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ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ長編の12年・11作を振り返る

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最新作『ミラベルと魔法だらけの家』でウォルトディズニーアニメーションスタジオ長編作品は記念すべき60作品目となった。

Art of Encanto (The Art of)

50番目の作品から数えてこの11作がこの先も続いていくウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ作品における転換期であると感じられる。12年・11作という、全然キリの良くない、ちょっと気持ち悪い数字だが、これからたくさんの作品が作られていくにあたってきっと重要になる時期であるように思う。

 

目次

 

塔の上のラプンツェル/Tangled(2010)

WDASの新たな黄金期の始まりを告げるような作品。

『塔の上のラプンツェル』はそれこそルネサンス期を支えたグレン・キーンが当初は主体となり製作をスタートしたが、CGか2Dアニメーションかという二者択一でグレン・キーンの支持する2Dアニメーションの案が頓挫したこと、また彼自身の体調面による製作からの離脱によりネイサン・グレノ&バイロン・ハワードの製作にバトンタッチする。

グレン・キーンはCGアニメに製作が移行したあとも、2Dのような温かみのあるキャラクター描写の再現のために尽力した。

 

ディズニープリンセスの新たな物語として、ルネサンス期やピクサーの『メリダとおそろしの森』で見られた戦うプリンセス像である、自らが敵と戦う姿勢を見せるキャラクターであり、

また『プリンセスと魔法のキス』のように、恋愛要素をないがしろにしないながらも、プリンスとの結婚を第一目的とせず、自らの目的のために男性を使役する。

 

ラプンツェルのキャラクターも、これまでのプリンセス像とは打って変わって、18年間塔の中で精神的虐待を受けながら軟禁されていたというだけあって、引きこもりの精神不安定という様子も描かれている。

そんな彼女がはじめての外の世界を冒険し、運命を切り拓いていく姿は逆に歴代のディズニーアニメーションらしい好奇心と、世界の美しさに彩られていて、所謂第三次黄金期・そして歴代50作品目に相応しい作品となっている。

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くまのプーさん/Winnie-the-Pooh(2011)

ジョン・ラセターがWDASのチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任してから2作目に作られた2Dアニメーション復活作(1作目は『プリンセスと魔法のキス』)

ウォルト・ディズニーが情熱を傾けて製作した『くまのプーさん』を、手描きアニメーションで新たに映画化するというディズニーにとって絶対に負けられない戦いのひとつだった。

ストーリーは複数の原作の組み合わせながらも、短編の繋ぎ合わせのような作りにはせず、あくまで「長編映画」としての体裁を維持。

2Dであるという特徴をしっかりと活かし、黒板にチョークで描かれたイラストが動くようなコミカルなシークエンスや、イギリス文学特有の言葉遊び、過去の『完全保存版』でも観られた「絵本」という要素を強調したメタなギミックも本作の面白さを加速させている。

音楽はシャーマン兄弟製作のお決まりのテーマソングを再び用いているほか、『アナと雪の女王』で大ヒットを飛ばすロバート・ロペス&クリステン・アンダーソン=ロペスが新曲を書き下ろす。

 

監督は『ルイスと未来泥棒』の監督でスピード感のある展開が特徴的なスティーブン・J・アンダーソンと、『ベイマックス 』『ラーヤと龍の王国』などバトル物が得意なドン・ホール。正直こな組み合わせが、のんびりした物語である『くまのプーさん』監督として正しいのか?という疑問はあるが、クラシックな懐かしさと狂気ぶり、『くまのプーさん』らしい的外れな間抜けっぷりが楽しく、私は好きな作品である。

 

結果としては興収は第三次黄金期の中でも群を抜いて低く、ジョン・ラセター肝入りの手描きアニメーション復活は2作で終了することとなる。

 

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シュガー・ラッシュ/Wreck-it-Ralph(2012)

伝統を重んじるWDAS長編アニメーションの中で、他社のゲームキャラクターをカメオ出演させるというエンターテイメント要素を取り入れた問題作。

 

