ちょっと前に『「パッとしないけど愛おしい」絶対に観て欲しいディズニーアニメの名作7選』という記事を書いて、結構評判も良く、まだまだ紹介したい作品もあったのでこの度第2弾として紹介させていただきます。
前回の記事。
前回が「リトル・マーメイド」以前から7作のチョイスでしたが、今回は「リトル・マーメイド」以降から7作。
本当は「リトル・マーメイド」以降も2回くらいにわけて14作、合計21作紹介したいところなんですが「ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ作品56作しかないのに約半分がパッとせぇへんてどういうことやねん」というツッコミをされる恐れもなきにしもあらずなのでそこはぐっと堪えて7作厳選しました。
なので僕にとって「ポカホンタス」「ノートルダムの鐘」「ムーラン」「ターザン」あたりは「パッとする作品」になりました。
ノートルダムとか四季でもやってるし・・・ムーランも今度実写化するし・・・。
いや苦労してるんですよディズニーって・・・今でこそ名作と言われてる作品も多いけど当時は評判悪かったり、期間で言えば黄金期よりも暗黒期のほうが長いだろうし、56作っていうけど5作くらい日本でソフト販売ないし・・・。
ともあれ、今回は選びに選び抜きましたので前回よりもボンクラ感のある作品(失礼)は少なく、傑作揃いとなっております!
目次
ビアンカの大冒険/ゴールデンイーグルを救え!
- アーティスト: ブルース・ブロートン
- 出版社/メーカー: ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント
- 発売日: 2004/08/06
- メディア: DVD
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いきなり大傑作ですよ!
大傑作なのですが海外での興収は爆死し、なんと日本では劇場公開すらされませんでした。なんてこった!
「リトル・マーメイド」の次、「美女と野獣」の前というモンスター級の映画に挟まれた作品で、劇場公開もなかったためか日本での知名度はかなり低い目立たない作品となっています。
インタビューなどを見ても語られることがほとんどなく、「リトルマーメイドの次は美女と野獣」というような言い方がされたり(関わっているスタッフによってはそれが正しいのかもしれないが)びっくりするほど「なかったことにされている」作品のひとつ。
ところがその完成度は「ディズニールネサンス」の名に恥じないレベルで、脚本構成、前作を大きく超えたインディ・ジョーンズさながらの大冒険活劇、誰もが恐ろしく思うヴィランのキャラクター描写、美しい大自然・・・。見ていて大興奮できる素晴らしいアニメーションです。
何よりも「リトル・マーメイド」を経て、「画」の見せ方が格段にパワーアップし、豪快でより映画的な見せ方ができるようになっています。海のシーンが多かったリトル・マーメイドよりも明るい色のシーンが多いのもこの映画を印象付けるのに寄与しているのかも。
伝説の怪鳥「ゴールデン・イーグル」のマラフーテを罠から逃がしたコーディは、その罠を仕掛けた密漁人パーシバル・マクリーチに誘拐・監禁される。
コーディのピンチを知った救助救援協会は前作よりも仲の深まったビアンカとバーナードのコンビを派遣する。
この映画の面白いところは1本なのに2本立てな物語の構成で、1本が「コーディ救出作戦」もう1本が「バーナードによるプロポーズ作戦」であり、それらが同時進行する。それ自体は決して珍しくないのだけど、前作「ビアンカの大冒険」を見てきた僕らにとっては、愛着がある彼らの「プロポーズ大作戦」がハラハラキュンキュンしてたまらないのだ。
だから、是非とも「ビアンカの大冒険」を見てからこの作品を見て欲しい。
きっと楽しめますよ。
(追記)
この作品について単独記事を書きました。
ヘラクレス
ヘラクレス MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
- 発売日: 2014/03/19
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「歌はいいんだけどなぁ・・・」とか散々言われている作品です。僕もどうやって褒めようか迷いながら書いています。
ギリシャ神話をモチーフにしたオリジナルストーリーといえば聞こえはよくて、もはやパロディでありコメディです。ヒーローコメディ。
ディズニーが贈る感動の話題作!とか期待してしまうと大失敗するのですが、コメディとして見ればこれが結構面白く、安心して見ていられる映画です。
その中毒性から以外にファンも多いのもわかります。
その中毒性の原因のひとつがヴィランのハデス。
おしゃべりだけど暗く、ボソボソ喋るキャラクターで、彼のセリフはめちゃくちゃ皮肉とユーモアに溢れており、「ヘラクレス」という映画の魅力の半分くらいは彼なんじゃないかという強烈なキャラクター設計がなされています。
ヘラクレスが強すぎて彼のほうが不憫に思えたりする展開も面白く、人気のキャラクターです。
そしてもう一つの中毒性の原因はやはりアラン・メンケンによる楽曲!
