ディズニーアニメ史上最大の失敗作『コルドロン』は本当に駄作なのか?

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ作品全56作を語る上で、必ずと言っていいほど「歴史的失敗作」として槍玉に挙げられる作品がある。

それが『コルドロン』である。

 

構想10年以上、ルネサンス期を目前に控え、「新時代の『白雪姫』」として、ダークさを前面に出し1985年に公開されたこの『コルドロン』

4000万ドルの予算をかけながらも約半分の興行収入しか得られなかったという。

しかしながら興行収入と作品のクオリティは必ずしも一致しないというのも事実。

 

ディズニーファンの間でも映画ファンの間でも散々ネタにされていながら(実際僕自身もネタにしたりしながら)実は今の今まで見たことがなかった。

 

この度重い腰をあげ、ついにDVDを手に入れ(本当はblu-rayを待っていたのだが発売される気配がないので諦めた)やっとの事で見ることができたこの作品。

 

果たしてそこまでつまらない作品なのか。

本当に「駄作」なのか。

 

ネタバレ込みでご紹介します。

 

目次

 

あらすじ

勇敢な騎士になることを夢見る少年ターランは、師匠のドルベンとともに予知能力をもつ豚のヘン・ウェンの世話をしながら暮らしていた。ある日ヘン・ウェンは魔王ホーンド・キングが不死身の兵隊を作りだせる魔法の釜「ブラック・コルドロン」を狙っているということを予知する。ヘン・ウェンの予知能力が「ブラック・コルドロン」発見に悪用されることを危惧したドルベンはターランにヘン・ウェンを連れて逃げるように指示する。

ところが森で目を離した隙にヘン・ウェンは魔王ホーンド・キングの手下に誘拐されてしまう。

ターランは勇気を振り絞りヘン・ウェンの救出のため魔王の城へと向かい、そしてブラック・コルドロンを破壊しホーンド・キングの野望を阻止すべく立ち向かう。

 

結論から言うと。

結論から言うと、かなりダメ。

 

いやダメなんか〜い。

 

これだけではあれなのできちんと感想を書くと、正直中盤ぐらいまでは「結構面白いんじゃね?言われてるほどひどくなくね?」と思いながら見れたのである、だが劇中に散りばめられた「伏線のようなもの」で期待感を高めつつ高めつつ、「伏線のようなもの」は伏線でもなんでもなく、結局その期待感をきちんと消化させないままにこの作品は終了してしまった。

ディズニー作品は基本的になんでも褒める僕でさえこの「史上最大の失敗作」は覆すことができなかった。

 

それでは、もしかしたら語り尽くされているかもしれないが、具体的にどういうところがダメなのか説明していく。

 

キャラクター

主人公ターラン

まずはキャラクターから。

なにはともあれ最も重要であろう主人公の少年ターラン。勇敢な騎士に憧れ、戦争で活躍することを願いながらも豚の世話係という立場に落ち着いている。

DVDジャケットを見ていただければお分かりの通り、彼は細っちょろいながらも輝く剣を振りかざしブラック・コルドロンの上に立っている。

誰もが思うだろう。

「このか弱く臆病そうな少年が勇気を振り絞り、この剣でホーンド・キングを倒すのだろう」と。

そう違うのである。

詳しくは映画で確認してもらいたいので明言は避けるものの、彼は劇中それなりの勇気こそ振り絞るが、面と向かってホーンド・キングに立ち向かうどころか、まともに剣を振るシーンすらない。

魔王の城の地下牢で剣を手に入れたターランは、彼のおぼつかない剣さばきで謎の魔法が発動。剣先から発せられる謎エネルギーにより敵の武器を無効化することで彼らは窮地を救われるのである。

自身が努力するわけでもなく、最強の剣を手に入れ無敵化したターランは「ハハハハ!」と不気味な笑い声をあげながら剣を振り回す。怖い。

 

ここでアニメ的ミラクルを発揮して彼の秘めたる剣術の才能を発揮したりすればまだかっこいいものの、どうやら徹底してヘタレに描きたいらしくターランは全く成長しない。

 

