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『フォード vs フェラーリ』マシンに情熱を注ぐ男たちの戦い。

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Ford V Ferrari (Various Artists) [Analog]

20世紀FOXがディズニーに買収され、初めての映画がついに日本公開となった。

それが本作『フォード vs フェラーリ』である。

 

本作は2018からの本格製作開始であるから、ディズニーによる買収(2019年3月)以前から企画が動いていたことは間違いないが、昨年夏のD23 EXPO 2019では「ディズニー傘下として」オープニングセレモニー映像に『フォード vs フェラーリ』のワンシーンが挿入されるなどしていた。

 

数ある名作を生み出して来た20世紀FOXのスタジオが、お堅いファミリーエンターテイメント会社であるディズニーに買収された後に一体どんな作品を出して来るのか。ディズニーファンとしても、いち映画ファンとしても興味深く、普段滅多に見ることのない「カーレースもの」というジャンルながらも劇場に足を運んだ。

 

※当記事は現在公開中の映画『フォード vs フェラーリ』の内容に触れます。

 

 

フォードvsフェラーリ (オリジナル・スコア)

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  • 発売日: 2019/11/15
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目次

 

VS フォード

本作のあらすじは、フォード社の社員が社長・フォード二世に業績の低迷を叱責され、イタリアのフェラーリ社に買収を持ち込んだところ、門前払いを受けたことでフォード二世が「フェラーリ社にレースで勝つ車を作ってやる!!」と宣言するところから物語が動き出す。タイトルの通り『フォード vs フェラーリ』というわけだ。

だがフォード社の社員や社長フォード二世は主人公ではなく、そこで新たに雇われたスポーツカーメーカーの社長キャロル・シェルビー(マット・デイモン)とテストドライバーのケン・マイルス(クリスチャン・ベール)が主人公である。

 

しかも、フォードがプライドと社運をかけて男のロマンを詰め込んだ戦いを繰り広げるのを想像していたらそうではなく、フォード社の面々は(一部理解者もいるが)汚れ仕事はシェルビーたちに任せ、金銭面や世間体ばかりを気にして無駄な横槍をこれでもかと入れてくるのである。

 

『フォード vs フェラーリ』というタイトルながら、真の意味では本作は『俺たち vs フェラーリ』であり、レースでの栄光という華々しさとは対極的に、会社の政治的な圧力に振り回されながらも己の信念を貫いていくという実に泥臭く、男臭い、カッコいい映画なのだ。

 

24時間戦争

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  • メディア: Prime Video
 

スピード狂の唄

その、会社の圧力に振り回されながらも、「最速のマシンを作る」という信念を貫くシェルビーやマイルスの情熱が実に熱い。

 

トライ・アンド・エラー、そして死と隣り合わせのテストドライブを繰り返し、最速のマシンを作る。

レースのシーンでも本作は「そのスピードに到達したものにしか見えない景色」を強調する。大迫力のスクリーンに映し出されるレースシーン、そして鳴り響く振動は、乗ったこともないのに手に汗握るリアルさで、心臓が高鳴る。

 

マシンを組み立てていく様は車の知識がなくともグッと来る。

それはマーベル・シネマティック・ユニバースの『アイアンマン』でトニー・スタークがアーマーを作るときのような、ワクワクする熱量が詰まっている。

アイアンマン(字幕版)

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父と子、妻、友情、そして

本作はフランスの24時間耐久レース「ル・マン」での戦いや、マシンの開発をストーリーの軸としながらクリスチャン・ベール演じるケン・マイルスの周辺の人間ドラマも美しく描かれている。

口悪く、頭が固くそれでいてレースへの情熱は人一倍強いマイルスは、レースでの孤独で過酷な戦いの傷を癒すかのように、理解者である息子、そして妻との絆を深めていく。

また職場のパートナーであるシェルビーとは、文字通りの子供のような殴り合いの喧嘩を経て、友情を確かめ合うような泥臭さも描かれている。

 

死と隣り合わせでありながら、懸命にひたむきにレースへと向き合うからこそ、レース以外のシーンでの「生のよろこび」が生き生きと描かれている。本作でクリスチャン・ベールがアカデミー賞主演男優賞にノミネートされるのも納得である。

 

そして、本作の最後のレース、1966年ル・マンのゴール直後のシーンで、レースを愛し挑戦し続ける者同士が「しがらみを超えてわかりあった瞬間」が実にグッと来る。

 

 

まとめ

『フォード vs フェラーリ』はいいぞ。

 

なんていうか、ディズニー配給ではあるんだけど、ディズニー製作ではないというかディズニー実写映画ではあんまりない感じの映画で、そういう良さが引き出されていてよかった。

ディズニーは良くも悪くもファミリーエンターテイメントとして「子供から目をそらせない」部分があり、例えば『パイレーツ・オブ・カリビアン』みたいな映画でも子供への目配せが絶対含まれているように思う。

下手なクリエイターがディズニー映画を撮るとその「子供を意識する」という部分がいやらしく出てしまうところがあって、そこがアカデミー賞とかになかなか乗っかって来ない部分でもあると思う。

 

『フォード vs フェラーリ』に限らず、他社の評価される作品は、露骨に「子供を意識して」は作ってないはずだ。そりゃレイティングなどは多少意識したりもするんだろうが。本作はお色気シーンも、グロシーンもなくレイティングはGeneralだ。かといって子供向けに甘くしている感じも受けない。

『フォード vs フェラーリ』は車やレースの専門用語がバンバン出て来るが、絶対に子供でも楽しめる魅力が詰まっているだろう。

物語の構成はシンプルで、マシンに情熱を注ぐ主人公たちが登場して、時には喧嘩を交えながらもレースに勝つ。映画として観やすく、心動かされる作品だ。

 

ディズニーの新たな部門として、こういう映画が出て来てくれたことを嬉しく思う反面、ディズニーの政治的に今後どうなっていくのかは不安でもある。本作は60年代が舞台で実話を基にした作品であるから、いわゆるマイノリティは工場のシーンで黒人が一瞬出て来たくらいだった。

また、本家ディズニーのスタジオから、こういう大作が出て来てほしいとも思う。

「子供に目配せをするから」「LGBTや有色人種に配慮をするから」素晴らしいというディズニーの一面ももちろん理解するが、見え見えの下心はもっと綺麗にオブラートに包んでいてほしいし、そろそろ実写リメイクに一区切りつけたらどうなんだと思ってしまう。

 

『フォード vs フェラーリ』には堅苦しいディズニーの会社に吹き抜ける、新たな風になってもらいたいところだ。

 

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