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「つまらない」では終わらせない。子供騙しじゃない『王様の剣』の面白さ。

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このブログではなんども言っていることだけど、そして何度だって言わせてもらうけど、「好きな映画」と「面白い映画」というのは別に同居していなくても問題ないのだ。

 

「なんでかわからないけど好き」というのは純然たる真実であり、それを馬鹿にされる筋合いなどないのである。

(一方で自虐的に好きな作品を「面白くないよね〜」とか言ってしまいがちなのだけど)

 

ディズニーには「王様の剣」という不思議な作品がある。

騎士道物語の定番、RPGやアニメのモチーフなどにも多く利用されている「アーサー王伝説」を原案としていながら、「アーサーが伝説の剣エクスカリバーを抜いて王になったタイミングで終わる」という映画だ。

 

今回は、この「王様の剣」の魅力を語りたいと思う。頑張って。

 

目次

 

「王様の剣」の世間の評価

「王様の剣」の世間からの評価は散々である。

「つまらない」「中身がない」「ワースト作品」などである。

それでも「コルドロン」や「シンデレラ」以前の短編集長編(「ファン・アンド・ファンシー・フリー」など)より一般的知名度がある分まだマシとも言える。

 

まぁ「王様の剣」が好きな僕からしても、内容はかなり薄いと思う。

それでも熱狂的なファンがいることも間違いなく、特に海外では高い評価を受けている印象がある。

 

「美女と野獣」に始まり、「カールじいさんの空飛ぶ家」「アナと雪の女王」「ズートピア」「リメンバー・ミー」など、実写作品と比較しても劣らないレベルのアニメーション作品が量産されてしまっている現代だからこそ、こういう軽い内容の作品がすぐに「つまらない」という烙印を押されてしまうことに繋がっているようにも思う。

 

「魔法」は子供騙しじゃない。

 

王様の剣にはバトルシーンがない。あるにはあるが、力づくの決戦がなんの意味も持たないことを伝える役割を担っている。

派手なアクションシーンもなく地味な印象を受けるが、賢人マーリンの愉快な魔法によって視聴者の目を喜ばせる。

 

ディズニーの「魔法」は「ありもしない子供騙し」で「現実から目を背けさせる」などといった批判を多く受けることがある。

 

「王様の剣」のマーリンも、魔法で部屋を綺麗に片付けたりお皿洗いをしたりする。

 

これは当然ありもしない出来事なのだけど、それって現代社会においてAmazonの倉庫で商品を運んでいるロボットや、部屋の掃除をしてくれるルンバや、食器洗い洗浄機とどう違うだろう?

当時の「魔法」は形こそ違えど、現代の技術で「現実」になりつつある。

それはすべて「もしこんな魔法みたいなことができれば楽なのに」という「空想」から生まれたものである。

もちろん努力や研究や、知識の蓄えと知恵の閃きによって生まれたものである。

「王様の剣」が言わんとせんことはまさに「それ」なのだ。

 

作中ワートはマーリンの魔法で魚や鳥、リスに変身する。

そこで動物になりただ夢のように遊ぶのではなく、危険と隣り合わせの小さな命に目を向ける事にもなる。そしてその危険から、命からがら逃げる事で「生き方」も学ぶのである。

マーリンは魔法で襲ってくる動物たちを懲らしめたりはしない。あくまでワートの知恵の力に期待し、見守る。

そして、ワートがリスの女の子に恋心を抱かれた時に、彼は身をもって人との関わり方を学ぶ。一方的な好意が人を不快に思わせる事、そしてそれの拒否の仕方を間違えると相手も自分も傷つけてしまう事。人間に戻ってしまったワートに驚いたリスの女の子は悲しそうにその場を去る。そしてワート自身もそれを見て悲しくなる。

 

マーリンとマダム・ミムとの対決ではまさに「力づくではない知識と知恵の勝利」を目の当たりにする。

 

このなんでもないようなシークエンスそれぞれで、「想像力」や「身を守る術」「機転」「他に寄り添う心」「知識」「知恵」を学んでいくのである。

 

そしてこれらは全て「王としての素質」につながる。

 「より良い未来」を作るための素質は腕力などではなく、ましてや魔法でもない。

それはウォルト自身も晩年、非常に熱心に追い求めていたものでもある。

マーリンの魔法は、自然や科学や医療にまで地続きで繋がるように演出されているのだ。

 

魔法など子供騙しだ、間違いだ、悪だ、幻想を見せるものだと否定する、アンチディズニーへの痛烈な批判とも取れる言葉がこの映画の中には存在する。

 

Just because you can't understand something, it doesn't mean it's wrong.

