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歴史的芸術映画作品『ファンタジア』この作品に、そろそろ素直になろう。

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ファンタジア(吹替版)

 

ディズニー映画『ファンタジア』が昨年、劇場にてリバイバル公開されていた。

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1940年に公開されたディズニー長編アニメーション第3作『ファンタジア』は2020年で80周年を迎えた。

2020年からJALのファンタジア機や、東京ばなな等のファンタジアコラボフードやグッズ、そしてディズニーオンクラシックのファンタジアコンサートなど、80周年を記念した様々な企画が繰り広げられている。

 

その中でも、もっとも原点に立ち返った「劇場上映」が行われたというのは非常に喜ばしいことである。

ご存知の通り、ディズニー作品の劇場再公開はめったに行われない。あってもシネマイクスピアリ限定など、かなり限られた状況での開催が多い。

(2019年には『リトル・マーメイド』が30周年を記念し、1日限定で再上映予定であったが、台風19号により中止。2020年4月に延期となったがそちらも新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言のために中止となってしまっている。)

 

私も昨年、地元の映画館で『ファンタジア』を鑑賞した。

(なんで一年も前の話をしてるのかと言うと、1年前に書いた記事を今更投稿しようとしているからです。その映画館も1年経った今、なくなってしまっている…)

 

『ファンタジア』という作品はウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ(WDAS)長編作品としては第3作目の作品でありながら、後にも先にも他のWDAS作品とは異なる性質を持つ作品でもある。

 

「名作」として語り継がれる分には異論はないが、『白雪姫』『ピノキオ』『バンビ』『ダンボ』などといった作品群とは、作品が目指した方向性が明確に違うことを認識してから鑑賞することをお勧めしたい作品でもある。

前提知識がなく楽しめる作品の方が、そりゃあ娯楽としては優れているだろう。

それでも「歴史的芸術作品」には、時には前提知識が必要なのである。

 

 

目次

神格化される『ファンタジア』という作品

ウォルト・ディズニーの手がけたミッキーマウス1作目『蒸気船ウィリー』は、トーキーアニメ作品として、初めてサウンドトラック方式を利用した作品であるし、長編作品1作目『白雪姫』は世界初の長編アニメーション作品であり、アニメ映画の歴史はウォルトとともに進化していったといっても過言ではない。

 

ウォルト・ディズニー『シリー・シンフォニー』と呼ばれる短編映画シリーズを製作していた。

ミッキー・マウスのような既存の人気キャラクターを用いず、オリジナルのキャラクターとミュージカル音楽を合わせた短編映画である。

このシリーズから『三匹の子ぶた』の子ぶたたちや、『かしこいめんどり』でデビューしたドナルド・ダックなど、人気のキャラクターたちもいる。

 

そんなウォルトの手がけた長編3作目『ファンタジア』は、

『シリー・シンフォニー』シリーズの手法を用いながら、より大規模に、既存のクラシック音楽にアニメーターたち独自の解釈を交えながら作り上げられたものだ。

 

本作には莫大な予算が注ぎ込まれた一方で、公開当初は微妙な評価であった。

従来のディズニーファンはその前衛的な作品の内容に戸惑いを覚え、クラシックのファンは音楽的解釈と映像の内容のイメージの違いを批判した。当時の最新の録音技術を用いたために、映画館の設備的にも上映可能な劇場はかなり限られており、ウォルトの存命中は商業的に成功することはなかった。

 

それでもディズニー社は、ウォルトが情熱を捧げたこの作品を「失敗作」として扱うことはせず、ディズニーの遺産として大切に扱ってきた。 本作はウォルトの死後の再上映によって、ようやく商業的にも成功し、今に至るまでの知名度を獲得することとなる。

 

まだ「長編アニメーション映画」というジャンルが生まれて間もない黎明期に、(意図的ではないにせよ)商業的成功を脇に置いて『ファンタジア』という前衛的な作品で勝負したウォルト・ディズニー。

米ディズニー社ではウォルトが手がけた作品たち、とりわけ長編アニメーションは「神格化」して扱われることが多い。

その中でもアニメーション業界のみならず、映画業界、クラシック音楽界に至るまで「賛否両論」の波紋をもたらしたこの『ファンタジア』は、ウォルトが手がけた他のディズニー作品と比べても、その製作背景や歴史的功績から「神格化」度合いが高い作品でもある。

 

神格化度合いが高くなればなるほど、映画ファンやディズニーファンにとっては「率直な感想を言いづらい作品」になってしまう。

その一方で『ファンタジア』の特異性を知ることなく、『白雪姫』などの他のディズニー長編と同じ感覚で鑑賞すれば戸惑いを覚えてしまうだろう。

いわゆる『白雪姫』や『ピノキオ』を観るようなカジュアルな感覚で『ファンタジア』を鑑賞してしまう人々が、『ファンタジア』がもたらした歴史的な背景も作品としての文脈も理解することなく「意味がわからなかった」「つまらなかった」と烙印を押してしまうのだ。

