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『ヒカルの碁』はなぜこんなに面白いのか。

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ヒカルの碁 完全版 1 (愛蔵版コミックス)

 

恋人が『ヒカルの碁』を知らないという事で、ついこの間まで一緒にアニメ版を観ていた。

 

できれば漫画で読んでほしいところだけど、僕自身久々に『ヒカルの碁』に触れたいという思いも強く、乗り気のしない恋人を無理やり巻き込むためにも一緒に観れるアニメ版のほうがいいかなと思ってアニメ版にした。

 

結果、効果覿面で数話観て恋人はすぐに『ヒカルの碁』にハマった。

観るたびに「塔矢アキラくんはかっこいいねぇ」とつぶやき、たまたま覗き込んだ恋人のスマホでは「塔矢アキラ」がGoogle検索されていた。

 

コミックスは弟が集めていてそのまま出て行ったので家に全巻揃っていて、正直人生で一番読んだ漫画だと思う。『スラムダンク』より『シャーマンキング』より読んでる。

 

『ヒカルの碁』マジで面白いのだ。

 

どこがどう面白いのか、専門的な分析は正直できない。

でも「『ヒカルの碁』のここが好き」は死ぬほど語れる。さぁ、語ってやろうではないか。

 

目次

 

あらすじ

お小遣い稼ぎのため祖父の家の蔵にあるガラクタを骨董品屋に売りに行こうと考えた主人公・進藤ヒカルは自分にだけ血の染みが見える不思議な碁盤をみつける。

血の染みのある碁盤にはこの世に未練を残す平安時代の最強碁打ち・藤原佐為の魂が宿っていた。佐為の存在を感知できたヒカルの体に佐為は取り憑くこととなる。

佐為は江戸時代に碁打ちを目指す少年・虎次郎に取り憑いており彼に代わって碁を打ち、虎次郎はやがて伝説の碁打ち・本因坊秀策と呼ばれるようになった。ところが虎次郎は流行り病にかかり亡くなり、それ以来佐為は碁盤の中に閉じ込められて過ごしていたのだった。

140年ぶりに現世に蘇った佐為はヒカルの体を借り、また碁を打つことを願う。碁が全くの初心者だったヒカルは佐為にせがまれ、たまたま顔を出した碁会所で同い年の少年・塔矢アキラと出会う。何を隠そう、塔矢アキラは四冠のプロ棋士・塔矢行洋のひとり息子であり小学6年生ながら天才棋士と呼ばれている少年だった。

ヒカルの体を借りた佐為の圧倒的な力量差により敗北を喫する塔矢アキラは、ヒカルをただならぬ実力を持った少年だとライバル視しはじめ、周囲の大人のプロ棋士たちもヒカルに注目をし始める。

一方完全に初心者であったヒカルも塔矢アキラの熱意や塔矢行洋の存在に心を動かされ、次第に自ら碁を打ちたいと思うようになる。

 

囲碁なんてわからなくても面白い

『ヒカルの碁』は囲碁漫画だ。囲碁なんて将棋やチェスやオセロと比べれば圧倒的にマイナーゲームだろう。

『ヒカルの碁』以降、囲碁ブームが起き碁打ち人口はかなり増えたと言われるし、僕や僕の弟も「ちょっと覚えてみるか」くらいの気持ちになってみたことはある。

 

でも正直、囲碁のルールは全くわかんねぇ。

 

漫画『ヒカルの碁』で作画を担当した小畑健先生(『デスノート』『バクマン』)は最終的に囲碁のルールを覚えないまま連載終了したと言われている。

 

それくらい複雑で、地味で、何やってるかよくわからないゲーム、囲碁。

 

それでも『ヒカルの碁』はめちゃくちゃ面白い。そして「囲碁ってなんだかわからないけど面白そう」って思わせてくれるのだ。

 

佐為やヒカルたちが必殺技よろしく心の中で呟く「右上スミ小目」「コスミ」「ツケ」「カカリ」などなどの専門用語が、めちゃくちゃカッコよく聞こえてくるのだ。

もはや「ニギリ」(対局前に手番を決めるためのやつ)すらかっこよく聞こえてくる。

 