いや、それでもまだ映画は中盤である。

その時点ではまだ「魔法の剣により自信をつけたターランが活躍するんだ!ホーンド・キングを倒すんだ!」と期待していた。

しかしながら、途中で出てきた魔女と「ブラック・コルドロンと交換」という条件で剣を差し出してしまった。

 

結局最後までターランが活躍するシーンは訪れない。一体なんなんだこの映画は。

 

エロウィー、ガーギ、フルーダー

このどうしようもない主人公についていく、RPGでいうパーティーの構成員が魔法使いのプリンセス・エロウィー、謎の生き物ガーギ、吟遊詩人フルーダーである。

 

最初に登場するのがガーギで、お調子者で登場人物をイライラさせながらもどこか憎めないという典型的なマスコットキャラクターである。劇中もっとも勇気を振り絞り成長を遂げたのが彼であり、ホーンド・キングの野望を打ち砕く鍵となるのも彼なのである。

劇中彼は尊い犠牲となるが、そもそもこいつがどういう生き物なのかも、なぜ人語を話すのかも、どういう過去を持っているのかも不明で全く感情移入ができない。

全く感情移入できないのにターランに代わりオイシイところを持っていき、パーティを勝利へと導く。

 

そして魔法使いでお姫様というハイスペックなエロウィー。

魔法が使えるため牢屋に幽閉されていたのだが、劇中使った魔法は道を照らすための人魂のような魔法のみ。

その光の玉がブラック・コルドロンの居場所を見つけると思われていたらしいが、そのような描写は一切見られずただのホーンド・キングの勘違いだったらしい。

当然ながら戦闘シーンもなく、かといってヒーリング系の魔法を使うわけでもない。それでもなぜかパーティーについていく。まぁターランよりは行動力があるとは言えるかもしれない。

ヘタレのくせにちょっと男尊女卑なターランに言い返すシーンもあるのだが、そのあと何か活躍するわけではないので本当についてきてるだけって感じ。

 

そしてフルーダー。

半ば巻き込まれるようにパーティーに参加したおじいさんも、本当に居るだけである。

フルーダーが嘘をつくとハープの弦が切れるという、ある種「心を見抜く魔法のハープ」を持っているが、それの適用範囲は彼自身の言葉のみであり役に立たない上、これが本当に魔力を持っているのか謎のまま話が終わる。エロウィー同様、何か知恵を貸すわけでも吟遊詩人的スキルを発動するわけでもなく、本当に居るだけ。

 

 

これらのキャラクターたちの罪は本当に「何なのかわからない」からその真価を期待してしまうと言うところにある。

まぁガーギは主人公以上の活躍を見せたとして、他のキャラクターはその気になればいなくても全然話が進んでしまう。

 

ホーンド・キング

「期待」といえばこのホーンド・キングにかけられた期待は計り知れない。

ビジュアルで言えば『ファンタジア』の「禿山の一夜」に登場する魔神チェルナボーグの恐ろしさに相当するだろう。

 

おどろおどろしい城に数多の野蛮そうな兵士を従え、さらに骸骨たちから構成される不死身の兵隊を作ろうとしている。

果たして彼の強さはいかほどなのか。

武器を使って戦うのか、やはり魔法で呪いをかけるのか。

 

正解はどれでもない。

それどころか、こんなにおどろおどろしい様相のヴィランを用意しておきながら、その強さは1ミリも披露されることなく終了する。

劇中見せた行動は「ゆっくり歩く」「怖い声で喋る」「部下の首を絞める」の3パターンのみである。

序盤で水をかぶり苦しむシーンも見られ「なるほど!水が弱点か!それで倒すんだな!」とも思ったが、その設定をのちに生かすこともなく、一体何であんなに苦しんだのか謎。

逆に讃えたい。よくこれでいける思たな。

 

