貧しく、苦しく、退廃的、でも刺さってしまう。『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』の魅力。

フロリダへ行っていた。

旅行記をご覧の方はご存知の通りである。ディズニーオタクの僕はカナダワーホリを終えたタイミングで日本帰国前にウォルト・ディズニー・ワールドへ向かっていた。

 

シアトルから出発した飛行機の5時間の間に、僕は今回紹介する『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』を観た。

 

カナダにいた頃から話題にはなっていたけど、なんだかんだで観るタイミングがなかった。

ある程度苦しい内容であることは事前に分かっていたけれど、せっかくフロリダへ行く飛行機の中ということで意を決して観ることにした。

 

※以下ちょこっとネタバレ込みです

floridaproject.net

 

目次

 

胸を苦しめるストーリー

フロリダ州のウォルト・ディズニー・ワールドの目と鼻の先にあるモーテル「マジカル・キャッスル」に住む親子、母ヘイリーと6歳の娘ムーニー、そして彼女らを取り巻く友人たちやモーテルの管理人ボビーの物語。

サブプライムローンの煽りを受けホームレスと化し、その日暮らしの生活費を稼ぎながら暮らす人々と、無邪気にいたずらばかりを繰り返す子供たち。

 

どんどん悪くなって行く状況、犯罪行為まがいの商売、乞食のような生活、度を越したいたずら、決して安全とは言えない環境、正義を振りかざしかけがえのない日々を奪っていく大人たち。

「高さ1mの視点」という子供達の目線に合わせたカメラの高さ、アングル。淡々と、過度に盛り上げることなく続く退廃的な日々。

ロマンチックでもエンターテイメントでもない映画ながらも、「これがリアルなのか」と胸が苦しくなる。

 

僕らは高等な教育や必要最低限の生活、ちょっとした贅沢が子供に与えるべき愛だと勝手に思っている。それが間違ってるとは思わないし、あえて貧困を選ぶなんてことはない。

それでも貧困にあえぎながら必死に、たくましく生きる彼女たちに愛がないと誰が言えるだろうか。ましてや主観でしかない「より良い生活」のために彼女らを引き離す権利なんて一体誰が持っているのだろうか。

 

 

正直、面白い映画ではない。

テンポがいいわけでもないし、観ていて苦しい。

「リアル」とはいうが、僕自身こんな体験をしたわけではない。それでも強烈に心に残るストーリーだったことは間違いない。

 

 

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登場人物の圧倒的な演技力

この退廃的な映画を一層引き立てているのが登場人物の圧倒的な演技力である。

特に劇中のほとんどを占めている子供の遊びのシーン。大人の手に負えず、度を越したいたずらは視聴者のイライラも募らせるが、彼らの不自然さを一切感じさせない演技の素晴らしさがそうさせているのである。

主人公ムーニー役のブルックリン・キンバリー・プリンスはもちろん名演技を披露。

そして彼女の親友となるジャンシー役ヴァレリア・コットは撮影現場付近の量販店でスカウトされ出演、同じく親友の男の子スクーティ役クリストファー・リヴェラは本作の登場人物と同じように貧しい「モーテル生活」出身で見事役を射止めたと言われている。それでも彼らの演技に素人感は感じられない。

 

またムーニーの強烈な母親のヘイリーを演じるブリア・ヴィネイトは、もともと服飾のデザイナーであったのをインスタグラムを見た監督にスカウトされたというのだから驚きである。

横暴で不器用、理屈が通じないながらも娘のことだけは愛している複雑な若い女性の役を見事に演じている。

 

そして、アカデミー賞の助演男優賞ノミネートもされたウィレム・デフォー。彼の役もまた親子への同情心と社会的なルールの中で揺れ動く複雑な存在であり、その微妙なバランスをしっかりと演じた。普段は厳しくありながらも、いざという時に子供達を守るために不審者を叱咤するシーンはまさに迫真の演技であった。

 

 

 

「フロリダ・プロジェクト」と「ウォルト・ディズニー・ワールド」

「フロリダ・プロジェクト」とはウォルト・ディズニーの死後、兄のロイ・ディズニーが中心となって始まったテーマパーク建設プロジェクトの名称である。

タイトルがそうであるように、この作品はウォルト・ディズニー・ワールドへの様々な「目配せ」が配置されている。

 

観光客やリゾート外のチープなお土産屋、明らかにディズニーを意識した名前のモーテルの数々、海外からの観光客、捨てられるマジックバンド(チケット)、モーテル横の公園から見える花火。

 

本来「ディズニーオタクだから楽しめる」ような要素も「ディズニーオタクだからこそ複雑」な思いを感じてしまう。

 

この作品における「ディズニーワールド」の存在は恐ろしい。

監督がどういう意図で、どういう印象で「ディズニーワールド」という存在を映画に描こうと思ったのか、僕は1度観ただけでは理解できなかった。

 

「マジカルエンド」と呼ばれているこの映画のラストシーンは、人によっては救いに見えるだろうが、僕はどう表現したらいいかわからない複雑な思いにかられてしまった。

 

少女たちは貧困の中でもたくましく生きていく。

わかりやすい「夢」を抱けなくても、魔法が起こせなくても、プリンセスになれなくても、たとえ寂れた紫色の「マジックキャッスル」に住んでいても。

 

何もできないかもしれない、この映画を観た直後でさえ僕はフロリダの魔法の王国で遊び呆けてしまう。

それでも、世の中から不当に扱われる人々のことに目を向けれる人間でいたい。

綺麗事かもしれないけど。

 

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左上にスクロールするとウォルト・ディズニー・ワールドです。

 

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