スカイウォーカー・サーガと名付けられた『スター・ウォーズ』のスカーウォーカー一族を巡る全9部作が、エピソード9にあたる最新作『スカイウォーカーの夜明け』にて幕を閉じた。
前作のライアン・ジョンソン監督エピソード8『最後のジェダイ』はこれまでの『スターウォーズ』シリーズの「お約束」を徹底的に否定していく展開で、一部ファンからは痛烈に批判されながらも、マンネリ化していた『スター・ウォーズ』シリーズに新たな変化をもたらしたとして批評家からは高い評価を得ていた。一方で映画の構成としての手腕の甘さも多くの映画人に批判されていた。
その反動もあってか、昨年公開されたロン・ハワード監督のスピンオフ映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は出来も評判も悪くないのにも関わらず、『スター・ウォーズ』映画史上初めての興業的失敗を喫した。(『最後のジェダイ』公開から5ヶ月しか経ってないことも理由としてあげられている)
また当初エピソード9は『ジュラシック・ワールド』を監督(2作目『炎の王国』では製作総指揮および脚本も担当)したコリン・トレヴォロウが監督を務める予定であったが、彼が提出した脚本がことごとく却下された挙句、ヴィジョンの相違から監督を辞退するという流れとなった。
結果、エピソード7『フォースの覚醒』でメガホンを取り、『最後のジェダイ』でも製作総指揮として名を連ねているJ.J.エイブライムスがエピソード9の監督を努めることとなる。(脚本は彼とクリス・テリオによる共作)
こうして出来上がったのがエピソード9『スカイウォーカーの夜明け』である。
僕の『スカイウォーカーの夜明け』の評は記事タイトルを見てもらえば明らかだろう。
本記事はエピソード8『最後のジェダイ』を高評価したスターウォーズ・ファンの意見ということを前もって理解した上で読んでもらいたい。
※当記事は公開中の映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』および関連作品のネタバレを含みます。
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目次
『最後のジェダイ』がなければ、面白かったかもしれない。
僕はEP9『スカイウォーカーの夜明け』はシリーズの完結編として本当に残念な作品になっていると思う。それでも、もしEP8『最後のジェダイ』がなければ、普通に受け入れられた作品なんだろうな、とも思うのである。
EP9『スカイウォーカーの夜明け』は、普通に面白い映画だ。そして実に「スターウォーズらしい」完結編であった。
全シリーズでずっと影で暗躍していた銀河帝国皇帝、パルパティーン(=シスの暗黒卿ダース・シディアス)が復活し、主人公レイとダークサイドからライトサイドに復帰したカイロ・レン(=ベン・ソロ)が共闘し彼を倒す。上空では反乱軍たちが劣勢ながらも悪の大艦隊と戦っている。
実にスター・ウォーズらしい完結編だ。というかこれはそのままEP6『ジェダイの帰還』と全く同じ流れだ。
マンネリで、同じことの繰り返しながらも、思考停止気味に「やっぱりスターウォーズはこれだよな」とか言いながらレビューにそこそこの評価を付けつつ、映画館のグッズショップでオモチャを買ったりする。そんな感じの良作だ。
それでもEP8『最後のジェダイ』では、今までのスター・ウォーズと全く逆のことをやってのけたのだ。
「スターウォーズにはまだこんな可能性がある、先が全く予想できない」と唯一思わせてくれた作品が『最後のジェダイ』だった。
確かに多くの批判もあったし、『ハン・ソロ』の興業的失敗というダメージもあった。製作プロセスは見直され、スピンオフ映画は凍結され、製作陣にも大いにプレッシャーがかかったのだろう。