 

その戸惑いや率直な感想を否定するつもりはないし、私自身も感じる部分がある。

 

前衛的かつ商業的な二面性

『ファンタジア』という映画は、観るものの想像力を掻き立てるべく作られた前衛的なセクションと、わかりやすく魅力的なキャラクターがストーリーを描くキャッチーなセクションとの二面性のある作品でもある。

一方、2時間の尺の中でいくつかキャッチーなセクションが存在するとはいっても「実写の人間が堅苦しい説明を間で挟んでくる」「セリフがなく」「眠気を誘うクラシック音楽が流れ続けている」という状況は、一般的にはなかなかハードルが高いかもしれない。

なんなら本作の一曲目はキャラクターが一切登場せずに抽象的な映像表現と風景描写のみが繰り返される『トッカータとフーガ』である。

 

一方でディズニーはこの歴史的芸術の『ファンタジア』をキャッチーな商業的アイコンとして利用する側面もある。

前面に登場するのは『ファンタジア』のなかでも最も大衆の注目を集めやすい『魔法使いの弟子』セクションのミッキー・マウスである。

映画を見たことがない人たちにとっては、『ファンタジア』=「魔法使いミッキーの映画」という誤った認識を持った人たちもいるかもしれない。

 

 個人的見解だが、ディズニーアニメ長編における『ファンタジア』は、ビートルズにおける『Revolution 9』のような作品だと思っている。

 

極端な話だが「ビートルズは『Yesterday』しか知らないんだけど、どの曲がオススメ?」と人に聞かれて『Revolution 9』をお勧めする人は、よっぽど意地悪な人か、頭のおかしな人だろう。

『ファンタジア』はディズニー長編アニメーションとしては挑戦的で前衛的な作品でありながら、公式がキャッチーな部分だけをパッケージ化し「名作」として宣伝することで、上記の例のような現象が起きている気がするのだ。

『ファンタジア』は名作であることには間違いないが、同じ名作でも『ピーターパン』や『シンデレラ』とは名作としての性質が全く異なる。

『Yesterday』や『Let It Be』や『Yellow Submarine』や『Ob-La-Di, Ob-La-Da』などを差し置いて『Revolution 9』こそがビートルズの本流だという人は少ないだろう。

また『ファンタジア』を名作として謳う人たちは、それがほかのWDAS作品と大きく異なり、衝撃を受けたから、という理由が大きいはずだ。

『ファンタジア』と同じ性質をもつ作品は、WDASであってもこれ以外存在しない。本作のリスペクトを込めて作られた実質的続編の『ファンタジア2000』であっても、その性質は『ファンタジア』とはかなり異なり、非常にキャッチーなのである。

『ファンタジア』にはキャッチーな部分も確かにある。それでもある程度の心構えがなければ、貴重な2時間を無駄に過ごしたと思われてしまうかもしれない。


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『ファンタジア』はつまらないかもしれない

 

『ファンタジア』はいわゆる他のディズニーアニメーション作品とは、かなりその性質が異なるものである。

前衛的で、万人受けし難い作品だ。

だからこそ、「つまらない」と直感的に思う人も少なくないだろう。

私とてその感想を否定はしない。

 

『ファンタジア』を深く理解するためには、こと現代においては豊かな感受性に加え、クラシック音楽への興味、アニメ映画史への多少なりの知識があってこそだと思うからだ。

簡単には理解できない、なんてことを言うつもりはない。

でも、「つまらない」と思うことを、後ろめたく思わなくてもいいと思うのだ。

「名作」オーラに潰されて「つまらない」と言いづらい空気も、それはそれで生きづらい。

 

映画レビューをする人間が開き直るなって感じがするが、そもそも、作品を「面白い」と「つまらない」に二分化できるわけがないのだ。

「面白い」、または「名作」と「つまらない」は両立しうる。そして、人が「つまらない」と感じる部分も、見方や専門性を持つと非常に楽しめる側面があるのだ。

だからこそ、万人によってそれぞれの価値観でそれぞれに評価されるべきなのだ。

 

もう何が言いたいかわからなくなってきたけど、

私は『ファンタジア』という作品が好きで、は名作だと思っている。だけど、途中で寝てしまうこともあるし、もしかしたら「つまらない」かもね。

「ディズニー好きなのに『ファンタジア』をつまらないっていうなんて、センスない」って言われるかもしれないが、普通に、自分の気持ちに素直でいいと思う。

もしこの作品の対象に無理している人がいるのであれば。

 

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