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ディズニーとポリコレ『ムーラン』の素晴らしさと実写化に寄せて。

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昨日これをアップデートしていたら気になる記事を見つけてしまって、この記事を書くことにしました。

詳しくは後で触れますが、ちょっと僕が当初予想していた実写版「ムーラン」と違うものができるな、と思ってしまったので。

 

書いてる時は怒りというか、ちょっとがっかりした感情でぐるぐるしていたのだけど、途中で書くのをやめて改めてアニメ版「ムーラン」を見返して、思ったこととかわかったことがあるのでそれについても書きます。

 

ディズニー映画「ムーラン」とは

概要とあらすじ

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上海ディズニーランド/「クリスタルグロットへの旅」内のムーランのシーン。筆者撮影。

ディズニー映画「ムーラン」は1998年のディズニー長編アニメーションの一つ。製作はウォルトディズニーアニメーションスタジオ。長編36作目にあたり「ヘラクレス」と「ターザン」の間の作品となる。

中国の伝説「花木蘭(ファ・ムーラン)」をもとに作られており、ディズニー長編史上初めて中国人女性キャラクターが主人公となった作品。*1

 

由緒正しき家系に生まれながら、自分らしさを隠して女性らしく生きることを強いられることに疑問を抱いている主人公ファ・ムーラン。家族の名誉のためお見合いをするもトラブルが起きて大失敗、完璧な結婚も完璧な娘であることも自分には無理だとうなだれる。

一方、北方騎馬民族のフン族の襲来により、中国は戦争状態になる。ムーランの父ファ・ズーに戦争への招集命令が届くが、年配で足の悪い父が戦争に行くのに納得のいかないムーラン。父との口論ののち、ムーランは自身が男装して戦争へ向かうことを決意する。

というお話。 

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脚本は複数のアニメーターが参加していますが、「リロ・アンド・スティッチ」やドリームワークスの「ヒックとドラゴン」を手がけたクリス・サンダースも参加しています。名作になるわけだ。

 

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映像美と楽曲のすばらしさ。

ルネサンス期のディズニーの映像美は本気だ。そんでもって「ムーラン」の映像美はそのルネサンス期の作品でもかなり印象が強い作品になっている。ストーリーと舞台の配置が異様にうまい。

また、ミュージカルに軸を置いた作品では無いものの、ディズニー作品らしく歌唱曲がいくつか登場する。

オープニングは水墨画が万里の長城を描き、それがそのまま、フン族襲来のシークエンスへとつながる。ステレオタイプといってしまえばそれまでだが「みんなが期待している中国感」を最初に描いてくれるので清々しい。

 

家に名誉を(Honor to us all)とリフレクション(Reflection)

ムーラン自身のストーリーは、わざわざ説明しなくても田舎で、ちょっぴりゴミゴミしていて、でも農村というほど何も無いわけじゃないような街を舞台に始まる。1曲目から主人公ムーランは、個性とは程遠い画一化された「男にとっての理想の女性像」へと変身していく。「家に名誉を(Honor to us all)」は華やかな楽曲で、ムーランはお見合いの仲人さんに会うために化粧をし、美しく変身するが、この楽曲はいわゆる「呪い」の曲だ。

理想の女性という呪い、女性らしさという呪い。おしとやかで、慎ましやかで、気品があって、痩せすぎでも太り過ぎでもなく、子供を産み、男を支え、男のやることに口を出さない。そして結婚して家庭の繁栄を築くというのが「名誉である」という歌だ。

 

この「呪いの歌」の対極に位置するのがムーランのWISHソングとも言える「リフレクション(Reflection)」だ。

「家に名誉を」で着飾り、化粧をした自分を鏡に映し見て「知らない人に見える」と独白する悲しい楽曲である。

ムーランの家は広く、馬小屋もあり鶏も飼っていて、中庭には川まで流れている。立派な家だ。そしてムーランは先祖のお墓に頭を垂れながら歌う。

本当の自分を見つめて欲しい。ただ大人しく人形のように座っているだけの自分ではいたくない。

名誉、家庭、結婚・・・、立派な家、立派な家柄、家族の期待・・・、目の前に立ち並ぶ先祖の墓の無言の圧力の前に、自分の無力さと、それでも自分を認めて欲しいという歌を悲しげに歌う。このシーンの良さと切なさは、他のディズニーアニメーションの大ヒット作の有名シーンと比べても決して引けをとらない。

アナ雪の約15年前からディズニーはもう「ありのままで」を歌っていた。

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男性性の強調

ムーランは女性が男装して戦争へ向かう話である。

物語の時代設定が時代設定なので、そりゃあ、「家に名誉を」のような「女性への呪い」もキツイ。

一方で男性はというと、序盤こそ下品で、だらしがないという風に描かれるものの、「闘志を燃やせ!(I'll make a man out of you)」のシーンから一変する。

