ディズニー実写映画にして『くまのプーさん』の続編となる作品『プーと大人になった僕』(原題:Christopher Robin)が1ヶ月後の8月3日に公開される。(日本公開は9月14日)
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ところで昨年冬、20世紀フォックスによる似たようなタイトルの作品が公開されたのをご存知だろうか。
その名も『Goodbye Christopher Robin』(グッバイ・クリストファー・ロビン)
日本公開は本国公開から半年以上経過した現在も未だ情報はなく、もしかするとこの『プーと大人になった僕』がソフト化するタイミングで「間違って手に取ってもらえるようなタイトルでシレッとDVDスルー」されるのかもしれない。
(追記)
ブルーレイ&DVD2枚組で2018年10月3日発売決定です。
劇場公開なしは残念ですがDVDスルーじゃなくてよかった。
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(追記おわり)
幸運なことに昨年僕はこれを劇場で見ることができた。
よくよく考えると、これも以前紹介した「ディズニーじゃないディズニー映画」に近いものがあるかもしれない。
下手すると日本版ソフトがリリースされることもなく闇に埋もれてしまう作品となってしまうかもしれず「それはもったいない」と思うので、少しでも作品の知名度が上がればと思ってこれを書きます。
というわけで『Goodbye Christopher Robin』のご紹介。
目次
実話を基にしたストーリー
この作品は実話を基にした伝記映画である。
児童小説「クマのプーさん」で一躍有名になったイギリス人作家アラン・アレクサンダー・ミルン(通称A.A.ミルン)が主人公である。
彼は戦争のトラウマから執筆活動に影響が出て、心療のため田舎でのどかな生活を送ることに決めるが、都会の生活を捨てられない妻ダフネは大反対。ダフネは彼らの小さな子供クリストファー・ロビン・ミルンを置いてロンドンの実家へと帰ってしまう。
ミルンとクリストファー、そして家政婦のオリーヴと三人で暮らしていくなかで、ミルンは時折、息子と遊ぶ時間を設けるようになる。最初は気乗りしないミルンだったが、クリストファー・ロビンの想像力に触発され、彼を主人公とした児童小説を思いつく。
友人のイラストレーター、アーネスト・ハワード・シェパード(通称E.H.シェパード)に挿絵を描いてもらい、共に制作を進め「クマのプーさん」が完成する。
作品は大ヒットし妻ダフネとの仲も改善するが、息子のクリストファーは「小説に登場するクリストファー・ロビン」としてメディアに取り扱われ、次第に彼と家族との仲はギクシャクしていくのだった。
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主人公A.A.ミルン役を「ピーター・ラビット」「スター・ウォーズ・シリーズ(ハックス将軍役)」「ハリー・ポッター・シリーズ(ビル・ウィーズリー役)」のドーナル・グリーソンが演じる。
また、妻のダフネ役は「スーサイド・スクワッド」「アイ, トーニャ」のマーゴット・ロビー、家政婦のオリーヴ役を「T2 トレインスポッティング」「メリダとおそろしの森(メリダ役声優)」ケリー・マクドナルド、監督は「マリリン 7日間の恋」のサイモン・カーティスが務める。
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「プー」のファンは100%観るべき
現状海外からソフトを取り寄せたりするほかで観る方法がないのが残念であるが、この作品は「くまのプーさん」のファンであれば100%観ておいて間違いない映画である。
僕自身A.A.ミルンの自伝は読んだことがなく、Wikipediaやディズニーの「くまのプーさん展」で簡略化された経歴を読んだ程度である。(プーさん展自体は京都と大阪で2回行った)
そのため、ミルンの経歴などをきちっと研究している人たちがどういう感想を抱くのかはわからないが(多少の映画的な演出はあるとはいえ)ミルンの経歴やクリストファーとの確執をさらっと追う分にはとてもわかりやすい内容になっていると思う。
そして、上記に紹介したトレーラーでも見られるように映画には「プー棒投げ橋」の着想を得るシーンが存在し、そのほかにも絵本「クマのプーさん」やディズニー版「くまのプーさん」に登場する様々な要素と言葉遊びがこの映画の中でも体験できるようになっている。
また、時折twitterなどで「プーさんは女だった?」みたいにデマ展開される「Winnie」のくだりも映画で補足される。
僕たちは何も学んでいない
映画的にどうこう、というと、どうやらそこまで批評家の評価は高くないみたいなのだけど、プー大好きな僕はとても心が惹かれる内容だった。
そしてやはり映画の教訓として、「親のエゴやメディアに翻弄される子供」という図が見て取れる。
「クマのプーさん」は1926年の児童文学であり、当時テレビなども普及していない中で少年クリストファー・ロビンは物語の登場人物としてもてはやされ、振り回され、社会に不信感を抱くようになる。
作中のクリストファー・ロビンは紛れもなく彼がモデルであるが、自身のアイデンティティがきちんと形成される以前から、望んでもいないのに絵本と同じような振る舞いを求められ、学校ではいじめられていく。
(追記)
勘違いしていらっしゃる方がいるようですが、ディズニーがミルンの死後、ミルンの妻ダフネから「クマのプーさん」の映画化権を手に入れたのは1961年であり、「クマのプーさん」の発行の1926年から35年後、クリストファー・ミルンは当時41歳です。
クリストファー・ミルンはアニメ化に際して好意的ではなかったようですが「ディズニーがプーを映画化したせいで少年時代のクリストファー・ロビンが苦しめられた」というのは事実ではありません。
(追記終わり)
日本に似たようなプロットの「積木くずし」という、芸能人である親の立場から娘の非行と更生を描いた実話ベースの物語がある。
僕が生まれる前にヒットした本でドラマ化もされたが、娘は数年後に再び非行に走り最終的に突然死し完全に家族が崩壊してしまう悲劇が、なんと現実で起きている。
この物語の娘にあたる穂積由香里さんも、真実に気づいてもらえず、親のエゴやメディアに翻弄された悲劇的な人物であったことが「最終章」や「真相」としてさらに語られている。(死してなお、お金稼ぎの道具にされることが悲しくもあるが、親のエゴに数年の時を経て「やっと」気付く作者・穂積隆信の懺悔でもあるので悩ましい)
このように、時折過剰なメディアは人々の人生をめちゃくちゃにしてしまうことがある。
それは現在でも変わらない。
だだ単に「マスコミはクソ」と吐き捨てるだけなら誰でもできるが、結局のところその情報を鵜呑みにして過剰に盛り上げる一翼を担っているのは我々消費者でもある。
そしてtwitterやブログの登場により我々自身も「メディアの一部」になりつつある。
「芸能人だから、夢を与える仕事だから」と過剰にプライベートを犯して、テレビの中のキャラクター像を押し付けてはいないだろうか。
「好き」の過剰により、それが裏切られた時、異常なまでの正義感で人を批判し、炎上させたりしてはいないだろうか。
「不快」を武器に誰かの人生をめちゃくちゃにしてはいないだろうか。
僕自身、心当たりがある部分もあるので決して偉そうなことは言えないが、今一度考えてもいいのかもしれない。
クリストファー・ロビン・ミルンのような、悲しい少年を生まないために。
そして、それを考えてみるきっかけになるかもしれない「Goodbye Christopher Robin」はそういう作品です。
機会があれば、ぜひ。
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