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RPG的ファンタジー

「コルドロン」はファンタジー小説が原作らしく、いわゆるRPG的展開が随所に散りばめられている。

前述した仲間たちが次々とパーティに加わるような展開もそうだし、その他登場する妖精たちの国、魔女たちの家なども象徴的である。

彼らとのやりとりのおかげで目標であるブラック・コルドロンへたどり着くという展開も。

この二転三転する場面の移り変わりや「先の読めない展開」こそがこの「コルドロン」の魅力でもあり、そこは僕自身楽しめた部分でもある。

 

しかしながらこの妖精たちにしろ、魔女たちにしろ、本当に謎のキャラクターであり物語に関わる必然性もなければ説得力もないのである。

 

例えば最初のナレーションでホーンド・キングの兵隊を封印したのが魔女によるものだと説明があったりすれば、この展開でも納得できただろう。それか『アナと雪の女王』のトロールたちのように古い書物に載ってるとか、そういうちょっとした描写さえあれば。しかしながらそんな描写はなく、まるで後付けのように唐突に現れて当然のようにストーリーの重要部分に関わってくる。

そのわりにはキャラクターのテイストもギャグっぽいし、本気で話をどちらに振りたいのかわからない。

タランと角の王 (児童図書館・文学の部屋 プリデイン物語 1)

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タランと黒い魔法の釜 (児童図書館・文学の部屋 プリデイン物語 2)

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優れた美術、アニメーション

ここまで解説すると、だいたい皆さんもわかってきたと思うがこの映画実直なまでに複数の「上げて落とす」を同時進行させる。

 

ただの説明不足を伏線っぽく感じさせ「なんだかわからないけど最後にはきっと・・・」と抱いた期待をことごとく裏切っていくのである。

 

ではいいところは一切ないのかというと、そんなこともない。

制作に10年以上、前作『きつねと猟犬』の倍の制作費を費やされただけのことはあり、アニメーションの出来はすばらしいものである。

 

 「次世代の白雪姫」を目指したというのも納得の背景の書き込み、深い森やおどろおどろしい城、また序盤のドラゴンに追われるシーンの切迫した演出、不死身の兵隊を復活させるシーンなどなど、全体的に「恐怖」の演出が神がかっている。

 

前作『きつねと猟犬』と『コルドロン』はベテランのディズニーのアニメーターと新世代を担うディズニーのアニメーターの橋渡し的作品である。

 

『コルドロン』製作中に当時のディズニー社長ロン・ミラーが追放され、会社の体制が様変わりし、スタジオも混乱期にあっただろう中で、アニメーションの芸術的要素だけは守り抜いたのだから、そこは賞賛に値するかもしれない。

 

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まとめ

まとめ。

 

非常にわくわくしながら観れたのだけど、最後に突き放されてしまう、非常に厄介な作品である。

逆に言うと、後始末さえきちんとやってくれたら面白かったのに・・・という、なんだか惜しい作品。

 

これがしっかりした作品で、きちんとヒットしていれば、かっこいいRPG風冒険物、めちゃくちゃ強力で怖いヴィラン、と現代まで愛されたりアトラクションに使われたりと、もっと面白い展開があったのだろうなぁと思うと残念で仕方がない。

(東京ディズニーランドにはホーンド・キングとコルドロンが登場する「シンデレラ城ミステリーツアー」というアトラクションもあったが)

 

冷静に考えれば考えるほど『コルドロン』はやっぱり駄作かもしれない。

お金をかけるだけかけてこだわったアニメーションも、ストーリーがこれだけグダグダであれば失敗したのも納得してしまう。

 

となれば、もう開き直って反面教師にしてしまえばいいと思う。

 

この物語はピクサースタジオが考えるような「キャラクター(性格)がストーリーを動かす」という製作原則の対極に位置する「ストーリーを動かすためにキャラクターを無理やり配置する」ような作品である。そうなれば当然物語には無理が生じ、必然性や説得力に欠けた感情移入できないキャラクターが生まれる。

アニメーションやストーリーづくりを生業にしている人、製作を目指している人には是非観て欲しい。

もれなく製作当時最大の費用を投入した、美しいアニメーションもついてくる。

 

お暇な時に是非。

 

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