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世界を旅するDオタの旅行記/映画レビューブログ

『ザ・マペッツ』は夢を追いかける人へ向けたハリウッド讃歌。

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ザ・マペッツ (吹替版)

マペット・ショーのキャラクターたちがディズニーのIPであることを知ったのは今から10年ほど前に公開された『ザ・マペッツ』が最初だった。

日本では2012年5月にごく限られた映画館で、それでも全国公開され、当時学生で京都に住んでいた私は二条のTOHOシネマズまで足を運んだものである。

 

日本におけるマペットたちの知名度は限りなく低いと思う。私も大学生になるまで存在だけを認知しているような程度だったし、正直今も詳しいかというとそんなことはない。

世間的な知名度は、カーミット・ザ・フロッグがかろうじてストリートファッションのアイコンとしてアパレルが着用されている程度だろう。名前を知っている人がどれだけいるだろうか。

作者が同じである『セサミ・ストリート』としばしば混同され(お互いに共演しあっているので仕方ない部分はある)ているし、一方でセサミのエルモ、クッキーモンスター、ビッグバードらの知名度には遠く及ばない。

 

ディズニーは定期的にマペットたちの映画を制作しているが、今回は2011年私が初めて触れることとなったマペットたちの映画『ザ・マペッツ』を紹介する。

まぁあの、10周年だしさ。

 

目次

ジム・ヘンソンとディズニー

「マペッツ」たちとディズニーとの関係は1989年ごろまで遡る。

当時のディズニーCEOマイケル・アイズナーが「マペッツ」「セサミ・ストリート」の産みの親、ジム・ヘンソンと契約を交わし、「マペッツ」のアトラクションへの登場やTV放送、そして映画などを共同製作をする権利を獲得。(もちろんだがこの契約に「セサミ・ストリート」のキャラクターは含まれていないほか、過去にカーミットが出演した「セサミ」の映像は、「セサミ」側が自由に使えることとなっている)その直後の1990年にジム・ヘンソンは53歳の若さで亡くなってしまう。

2004年にディズニーは「マペッツ」を共同制作という形ではなく、ジム・ヘンソン・カンパニーから完全に買収し、マペッツ・ホールディングス・カンパニーを設立。ディズニーによる完全なるコントロールの元「マペットのオズの魔法使い」を製作。

ディズニーCEOがマイケル・アイズナーからボブ・アイガーへと変わった後に、社名も「ザ・マペッツ・スタジオ」に変更され、マペットたちを再構築、維持、さらには新たに創造してこのコンテンツを再興させようと試みる。

そして2011年に公開されたのがこの『ザ・マペッツ』である。

 

CEOボブ・アイガーは、クラシックなものを愛しつつ、革新的なものを取り入れるという、ファンの納得する最高のものを提供する天才的人物である。(他社企業買収の鬼でもある)

本作はアメリカ国民に愛されるクラシックで、伝統的な「マペット」の雰囲気と、そこに新たな風を吹かす「革命的要素」が織り込まれている。気がする。

 

『ザ・マペッツ』というタイトルでありながら、本作の主人公はこれまで登場してきたカーミットでも、ミス・ピギーでも、ゴンゾでもフォジーでもアニマルでもない。

本作で初登場する、ウォルターというマペットである。

 

ウォルターこそが、『ザ・マペッツ』における新たな風、というメッセージを私は受け取ったし、「古臭くて廃れてしまった」マペットたちを復活させるキャラクターの名前がウォルターというのもいかにも象徴的であると思っている。

 

感のいい人は私の言いたいことに気づいたであろう。

「ウォルター」とはウォルト・ディズニーの本名である。

 

落ちこぼれたちの復活劇

ウォルターはマペットでありながら人間の兄・ゲイリーがおり、親友のように仲がいい。マペットであるからしてゲイリーや他の少年たちのように成長できないことからコンプレックスを抱いていたが、ゲイリーに紹介されたTV番組「ザ・マペット・ショー」を見たところ大ファンとなる。

本作は人気のピークがとうの昔に過ぎ去ったマペッツたちをこのウォルターが再集結させ、再び人気を取り戻そうとする奮闘記だ。

 

ある程度年齢を重ねている人であれば、年老いたダサいおじさんたちが頑張って人気を取り戻そうとしている姿をマペットたちに重ね合わせることができるし、

若い世代には可愛いキャラクターたちの愉快でちょっとクラシックな復活劇としてアピールすることができる。

 

物語としては私が過去に紹介したディズニー映画『カントリー・ベアーズ』とほぼ同じプロットである。

(聞くところによると「カントリーベアーズ」にジム・ヘンソンの会社が協力しているらしい)

