言葉の魔法、幸せの無条件降伏『メリー・ポピンズ リターンズ』感想

メリー・ポピンズが帰ってきた。

本当に帰ってきた。

 

 

他国から遅れること約2ヶ月弱、ここ日本でも『メリー・ポピンズ リターンズ』が公開された。

 

前作『メリー・ポピンズ』から実に54年ぶりの、リメイクではない「続編」の感想です。

もう一度言っとこう「メリー・ポピンズが帰ってきた。」

 

本記事は現在公開中の『メリー・ポピンズ リターンズ』および関連作品『メリー・ポピンズ』『ウォルト・ディズニーの約束』の内容に触れます。ネタバレは極力避けておりますが、敏感な方は閲覧を避けることをお勧めします。

 

メリー・ポピンズ リターンズ (オリジナル・サウンドトラック)

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  • アーティスト: ヴァリアス・アーティスト
  • 出版社/メーカー: Walt Disney Records
  • 発売日: 2018/12/07
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目次

 

前作『メリー・ポピンズ』

ロンドンのチェリー通りに住む銀行家バンクス氏の子供ジェーンとマイケルはいつも悪戯ばかりで、ナニー(家庭教師兼世話係)がなかなか続かずに困っていた。

メリー・ポピンズは、そんなバンクス家にある日突然、文字通り「風に乗って」空からやってきたナニーである。

 

彼女の周りで次々起こる不思議な出来事に興味を惹かれた子供たちは、次第に彼女に心を開き、同時に多くのことを学んでいく。

メリー・ポピンズが子供達によからぬことを吹き込んでいるのではないかと疑ったバンクス氏は彼女を問い詰めるが、会話の流れで子供達を彼の職場である銀行に連れていくことになってしまい、その結果子供たちが起こした問題のせいで解雇の危機に直面してしまう。

絶体絶命の状況で、銀行の役員たちに呼び出されたバンクス氏は意外な行動を取るのであった。

 

 

って書いたら後半なんかハードな映画に聞こえるけど、めっちゃハッピーな映画です。

 

繰り返されるメッセージと放棄される「続編の宿命」

続編を見るにあたって、最近ではあるが注目しながら見ているポイントというのがあって、「前作で至った結論やメッセージを活かしているか」だったり「そこから一歩前進できているか」「前作と違う結論や新しい展開を提示するのであれば納得しうるだけのドラマ性があるか」とか。それらをきちんと提示できることが続編の宿命であると勝手に思っている。

(もちろん「続編の宿命」を果たしていても面白くない映画もあればその逆もある)

 

今作『メリー・ポピンズ リターンズ』でいうと、「前作で至った結論やメッセージを存分に活かしている」ことは間違いないのだけど、実はそのメッセージを繰り返しているだけだったりする。メッセージだけではなく、作品を構成する骨子がほぼ同じ。

「一歩前進するのではなく、そのメッセージをよりマシマシにして伝える」という作品だった。

 

悪く言ってしまうと『メリー・ポピンズ』となんら変わらない、時間軸とキャラクターの年齢だけを後ろにずらしたような、既視感のある展開が続く。スター・ウォーズで例えれば『フォースの覚醒』のような作りではある。

(念のため言っておくと『フォースの覚醒』も面白いとは思っています)

 

ではあるのだけど、当然細かな肉付け部分は前作とは異なるし、話自体も全く新しいものである。

本作は全編にわたって前作を感じさせる懐かしさと、初めて聞くはずなのに耳馴染みのよいミュージカル、ブレないメッセージ性、ハッピーエンドへなりふり構わず突き進む展開など、幸福感と笑いに包まれる条件が軒並み揃っていて、「続編の宿命が・・・」とかを考えるのが野暮ったく感じられてしまう。

この幸福感の前ではカッコつけたレビューや批評なんかは全く役に立たない。

無条件降伏である。

 

何と言っても、主演のエミリー・ブラントが見紛うことなき「メリー・ポピンズ」そのものなのである。

54年前にメリー・ポピンズを演じたジュリー・アンドリュースとは似ても似つかない、ちょっと大人でツンとした印象が強い彼女だが、完璧にメリー・ポピンズを2018年に蘇らせている。(米国は2018年公開)

 

