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『トレジャー・プラネット』はたぶん史上最高のディズニーアニメーション。

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トレジャー・プラネット オリジナル・サウンドトラック

『美女と野獣』とか『アラジン』とか『ライオン・キング』とか、ここ5〜6年だったら『アナと雪の女王』とか『ベイマックス』とか『ズートピア』とか。

 

ディズニーは時々、観ていて本当に文句のつけようがないくらい頭から終わりまで面白いアニメーションを作ってくれることがある。

時折とんでもないダメなクオリティのものを繰り出してくることこそあれ、ディズニーアニメーションが繰り出す名作の打率はかなり高く、「これはいまいち」と思える作品でも他社作品と比べると全然見劣りしない。

 

そんな名作揃いのウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ作品で、あえて最高傑作を挙げるとするならば。

本音では『ズートピア』だけど、あえてここは『トレジャー・プラネット』を推したいと思う。

 

目次

 

00年代ディズニーアニメーション

 90年代ルネサンス期のディズニーアニメーションは「大人から子供まで楽しめるラブストーリー」を中心に作品を展開し成功を収めてきた。

『ライオン・キング』や『ムーラン』などの例外はあれど、1989年の『リトル・マーメイド』から1999年の『ターザン』に至るまで、ストーリーの中心には必ず「恋愛」があった。

 

2000年代前半は、ルネサンス期のディズニーの盛況ぶりはなりを潜め、いわゆる「暗黒期」に突入する。

作品のテイストは「ディズニーらしさ」よりも作家性がより前面に出てくる。

『ポカホンタス』や『ムーラン』でも絵柄のタッチの違いなどはよく出ていたが、2000年代以降は『ラマになった王様』『アトランティス/失われた帝国』『リロ・アンド・スティッチ』などでそれがより顕著になるほか、ウォルト・ディズニー生誕100周年のタイミングもあり、過去のウォルト作品を思わせる作品も登場する。

『ファンタジア』の続編『ファンタジア2000』や、『海底二万マイル』を大幅にアレンジした『アトランティス/失われた帝国』、そして本作『トレジャー・プラネット』はウォルト・ディズニー実写作品『宝島』のリメイクである。

 

今までは童話原作が多かったが、よりオリジナルテイストだったり、原作付きのものも大幅なアレンジが施されているし、テーマは恋愛中心から、アドベンチャーに重きが置かれ、舞台は宇宙や近未来になり、未知との遭遇的な作品が増えている。

 

また、男女の恋愛より家族愛、特に疑似家族に着目された作品が非常に多いのも特徴である。

 

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冒険心をカタチにする

『トレジャー・プラネット』は00年代ディズニーのほかの作品と比べても、最もアドベンチャーしていると言っても過言ではないと思う。

 

「未来の絵本」を利用して、幼少期の主人公の憧れと物語の重要人物である「伝説の海賊」を同時に説明する巧みさ。

そこからの青年になった主人公ジム・ホーキンスの抑えきれない感情の爆発が表現されるソーラー・ボードのシーンは圧巻である。

突如襲われる我が家と、手に入れた宝の地図。しかも宝の地図は球体でギミック付き・・・と、登場する様々なものにいちいちワクワクさせられてしまう。

 

ロバート・スティーブンソンの『宝島』を原作としていながら、舞台を宇宙に移すことにより新鮮さを与え、何が起こるのか全く予想がつかない。

乗組員は擬人化した動物や得体の知れないクリーチャー。

海ならば大嵐か巨大海獣が来るであろうシーンでは超新星爆発とブラックホールがやって来る。 

 

それでもストーリーはいたってシンプルで、メインは伝説の海賊の宝探し。それを狙う悪党たちの影。

田舎の惑星モントレッサで、傷心から非行少年としてくすぶっていた主人公が、子供の頃に憧れた伝説の海賊の宝を求めて旅に出る。

乗せられた船では雑用を押し付けられながらも、揉まれ、成長していく。

宝を狙う悪党の親玉ジョン・シルバーとジムの絶妙な関係性から、終盤での謎解き展開とハラハラする脱出劇まで、95分間ノンストップで繰り広げられる大冒険活劇。

 

僕らが幼い頃に夢見た、「冒険心」をまんま映画にしたような作品がこの『トレジャー・プラネット』である。

 

開始4分のクライマックス

本作の第一のクライマックスは開始4分弱でスタートする。

12年後の字幕とともに現れる青年となったジム・ホーキンスが、ソーラーボード(空中を飛び回るサーフィンのようなもの)で立入禁止区域を駆け巡るシーンである。

その映像の圧巻ぶり、そしてアニメーターの力の入りっぷりときたらない。

 

ボードで空を飛び、雲の上まで到達したかと思うと、突如力を抜き、そのままくるくると回転しながら落下していく。そして地面すれすれで再びエンジンを加速させ、雄叫びをあげながら立入禁止区域へと突入、危険な工場地帯を、巻き込まれそうな回転する歯車の隙間をすり抜けていく。

もうこの、シーンが最高すぎて!!

