『マレフィセント』の続編が公開される。しかも、今年。
Angelina Jolie returns in Maleficent: Mistress of Evil. Coming to theaters October 18, 2019. pic.twitter.com/TX4C2bpEnw
— Maleficent: Mistress of Evil (@Maleficent) 2019年3月6日
突然のニュースだった。
『ダンボ』『アラジン』『ライオン・キング』とディズニー作品実写化大作が3作も控えており、新作実写はケネス・ブラナーが監督を務める『アルテミスと妖精の身代金』、マーベル・スタジオは『キャプテン・マーベル』『アベンジャーズ/エンドゲーム』スターウォーズが『EP9』、アニメはWDASが『アナと雪の女王2』ピクサーが『トイ・ストーリー4』そして21世紀FOX買収で公開作がかなり増えている中で、2020年公開予定だった『マレフィセント』続編が突如繰り上げ公開されることになった。
一体何を考えているのかよくわからない。これほど安全牌がひしめき合っているスケジュールでそんなにコケたいのか。
いや、(内容はともかく)前作ヒットはしたから、今回もヒットするかもしれないけどさ・・・。
ディズニージャパン×ドコモによりローンチされたディズニーの動画配信サービス「Disney DELUXE」が思った以上に充実した内容で、先日呈した苦言もあっさりと手のひら返しして楽しんでいる。
また、動画配信サービスのいいところとして、劇場公開時に鑑賞し、ソフト購入にまで至らなような感想を抱いた内容の映画でも、まぁ月額見放題だしということで再鑑賞して精査することができる点である。
ということで、僕の琴線に全く触れることのなかったこの『マレフィセント』、ディズニーデラックスで再鑑賞してもやはりダメだった。
ここら辺で映画『マレフィセント』が好きな方は早々に立ち去っていただきたい。
また、一度批判のスイッチが入ると、普段なら褒めてる部分もけなしてしまいそうなので話半分で読んでほしい。
『マレフィセント』がどうダメだったのか、再考する。
目次
打ち崩された期待
『マレフィセント』が映画化されると知った時、僕は本当に期待していた。同じように期待していた人は多かったと思う。
マレフィセントというキャラクターはディズニー史においてもかなり重要な役割を持ったキャラクターだと思う。
初出は『眠れる森の美女』のヴィランとして、主人公を食ってしまうほどの圧倒的な存在感のあるキャラクターとして登場した彼女。
「オーロラ姫誕生パーティーに招かれなかったから」という、いささか大人げない理由で、生まれたばかりの赤子に死の呪いをかけてしまうとんでもない女である。
『ファンタジア』に登場する魔人チェルナボーグや『白雪姫』のウィックドクイーンに代わる存在として「悪の化身」「ヴィランズの代名詞」となり、グッズ展開、ディズニーパークでの様々なイベント、そしてゲームなどにおいて彼女は「最も凶悪なディズニーヴィラン」「ボス」として扱われるようになる。
そんな彼女を「主人公」にした映画。
ヴィランのなかでも最も邪悪でカリスマ的な存在である彼女を主人公にする。ディズニーにそんな切り札があったとは。
主演はアンジェリーナ・ジョリー。他の誰にもなし得ない完璧な配役である。
僕らが感じていたのは「ディズニーが今までと違うディズニーを見せてくれる」という期待だ。
ディズニー作品はどれも素晴らしい。けれどアンチディズニーの人々が度々言うように、毎度毎度ハッピーエンドが確定されていると、成り行きが予想できてしまう。
もちろんそういうお約束も含めて、それぞれが辿る違ったルートを楽しんではいるのだけど、たまには安定のディズニールートを外れた「そうじゃない」エンドを期待してしまうことがあるのだ。そんな作品が現れた時に、「こんなのディズニーじゃない」と評してしまいたくなるような何かを、矛盾しているけど期待しているのだ。
そしてそれができる、いや、それを最高の結末に持っていける素材が『マレフィセント』なんじゃないかと思ったのだ。