ヒーローに憧れる不器用なゲームの敵キャラ、ラルフが主人公、最新レースゲーム「シュガー・ラッシュ」に迷い込んでゲームのバグキャラ、ヴァネロペをゲームで優勝させるために奮闘する物語。

表向きは誰かの影に隠れていても、誰だって誰かのヒーローになりうる、与えられた役割に落ち着くこともまた誇らしきこと、という。

 

これまで「夢を追いかけろ!なんとしても望みを手に入れろ!自己実現こそ正義!」と煽ってきた(?)ディズニーが、「とはいえ、誰かの大事なものを奪ってまでの自己実現はよくないよね」という当たり前すぎるフォローを丁寧に描いているような作品。

他のゲームとのクロスオーバーは話題作り程度に、自分が本来どうあるべきか、自分が何者であるか、「望みと役割」を見つめ直す。

内容的にも『トイ・ストーリー』らしさのある話。

 

言語版タイトルはWreck-It-Ralphなので、邦題これだと主人公変わっちゃってる感あるんだがこれは…。

 

アナと雪の女王/Frozen(2013)

劇中の吹雪のように世界中に旋風を巻き起こし、映画を超えた現象となった作品。

 

監督のジェニファー・リーはWDAS初の女性監督となり、またジョン・ラセター引退後はCCOの地位につく。共同監督はクリス・バック。

 

「能力」を個性、さらにはそれをうまく操れないコンプレックス、もしくは障がいとしてメタファーを含ませ、暴走し逃げ出す精神不安定なクイーンと彼女をなんとか連れ戻して平和な世界に戻そうとするプリンセスのダブル主人公。

 

恋しない主人公、裏切りのヴィラン、「真実の愛」のさらなる解釈、そしてそして世界を虜にした最高のミュージカルなど魅力は語りつくせない。

第三次黄金期の頂点にして、代表作。新たな『シンデレラ』であり『美女と野獣』

王道のディズニー映画らしくもあり、ディズニーのセオリーを破っていく物語でもある最強の映画。

 

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ベイマックス/Big Hero 6(2014)

『アナと雪の女王』が『シンデレラ』か『美女と野獣』なら、『ベイマックス』は『ピーター・パン』もしくは『アラジン』だ!という

大ヒットしたプリンセス映画の後に作られる最高のヒーロー映画。

 

2008年に買収し子会社としたコミック会社マーベル・コミックスから、知っている人のほとんどいなかった埋もれたヒーローチーム「ビッグ・ヒーロー6」を再構築してディズニーナイズドした作品。

「ふわふわの可愛いロボットの愛の物語」というのはあくまでも日本企業によるパッケージングで、本来はゴリッゴリにかっこよくバトルってる科学ヒーローもの。

 

「死」と「残されたもの」がテーマでもあり、置いていかれた家族はそれこそ、生きる気力すらなくなってしまいそうなくらい苦しいけど、「死」によって、その人がいなくなっても、そこにいた記憶や思い出までもがなくなるわけではなく、その人がいた証というのはなんらかの形でずっと残っていく、という物語。

 

あえてピクサーの『リメンバー・ミー』とかと合わせてみるといいんじゃないかな。

 

サンフランソーキョーという東京とサンフランシスコをミックスした架空の都市を舞台に、科学オタクたちの飽くなき探究心、限界に挑戦する姿勢なども感じられる映画。

監督は前述の通り『くまのプーさん』『ラーヤと龍の王国』のドン・ホールと、『ボルト』のクリス・ウィリアムズ。

ズートピア/Zootopia(2016)

WDAS長編作品で、正直『ズートピア』を超える「正しさ」をもった映画はまだ登場してないと思う。

監督はバイロン・ハワード&ジャレド・ブッシュのコンビ。

 

動物たちが、肉食獣も草食獣も仲良く暮らす街「ズートピア」そこで起きる怪事件。新米警官のウサギのジュディが、詐欺師でキツネのニックとともに謎を解いていくフィルム・ノワールなバディムービー。