なかでも「Go the Distance」はディズニーファンならば知らない人はいないほどの名曲とされており海外では「Part of Your World」や「A Whole New World」に負けず劣らずの人気を誇っています。
そのほか「Zero to Hero」や「I won't say I'm in Love」も最高で、後者はメガラの声優を担当した工藤静香が歌った日本語バージョンもかなり良い出来でおすすめ。
ラマになった王様
- アーティスト: スティング,デヴィッド・ハートレー
- 出版社/メーカー: ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント
- 発売日: 2001/12/19
- メディア: DVD
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他人の犠牲を顧みない自己中心的で傲慢な若き王クスコが、部下イズマの怒りを買い、ラマと呼ばれる動物に変身させられてしまう。王国から追い出され農村で目覚めたクスコは、かつて冷酷に対応した農民のパチャの助けを借り元の姿へ戻る旅をする。
そうかの有名な「美女と野獣」のような因果応報、動物変身もの、そして呪いを解き、あたたかい人間の心を取り戻すまでの感動巨編!!
なーんてことは一切なく、最初から最後までふざけている「よくこれ長編でリリースする許可出たな・・・」というような、ぶっ飛んだ作品。
全編にわたり「笑い」に重点を置いたスタイルはまるでディズニーチャンネルで放送されているカートゥーン系のスタイルのようでもあり、いっぽうでメインストーリーの話の腰を折るようなダレた演出もなく、「これが本当にディズニー映画なの!?」という驚きも大きいおもしろい作品です。
そのぶっ飛んだスタイルから中毒になるファンも続出、主人公クスコ、ヴィランのイズマはもちろん、イズマの部下でサブヴィランであるクロンクの天然っぷりがもう最高。
大人になっても感心できる笑いのネタと、子供がみたら腹筋崩壊するんじゃないかというような息もつかせぬ笑いの応酬はディズニー映画の中でもブラックホース的な面白さかと思います。
クスコ役で日本語吹き替え版を担当した藤原竜也氏は、声優としては上手いとは言い難いけど、それを完全に利用した演技でクセが強く、大正解のハマり役、むしろ狙ってやっているのだとしたら「なんて俳優さんなんだ・・・」という感動すら覚えます。
僕はまだ未視聴なのですがクロンクがメインの続編もありますよ。
トレジャー・プラネット
「2000年代のディズニーは暗黒期だからクオリティが低い」とぬかす人々にはこの作品を是非見てもらいたい。というか、見ろ!!
そしてウォルト・ディズニー・ジャパンよ、Blu-rayを出せ!!!
かつてウォルト・ディズニー時代にも実写化したロバート・スティーブンソンによる冒険活劇「宝島」を原作とし、それを大胆にも宇宙を舞台に大翻案した快作です。
一筋縄ではいかずホロっと泣けて勇気をもらえる脚本のすばらしさと、息を飲む映像美、ド派手なアクションと魅力的なキャラクター描写、どれを挙げてもルネサンスの作品たちに負けず劣らずの傑作となっています。
監督は「リトル・マーメイド」や「アラジン」を生んだジョン・マスカーとロン・クレメンツのコンビです。(この二人は「ヘラクレス」も作ってはいるんだけど)
それこそ「ノートルダムの鐘」のように一部のファンからは最高傑作として強い人気を博していながらも、(特に日本では)暗黒期の闇に葬り去られつつある作品で、かなり不遇の作品です。「ノートルダム」は最近やっと日の目をみるようになってきたけど・・・。
本当に観てないのは勿体無い、特に「ディズニー好き」「アニメ映画好き」というのであればマストで見てもらいたい作品です。
「夢」「ロマン」「冒険」「親子愛」「自己実現」すべてがこの映画に詰まっています。
(追記)
この作品について単独記事を書きました。
ブラザーベア
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主人公キナイはある日熊に襲われ、助けに駆けつけた兄シトゥカを失う。復讐に燃えるキナイはその熊を殺してしまうが、その直後に不思議な力で自身を熊の姿に変えられてしまう。村のシャーマン・タナナの導きで元の姿に戻る旅に出るキナイは、道中子熊のコーダと出会い共に旅をするようになる。
兄弟・家族愛、人間と動物、狩るものと狩られるものという重々しいテーマを描いた問題作。
因果応報、懺悔の物語であり、ありがちなストーリーながらディズニーっぽくなく、(似たようなプロットの「ラマになった王様」とは当然だがテイストが全く違う)大人でも深く考えさせられるテーマがベースになっている。
自業自得とはいえ、神様はあまりにも残酷・・・、楽しくて愉快な雰囲気の中にも、思わずヒヤッとさせられてしまう展開をぶち込んでくるあたり、本当にディズニーは侮れないなぁと思わせられます。
「ターザン」と同じくフィル・コリンズが劇中曲を担当しており、その素晴らしさはお墨付き。
奇しくもスタジオ最後の(本当は「ホーム・オン・ザ・レンジ」という作品もあるのだが)手描きアニメーション作品となってしまったこの作品ですが、その後のディズニーはピクサーを買収するまでCGアニメーションの分野でも手こずり、いよいよ暗黒期が本格的になってしまうという皮肉・・・。
とはいえ今作は、見て損はない快作です。
プリンセスと魔法のキス
プリンセスと魔法のキス ブルーレイ(本編DVD付) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