それでも『最後のジェダイ』で提示した様々なメッセージを、ほぼ丸っきり無視する形で『スカイウォーカーの夜明け』はスターウォーズ・ファンに媚びた。
誰もが予想できる展開で、想像通りの流れで、見たことあるようなシーンをちょっとだけ最新になった映像技術で蘇らせる。それでも急遽路線変更したような付け焼き刃の完結編では、キャラクターの深掘りであったり、設定の積み重ねによるエモーショナルさは当然のごとく弱く、結果として旧三部作の劣化版にしかなっていない。
「スターウォーズなんてこんなもんでしょ」という出来の作品が通用したのはEP7『フォースの覚醒』登場時点までだと思う。
EP8『最後のジェダイ』で、我々の期待を大きく裏切り、我々の知らない未知のスター・ウォーズ世界へと放り出したのだから、是非とも「その先」を作って欲しかった。
出来上がったのはEP7と地続きのような「スターウォーズなんてこんなもんでしょ」と言えるようなマンネリな出来の作品だ。面白くないとは言わない。スターウォーズだもん、それなりの出来にはなる。そして実際多くの部分で面白い。
それでもクリエイターとしてのプライドとか、そういうのはないのか。
JJエイブラムス、スカイウォーカーの夜明け観た後でこの発言見返すと何とも言えない感情が湧いてくるな pic.twitter.com/K9kKHkM66T
— BWTT (@BoyWithTheThorn) December 22, 2019
こんなTEDトークもしてたのにな。
これが「ディズニー/ルーカスフィルムからの圧力」でこうなってしまったのならば、J.J.がこうなってしまったのも可哀想ではあるけど。
ヴィジョンなき「リレー小説型」映画
じゃあ元々「スターウォーズらしい映画」が好きな人々にとっては、戦犯はEP8『最後のジェダイ』の監督・脚本を担当したライアン・ジョンソンだと思うだろう。
でもそれは多くの意味で正しくはない。
『最後のジェダイ』が本当に大問題作でスター・ウォーズ的世界観をぶち壊すような映画なら、そもそもディズニー/ルーカス・フィルムがストップをかけて撮り直しをさせているはずである。
ディズニー買収以後のルーカス・フィルムの体制で作られた映画は『フォースの覚醒』『ローグ・ワン』『最後のジェダイ』『ハン・ソロ』『スカイウォーカーの夜明け』とたった5本だが、そのうち『ハン・ソロ』と『スカイウォーカーの夜明け』で実に2回もヴィジョンの相違による監督の降板が起きている。また『ローグ・ワン』は監督の交代こそなかったが、監督ギャレス・エドワーズとは別の人物、トニー・ギルロイ(『ボーン・アイデンティティー』などの脚本家)によりかなりのシーンの再撮影が行われており、ギャレスと共にポストプロダクションに参加したとも言われている。
それくらいディズニー/ルーカス・フィルムには「スターウォーズ」を作る上での何かしらの厳しい制約があるのだろう。
そんな中、ライアン・ジョンソンの『最後のジェダイ』の脚本はディズニー/ルーカス・フィルムの承認を受け、世に出たのだ。
実際に批評家からは多くの賞賛を得た作品でもある。もちろん批評家の言うことが全てではないが、少なくとも「これまでのスターウォーズの呪いのようなもの」をぶち破った作品である上に、それが多くの子どもたちにポジティブなメッセージを与えるものであったことも評価された部分だろう。
『フォースの覚醒』そして巡り巡って『スカイウォーカーの夜明け』の監督となったJ.J.エイブライムスも製作総指揮としてライアン・ジョンソンの脚本チェックに携わっている。一方でJ.J.はライアンの創造性を止めることなく「好きなようにさせた」旨をインタビューで語っている。
EP7からの続三部作は6年、2年ごとという短いスパンで「物語の終着地点を決めないまま」映画を作るという「リレー小説」のようなスタンスを取っている。