この楽曲のシーンはムーラン自身の技術とともに自信をつけ、仲間を見つける曲であり、劇中でもかなりアガるシーンの一つではある。

一方で強く、たくましく、勇気があって、死をも恐れない、男は強い!というメッセージはなんだか「家に名誉を」で女性にかけた呪いの男性版のような気がしてしまう。

もちろん当時は「戦争=男の仕事」であり、そもそもこういうシーンがなければ話が進まないので仕方がないのだが。

楽曲は本当に良い。めちゃくちゃかっこいい。

 

そして、極め付けが「愛しき女(ひと)よ(A Girl Worth Fighting For)」である。

「戦に勝てば女にモテるぞ!」から始まり、キャラクターそれぞれの理想の女性像を語る。

worthは「価値がある」「するに値する」という修飾語。直訳すると「戦うだけの価値がある女」という意味になってしまう。ディズニー映画特有のシリアスな雰囲気を和ませるジョークたっぷりなカワイイ楽曲だし、別にそういう意図が含まれていないのもよくわかってるのだけど、どうしても「女性を戦争の報酬」として見ている男性性、マッチョ主義が強調されてしまう。

 

追記(2019年4月)

この部分についてコメントにて指摘をいただきましたので、追記・引用させていただきます。引用部分は一部抜粋となっていますので、是非とも当記事最下部にあるコメント欄もご覧いたくようお願いします。

紫禁城のシーンで捕らわれた皇帝を救うためにムーランの策のもと、ヤオ、リン、チェンポーの3人が女装をするシーンがあります。この3人はA Girl Worth Fighting Forを歌っていた中心人物たちでこの曲も隊全体を表しているとはいえ、誰の曲かと問われるとこの3人の曲と言ってもいい存在です。
そしてムーランのDVDでは音声解説という本映画一本流しながらずっと解説し続ける特典映像が存在するのですが(解説を担当するのは本作品の監督であるトニー・バンクロフトとバリー・クック、そしてプロデューサーのパム・コーツです)A Girl Worth Fighting Forでのシーンのバンクロフトの解説を当てられている字幕の文をそのまま引用してここに書き写しますと「(ヤオ、リン、チェンポーの)3人は男性優位論者で“女はこうあるべき”と歌っている。これをスタジオ試写で流した時は“男女差別だ”とお叱りを受けた。そういう批判こそ僕らが狙っていたものだ。3人は女性に関して勘違いをしてる。ムーランはその勘違いを正して彼らの女性観を変えてしまうんだ。」
そしてヤオ、リン、チェンポーの3人が女装をするシーンでは「ここで男女の立場が逆転するのが面白いよ。差別的な歌を歌ったマッチョが女性の衣装を身にまとうなんて。」と言っています。
なので「そういう意図」は大いにあると思うのです。
そしてそれはここで爽快な笑いと興奮に変えられる。
そのための男性性だったのだと思います。
また、I’ll Make a Man Out of Youの男性性にも同じような意図があったと思えてならないんです。というのもヤオ、リン、チェンポーの3人が女装した瞬間かかる曲はこの曲のサビ、“Be a man”という歌詞がとても印象強く聴こえてきます。女装姿に”Be a man”というのはなんとも皮肉なようでだけどもすごく爽快な笑いだと思いました。
そしてそんな女装のお陰で宮殿内に潜入し、強いては陛下をシャンユーから逃すことが出来たという、1つの伏線的な男性性の強調だったと思うのです。
なのでその可能性を全く提示せずに男性性の強調だけ記事で指摘されているのに引っかかりを覚えました。

私の誤解した記事により、多くの方に歪んだイメージを与えてしまったように思われます。私のリサーチ・知識不足および鑑賞力不足の致すところです。

おかげさまで今後『ムーラン』が、よりすばらしい映画に感じられるようになると思います。餡子様ご指摘ありがとうございました。

戦闘シーンの場面設定

「愛しき女よ」という楽曲を利用し、さりげなく物語のシーンは平坦な田舎道から雪山へと移動している。そして楽しい雰囲気は突然終わり、間も無くして雪山での戦闘シーンへと切り替わる。この戦闘シーンの緊迫感。

公開当時からこの雪山を駆け抜けるシャン・ユー率いるフン族の軍隊のシーンはかなり話題となった。身を隠すことのできない真っ白な雪山というロケーション。圧倒的に不利な戦況。そこに映える迫り来る黒い悪役たち。

