『ファインディング・ニモ』という映画を知らない人はいないと思う。
公開された2003年当時僕はディズニーオタクになる以前の中学生で、「トイ・ストーリー」や「モンスターズ・インク」の面白さは知っていたけど、ほぼほぼ人面魚といった感じの、可愛いのかよくわからない魚たちが大海原を駆け巡るというCMを観て「すっげーつまんなさそう」と思っていたものだ。
中学生2年生の頃初めて彼女ができて、それでもお互い無口でほとんど会話もなく、なんとなくデートという名目でイオンをぶらぶらしていたりしていた時、同じ部活の友人たちもカップルでイオンにダブルデートしていて、奇しくも3カップルで一緒に『ファインディング・ニモ』を観たのが最初の出会いである。
今思い返してもあまりにも滑稽で恥ずかしいし、おそらく当時の彼女も突然トリプルデートに巻き込まれて絶対楽しくなかっただろうし、当時の映画の記憶はほとんど残っていないけど、なんとなく甘酸っぱかったなというのだけはわかる。
そして、なんでかよくわからないけど大ヒットしたこの映画は、テレビでも何度か放送され、めったに映像ソフトを買わない我が家にもDVDがやってきて、幾度となく観ることになった映画である。
中学生の時は全くわからなかったこの映画の魅力も、大人になった今だからこそわかる。
この映画がなぜヒットしたのか。そして何を訴えかけているのか。何が魅力なのか。
そんな、ほぼほぼ出し尽くされているであろう『ファインディング・ニモ』の魅力を今更ながら改めて伝えたい。
目次
『ファインディング・ニモ』は飽きない。
『ファインディング・ニモ』は(他のディズニー作品に比べれば)地上波で何度も放送されいるし、僕自身珍しく発売当初からDVDを所持していた。
それでもテレビで公開され、タイミングが合えばtwitterの実況に併せて観てしまう作品である。
前述の通り『ファインディング・ニモ』は僕自身「好き」という印象を抱いたことがなかった。なかったけれどつい見始めてしまうと止まらなくなるのだ。
この先にどんな出来事が待ち受けているかも、どのキャラがどんなセリフを言うのかも知っているはずなのに、観ていて楽しい。『ファインディング・ニモ』は飽きない。
それは大海原の大冒険における困難が数多く、定期的に配置された軽快なストーリー展開と、魅力的なキャラクターによるものだと思う。
危険で、恐ろしく、ドキドキの大冒険
主人公マーリンが相棒ドリーと駆け巡る大海原の冒険は、かなりの危険に満ち溢れている。
魚に襲われ妻と子供を失うプロローグ、ダイバーに捕まる息子、サメとの出会い、爆弾だらけの潜水艦、凶暴なチョウチンアンコウ、大量のクラゲ、クラッシュたちと猛スピードで駆け巡る東オーストラリア海流、そしてクジラに飲み込まれ、ペリカンとカモメに狙われる。
一方人間にさらわれたニモも、水槽からの脱出のために命がけで作戦を実行したり、魚の敵ダーラとの戦いのために歯医者内を暴れまわったり、脱出後海に戻ってマーリンと再会したあとでさえ漁の網に捕らわれるなど、たった100分の映画でこれでもかと言うほどの恐怖と大冒険が待ち構えている。
マーリン自身が序盤に言う「海は怖い」という固定概念は、劇中決して覆されることなく彼自身の冒険によってより信頼性を増していき「それでも大事なもののために冒険し、立ち向かうこと」の大切さを教えてくれる。
キャラクターは動く感情
『ファインディング・ニモ』に限らず、ピクサー作品はどれも素晴らしいのが「キャラクターは動く感情である」ということを再認識させられるところだ。
劇中彼らの行動原理には矛盾がない。
ストーリーの「必要のために動かされている」のではなく、過去の出来事や性格に裏付けられた言動と感情の動きが彼らの行動を決定づけている。
本来物語とはそういうものであるはずなのだが、この基本原則がグダグダになっているの物語が巷に溢れていることを鑑みるに、いかに創作というものが難しいかを実感させられる。