「北斗杯編」で登場する(実は初期にも1回登場する)「初手天元」とかめちゃくちゃ痺れる。

欄外に記される解説はあくまでも一行程度の簡単なもの。それ以外はほぼなく、読者を置いてけぼりにしそうな勢いながらも、「この石が働けば黒の勝ち・・・働きを失えば白の勝ち・・・」とかなんとなく意味がわかるようなセリフも自然と入りフォローされるので「おお・・・・」って思ってしまう。

ヒカルの囲碁入門・問題集

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完璧すぎるキャラ漫画

『ヒカルの碁』はキャラ漫画として完璧なのである。

囲碁という地味なゲームを題材とする以上、読者を引き込むために重要なのはドラマ性と魅力的なキャラクターだ。

主人公ヒカルを(顔は十分イケメンだが)三枚目っぽく描きながら、キーキャラクターの藤原佐為を女性かと思わせるほどに美しく、ライバルの塔矢アキラを美しくかつカッコよく描く。伊角さん(初登場時はモブっぽいのにプロ試験あたりから化ける)、和谷、緒方さん、加賀、三谷、高永夏(コ・ヨンハ)などイケメンキャラも多く、一方でイケメンキャラクターだけなくフク、越智、本田さん、倉田さんといった冴えない見た目のキャラをきちんと仲間やライバルとして配置してみたり、塔矢名人、座間王座、桑原本因坊などの年寄りのオッさん碁打ちをバキバキにカッコよく描いたりする。

 

ヒカルの碁 完全版 19 (愛蔵版コミックス)

高永夏

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倉田厚、塔矢アキラ、塔矢行洋

ヒカルの碁 完全版 9 (愛蔵版コミックス)

塔矢アキラ、伊角慎一郎、越智康介、奈瀬明日美

 

これは作画の小畑健先生の画力があってこそだとは思うが、原作を担当したほったゆみ先生のキャラの背景やドラマ作りがしっかり機能していたからこそ、この二つがバチっとハマって産まれたミラクルだと思う。

 

 ダブル主人公だからできる『スラム・ダンク』と『テニスの王子様』の両立 

主人公・進藤ヒカルは、平安時代の碁打ち・藤原佐為の亡霊により囲碁に目覚め、当初は佐為が代わりに打つことにより「天才少年棋士の登場」として囲碁界を騒がせる。一方で当の進藤ヒカルも「自分で打ちたい」と思うようになり初心者の碁打ちとしての道をも歩み始める。

 

進藤ヒカル=藤原佐為により、人生を狂わされた天才少年棋士・塔矢アキラとの、互いに追いかけ、突き放され、見限りながらも心のどこかでは気にかけてしまうという関係性に読者もはらはらしながら読み進めてしまう。

 

ヒカルが自ら碁を打ち始めたことで、進藤ヒカル中1の夏に「佐為に思いっきり打たせてやる」目的で始まった「インターネット囲碁」も囲碁界に波乱を巻き起こす。

「sai」というハンドルネームでインターネット上の碁打ち達を片っ端から倒しつづけたことで、伝説のインターネット碁打ちとして名が知られるようになってしまったsaiは、塔矢アキラや緒方精次にも目をつけられてしまう。そしてsaiと対局することで、(ヒカルの嘘によって撤回するが)塔矢は半信半疑ながらも「sai=進藤ヒカル」であるという答えに辿り着いてしまう・・・。

 

このあらすじから察せられるように『ヒカルの碁』は進藤ヒカルと藤原佐為のダブル主人公である。

当初読み進めていた読者は「これじゃ『ヒカルの碁』じゃなくて『佐為の碁』じゃん」と揶揄していたが、話を追えば追うほど内容は『ヒカルの碁』になっていく(当初は『九つの星』というタイトルだったのが編集の判断で『ヒカルの碁』になったという経緯がコミックスで述べられている)

 