当時は今みたいに実写リメイクがバンバン発表される前。寧ろその先駆けみたいな作品が『マレフィセント』だった。
ファンとしても、一般映画好きの人々としても、期待が大きい作品だったと思う。普段劇場に行かない僕の両親まで劇場に観に行ったくらいだ。
結果は、ご存知の通りである。
期待させやがってーーーーーーーー!!笑
キツすぎる「マレフィセントはいい奴」アピール
まぁしょうがない。
ディズニーブランドでバッドエンドは、まだちょっと時代が早かったのだ。
それはいい。ハッピーエンドでもいい。
いいけど、この映画マジで対象年齢が謎なのである。なんというか、幼稚。
戦闘シーンは怖いじゃん。羽(体の一部)を切りとられるなんて、見てるだけで痛くてやんなるじゃん。モンスターは不気味じゃん?それでも子供にも見てほしいという部分がどうしても譲れなかったのだろう。大人向けに振り切れず、ストーリーが全体的に甘ったるい。
「わかりやすく」を追求しすぎているのか、ただ監督がヘタなのかわからないが、「マレフィセントはいい奴」アピールがあまりにもクドい。
「いい奴だったけど闇落ちしたマレフィセントが心を入れ替える」ストーリーは可能性の一つとして予想はできても、あそこまで大胆に「マレフィセントとオーロラのほのぼの交流シーン」が入るとは予想だにもしなかった。
マレフィセント、全く闇落ちしてない。「魔が差した」レベル。
そりゃあ「姫の誕生パーティーに呼ばれなかったから呪い殺す」も大概幼稚だけどさ、マレフィセントというキャラクターはそれが逆説的に彼女の残虐性を強調していた部分もあるんだよ。
呪いのための、リアリティのある理由づけもいい。許せる。「恋に破れ、さらに裏切られたが故の『復讐』」は、ありがちだけど物語として動かしやすく、観客も感情移入しやすい。けど呪いを解くための条件までも自分でつけてしまうのはどうだろう。
確かに主人公はマレフィセントで、彼女をハッピーエンドへ導くためならば仕方がないとも言える。これは古参ファンのただのエゴでしかない。
それでも『「真実の愛なんて存在しない』と言いつつ、心の底ではまだ信じている』みたいな甘い展開、マジでマレフィセントにやらせないでほしい。

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必要のないキャラ
マレフィセントをいい奴にしてしまうと言うことは、必然的に他のキャラクターがヴィランの役を担うということになる。
今回その可哀想な役を担ったのがオーロラの父ステファンである。
アニメでは口ひげをたくわえた気のいい王様で、隣国の王ヒューバートと酒を飲みまくっている。
このキャラの解釈はいいと思う。
ただ、オーロラに固執する割には女王をいともあっさり見捨てるのが、彼のキャラクター性と矛盾してなくても、その他の「説明しすぎ部分」とのアンバランスさが目立ったと思う。
というかこいつも最初はいい奴だったのに、こんなに綺麗に闇落ちしちゃって。なんでそれがマレフィセントでできないの?
それはそれとして、問題はこの時点でほぼマレフィセントとステファンとオーロラ3人だけの話で完結してしまえるのだ。
妖精のノットグラス、シスルウィット、フリットルの三人は「キスで目覚める」という条件魔法をつける役割をマレフィセントに奪われてしまったため、この映画では本来必要がないキャラクターなのに「(名前は違うが)原作にいるから」存在しているキャラクターである。正直言って不要キャラなのだ。
いやいや「そのあと森でオーロラを育てる必要がある」?それは『眠れる森の美女』ではマレフィセントが彼女を見つけられなかったから成り立つのである。逆説的に妖精たちの魔法なりに、それなりの能力があったという説得力にもなりうる。(ちなみに『眠れる森〜』のマレフィセントの部下は間抜けというのも理由だが)
オーロラ姫生誕祭で初めて出会ったような得体の知れない、魔力のほども知れない妖精たちに、しかも数年前まで戦争をしていた国の住人に、大事な娘を預けるだろうか??