 

若く心に不安と不満を抱えた主人公ジムの、隠しきれず抑えきれない感情の爆発を、言葉もなく映像だけで表現する。

本作と同監督のジョン・マスカーとロン・クレメンツが手がけた『アラジン』の主人公アラジンともまた一味違ったかっこよさ。

ミュージカルではないからこそ、こういう台詞のないシーンに心を奪われる。

 

またこのシーンの音楽がさらに最高に拍車をかける。

本作のサウンドトラックの作曲はジェームズ・ニュートン・ハワードで、ディズニー映画では『ダイナソー』『マレフィセント』そして現在制作中の『ジャングル・クルーズ』の音楽を担当している。

宇宙を舞台にするその世界観と限りなくマッチしているほか、主人公ジムの衝動を表現したかのようなエネルギッシュな楽曲にあふれている。

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ヴィランが家族になる

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ作品は、白雪姫のウィックド・クイーンをはじめとして、様々なヴィランを生んできた。

それでも『トレジャー・プラネット』におけるジョン・シルバーほど魅力的なヴィランも珍しいだろう。

 

ジョン・シルバーは、体の右半分が機械に改造されているサイボーグだ。

その体になった理由は多くは語られないが、そこに大冒険とロマンが詰まっていることは間違いない。

中盤、ジムがシルバーに機械の体のことを聞いた時、彼はこう答える。

「失うものもあるってことさ、夢を追っているとな」

それでも体を失っても、追いかけたも夢には満足していると断言する。

僕の思う「夢を追いかける男っていうのはこうあってほしい」という理想像を具現化したような存在がジョン・シルバーだ。

 

『トレジャー・プラネット』は本来頭が良く成績優秀だったはずの主人公ジム・ホーキンスが、父親が母と自分を残し家を出ていったことから非行少年として町の厄介者になってしまっているところから始まる。

父を知らない、田舎出身で斜に構えたコミュニケーションしか取れないジムに、本作のヴィランであるジョン・シルバーはこう語る。

父ちゃんから喧嘩の相手は気をつけて選べって教わったろう?・・・教えてくれるタイプじゃなかったか?

父親がいないジムに、知らずに傷口をつつくようなことを言ってしまったシルバーは、ジムに同情心を抱き、悪党たちに対しての建前上はジムの監視としながらも、彼がトラブルに巻き込まれない上手い生き方ができるように厳しく指導し、彼の成長を手助けする。

シルバーも、最初は本当にジムを殺すつもりだったかもしれない。それでも若く世間知らずなジムを気にかける彼の表情は、とてもヴィランとは思えない。

父親との交流がほとんどなかったジムは、シルバーに理想の父親像を重ね、船での雑用を通して二人は徐々にお互いに心を開いていく。

 

中盤、シルバーがジムにこんなセリフを言う。

「おい、俺の話をよく聞け、ジェームズ・ホーキンス?お前ぇはすげぇ事をする力を秘めてる。だが自分で舵を握り進路を決めなきゃダメだ。最後までやり抜け。例え嵐が来ようと!」

いままでディズニーアニメーションに、こんな風に主人公を励まし、喝を入れる悪役がいただろうか。それも、主人公を騙すつもりではなく、ぽろっとこぼれ出た本心で。

言われた本人のジムも、その言葉に感化され、芯をもった強い青年へと心が成長する様もまた、実に感動的である。

 

放っておけない非行少年を一人前にしてやりたい悪党と、そんな悪党に父親へのような憧れを抱く主人公、そんな二人が親密になればなるほど、クライマックスでシルバー率いる海賊たちの計画が明るみに出た時に、その絆の引き裂かれ方は痛烈になるのである。

それでも、あと一歩のところで引き金を引くことができないジョン・シルバーにグッと来るのである。

 

前述したように2000年代のディズニーは恋愛要素がほとんど排除され、疑似家族に着目した作品が多くなっていた。

本作でも説明した通り、ジム・ホーキンスとジョン・シルバーの絶妙な疑似親子関係が感動を呼ぶ作品になっている。

 

まとめ 

『トレジャー・プラネット』はいいぞ。

 

もちろん『リトル・マーメイド』も『美女と野獣』も『アラジン』も『ライオン・キング』もほぼ満点の作品で、時事的な問題とか、社会性だとか、本作では扱われていない要素や、ヴィランが裁かれてないだの、女性の活躍が極端に少ないとかもあるから、後世で評価されるのはやっぱり『アナと雪の女王』や『ズートピア』になってくるだろう。

それでもやっぱり『トレジャー・プラネット』はウォルト・ディズニー・アニメーション史上最高傑作と言っても、大げさではないクオリティだと思う。

つまらないところがなく加点ポイントしかない。

 

ただ、この作品が素晴らしいことは、もう見た人全員が知っていると言っても過言ではない。

 

つまりは「圧倒的に観られていない」ことが問題なのだ。

 

2000年代ディズニーは『リロ・アンド・スティッチ』を除いては、ほぼほぼ壊滅的にヒット作が生まれなかった時代だ。

本作も例に漏れず、これだけのクオリティを持ってしても制作費を回収できずに終わってしまっている作品である。

 

我々ディズニーファンがなぜここまで興奮しながらこの作品を語るのかは「観ればわかる」のだ。

ネタバレたっぷりの本記事は、おそらくもうすでに観たことある人しか読んでいないだろうから、この記事を読んでくれた人は是非とも友人に「『トレジャー・プラネット』はいいぞ」とボソッと伝えてほしい。

 

長いこと日本ではblu-rayソフトが販売されなかったが(海外では販売されている)ディズニー+が日本でも上陸したことによりHD画質での閲覧は容易になった。

 

かつてよりはきっと、手に取るハードルは低くなっているからこそ、今。

 

『トレジャー・プラネット』はいいぞ。

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