 

『ジャングル・ブック』や『ライオン・キング』そのほか様々な作品で描かれた人種ステレオタイプをまたしてもやるのか!?反省しないなディズニーは・・・と思った観客を「偏見の目で見ているのは、本当はあなたの方では?」とグサリと突き刺していく。

「偏見をなくそう」というありきたりなメッセージを「まず自分にも気づかない偏見があるのだという認識を持とう」というスタンスで語っていく、実に誠実な映画。

 

「分かり合える」でも「分かり合えない」でもなく

「いつかきっと本当の意味でわかり合うために」という切実な願いが込められている。

WDAS作品で、もっとも文句のつけようのない作品。

この作品がドナルド・トランプ政権時のアメリカで発表されたというのも非常に強い。

 

モアナと伝説の海/Moana(2016)

『リトル・マーメイド』『アラジン』『ヘラクレス』『ノートルダムの鐘』『トレジャー・プラネット』そして『プリンセスと魔法のキス』で歴史を作った監督コンビ、ジョン・マスカー&ロン・クレメンツの最後の作品。(この作品の後ジョン・マスカーは引退)

 

ハワイを舞台とした大冒険物語で、「行きて帰りし物語」ディズニー版『ロード・オブ・ザ・リング』

主人公モアナの「選択」の物語。

海に近づくことを禁じられながらも、「私は海に選ばれた」「使命がある」と理由をつけて旅をする。でも結局は、やるかやらないかは最後は自分の意思で、自分の選択なんだということを改めて認識させる話で、だからこそ誰のせいにもできない、だからこそ強い。

 

これもまたバディ・ムービーであり主人公は男性キャラクターに恋をしない

また「私はプリンセスじゃない」と積極的に否定する(そういう姿勢が逆説的に「ディズニープリンセス的である」)という新たな形のディズニープリンセス。

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シュガー・ラッシュ:オンライン/Ralph Breaks the Internet(2018)

『シュガー・ラッシュ』の続編であり、前回は他社ゲームキャラとのクロスオーバーだったが、今回は様々なコンテンツを抱える一大企業「ウォルト・ディズニー・カンパニー」とコラボしてみたよ、わっはっは。という作品。

 

スタジオの枠を超え、ピクサー、スター・ウォーズ、マーベル、マペッツなどの広い意味でのディズニーキャラクターたちが登場するカメオシーンは楽しいながらもサービス程度で、基本はヴァネロペがインターネットの中の「グランド・セフト・オート」みたいなレースゲーム「スローター・レース」に心を奪われてしまう物語。

 

前作に続き「役割」の物語であるが、テーマは真逆となり

ラルフが「役割を受け入れながら、誰かのヒーローであることを模索する」一方、もう一人の主人公がヴァネロペ「役割から脱却して、新たな世界を見たい」と突き進む本作。

ラルフが友達であるヴァネロペに依存し、固執する面倒臭いおじさんとして描かれ、それがウィルスとして拡散されるのが絵的にも内容的にもグロテスクな感じなのも、既存キャラの続編でそれをやるか・・・という怖さすら感じる。

 

また、超豪華カメオにより「ディズニープリンセスの再定義」をちゃんとプリンセスらが勢揃いして「力の強い男性に助けられる存在」から脱却する。

ただゲーム内の「役割」からだけでなく、これまでイメージづけされてしまったプリンセスとしての「役割」からも脱却していく。

そして、複数のプリンセスを一堂に会することで「ディズニープリンセスは」ってみんあ一括りにするけど、こんなに多様性に満ちているんだよ、というメッセージにも取れる。

嫌いな人も多いけど、私はいいと思うし、意義のある映画だったと思う。

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アナと雪の女王2/FrozenⅡ(2019)

そして『アナと雪の女王』の続編。

興収だけで言えば今回紹介する中ではこの作品が一番ヒットしている。

 