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ほぼほぼ喧嘩状態で独立を求めていたピクサーを穏便に完全子会社化し、ピクサーでCCOを勤めていたジョン・ラセターをディズニースタジオでも登用して作られた本作。
「ブラザーベア」で事実上終了してしまった「ディズニーの手描きアニメーション分野を復活させる」と意気込み、中でもディズニーとしては失敗の許されない「プリンセスジャンル」に「アメリカが舞台」「黒人プリンセス」という新しい要素を吹き込んで作られた本作。
監督に「リトル・マーメイド」「アラジン」「ヘラクレス」「トレジャー・プラネット」のジョン・マスカー、ロン・クレメンツを招き、マーク・ヘン、ランディー・ヘイコック、ブルース・スミス、アンドレアス・デジャ、エリック・ゴールドバーグなど、往年の凄腕アニメーターたちを再び呼び寄せ、最強の布陣で臨んだ本作・・・だが、実際のところそのほかの設備や人手の問題で万全の体制とはいえなかった。
ストーリーに所々甘い点こそあるものの、「これがCGにはできない手描きアニメーションの底力じゃい!!」と言わんばかりの大迫力の演出が見もの。
今後の「塔の上のラプンツェル」や「アナと雪の女王」「モアナと伝説の海」のどれとも違う現代的で共感できるプリンセス像も素晴らしく、本当に見てもらいたい作品のひとつ。
アメリカン・アフリカンなどの肌の黒い少女たちにとって主人公ティアナはRepresentationな存在となり、広く愛されるキャラクターでもあるので、ディズニーとポリティカルコレクトネスを考える上でも重要な作品。
奇しくも興行成績としてはイマイチに終わってしまい、ジョン・ラセターの画策した「手描きアニメーション分野の復活」は自作「くまのプーさん」で再び幕を閉じてしまうのだが、このタイミングでこの名作を生み出せた功績は計り知れない。
頼むからウォルト・ディズニー・ジャパンはプリンセスジャンルで商品化・イベントを組むときにティアナをハブるのはやめろ。
(追記)
この作品について単独記事を書きました。
くまのプーさん(2011年版)
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「プリンセスと魔法のキス」から始まった「手描きアニメーションの復活」で作られた2作目であり、なんと最後の作品。
たった2作で!!終わってしまった!!
失敗の許されない「プリンセスもの」というジャンルで、そこそこの興収しか稼げなかったディズニーはまたしても失敗の許されない「くまのプーさん」というジャンルに果敢にも挑戦する。
結果、アニメーションは「のほほん」と素晴らしく、手描きの良さを存分に活かした作りになったものの、やはり「くまのプーさん」以上に「くまのプーさん」を超えることができず、爆発的大ヒット!とはいかず「くまのプーさん」らしい評価と興収に落ち着いた。なんだこの文章。
往年の「くまのプーさん/完全保存版」などでも見られた情報の齟齬、コミュニケーションのすれ違い、思いやりが裏目にでる大騒動といった要素も踏まえながら、はちみつ中毒プーさんあるあるな狂気に溢れたシーンも柔らかいテイストで再現。
一方で「これは絵本原作」という「くまのプーさん」の原点を視聴者に再認識させるようなメタなギミックを用いた言葉遊び、または文字通りの「文字遊び」を大胆に取り入れ、やはりここでも「手描きだからこそ生まれる世界観」を存分に活かしている。
正直これを面白い、つまらないと捉えるのは人それぞれになってしまうかなという部分もあるのですが、僕からしたら「こんなに小ネタに溢れている作品が面白くないわけがない!」という気持ち。
「プリンセスと魔法のキス」同様、往年のアニメーターの本気が爆発している作品でもあり、「これがもっとヒットしていれば・・・」と思わないこともない。
とはいえこの後の作品がどれもヒットしていて、どれも名作であることを考えると・・・やはりちょっとほろ苦いなぁ。
とりあえず、英語を勉強している人、英文科に通っている人なんかは「イギリス文学風の言葉遊び」をアニメーションで二次体験できるのでオススメです。
くまのプーさん/完全保存版 MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
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(追記)
この作品について単独記事を書きました。
そして黄金期
というわけで7作紹介しました。
「くまのプーさん」以降、「塔の上のラプンツェル」からのディズニーの大躍進はもうご存知の通りです。
復活を試みた「手描きアニメーション」をきっぱりと諦め、ストーリーの大胆な修正がききやすい「CGアニメーション」での制作にピクサー流の制作スタイルを導入し、ディズニーはどんどんヒット作を飛ばしていきます。
休職によりラセター不在の現在、公開控えている作品がすべて続編ということもあり、ディズニーファンは大きな不安も抱いていることは間違いなく、一方で楽しみでもあります。社長のボブ・アイガーも任期を延長してはいますが、そろそろ後継者を見つけないといけない時期ですし。
吉と出るか凶と出るか、黄金期は続くのか再び暗黒期に突入してしまうのか、まだわかりませんが、これからもずっと注目し続ける価値のある会社ですね。
魔法の映画はこうして生まれる/ジョン・ラセターとディズニー・アニメーション [Blu-ray]
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