公開日だけがある程度決められている中、スターウォーズのような大作映画がたった2年で作られるはずもなく、まだ完成もしていない映画の物語の続編を作り始めるという、普通に考えても無茶極まりない作り方をしているのだ。
監督こそ結果としてJ.J.→ライアン→J.Jとなったが、脚本家はその度に変わった。
もし『スカイウォーカーの夜明け』のような結末に終わらせるのなら、それが元々の計画の上で成り立っていたものならば、製作総指揮であるJ.J.エイブライムスが、もしくはルーカス・フィルム社長のキャスリーン・ケネディが修正を提案するべきだったのだ。
22本という長大なサーガを完結させた、同じくディズニーのマーベル・シネマティック・ユニバースは、監督や脚本家が様々に入れ替りながらも、マーベル・スタジオ社長ケヴィン・ファイギの強力なディレクションの元で22本の映画の整合性をほぼほぼ維持しながら2019年の『アベンジャーズ/エンドゲーム』にて大団円を迎えた。
それが、たった3本。映画史としてはマーベル映画よりもよっぽど歴史的意味の深いはずの『スター・ウォーズ』を、この中途半端な「リレー小説形式」というディレクションで台無しにしてしまった。
というか真の意味で「リレー小説形式」ならば、ライアンの前作を受けて、その内容に沿った作品を作るのがマナーだろう。J.J.エイブライムスはそれすらも無視し、ストーリーの流れを今までの路線へ無理矢理引き戻した。EP9を高評価するファンには「ナイスリカバリー」という人たちもいるが、僕自身はそれには同意できない。
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それぞれの良かった点/悪かった点
では良かった点や悪かった点を上げていこうと思う。
パルパティーンの復活
ライアン・ジョンソンの考えでは、「最終決戦をレイとカイロ・レンにするのであれば、EP8時点で最高指導者スノークを殺す必要があった」という旨の発言をインタビューにて答えている。
それが、冒頭テロップで大々的にパルパティーン復活を宣言することで、ライアンの脚本をいきなり無効化する。
レイとカイロ・レンの戦いを集中して描けるはずが、結局バックに皇帝パルパティーンが戻ってきたことにより物語は振り出しに戻る上、戻ってきたパルパティーンはもはやただのカルト教団の教祖みたいになっており、プリクエルで描かれた、十何年かけて共和制を牛耳り合法的に帝国主義と軍事性を敷くような、したたかさは残っていない。
ファースト・オーダーともレジスタンスとも異なるところから第三の存在として突如現れ、いきなり宣戦布告して武力で星々を制圧し、滅ぼしていく。
EP7も含め、この2作の積み重ねって何だったの?と言わざるを得ない展開だ。
EP8で「様々な謎が放置されたままだ!」と批判した人々の一部が、どういう経緯でパルパティーンが復活したのかは特に気にもならずEP9を褒めているのも不思議である。
(とはいえ、EP1で上下半身が真っ二つになったダース・モールですらも生きていてスピンオフで活躍しているので、スター・ウォーズ文法によれば説明は要らないのかもしれない。)
EP8で怒った人たちは「スノークって一体何者だったんだ!」というのが、ひとまず「パルパティーンの傀儡でした」という答えで納得はしたのか?それでいいのか?
「傀儡でした」はEP8で大口叩いて起きながらあっさり死んでしまったスノークのアンサーにはなり得るのはよくわかるんだけど。
EP6でルークと父アナキンが滅したはずの皇帝を「実は生きてました」にしてしまうのは、彼らの努力やアナキンの死が無駄だったという事になるけど「ルーカスの初期3部作への冒涜だ」とかそういう意見はないのか?本当にそれでいいのか?