前作はエルサ個人の内面に帰結していたが、雰囲気がガラッと変わり、本作はRPG的ファンタジー色全開のエレメンタルな魔法の秘密、民族間の対立、家族の過ちと死の謎といった物語が展開されていく。

 

「役割からの脱却」「自身の選択の尊重」というテーマが続いてきたこともあり、アナとエルサが離れ離れになる結末を持ってくるのは、まぁ当然の流れだろうなというところに劇中歌「Some Thing Never Change」=変わらないものもあるとして、二人の絆を固く約束してから物語をスタートさせるところがうまいな、と感心させられた。

 

完璧にキャラを理解したクリエイターによる、ファンの要望に答えつつ、想像を超えていく結末をもたらしたという点で高く評価できる作品。『アナ雪』1作目の流れからしてみれば若干ぶっ飛びすぎな気はするけど。

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ラーヤと龍の王国/Raya and the Last Dragon(2020)

運悪く、コロナ禍に公開されたために興収が伸び悩んでしまった作品。

それでも劇場公開してくれただけでもありがたいと思うべきか。

 

『ベイマックス』の監督ドン・ホールが作ったというのも納得な、スピード感のあるバトルシーンが熱い。そして『ベイマックス』と同じくチームものでもあるのだが、物語の設定上、それぞれが何かを失った当事者であるというのが、ぱっと見チグハグなメンバーながらも感情移入の要素が大きい。

また、それぞれが国を分割するエリアの異なる民族であることなど、多様性と協調をテーマにした相互理解の映画である。

 

アジアを舞台とした映画で演じる声優らもアジア系で固められたが、当の主要製作陣はアジア系が多いわけでもなさそうなので、アジア描写は結構甘いと思う。メシはメチャクチャうまそうだった。

 

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ミラベルと魔法だらけの家/Encanto(2021)

『ズートピア』のバイロン・ハワード&ジャレド・ブッシュ監督コンビの最新作。

コロンビアを舞台とした魔法の力を持つ大家族で、唯一魔法の力を持たないミラベルが主人公。

ディズニーお決まりの「家族は愛だよ!」としながらも、蓋を開けてみるとメチャクチャ嫌な繋がりで家族やってることに気づかされ、それをミラベルの頑張りで修復し、結局「家族は愛だよ!」に帰結する。

 

また「持てるものと持たざる者」の物語でもあり、ヒーロー映画が席巻している現代だからこそ、「力を持たぬものの悩み、嫉妬」「力を持たぬものがやるべきこと」も描いていくし、その逆も描いていく。

これまでのディズニーを肯定しながら「でも描かれなかった部分も大事だよね」というスタンスで全部救いに行こうとする尊すぎる物語。

みんな許される。みんな生きているだけで大正解。

 

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まとめ

思ったよりサクッと振り返れなくて焦った。

超エネルギー使った。



それくらい中身の濃い映画ばかりなんだということだろう。

それぞれ思う部分こそありつつも、嫌いな作品はないし、やっぱりこの時期は黄金期の名に恥じない豊作ばかりなんじゃないかな。

 

ジョン・ラセターが去った後でも、コロナ禍の劇場公開が厳しい中でも、作品のパワーは全然落ちていかないし、少なくとも描こうとしているテーマは意欲的な物語が多くて、「ただの娯楽」で終わらせない力強さを感じる。

 

『ミラベルと魔法だらけの家』を観たときは、本当にディズニーを好きでよかった!と思えたね。

 

『塔の上のラプンツェル』が日本公開された2011年3月は東日本大震災があった時期で、バイト先の友達とTDR旅行に行こうと計画していたのがチケットまで買ってたのに休業で中止になって、急遽映画見に行くことに決めたんだった。

今回11作挙げたけど、奇跡的に劇場公開で見てないのは『シュガー・ラッシュ』1作のみなので、私もオタクとして活動頑張ったんだなぁと実感する。大学生だったのに妻子持ちになってしまいました。

 

また12年後、今度は子供を連れて映画館に行って、ディズニー映画についてやいのやいの言えたらいいなと思います。

 

メリークリスマス。

 

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