続編でありながらリブートのようでもあり、結末の「それでええんかい!」なオチも含め、全く違う話をしているはずなのに受ける印象がかなり近い。「このシーンとこのシーンが対応してるんだな」とニヤニヤしてしまう面白さがある。

 

畳み掛けるメロディとわかりやすい展開

前作が超傑作なので、「前作より優れている」というと怒られそうだけど、『メリー・ポピンズ』よりもいいところは「めちゃくちゃわかりやすい」ということだろう。

(その分考察の余地があまりないといえばない)

 

物語の道筋がより明確になり、ダレず、メリハリも増え、スピード感のある展開にしたことで前作で感じた長さもさほど感じなくなった。(実際10分ほど短くなってはいる)

 

かつてのシャーマン兄弟作曲の曲群のようなキラーチューンにはなり得ないものの、登場する楽曲たちは見事なまでに『メリー・ポピンズ』のテイストであり新曲なのに耳馴染みが良く、どこか懐かしい。

(関係ないけどアカデミー歌曲賞は『アリー/スター誕生』のShallowが取ると予想している)

 

メリー・ポピンズ役のエミリー・ブラントやジャック役リン=マニュエル・ミランダの歌もさることながら、中盤登場したトプシー役メリル・ストリープの曲は圧巻である。おれメリル・ストリープあんまり好きじゃないのに!

 

そんなこんなで、前作見てないけど・・・というような人でも、ミュージカルファンタジーが好きならおそらく間違いなく楽しめる作品だと思う。

 

飛び道具的展開で賛否両論あった『シュガーラッシュ:オンライン』や優等生的でいまいち盛り上がりに欠け(興行的にも爆死し)た『くるみ割り人形と秘密の王国』など、ちょっとおすすめしづらい映画が続いたディズニーだが、この『メリー・ポピンズ リターンズ』は誰にでもおすすめできる作品だ。

 

そしてまたメリー・ポピンズに学ぶ

前作を清々しく骨組みをコピーしていながらも、その肉付け部分、メリー・ポピンズがナニーとして子供たちに伝える教訓や、子供達が自ら見つける答えは細かに違いがあり、我々は子供たちそして父親のマイケルとともにこの映画を通して冒険し、新たな発見をし、学んでゆく。

 

メリー・ポピンズは魔法使いである。

魔法使いではあるが、彼女は魔法でなんでも困ったことを解決する、という人物ではない。

前作『メリー・ポピンズ』の「A Spoonful of Sugar」や「Supercalifragilisticexpialidocious」に代表されるように、彼女は日常のちょっとした出来事を、魔法のような言葉で見方を変えることでたちまち素敵にしてしまう人物だ。

 

これはまだ結論ではないけど、僕は「劇中で彼女が起こす魔法はきっと現実に起きているわけではないのだろう」というのはよく考える。

子供達が興奮して「魔法のような出来事があったよ!」と親に報告しても、メリー・ポピンズは知らん顔で「そんなことあるわけがない」とはぐらかす。それは前作でも、原作小説でも一貫している。

 

全ては彼女の言葉が生んだ彼らの「想像力」の成し得たもので、すべては彼らの実力なんじゃないだろうか。(終盤ちょっと怪しいけど)

 

 

メリー・ポピンズが劇中子供達に向ける数々の名言は、否応無く僕らの心にまで突き刺さる普遍的なものである。子供達はその言葉を受け取り、考え、成長し、「次の一歩」を導き出し、自分たちの言葉で父親のマイケルに伝える。

 

前作『メリー・ポピンズ』、そしてその制作秘話を語った『ウォルト・ディズニーの約束』でも語られる通り、メリー・ポピンズが救うのは子供達ではなく、マイケルや我々大人の心だ。

 

近頃「変わっていくこと」を描くことが多くなったディズニーだが、彼女の言葉が導き出すような「変わらないこと」「普遍的なもの」を思い出すことでも、人はきっと成長する。

 

彼女の魔法はもしかすると幻かもしれない。明日には忘れてしまうことなのかもしれない。

それでも彼女の言葉はずっと心に残り続け、思い出せば勇気をくれる。

だとするとメリー・ポピンズの「言葉」こそが魔法なのだろう。

 

 

 

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