ムーランの機転によりこの場は難を逃れ、勝利を確信した彼らは皇帝に謁見するため都・紫禁城へとむかう。

雪山で置いてけぼりをくらったムーランのみがフン族がまだ襲ってくることを知り、危機を知らせるために軍の後を追う。

 

雪山から一変、赤や黄色を中心とした原色づかいが煌びやかな紫禁城のシーンへと映るとクライマックスはすぐそこである。緊張感がありながらもコメディを忘れないディズニーらしい戦闘シーンはかなり見もの。そして、夜空に映える東洋のエキゾチックな宮殿、打ち上がる花火、このロケーションを考えた人に100点を与えたいレベルで「わかってる」演出だった。

雪山のシーンがフン族の数の暴力を際立たせたのに対し、紫禁城のシーンは人数を大幅に減らしたフン族一行が民衆に紛れ、どこから現れるかわからない、場合によっては民衆が犠牲になる。そんな緊張感も与えている。

 

ポリティカルコレクトネスと、ディズニー作品の役割

ポリコレについてきちんと学んだわけでもないので、あんまり偉そうなことを言うと叩かれそうで怖いですが書きます。

 

当時90年代の作品群は中東の物語である「千夜一夜物語」をアニメ映画化した「アラジン」やアフリカを舞台とした「ライオン・キング」ネイティブアメリカンの女性を主人公とした「ポカホンタス」などの流れが続いていたため、ディズニーとしては作品の舞台や主人公を「ヨーロッパ・アメリカ/白人文化」という方面から広げ、ポリティカルコレクトネスを意識した方向に動いていたのは間違い無いと思う。

 

ムーランの吹き替え声優は香港系アメリカン人のミン・ナが担当した。

エージェント・オブ・シールドのエージェント・メイ役の人です。

 

ルネサンス期のディズニーはそれまでのディズニーが描いてきた「王子を待つプリンセス」(白雪姫、シンデレラ、オーロラ)から「行動するプリンセス」(アリエル、ベル、ジャスミン、ポカホンタス)へと変化してきた。

そこにさらに革命を起こしたのがムーランの「戦うプリンセス像」だ。*2

その血は確実に「塔の上のラプンツェル」「アナと雪の女王」「モアナと伝説の海」という作品に受け継がれている。

それに恋愛描写を極端に少なくしたのもこの映画の特徴であり、ムーシューとのやり取りで「あいつに惚れてんだろ?」「やめてよ!」というくだりこそあれ、ムーランとリー・シャンの関係性は恋愛感情というより師弟関係から生まれた信頼という方が自然でふさわしく感じられる。

これらの傾向も「プリンセスと魔法のキス」や「モアナと伝説の海」に受け継がれている思う。

 

ディズニーという会社がポリティカルコレクトネスに敏感になっていた時代に、中国人キャラクターを起用し、前述「家に名誉を」のような「女性にかけられた呪い」を必死に解こうとしていたことがよくわかる。

それでもまだ色々な方面から文句も言われるし、やっぱりまだダメなところもあるんだけど、この作品はセンセーショナルで評価に値すべき傑作だと思う。

 

実写版「ムーラン」のプロジェクト

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ディズニーランド(アナハイム)/ムーランのグリーティング。アナハイムを訪れて一番最初に見つけたキャラクターが彼女で驚いた。筆者撮影。

と、ここで実写化の話に移ります。

現在までの実写版「ムーラン」のプロジェクトのニュースをまとめてみました。

ムーラン実写化プロジェクトの第一報、というかスクープは2015年頃の話だそうで、日本での「マレフィセント」公開前。

2015年4月

eiga.com

2016年9月

時期的にワーナー・ブラザースの「PAN」でタイガー・リリィを白人のルーニー・マーラが演じた後、「ドクター・ストレンジ」でチベット系男性・エンシェント・ワンを白人女性に設定変更しティルダ・スウィントンが演じたこと、「ゴースト・イン・ザ・シェル」の草薙素子をスカーレット・ヨハンソンが演じるという報道があったことなどから、「ムーラン役は絶対にアジア系で!!」という署名運動がおきていたようです。

後述しますが、実際リー・シャンにあたる相手役男性が白人の予定だったようで、「ポリコレとは・・・」とちょっと頭を抱えました。

eiga.com

 

2016年10月

「3D実写版」という表記が気になる・・・。ここで1度目の公開日が決まります。2018年11月2日。

eiga.com

前述した「ムーラン恋人役が白人男性の予定だった」問題。おそらく主演女優は流石にアジア系で探してたとは思うのですが、こっちはそこまで深く考えていなかったのかも。(普通に批判されるってわかりそうなもんですが)嘆願署名を見て慌てて変更に至ったのでは、と勘ぐってしまいますね。