実際妖精たちが初めて登場した時、ステファンは若干警戒しているのだ。この演出が活かされてないのなんなんだよ。
結果『マレフィセント』では妖精たちが森にやってきた数秒後に見つかっている。
妖精たちはオーロラ姫の育ての親として適役ではない。オーロラはむしろマレフィセント、そしてカラスのディアヴァルに育てられていく。
誰がどう観ても不適格なのに、あたかも彼女たちが適任であるかのように使われる彼女たちは、マレフィセントとオーロラが仲を深めていくシーンをつくる「ための」制作の都合が透けて見えるキャラクターなのである。
しかもその森、せっかく城から離れて出てきたのに元々マレフィセントが治めていた「ムール国」の真横。普通にマレフィセントが入ってこれる可能性とか、この妖精たちは考えなかったんだろうか。寧ろ城にいる方がまだ安全なんじゃないのかとすら思う。
「アニメ版にせっかく妖精たちが森へ連れて行くシーンがあるんだから、そこで姫とマレフィセントを仲良くさせよう」という単純な思いつきが透けて見える。
オタクは普通こういう「オリジナル準拠」は喜ぶはずなんだけど、名前も違うしキャラも可愛くないし、いちいちストーリー上のノイズになる。
アニメ版では妖精たちはフィリップ王子が宿敵マレフィセントを倒す手助けをする。
マレフィセントに捕まった牢獄から出し、剣と盾を与え、突き進む道をサポートする。
ただ『マレフィセント』にはそれが要らない。王子はマレフィセント自身がオーロラのところまで連れて行く。
やっぱりこの三人は要らなかった。
便宜上登場したフィリップ王子に関しては、もはや噛ませ犬以外のなんでもない。
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見たことある展開
タイミングも悪かったと思う。ディズニーは極端に優先したいメッセージを、連続する映画で入れてくることがあって、つまり「前作が今作のネタバレ」という最悪な結果に陥ることがあるのだ。それがまさにこの映画なのだけど。
『マレフィセントは』自分でかけた呪いが自分でも解けず、唯一の条件としていた「真実の愛のキス」の望みをかける。
フィリップ王子を拉致し、鉄の棘を潜り王国へやってきて、オーロラにキスさせるが、何も起こらない。失意に涙を流したマレフィセントがそっとキスをするとオーロラが目を覚ます。
これを見た時、いや見てる途中からだんだんそんな気がしてたんだけど、これ『アナ雪』じゃん、と思ったのだ。
『マレフィセント』の公開は2014年7月日本公開、その前に上映されたのが2014年3月の『アナと雪の女王』である。
賛否両論あるが僕は『アナ雪』大傑作だと思う。そしてこの映画で示された『真実の愛』の定義というのは、ヘテロ恋愛に含まれない本物の愛、親子愛、兄弟姉妹愛、そして思慕愛。エルサ自身の魔法で氷漬けになってしまったアナは、エルサのアナを想う真実の愛の力でその氷を溶かす。
公開順が先だったなら、少なくとも「ディズニーがなんか新しいことやろうとした」とは思ったかもしれない。
でももっというと2008年日本公開の『魔法にかけられて』で「王子様のキスが効かない(そのあとの主人公のキスで効く)」を1度やっているのだ。
ヘテロセクシャルでしか通用しなかったキスの魔法を性別の問わない「愛」として拡大解釈させたのはすばらしいし、これから普遍的になっていけばいいと思う。
それに一回やったからもうダメとかそういう話ではない。けど見せ方が下手なのでめちゃくちゃ安っぽく感じてしまった。
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いいところもある
いいところもある。一つだけだけど。
「マレフィセント」
— すん (@s_ahhyo) 2018年12月23日
well,well...のシーンだけ100点なんだよな
アンジェリーナ・ジョリーのマレフィセントは完璧であった(ストーリー上のキャラブレはあるけど)生誕祭のシーンは100点満点である。
オーロラを演じたエル・ファニングは可愛らしい女性ではあったが少女感が強く、アニメーションから発せられる大人の女性感のあるオーロラ姫とは違っていたかな。
それこそティムバートン版『アリス・イン・ワンダーランド』でアリスを演じたミア・ワシコウスカ配役を逆にしてしまった方がすっと収まっていたんじゃないだろうか。
オーロラ自体は『眠れる森の美女』でキャラ立ちが良かったわけではないので、あのキャラでも現代的で良いと言えば良いんだけど。
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「公式が解釈違い」の究極系
こうして「ディズニー史上最悪の最強のヴィランが実は最初から最後までいい奴」というよくわからない映画を観させられたわけだが、僕は頭が混乱するばかりだった。
それで面白ければまだいいものの、前述の通りいちいちクドいのでテンポが悪い。
じゃあどうすれば良かったんだ!と問いかけられれば、それなりに案は出てくると思う。僕ではなくても。
それは成功するかどうかも、ディズニーという会社に折り合いがつくようなストーリーかもわからないが、多分たくさん出てくる。『マレフィセント』の可能性は、ポテンシャルは、かなり持っていたはずの素材だろと思う。
それがどうしてこういう映画として完成したのか、じっくり話を聞きたいような、時間の無駄だから聞きたくないような気もする。
これぞ「公式が解釈違い」というやつだ。同人誌でやってくれ。
そんでもって本気でやるの?続編。
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