実写版『アラジン』は本当に必要だったのか。

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実写版『アラジン』を観た。

 

ディズニーによるアニメ版をベースとして、ディズニー自身が実写化リメイクを行うこのプロジェクトの最新作。

 

目次

 

そもそも実写化は必要か

アニメーション版は1992年公開のディズニールネッサンス期真っ只中(ディズニー第2時黄金期とも呼ぶ)、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ作品としては31作目の作品となる。

主題歌・劇中歌の『A Whole New World』はアカデミー賞を受賞し、映画は大ヒット。実写リメイク版も、よっぽど下手を打たない限りは大ヒット間違いなしだ。

 

これまで実写化された作品をならべてみても『ふしぎの国のアリス(アリス・イン・ワンダーランド)』『眠れる森の美女(マレフィセント)』『シンデレラ』『ジャングル・ブック』『美女と野獣』『ダンボ』『ライオン・キング(今夏公開)』・・・といわゆる「安全牌作品」ばかり。

ディズニーは『コルドロン』や『ダイナソー』『チキンリトル』を実写リメイクするぞ!というような、挑戦的な姿勢は今の所見当たらないし(『王様の剣』の実写化リメイクの噂はあるが、もともとアーサー王伝説が原作なのでどうにでもなる)

今後『ムーラン』の実写化は確定しているが、日本の知名度に比べると海外では知名度が十分に高い作品である。

 

『ダンボ』や『シンデレラ』などはリメイクを行うことで「従来のステレオタイプに縛られた間違った描写」を訂正していくという思惑が隠れているため、リメイクに関しても納得がいく。

また『マレフィセント』や『アリス・イン・ワンダーランド』そして『くまのプーさん』の実写版続編として製作された『プーと大人になった僕』のように「そもそもアニメ版と違った話にしてしまう」というのも、アニメ版とまた異なる楽しみ方ができるだろう。『ジャングル・ブック』や『ダンボ』もこれに近い。

 

だがディズニー・ルネサンス期の作品はそもそもが「従来のステレオタイプに縛られない」ディズニーのキャラクター描写が高く評価された時代である。

それがさらに新たなステレオタイプを生むという苦しみこそあれど(『ムーラン』などはそれが顕著である)、実写化の優先順位としては決して高くないはずである。

 

だからこそ、ファンとしてはこの一連の実写化リメイクシリーズは、「たくさんお金を稼ぐ」という理由以外に「わざわざリメイクする必要があるの??」とどうしても思ってしまうのだ。

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アニメ版『アラジン』をほぼ完コピ

では実写版『アラジン』はどういった話だったのか。

 

正解は「まんま再現」パターンだった。細かい変更点・新キャラクターの登場はあるものの、大筋の流れ、展開に違いはほぼない。

これは実写版リメイク『美女と野獣』が一番近い。同じようにアラン・メンケンが新曲を書き起こし披露されるシーンもある。

 

そして『美女と野獣』と同じように、綺麗に美しく、アニメ版の良さを損なうことなく完璧にまとまっている。

 

ポスターではコスプレパーティーに見えた衣装も、映画が始まれば一瞬で違和感は吹き飛び、アニメ版よりもリアリティのある美術とキャラクターの動きが説得力を持つことでアグラバーは実在の街のような輝きを放つ。

超豪華キャストで脇を固めた実写版『美女と野獣』とは違い、主人公アラジン/ジャスミン/ジャファーはお世辞にも有名とは言えない若手のキャスティングだったが、メナ・マスードは完璧なアラジンであり、ナオミ・スコットはジャスミン以上にジャスミンだった。マーワン・ケンザリのアニメ版とは一味違う妖艶なジャファーも楽しめる。

ジーニーを演じた超大物俳優ウィル・スミスもウィル・スミス感を損なうことなくジーニーを演じきり、アニメ版のギャグ一辺倒にプラスするように深みのある演技も見せてきた。

そう、映画自体は文句のつけようがないくらいに素晴らしい。

 

 

でもやはりそれはアニメ版あってこそであり、そこにファンをあっと言わせて虜にするようなような強烈な驚きは見られない。

 

かといって、「実写化なんかしなければよかった」なんて吐き捨てれるほど無価値でもないという、個人的にはなんとも立ち位置が難しい作品となっている。

これは言ってしまえば実写化リメイク作品のほぼ全てに言えることだが、『シンデレラ』『ジャングル・ブック』『美女と野獣』・・・と回を重ねるごとに、その驚きとときめきは徐々に薄くなっていっていることを実感せざるを得ない。