レイ、フィン、ポーのチームワーク
EP9で1番褒めたいのはこの3人(とチューバッカ、C-3PO、BB-8)のチームワーク。
EP8での展開をひっくり返すために頑張った結果、序盤の展開がめちゃくちゃ早いのだか、その中で描かれる、レイ、フィン、ポーのくだりがとても良い。(レイがやや独断先行の気があるが)それぞれが成長した姿を見せながらテンポよく困難を解決していく。この爽快感は(3作目にして)やっと物語が彼らを主軸に動き出した感じがして非常によかった。
このテンポの良さはEP8『最後のジェダイ』にはなかったもので、例えば槍玉にあげられがちなフィンとローズくだりをこれくらいのテンポと爽快感で描けていれば、もっと評価は変わっていただろう。ライアンはキャラクターの内面や伝えたいメッセージを深掘りしてよく描いていたとは思うが、物語の進み方が致命的に遅かったのは確かである。
ポーがレジスタンス以前はスパイスの運び屋だったことがわかったあとの「お前は元ストームトルーパーだろ?お前はガラクタ漁り」みたいな小言を言い合う感じも良かった。好きなシーンである。
クリーチャー、異星人、様々な惑星の復活
EP8で不満に思っていた部分の「クリーチャーや異星人の登場が少ない」「惑星が魅力的じゃない」が、ある程度は解消されたかな?とは思った。
バブ・フリック大好き。
死んだと思ったら生きていた
まぁパルパティーンに始まり、なんだけど。
劇中チューバッカがファーストオーダーの輸送船に捕まり、宇宙へ逃すまいとフォースで輸送船を引っ張るレイと、それを阻止するカイロ・レンとの「フォース綱引き(笑)」が起こり、その渦中で力んだレイがフォースライトニングを暴発させてしまい輸送船が大破。チューイが死んだ!!とその場にいた観客全員が思った(と思う)
それが、実は輸送船はもう一台あり、チューバッカはそっちに乗っていてまだ生きていた、あーよかった。というシーンがあった。
確かにドキッとしてしまったが、このシーンは個人的に普通に胸糞案件だった。
もう一つはC-3POの件。
シスの短剣に記されているシス文字を読み上げるためにはC-3POのメモリーを初期化しなくてはならないというのである。事実上のC-3POとの別れ。
彼自身も(予告編にあったように)「最後に、友人たちを目に焼き付けておこうと思って…」とウエットな展開に持っていく。
それが、あっさりR2-D2の記憶のバックアップによりもとのC-3POに戻ってしまう。
この「死んだと思ったら生きていた」を2回も(パルパティーンも入れたら3回も)やるなよ、と。
いやもっと言えばその後レイがフォースヒーリングでカイロ・レン(=ベン)を生き返らせたり、終盤でベンがレイを生き返らせたり…と、何回も何回も「死んだと思ったら生きていた」をする。
レイ⇄ベンの蘇生しあいっこはEP3『シスの復讐』のアナキンがなし得なかった「愛するものを死から救う」術を彼らはなし得たという、ある種総決算的なアンサーだろうからまだ、理解できる。でもその他は。
しかもC-3POはギャグになるからまだいいけど(それでも別れっぽいエモい展開を入れようとしたすけべ心にイラっとする)チューイはギャグにならないからな。
ローズがちょい役に降格
EP8にて登場したローズ・ティコ。
EP8監督のライアン・ジョンソンはローズをメインキャラクターに据えておきながらも、正直上手とは言えないキャラクター描写をしていたのは事実…。
だけど彼女がEP8の時に受けた人種や容姿に対するヘイトを考えれば、EP9で彼女にだれもが納得するような存在感と「いい役」を与えるくらいの心意気は見せて欲しかったな。
EP9でJ.J.は極端に彼女の登場シーンを減らし、誰が代わりになっても問題ないような波風立たない役割のみを与えるという「置きに行った」キャラクター描写を選びました。
そこはやっぱ、腐ってもディズニー配給なんだから「俺たちのポリコレは上っ面だけじゃないぜ」って所を見せて欲しかった。
ジェダイの訓練を受けるレイア/レイに訓練を受けさせるレイア
EP8でレイアが唐突にフォースを使えたのでそれのフォローのつもりだったのかもしれない…。なるほど、レイアもルークから訓練を受けていて、ライトセイバーまでこしらえていたのね。
はて、「最後のジェダイ」とは、一体何だったんだ。
なぜそんなスムーズに「レイアも実はジェダイでした!」みたいな、前作の表題すら覆す設定を追加できるの…?
