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『ベッドかざりとほうき』戦争なんて馬鹿馬鹿しい、世界は魔法に溢れてる。

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Bedknobs and Broomsticks

 

私が『ベッドかざりとほうき』という作品を知ったのは、

昔記事にも書いたディズニーロックカヴァーCD『MOSH PIT ON DISNEY』を手に入れた時だ。

 

このアルバムでは大阪出身のthe miceteethというバンドが『ベッドかざりとほうき』の『The Age of Not Believing(何も信じられない年頃)』という曲で参加していた。

 シャーマン兄弟作曲の名曲ではあるが、日本では映画のソフト化が実現しなかったこともあり映画そのものの知名度が非常に低く、この楽曲自体もかなりマイナーだった。

 

この「MOSH PIT ON DISNEY」で映画の存在こそ知ることができたが、前述の通りソフトが販売もレンタルもされていないため、映画を見るのはその数年後にディズニーチャンネルで放送をされるまで待たねばならなかった。

 

だが、現代ではディズニー公式ストリーミングサービス「ディズニー+」で、簡単に鑑賞することができるようになった。

英語音声もしくは日本語吹き替えのみで、日本語字幕が存在しない(2020年10月現在)というクソ仕様ではあるが、そもそも見ることが叶わなかった従来よりはるかにマシ、ということで改めてこの作品を紹介したい。

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目次

あらすじ

ロンドン大空襲を逃れ、海辺の田舎町ペパリンジ・アイへ疎開してきたチャールズ、キャリー、ポールの3人は一軒家に一人で暮らす女性エグレンタイン・プライスの元へ預けられる。彼女の態度を嫌い、夜中にこっそり抜け出そうとした3人は、彼女が夜中に箒で空を飛ぶところを目撃する。

プライスは通信教育で魔法を学ぶ魔女見習いだった。

プライスは戦争を終わらせるため、戦局を変える最後の魔法「サブスティテューシアリー・ロコモーション」を学びたがっていたが、エミリアス・ブラウン通信魔法教育は戦争の悪化のために閉鎖されてしまう。

プライスは通信教育で学んだ「旅の魔法」をベッドかざりにかけ、ベッドに乗ってエミリアス・ブラウン教授に会いにロンドンへ向かうことにする。

 

最強の布陣

『ベッドかざりとほうき』という映画が公開されたのは1971年。実に50年前のことである。

ウォルト・ディズニーの死後、ウォルトの兄ロイが製作総指揮を取り製作されたこの映画は、なんとスタッフがほぼほぼ『メリー・ポピンズ』と同じという最強の布陣で製作された。

監督はロバート・スティーヴンソン、脚本はドン・ダグラディとビル・ウォルシュ、歌曲はロバート&リチャードのシャーマン兄弟、音楽はアーウィン・コスタル、出演者も『メリー・ポピンズ』でバンクス氏を演じたデヴィッド・トムリンソンがエミリアス・ブラウン教授を演じた。

 

原作は『借りぐらしのアリエッティ』の原作(「床の下の小人たち」)で有名な児童文学作家メアリー・ノートン。

主演のエグレンタイン・プライスはアカデミー賞ノミネート/ゴールデングローブ賞受賞経験のある女優アンジェラ・ランズベリーで、アニメーション部分は往年のディズニーアニメーターたちが務めている。

 

イギリスを舞台に、魔法使いの女性と子供達が登場するストーリー、そして映画の途中でアニメーション世界へと入り込むという部分も『メリーポピンズ』そっくりである。

悪く言ってしまえば「二番煎じ」であり、もしウォルトが存命であったならば許されなかったのではないかとすら思えてくるこの作品だが、『メリー・ポピンズ』とはまた違った魅力が存在する。

 

戦争をテーマに

『メリー・ポピンズ』との大きな違いはこの作品の(非常にソフトな描写ではあるが)背景に「戦争」があるところだ。

そういう意味では話の展開こそ『メリー・ポピンズ』に似ているが、テーマ性はのちに製作される『ピーター・パン2/ネバーランドの秘密』に似ていると言ってもいいだろう。

20世紀FOXが『サウンド・オブ・ミュージック』が1965年に公開され、高い評価を得たことを考えると、ディズニーもそれに追随したい思いがあったのかもしれない。

 

主人公エグレンタイン・プライスが追い求める、戦局を変える最後の魔法「サブスティテューシアリー・ロコモーション」は無生物を思いのままに操る「代替移動の魔法」である。