だが、もともとコメディ色も感動色も出せる強みを持った『ザ・マペッツ』の方が圧倒的に面白い上に、ミュージカル映画として(笑いを誘いつつも)かなりしっかりした作りになっている。劇中曲はアカデミー賞歌曲賞も受賞したレベルである。

『カントリーベアーズ』はさぁ、アトラクションとキャラデザが違いすぎる時点で愛着9割減なのよ。

 

マペッツたち、落ちこぼれの感動の復活劇でもあり、「何者にもなれない」主人公ウォルターが一夜にして夢を掴む自己実現、アメリカン・ドリームの映画でもあるのである。

そこに、クスッと笑ってしまいそうな、彼らなりの「大真面目な」葛藤なんかもあったりして、泣けて、笑える。

 

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ハリウッド観光ムービー

本作のさらなる面白さは、この映画が「ハリウッド観光ムービー」としての一面も持ち合わせていることだ。

 

ウォルターたちの乗る観光バスがまず最初に到着する「マペット・シアター」なる建物は実在せず、その建物は実際のところディズニーの所有する劇場「エル・キャピタン・シアター」を撮影に使用している。建物の隣に「ディズニーズ・ソーダ・ファウンテン&スタジオストア」(現「ディズニー・スタジオ・ストア」と「ギラデリ・ソーダ・ファウンテン&チョコレートショップ」)の看板がちらっと見えるし、そもそもこの建物が「荒廃してボロボロ」なのも、ディズニーの自虐ネタのようで面白い。

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また、マペット・スタジオはジム・ヘンソン・カンパニーの建物である。

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また劇中メアリーがひとり食事に訪れるダイナーは、ハリウッドにある「メルズ・ドライブ・イン」である。筆者は映画を観てから数年経っていたために全く覚えておらず知らずにここで食事をした。

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とまぁ、観光名所巡りとしては若干微妙な部分もあるが、合わせて楽しみたいのが様々なハリウッドスターたちの豪華カメオ出演である。

本人役で登場するジャック・ブラックに、ウーピー・ゴールドバーグ、セレーナ・ゴメス、ニール・パトリック・ハリスといういかにもディズニーな面々に、ミス・ピギーの秘書役でエミリー・ブラント(これは『プラダを着た悪魔』のパロディであると踏んでいる)や元ニルヴァーナのドラムスで現フー・ファイターズのギターボーカルであるデイヴ・グロールも出演している。この作品の後に『シュガー・ラッシュ』でヴァネロペの声優を務めるサラ・シルバーマンもウェイトレス役で出演している。

 

ハリウッドを舞台に夢を追いかける人々を描く『ザ・マペッツ』そんな「ハリウッド賛歌」とも言える本作は、もうほぼ『ラ・ラ・ランド』と言ってもいいだろう。

いや、さすがにそこまでではない。

 

『ザ・マペッツ』はこれからも。

本作の紹介を書くにあたって色々と調べていたら、

私がまだ未見のディズニー+作品、『マペット大集合!』と『マペットのホーンテッド・マンション』にも本作の主人公ウォルターが登場しているらしい。

これ、すごくいい。1作だけの使い捨てではなかった。(もちろん本作の続編『マペット2/ワールド・ツアー』にも出演している)

 

ディズニー+という新たな「遊び場」を手に入れての、ディズニーによる展開の本気度がよくわかるし、海外でのマペッツたちの知名度や人気ぶりが伺える。

そして、今現在、マペット作品を製作している「ザ・マペッツ・スタジオ」はウォルト・ディズニー・スタジオ(映画部門)ではなく、ディズニー・パークス・エクスペリエンス・プロダクツ(パーク部門)の傘下にあるというのも面白い。

 

パークにおける展開もそうだし『マペットのホーンテッド・マンション』のようなパークをテーマにした映画というのも今後さらに展開されるのかもしれない。そして、考えられるのはイマジニアリングの技術を駆使した「グリーティング」ではないだろうか。

 

そもそもが「人形劇」のキャラクターであるからして、生身の人間に演じさせればグリーティングは不可能ではないだろうが、どう考えても訓練が大変だろうし、リアルなサイズで、コンピュータ制御しつつ、一方でちゃんと「マペットらしい」動きをするような、さらにはゲストとリアルタイムで会話をしてくれるようなカーミットとかいたら、絶対にグリーティングしてみたい。

そんな技術を開発しようと頑張ってるんじゃないかと、勝手に妄想しながら、今後のディズニーでの展開を期待している。

 

ああ、マペット作品もっと観なきゃな。

 

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