ここら辺で「脚本のリライト」があったことが公表されています。

eiga.com

監督もきちんとアジア系で欲しかったようですがうまくいかなかったようで。

eiga.com

 

2017年2月

アジア系監督は無理だったけど「女性監督」で落ち着いたよ、という配慮でしょうか。映画が面白ければ何の問題もないです。

eiga.com

 

2017年11月

そして主演女優が確定!!お美しくてすばらしい。しかも中国系ではなく中国人、だそうです。ハリウッド映画はすでに経験済みで実力もある女優さんとのこと。

 

ちなみにこのタイミングからさりげなく公開日が2019年に変更されています。

eiga.com

 

2013年3月

バラエティ紙より。公開日が2020年3月27日に変更。

うわー魔の3月じゃないですか。日本は冬公開作がなぜか3月に移動してくることが多いので、被りを嫌気されると一気に日本公開が遅れるので不安しかないです。

米国公開11月/日本公開3月の「モアナと伝説の海」と被った「美女と野獣」は1ヶ月だけの遅れで公開されましたが果たして・・・。

variety.co.jp

にしても、映画ニュース系サイトの情報の精度がサイトによってバラッバラなの一体何なんだろう。絶対書いてる人の希望or憶測入ってるよね?って記事も多いですよね。

 

2018年4月

そして我らがドニー・イェン!!

出演は嬉しいのだけど「ムーランのメンターとなる指揮官タン役」という謎の文言を発見、「ムーラン」ファンがざわつきました。

eiga.com

 そしてこれが昨日見つけた記事。

eiga.com

ジェット・リーの出演は素直に喜ぶべきかもしれない、でも皇帝役って 笑

そして同時に発表されたコン・リーの役柄についてはこちらの記事の中にこういう記述がある。気になったところを太字にさせてもらった。

一方、チャン・イーモウ監督やチェン・カイコー監督ら中国の巨匠の作品に主演し、ハリウッドでは「マイアミ・バイス」や「SAYURI」で活躍したコンは、悪役の強力な魔女を演じる。アニメ版で中国侵略を進めるフン族のリーダー、シャン・ユーに代わるキャラクターようだ。 

また、実写版オリジナルの登場人物として、ニュージーランドを拠点に活動する中国系ベトナム人女優ザナ・タンがムーランの妹役に起用された。

 あっ、これほぼ完全オリジナルやん・・・。

 

 どんな話になるのか

アニメ版「ムーラン」はファンタジー要素をかなり排除した作品だった。

もちろんサイドキックのポジションで、ムーシューというドラゴンが登場するのだけど、彼が具体的に行動を起こしたのは皇帝の側近チ・フーに嘘の手紙を渡したシーンくらいで、そのほかの行動は、ほぼいなくても間違いなく話が進む。

流石に原作の「花木蘭」は読んだことないから彼が登場するか否かはわからないのだけど、ディズニー作品としてはめずらしく、かなりリアリティに寄った作りにしているなと思っていた。

 

それが、実写化で「魔女が登場する」と。

めちゃくちゃファンタジーやがな・・・・・・・・・・・・。

 

そりゃあ、シャン・ユーも雪山で雪崩に埋もれても生きてるし、壁を平気でぶち破るしファンタジーだけど・・・!チェン・ポーも馬と大人2人をロープで引っ張る男たちを丸ごと持ち上げるけど!!

 

このシャン・シュー退場、魔女登場の流れで、アニメ版「ムーラン」のリー・シャンの存在も危ういなと思うようになりました。

実際、ドニー・イェン演じる指揮官タンを「ムーランの相手役」と報道する記事もあり・・・。

variety.co.jp

うーん、リー・シャンのイメージってドニー・イェンかなぁ、、、

いや、ドニー・イェンじゃないからオリジナルキャラクター登場なんだろうけど。

いやそもそもリー・シャンの退場が決まったわけじゃないのだけど。

なぜ設定の変更が必要なのか

例のニュースを受けて、ちょっと気持ちがムカムカしていたのですが、なぜ設定が必要なのかは、冷静になって「ムーラン」を見返してた時に思いつきました。

 

「ムーラン」に登場するフン族のモデルは北方騎馬民族の突厥と言われています。

元をたどればフン族(Hun)はハンガリー(Hungary)を起源とする人種とも言われており、西ヨーロッパから北アジアへと移動し匈奴・突厥などの部族に別れました。

匈奴人はモンゴル人、突厥人はトルコ人の起源とも言われています。(世界史うろ覚え知識)

 