無生物を思いのままに操り、兵士の代わりと活用できれば(それが戦争の根本的な解決には繋がらないが)少なくとも、馬鹿げた戦争による犠牲者は少なくなるかもしれない。

戦争を平和的に解決する上での「魔法」のありかた。それがテーマであればこのコメディ色の強いフワッとした作品もある程度すんなり受け入れることができる。

(だからこそ、エンディングには多少疑問が残ってしまうのだが)

 

アーサー・C・クラークの「十分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない」という言葉もあるように、ウォルト・ディズニーは時折、魔法を「将来的に科学で実現できるもの」として描いてきた。

本映画はウォルト・ディズニーの死後に製作された映画ではあるが、その「科学」と「魔法」を延長線上に見る考え方は本作でも感じることができる。

 

『The Age of Not Believing』のセンチメンタルさ

劇中で何度もBGMとしてくる返されるのがシャーマン兄弟による『The Age of Not Believing』である。

BGMとして流れる時にはポップで明るくアレンジされているが、主演のアンジェラ・ランズベリーが劇中歌として歌うシーンでは、しっとりと歌い上げられている。

疎開してきたローリンズ家の長男チャールズは、思春期を迎えた11歳の少年だ。他の二人に比べプライスに対する態度も露骨に反抗的である。

 

『ベッドかざりとほうき』では年齢のことにしか触れられていないが、彼ら3人はそもそも孤児であり、戦争のさなか長男のチャールズは妹と弟を連れて、どんな気持ちで生きてきたのかということに関しては想像の余地があると思う。

前述した『ピーターパン2』における主人公ジェーンが、魔法やおとぎ話を一切信じられなくなっている状況と似通っている。

 

そこまで想像を広げると、チャールズを「何も信じられない年頃」として言い当てるこの曲の歌詞の印象がガラッと変わる。センチメンタルでかつ、実に希望に満ち溢れた歌詞であると思う。

 

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世界は魔法に溢れている

主人公プライスとともに物語の重要人物となるのがエミリアス・ブラウン教授である。

プライスの通信魔女大学の学長であるが、その正体はただのインチキ手品師であったという、本来であればヴィランでありそうな設定である。

だが彼はこの物語においては、子供達やプライスに対し強い影響を与える、非常に重要な「楽観主義者」であると言える。

 

たとえ世の中が戦争のさなかにあっても、常に前向きに生きるすべを探している。

その結果が「インチキ手品師」であったり、「不発弾によって住人がいなくなった豪邸に住む」であったりだ。

彼自身は魔法は一切使えないはずだが、魔女の才能があるプライス以上に夢と理想に満ち溢れ、めまぐるしく展開する冒険の連続にも体を張って柔軟に対応していく。

 

また、プライスや子供達に「ポートベロー通り」を紹介するのは彼である。

「ポートベロー通り」はロンドンに実在するアンティーク・マーケットであり、彼はその場所を「なんでも揃うよポートベロー通り」と歌う。

魔法が使えないからこそ、現実世界に魔法のような楽しさを見出し、子供達に分け与える。

子供達はこれらの様々な体験を通し、ブラウン教授を父親代わりの存在として絆を深める。

 

父親のいない子供達が、父親的存在に新たな世界を紹介され、家族のような絆を産むという点では、『ベッドかざりとほうき』の翌年1972年に公開される『おしゃれキャット』にも似たような要素がある。

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まとめ

色々語りましたが、思った以上に思うような描写が弱く、結構「こういう意味なんだろうな・・・」という想像で補っている部分が多々あるので、私の意見に納得はしなくてもいいです。正直映画に描かれていないところはある種切り捨てるしかないところもあるので。

いろいろツッコミどころも多い上に、「戦争」や「文化」を描く上で他人種にたいするリスペクトがあまりにも浅いところとかは、それぞれ別の作品であるというのは重々承知の上で、やっぱり『メリー・ポピンズ』にはなり得なかった作品だなぁと思う。

 

ただ、それでも言おう、『ベッドかざりとほうき』はいいぞ。

 

あくまでも「子供が見て楽しいコメディ」に振り切っているので、オチやらテーマ性には若干ふわっとした部分があるものの、

やはり『魔法って楽しい』『現実はもっと楽しめる』という「楽観主義」に寄り添った作品であるな、というところが本作のいいところ。

 

ナブンブー諸島のパートの最高っぷりはマジで最高なので、ディズニー映画好きはそこだけのために見てもいいと思う。

是非とも。

 

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