ストーリー漫画の始まり方は大半して2種類に分けられる。特にスポーツ漫画はわかりやすく、全くの初心者が初期はヘッポコながらもじわじわと成長し実力をつけていく『スラム・ダンク』型。そして、初期から最強の主人公がバッタバッタと無双していく『テニスの王子様』型の2種類だ。

一方でこの『ヒカルの碁』はというと、主人公・進藤ヒカルを初心者としてじわじわ成長させながらも、初期は無敵の藤原佐為に打たせることで無双させるという、方式をとってこの『スラムダンク』型と『テニスの王子様』型を両立させてしまうということを成し遂げたのである。

 

弱いキャラクターの描写

何度も言っているが『ヒカルの碁』の真の魅力はそのストーリーのドラマ性にある。ドラマがキャラを、そして絵を引き立て、逆もまた然りのミラクルを生んでいるのだ。

 

また、ヒカルは師匠として天才棋士の佐為がいることで、初心者とは思えないスピードで棋力をアップさせていく。

 

 

葉瀬中囲碁部入部にヒカルは棋士としての道を本格的に歩み出す。当初全く敵わなかった囲碁部部長筒井さんや三谷、そして(碁が強い将棋部の)加賀を、囲碁部を退部する頃には「三面同時打ち」で実力を見せつけるのだ。

そもそも主人公が「囲碁部をやめる」というのもすごい。

囲碁部よりも遥かに上の存在、「打倒塔矢アキラ」のためにヒカルは囲碁部を辞めて「日本棋院の院生」になる。

三面同時打ちのさなか、友人である三谷が呟く「負けました」がつらい。

 

そして院生になってからは院生手合いで、そしてプロ試験でヒカルは悩みくじけそうになりながらも驚異のスピードで成長していく。プロ試験に受かるのは3人。共に学び飯を食った仲間達との星の潰し合い。

ヒカル、越智、伊角さん、和谷、そしてそのあとに続く本田さんなどの上位陣の熾烈な争い・精神面での葛藤などもさることながら、彼らには敵わない、明らかな実力差のある飯島や奈瀬のセリフが痛烈に響く。

奈瀬「みてほしかったわ! あんな碁が打てるからーーーー」

 

奈瀬「打てるから………… プロになるのをいつまでも あきらめられないのよね」

 

『ヒカルの碁』第87局「この黒は誰?」

 

奈瀬「さァ 人の事言ってないで私も精一杯打たなきゃね 明日につながる碁を」

飯島「明日につながる………って どんな明日だよ オレたちの明日って」

 

『ヒカルの碁』第93局「プロ試験最終戦」

 

これだけ魅力的なキャラの登場する漫画であるにも関わらず、製作陣はサブキャラクター達に躊躇いなく「退場」を言い渡す。

ファンの人たちには寂しく思えるが、この葛藤と別れをきちんと描くことで、生半可な漫画にはならない。

 

メンタル教科書としての『ヒカルの碁』

『ヒカルの碁』はスポーツやゲーム競技をやる上でのメンタル教科書的教訓がたくさん盛り込まれている。「勝てない」「負ける」といった出来事に対し、漫画でありがちな「根性で乗り切れ!」「ひたすらトレーニングだ!」にならないのが『ヒカルの碁』の良さであり、そこが『スラムダンク』などのリアルなスポーツ漫画に似ていると思う。

 

中1の冬に見事院生試験を突破したヒカルは、院生2組最下位からスタートする。一足先にプロになった塔矢アキラと対戦できる「若獅子戦」に出場するため、5月までに1組16位を目指すが、スランプに陥り負け続け、2組最下位をなかなか抜けることができない。

ヒカル「…おまえと打ってるからーー俺が勝てなくなってる?」

佐為「ええ ヒカルは恐れているのです 盤上であなたに切り込む私の一手を 以前は闇雲に向かってきたあなただったのに………私の刃の切っ先が少しづつ見えるようになってきたのでしょう それゆえ恐れ始めてしまった それでフッと手控える それが普段の対局でも微妙に現れる 最近の僅差の負けを振り返ってみて下さい」