 

「自分にわからない事があるからって、それが間違いだとは言えないでしょう?」

 

 

特に日本では、新たに生まれくる技術や革新は嫌われることが多い。

もっと言うと人種であったり、オタク文化だったり、lgbtqiaだったり、「わからないこと」への拒否感が非常に強い。

 

劇中ワートが涙ながらに発するこのセリフは、現代でも色褪せない真実である。

 

「シュールなコメディ」として観る。

とはいえ、「王様の剣」はコメディでもある。

 

王不在で混乱しきった世の中で、人々は戦争に躍起になっている。

そんな中で「戦よりも学ぶことが大事だ」と説くこのアニメーション、一歩間違えれば暗くつまらない内容になってしまう(なってしまっているという意見もあるだろうが)

「王様の剣」はそれをコメディとして描くことで物語を軽くした。

 

主人公のワートは悲惨な家庭環境ながら優しくまっすぐな少年であり、魔法使いのマーリンはひょうきんでムキになりやすい。堅物っぽいが根は優しいアルキメデス。クレイジーで不幸が大好きなマダム・ミム。この映画はこれら愛おしいメインキャラクターたち魅力に溢れているし、シャーマン兄弟による優しく楽しい歌曲が流れ、画面いっぱいの魔法でワクワクさせてくれる。

 

マーリンはバミューダ島にバカンスに行ってアロハシャツで帰ってくるし、マダム・ミムは自分で決めたルールをピンポイントで破ってくる。

強烈な笑い、とは言わないが僕にしてみれば十分面白い演出に溢れている。

佐藤くん(砂糖くん)可愛いし。

 

受け継がれるディズニーの血

また、こんな地味な作品でも「ウォルト・ディズニー・クラシックス」としてその血は確実に受け継がれている。

 

「リトル・マーメイド」や「プリンセスと魔法のキス」などで、この作品で登場した演出がよく観られる。

「リトル・マーメイド」は水中で大きな魚に襲われるシーンやポットに飛び込むシーンなどだ。

(ポットに飛び込む演出は「白雪姫」などにも観られるので本当にディズニーの伝統といった感じがする)

「プリンセスと魔法のキス」はマダム・ミムのシーンが、ルイスがママ・オーディの話をする際にパロディ的に使われていたりする。

こういったトリビア的な要素も楽しめる要素のひとつである。

 

ディズニーのスタッフたちは、作品のあり方を今の価値観でアップデートすることは多い、旧作品の実写化などはその典型だと思う。(ちなみにだが「王様の剣」の実写化も決定している)

けど、そこには大きなリスペクトも含まれている。

単なる焼き回しや過去の否定ではない、伝統と進化がそこにはある。

 

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まとめ

「王様の剣」はいいぞ。

 

「王様の剣」はウォルトが晩年公開を見届けることのできた最後の作品と言われている。

一方で晩年のウォルトはテーマパーク事業につきっきりでアニメ製作事業からはほとんど手が離れてしまっていたとも言われている。

「王様の剣」がこういうフワッとした出来なのも、当時のそういう影響があったのかもしれない。

しかしながらアニメーションの作画の出来は何年経っても色褪せない素晴らしい出来だし、ウォルトの思い描いた理想も映画内のメッセージとして残っていると思う。

 

お気に召すかはわからない、疲れていたら途中で寝てしまうかもしれない。

 

でももし気になったら、観てね。

あなたがこの作品を好きになってくれることを願って。

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あと全然関係ないけど、言語版のワートの声優さん成長期で声変わり中なのかな?ってくらい映画の中で声が不安定。そこも注目。

 

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