 

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『アラジン』というタイトルは正しくない、ジャスミンの存在感

実写版『アラジン』における大きな変更点はプリンセス・ジャスミンのキャラクターの大きさである。

アニメ版『アラジン』の頃から、主人公はアラジンには違いがないのだが、映画は「プリンセス映画」の一つとしてもカウントされている。それは映画の中でジャスミン王女がただの王女ではなく「賢く自立した勇気ある意志の強い女性」として描かれていたからだ。

実際『コルドロン』というディズニー映画では、エロウィー姫というプリンセスが登場するが、いわゆるプリンセスの文脈に全くそぐわない活躍しかしないために『コルドロン』はプリンセス映画の扱いを受けない。単にヒットしなかったからという理由も大きいだろうが。

同じような理由で『ムーラン』や『ポカホンタス』も厳密には「姫」ではないが彼女らは「ディズニープリンセス」として位置付けられている。もっというとエルサは「女王(クイーン)」だが「ディズニープリンセス」だ。

 

ルネサンス期以降、プリンセスが登場する映画は必ず「プリンセス映画」としての文脈が用意される。それは主にプリンセスが「賢く自立した勇気ある意志の強い女性」という主人公性を持ち「歪んだ価値観や既存のルールをしたたかに変えていく」ということだ。なぜならそれは、単にプリンセスが登場すればプリンセス映画になるとはディズニー自身が思っていないからだ。

 

実写版『アラジン』では、アニメ版以上にジャスミンには「乗り越えるべき試練」が課され、彼女はそれに立ち向かっていく。

アニメ版でのジャスミンはその意志の強さから「試練」への反発を見せるが、映画としてはアラジンの活躍により自由を手に入れる形になっている。

実写版では、もはやそこにアラジンの助けは必要がなく「彼女が」何をするかということが強調され、強烈なメッセージを放っている。しかもそれでいて話の流れはアニメ版のモヤっとした部分をクレバーに展開させていて、アラジンの主人公としての役割を奪うわけではない、リメイクとして巧妙な作りとなっている。

物語を動かすのはアラジンに違いがないが、映画の中でより強いメッセージを放ち行動へ移すのは他ならぬジャスミンなのだ。

 

映画を観た後なら『アラジン』を単独でタイトルにするよりも、アニメ版よりも存在感の増したジャスミンを加えてあげたいと思うだろう。

今なお先進国に遅れをとり、性差別を性差別とも思っていないこの日本社会に、是非とも痛烈に響いてほしいメッセージがこの映画には詰まっている。

 

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まとめ

話をまとめるとする。じゃあ「実写版『アラジン』は本当に必要だったのか?」

 

答えはイエスだろう。

 

ディズニーファンとしての矛盾は感じる。

既存キャラクターとストーリーに頼らず、新たな世界を、キャラクターを構築してほしい、『A Whole New World』を見せてほしいというのが本音だ。

現時点で決まっている完全新作はディズニー/ピクサーの『Onward』だけであとは続編とリメイクだけなのだから。

 

一方で『アラジン』をリメイクする意味も、映画を観てひしひしと感じる。

映画は必ず大ヒットするし、繰り返し見られるだろう。

新作だとなびかない層にも「アラジンの実写化だって」「ウィル・スミスが出てるんだって」と聞いたら見る人もいるだろう。そういう「一般層」に対して前述した、より鋭く深く刺さるメッセージが容赦無く突き刺さるのだ。

しかも「往年のディズニーらしいラブロマンス」のスタイルを決して崩すことなく、全世代に。

これは実写版『美女と野獣』も似てると言ったが、実写版『アラジン』は描写のレベルではなく、身も蓋もないほどハッキリと「女性の受ける抑圧」を描き「女性の自立」を高らかに宣言した。

映画としての良し悪しや好き嫌いは個人差があるだろう。

だがこれほどまでにわかりやすく、このメッセージを投げかけてきた実写版『アラジン』は、絶対に意味がある。これまで届かなかった層にも届く。

 

 

それでも、それでも言わせてほしい。

僕はリメイクや続編じゃなく、とんでもないクオリティとスケールの新作をずっと待っている。

それこそ『アナ雪』や『ズートピア』レベルの作品なら、新作でもちゃんと届くんだからさ。

 

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