 

『ヒカルの碁』第54局「誰もが明日へ」

佐為はヒカルの成長と、それゆえに生まれた心の弱さを指摘し、勝利のための方法を提示する。

 

プロ試験が始まってからはもはや精神面との戦いと言っていいほどの名シーン、名言の連続である。

特にプロ試験第12戦・進藤ヒカル対伊角慎一郎戦はかなり見ものである。院生でも1、2を争う実力者の伊角さんが、以前見たヒカルと韓国棋院研究生・洪秀英(ホン・スヨン)との1局や院生順位一位の越智の言葉に惑わされ、ある重大なミスを犯してしまう。その1局を経てのヒカルと伊角さんの心の揺れ動き、そしてそこからの立ち直りはまさに壮大なドラマである。またこの流れからの第15戦伊角慎一郎対越智康介、そしてプロ試験最終戦・進藤ヒカル対越智康介戦は少年漫画らしいヒートアップがなされていて本当におもしろい。

ヒカル「優勢でも勝ちをアセるとミスが出るし…プロ試験だからかなァ なかなか普通に打てねェよ "負けるもんか"とか"負けたくない"とかって気合が入りすぎるのも 手が乱れたりするしさァ 心って難しいな」

 

『ヒカルの碁』第86局「予断許さず」

 

その後、伊角さんは彼が参加していた囲碁研究会「九星会」の親善試合で中国北京にある「中国棋院」へと赴く。そこで日本人一人で武者修行を行うわけだが、部屋を貸してくれた楊海(ヤンハイ)に彼は精神の鍛え方・コントロールの仕方を解かれる。

楊海「いら立ち あせり 不安 力み 緊張 プレッシャー…… つきまとう感情に振り回されるなっ キミにとって1番大切なことだ 石だけを見ろっ これは自覚と訓練でできるっ 元々の性格なんて関係ない 習得できる技術さ こんなもん」

 

『ヒカルの碁』第134局「楊海の助言」

 

それだけ『ヒカルの碁』は「囲碁」を描く以上にキャラクターの「心理戦」を深く描いていると言ってもいい。だからこそ、ルールを理解していなくても面白く、そして感情移入しやすく、キャラクターを応援したくなる。

ヒカルの碁勝利学

ヒカルの碁勝利学

 

 

まとめ

『ヒカルの碁』はいいぞ。

個人的にはもっと語りたいところはいっぱいあるんだけど、ちょっとここらへんにしておこう。

 

個人的な推しはやっぱり伊角慎一郎。「越智 黙れ」はヒカ碁史上に残る名言。そして強いのにメンタルがヘナヘナなところも良い。

あとは多分ほった先生が好きなんだろうな・・・と勝手に思っている「緒方先生VS桑原本因坊」という図式もめちゃくちゃ好き。この二人の組み合わせ多くないですか。そしてしわしわのじいさんに翻弄されるイケメン緒方先生(常に白スーツ)っていうのも本当に面白い。本因坊戦の「封じ手」のくだり、ヒカルの新初段シリーズでの「そんなアメしゃぶってないで」のくだりとか、最終的にもう隠さず「クソジジイ…」とか言っちゃう緒方先生好きすぎる。「首洗って待ってろ」とかね、最高かよ・・・。

 

というわけで、上の方でも書いたけど、サブキャラに問答無用につらみのある敗北とか退場を言い渡すくせに好き要素を詰め込みすぎて尊い。

アキラの情熱に涙し、敗北する囲碁部に涙し、三谷に涙し、奈瀬や飯島などの弱者にも涙し、伊角さんに涙し、ヒカルと佐為に涙し、北斗杯編では本田さんに涙し、もう一回ヒカルと佐為に涙する・・・みたいな。語彙力喪失。三谷の履いてる靴下は可愛い。

 

そんな、全編にわたって魅力しかない『ヒカルの碁』という漫画/アニメ。是非ともチェックしてみてください。

アニメは北斗杯編完結させてほしい。

 

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