そりゃもちろん訓練を受けただけではジェダイだったとは言い切れないけどさ、ライトセイバーまで作ってたら、なぁ。
最高指導者働きすぎ問題
めちゃくちゃ現場出てくるじゃん。ホワイト企業かよ。
(これは不自然だけど物語上仕方ないから別にいい)
ハックス将軍がスパイ
スパイでもいいよ。そもそも存在が消されなくてよかったね。
でもスパイになった理由が雑。「カイロ・レンが失敗するところが見たい!」って。
元ストームトルーパー・ジャナ
てっきり「最終決戦で反旗を翻したストームトルーパー軍団を連れて皇帝を倒す」んだと思ってたけど違った。
存在感のわりに役割が薄いのなんなの。
レイ・パルパティーン
EP8の「お前(レイ)は特別でも何でもない、ジャクーの酒飲みの娘だ、酒代のために売られたんだ」という解釈から一転、皇帝パルパティーンの孫娘、レイ・パルパティーンであると。
EP9で1番やっちゃいけない事だったと思う。
百歩譲って皇帝蘇らせるのはいいとして、レイが皇帝の孫というのは、EP8でJ.J.自身が製作総指揮としてOKを出した設定を覆しただけでなく、「血筋ではない、何者でもない者でもヒーローになり得る」という、今までのスターウォーズにはないポジティブなメッセージを再度却下する展開。
悪手中の悪手だと思う。
そもそもカイロ・レンがレイの出自の秘密を語るシーンは既にEP8でやってるの。それを何故もう一度やる?
何故その、キャラクターの出自という重要な設定をEP8の時点で制御出来ていない?
しかもレイは皇帝の親類説はEP8公開前からずーーーーっと予想されてきたネタであり、そりゃ当たった人は嬉しいだろうが、ファンの予想の範疇を出ないってどういう事なん。
むしろファンに怒られたくないが為に、ファンの理想を選んだのではないかという疑いすらあるよ。
フォースヒーリング
EP9で登場した新たなフォースの力のひとつ。フォースで傷を回復。
別にいいけど、途中ヘビみたいなクリーチャーの傷を修復した瞬間に、なんとなくオチまで見えてしまったというか。
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フォースヒーリングを使って、レイが自らブッ刺したカイロ・レンを死の淵から蘇らせるのも、クライマックスでもはやベン・ソロになった彼がレイを蘇らせるのも、EP3『シスの復讐』でアナキンが「愛する人を死の淵から救ってみせる」を受けてのものだったのであれば偉い、とは思う。思うけど。
「最後のジェダイ」は好きだけど、本当の評価ってEP9でルーカスフィルムがカイロ・レンを殺すという決断ができるか否かにかかってると思うんだよな。
— すん (@s_ahhyo) July 13, 2018
それにより本当にスカイウォーカーの血が途絶えるわけだから。
僕の期待していた「カイロ・レンの死」ってそういうのじゃないくて…、EP8の流れのまま取り返しのつかない悪になった彼がバキバキの最終決戦でレイに殺されるやつだったので、EP9のソレは「そういうことじゃないんだよ」という感じでした。個人的な意見だけど。
まぁカイロ・レンが光の側に戻ってくるのはエモさとしてありではあるのだが、「レイと一緒に戦うカイロ・レン」はもっとクオリティ高いやつをEP8で既に観たじゃん。
レイとベンのキス
まさかキスなんてしないだろうな・・・、するなよ!するなよ!
あーーーっ!!本当にしやがったーーー!!!
ってのが観てた時の状況でした。
EP8のフィンとローズのキスほど唐突でもなく(これはこれでダメなのだが)、お膳立てがしっかりした上でJ.J.がドヤ顔で「これが観たかったんだろ?」って言ってそうなキスシーンだったので、全力で否定したい。
だからさぁ、レイとベンのラブストーリーとして捉えて観てもEP9は雑なんだよな。
レジスタンス VS スターデストロイヤー艦隊
スター・デストロイヤーがデス・スターと同等の破壊力を持つようになりました、まではいいとして、そんな船がゴロゴロあったら「もし反旗を翻えされたらどうするんだろう」という思考には陥ったよね。っていうか当初ファーストオーダーも「シスのやつらはカルト集団ですよ」みたいな感じで信用してないし、全然一枚岩じゃないじゃん。
で、レジスタンスと艦隊の戦闘が始まると、レジスタンスはボロボロの状態まで追い詰められるわけですが、そこからランド・カルリジアンとチューバッカが援軍を連れてきてくれるんですよね。レジスタンスでもなんでもない「帝国への怒りを抱いた人民軍」たちを。
