。
  • バトルロイヤル(=コンテスト・オブ・チャンピオン)・・・惑星サカールでグランドマスターにより開かれている大会。ハルクがチャンピオンであり、ソーがそれに挑戦する。原語版では「コンテスト・オブ・チャンピオン」と呼ばれている。
  • キモヨ・ビーズ・・・ワカンダの発明品で、ビーズ型。傷の治療や追跡装置、通信機、爆弾など様々な用途に使われる。
  • インフィニティ・ガントレット・・・インフィニティ・ストーンの能力を制御、最大化するガントレット。ニダベリアで作られる。これにより指を1回鳴らすだけで全宇宙の半分を消し去ることができる。ラグナロクの宝物庫にはレプリカが保管されている。
  • ソウル・ストーン・・・インフィニティ・ストーンのひとつ。その能力は明らかになっていない。ヴォーミアで「愛する者の魂」と引き換えに手に入れることができる。
  • 量子トンネル・・・ハンク・ピムが開発した量子世界へ行くためのトンネル。
  • プロジェクト・ペガサス・・・テッセラクトのエネルギーの調査と有効利用のためのプロジェクト。1995年以前にローソン博士により「ライトスピード・エンジン」が作られたがヨン・ロッグによりローソン博士が殺害され、エンジンはキャロルが破壊した。2012年にはS.H.I.E.L.D.でエリック・セルヴィグ博士が研究に携わるがロキを呼び寄せる結果になる。
  • ライトスピード・エンジン・・・ローソン博士が開発した、戦争を終わらせるための発明。エネルギー源はテッセラクト。テスト飛行中にヨン・ロッグに襲われ奪われそうになったところをキャロルが破壊。エネルギーをキャロルが吸収し超人となる。

まとめ

全部見るに越したことはない。

 

いやまぁ、当たり前なんですけど。

書いててもやっぱり混乱する程度には全貌を掴むのが難しいですMCU。

まぁ10連休もあるし、『エンドゲーム』自体は2ヶ月くらい余裕で上映してくれる気がするので、是非とも前作チェックしてから観てください。

 

海外ではもう一部公開され、日本でも早い劇場ではあと15分で上映開始されますが、百聞は一見にしかず。

まだまだ今から見直しても遅くはありませんので、是非。