「ムーラン」公開当時、トルコ政府は「この映画は我々の先祖を悪役に仕立て上げている」との非難声明を発表するなど、問題が起きました。

ポリコレを意識して作ったはずの映画が、また別のポリコレ問題を引き起こしたという感じです。

 

世界史をやっていた方はご存知かとおもますが、この匈奴や突厥は度々中国に進行しており、彼らの侵入を防ぐために万里の長城が作られたとされています。

そのため、ある程度史実に則った作品の造りではあるのですが、やっぱり悪く言われた人たちは面白くないですよね。

 

ムーシューの「モンゴリアンバーベキュー」発言

アニメ版「ムーラン」には、シャン・ユーが連れているハヤブサに、ムーシューが火を吹きかけ「これぞモンゴリアンバーベキューだ(Now, that's what I call Mongolian barbeque.)」ってジョークをかますシーンがある。

全編にわたり、クールで狡猾、人間以上にシャン・ユーの右腕として活躍していたハヤブサが、このシーンをもって以後は知性を失った鶏のようにムーシューのオモチャとして描かれる。

これは冷静に考えるとかなりヤバイ演出だと思う。

でもシャン・ユーの実写版が見たかった・・・。

いやーでも、「ムーラン」に登場するヴィランのシャン・ユーは本当に最初から最後までどっぷりと悪!って感じのかっこいいヴィランだったので実写化が楽しみだったこともあり非常に残念・・・。

コメディリリーフでもなく、自分が原因で失敗するシーンもなく、狡猾で残忍、人を殺すことを厭わず好戦的なイメージはディズニー的でこそないが、「これぞ悪役!」と言えるキャラクターだった。

シャン・ユーの圧倒的な強さが映画全編にわたって強調されているのも、クライマックスのムーランVSシャン・ユーのシーンをより印象付ける役目を果たしている。

裏技も魔法もなく(ムーシューの力は借りるが)それこそ「闘志を燃やせ!」の「裏をかく戦術、知恵」を利用して、強大な敵を打ち負かすムーラン。シャン・ユーの強大さやかっこよさが、そのまま主人公ムーランの強さ、かっこよさの証明にもなる。いや〜よくできている。

シャン・ユーの日本語吹き替え版声優も藤岡弘、さんが担当しており、バッチリと役にはまっていてすごく良かったです。

 

全然関係ないけど「万里の長城は宇宙から来たモンスターを防ぐための城壁だった!!」というトンデモ映画があるので載せておきます。

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 主演マット・デイモンの友達ジミー・キンメルがこの映画めっちゃイジってて笑った。

最後に

実写版「ムーラン」初報を聞いた時は正直嬉しく思いました。

「美女と野獣」とか「アラジン」とか「ライオンキング」とか、黙っててもお客さんが入るような映画をリメイクする価値とは?というのをやっぱり考えてしまうからです。

「ムーラン」はセンセーショナルで、メッセージ性がはっきりしていて、戦闘もので実写映えがするのが目に見えていたし、日本での知名度が高いとはいえない作品なので、実写化によってもう一度注目してもらえる作品になればそれはいいことだと思います。

 

正直、「魔女が登場する」というあまりにも極端な設定変更は僕は納得がいかないのですが、ポリティカルコレクトネスに敏感なディズニーであればこそ、この部分を変えなくてはいけないと思ったのであれば、仕方ないのかなと思います。

 

かつてのディズニー作品での、ディズニー自身が納得のいかない部分を、実写化という手段でアンサーするというのがこの一連のプロジェクトの目的の一つであるようにも思っているので、特に「シンデレラ」「ジャングル・ブック」「美女と野獣」なんかはそこらへんもよくできていたし、これがディズニーのやり方であるならば受け入れるべきだし、映画が面白いことが第一前提だよなとも思います。

それよりも、僕たちが戦うべきは「そういうポリコレとか一切無視して『女性らしく』『男性らしく』みたいな呪いだらけの宣伝を平気で行うディズニージャパン」だな、とも思います。

 

とはいえ、もっといい設定なかったのかよ!!!笑

 

とりあえず、またモヤモヤして眠れない日々が続きそうですが「ムーラン」を楽しみにして待とうと思います。

 

(追記)

映画が公開されましたね。

僕が思っていた以上に考えられていた部分と、それ以上に全く考えられていなかった部分がありました。とりあえずお読みください。

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*1:ディズニー長編史上初のアジア人の主人公は「ジャングル・ブック」のモーグリ。男の子のキャラクター。

*2:ムーランは(日本ではそういう扱いのグッズ類が少ないものの)ディズニーの公式設定としてプリンセスの扱いを受けている。