それが全然エモくない。それまでの演出が中途半端だから、いきなり人民たちが宇宙船でやってきても絵面はまんま『アベンジャーズ/エンドゲーム』の繰り返しだし、「援軍がきたぞ!届いたんだ!」まではやったけどその後、彼らが戦ってるところはそんなに描くわけでもないという。
そもそも「デススターっぽいこと」はEP4、EP6、EP7ともうすでに3回やってるわけでこれで4度目なんですよね・・・。
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カイロ・レン/ベン・ソロの存在感
『スカイウォーカーの夜明け』で、いや続三部作を通して最も特筆すべきはアダム・ドライバー演じる「カイロ・レン/ベン・ソロ」というキャラクターの強烈な魅力だ。
『フォースの覚醒』ではまだそうでもなかったかもしれない。とりあえず種まきだけするJ.J.エイブライムスの、いまいち弱いキャラクター描写から「敵キャラが弱そうすぎるだろ」と思われていたのが『最後のジェダイ』で魅力が爆発(爆発できたのはEP7でちゃんとハン・ソロを殺せたからだとも思う)
本作『スカイウォーカーの夜明け』でも彼の名演は炸裂している。個人的には『最後のジェダイ』の演技が好きだとしても、EP8で固まった彼のキャラクター性が『スカイウォーカーの夜明け』でもしっかり受け継がれていたと思う。
レイに倒され、カイロ・レンとしての死を受け入れた後も(ストーリーとしては好きではないが)おどけたようにしてみせるベン・ソロとしての演技はハン・ソロの若きハリソン・フォードを思い起こさせるようであった。
ダース・ベイダーほどのカリスマ性はないにしろ、カイロ・レンというキャラクターそしてアダム・ドライバーという俳優に出会わせてくれたことは続三部作において非常に意味深い体験だった。
ありがとうアダム・ドライバー。そしてベン。
レイ・スカイウォーカー
「スカイウォーカー」という言葉が血縁ではなく概念になる、みたいな予想もあって、当たったようでハズレだったかな。
そこに行き着くまでが大いに想像から外れていたので、言わんとしていることはわかるんだけど納得いかねぇ!という思考に陥った。
EP8で「なんでもない平凡な家の生まれ」として、スターウォーズの血縁の呪いから解放されたはずのレイが、EP9で「お前はパルパティーンの孫だよ」という180度真逆の血縁の呪いにとらわれる。
「パルパティーン(悪)の血を引いていながらもジェダイ(正義)になれる」というのがJ.J流の「血縁の呪いからの解放」っていうのはなんとなくわかるんだけど、それって結局「ダース・ベイダーの血を引くルークでもジェダイになれる」をやった旧三部作と同じなわけで、それを完コピされてもな・・・という。
それよりも「どこの生まれだろうが、親が平凡であろうが、捨て子であろうがジェダイ(正義)になれる」というほうが明らかに社会へ向けて、子供達へ向けてのポジティブなメッセージになるだろう。そのほうがディズニー的でもある。
それを台無しにしてしまったという他ない。
しかも結果として、レイは「パルパティーン」という名を恥じ(?)、「スカイウォーカー」の姓を選ぶ。すっっっげぇ血縁気にしてんじゃん!!!呪い解けてないじゃん!!!
「タイトルの伏線回収!!スカイウォーカーは不滅です!!(ドヤァ)」じゃないんだよ。
まとめ
1週間近くこのブログを書き続けて、もうまとまらないなというところまで来たので強制的にまとめます。
スター・ウォーズは死なないと思う。けどスカイウォーカーサーガは見栄えだけ綺麗に取り繕ったゴミのような結末に落ち着いてしまったなと思う。
EP8で見せた野心も、目新しさも、社会に訴えかけていくメッセージもかなぐり捨て、ほぼEP6を完コピして(しかもEP8でやったことをもう一回やり直して)「これからもファンに言われるがまま、ズブズブでベタなスターウォーズを作っていきますよ」という置きに行った結末を迎えた。
J.J.エイブライムスは面白い映画を作ること自体はできるんだと思う。EP9も正直面白かったからこそ悔しいと僕自身思っている。
それでも、本当にスターウォーズという作品を通して伝えたかったことってなんなんだ?というのが、ずっと疑問に残ってしまう最終作になってしまった。
本作のキャッチコピーは「すべて、終わらせる。」
終わらせて、後に残ったものってなんだろう?
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