マーリンはそもそもは陽気な男である。それが過去に妻と子供達を失ったことから、唯一の生き残りであるニモを守るために必要以上に過保護になっているのだ。
彼は序盤に息子から「パパは自分が海が怖いからって」と指摘されるが、彼自身はビビりながらも、恐怖へと立ち向かう姿勢を何度も見せていく。彼にとっては一番の生きがいで生きる意味が息子のニモであるからだ。
ニモは優しい男の子であるが、好奇心溢れる年頃で過保護すぎる父親に不満を抱えている。幼いながらも自尊心もあり、同級生の前で必要以上に干渉してくる父親を恥に思い「パパなんて嫌いだ」と言い放ってしまう。一方で好奇心はあるものの、経験の無さからピンチになると恐怖に怯え、引っ込み思案になるという特徴もある。しかしながらタンク・ギャングたちという「父以外の大人」と触れ合うことで自身をつけ、経験も重ねることで恐怖を乗り越え成長していく。
大人のエゴ
劇中マーリンは自身の過去の経験から極度に過保護になってしまう。それによりニモの経験を狭め、成長のチャンスを幾度となく潰してきたことを知る。
彼の正反対にいるキャラクターがタンク・ギャングのギルである。彼は自身の水槽から脱出すると言う欲望のためにニモを利用する。海の出身ではないタンク・ギャングたちをその気にさせ、ニモを勇気付け作戦を実行させる。そして1度目の作戦失敗により、彼も「ニモのため」と実行した自分のエゴに気づく。
失敗し反省した彼はひとまず自分たちのことは脇に置いて、ニモを海へ返すために命がけで尽力する。
マーリンとギルは全く正反対の立場ながらも、「大人のエゴを子供に押し付けている」という点では同じ過ちをしている。
これらのキャラクターがいることで『ファインディング・ニモ』は大人が見ても子供騙しではない教訓が秘められていることに気付けるのだ。
気づきを与えるキャラクター
マーリンが劇中行動を共にするドリー、そして亀のクラッシュはマーリンに「気づき」を与える役割を果たしている。
クラッシュは父親という立場から、子供に自由に冒険させることが子供を成長させることであることを説く。
短期記憶障害をもつドリーの突拍子も無い言動は笑いを誘い、視聴者を時折イライラさせるが、彼女のせいでトラブルに巻き込まれていく展開よりも、実際のところは「彼女のおかげで行動が先に進む」展開や、後半は「彼女を信頼しないマーリンのせいでトラブルに巻き込まれる」という展開も見られる。
クジラに飲み込まれピンチに陥ったマーリンは、クジラ語がわかるというドリーを信じない。クジラの口の中でうなだれるマーリンにドリーは言う。
「だって、子供に何も起こらなかったら、子供は何もできないわ」
何も考えていないように見える彼女の言動は、マーリンの間違いを指摘し、物語の核心をつく。
マーリンは彼らとのふれあいと、自身のニモへの言動やドリーを信じなかったことへの過ちから「大事だからこそ信じて手を離すこと」を学び、ラストの漁船に捕まるシーンへとつながる。
まとめ
『ファインディング・ニモ』はいいぞ。
心を締め付けるドラマ性、止まらないスピード感で展開する大冒険、散りばめられたギャグ、数々の魅力的なキャラクター、物語に秘められた大人だからこそ核心を突かれる教訓などなど、この映画は何層にもわたって人々を虜にする要素が詰まっている。
子供の頃はなんとなく、なぜこの映画がヒットしているかわからなかったが、改めてめちゃくちゃ面白く、隙がなく、ヒットするべくしてなった作品であることがよくわかる。
今だからこそ言える「『ファインディング・ニモ』が好きだ」と。
当時中学生だった僕も今年で29歳である。子供がいてもおかしくない年齢だ。
この作品を見たことがない人はほとんどいないとは思うが、もしこの記事を読んでまた気になり始めたのであれば是非改めて観て欲しい。
親になってからこそ気づくようなこともたくさん詰まっていると思う。
是非いつかは、こどもと一緒に。
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