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抑圧からの解放。『キャプテン・マーベル』が塗り替える、我々の先入観。

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マーベル・シネマティック・ユニバース第21作目『キャプテン・マーベル』を観た!

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カナダで公開初日に観た『アントマン&ワスプ』から間が空いてしまったので(blu-rayで復習もしたけど)若干ながらMCU熱が収束していたタイミングでの本作。

一応期待を込めて遠路はるばる初日初回のTOHOなんばのIMAX 3Dで観てきた。

 

いや〜観てよかった!もう1回観たい。

 

『アベンジャーズ/エンドゲーム』直前の超重要ポジション作品でありながら、あくまでもどっしりと構えた作品に仕上がった本作の見どころを伝えられればと思う。

キャプテン・マーベル (オリジナル・サウンドトラック)

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※この記事は一部、公開中の映画『キャプテン・マーベル』の内容に触れます。

極力ネタバレは避けておりますが、ネタバレの範囲には個人差があるため全く情報を入れたくない方は閲覧をお控えください。

 

目次

 

先入観を捨てろ

ネタバレになるので多くは語れないけど、リーク記事やコミックスの設定のために思い違いを抱いていた部分があり、それが劇中でハッとさせられる展開に繋った。

 

コミックスではキャプテン・マーベルと名乗る人物が時代によって複数おり、その中でも有名なのがクリー人の男性マー・ベルと、地球人であるキャロル・ダンバースの2人。

キャロル・ダンバースはマー・ベルの恋人であり、マー・ベルの死後、彼の力を受け継いで2代目キャプテン・マーベルとなる設定がある。

 

本作の主人公はこの2代目キャプテン・マーベルのキャロル・ダンバースで、ブリー・ラーソンが演じている。

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映画版の本作は記憶をなくし6年間クリー人として生きてきたキャロル・ダンバースの記憶を追い求め、ヒーローとしてのアイデンティティの確立するオリジンストーリー、そしてクリー人とスクラル人との戦争が大筋の物語としてある。

本作はこの大筋を追いながら「先入観を捨てよ」というメッセージを投げかける。

 

本作のヴィランとされているのは姿形を一度見た生き物へと擬態して敵を欺くスクラル人。予告編では主人公のキャロルが優しそうな老婆(擬態したスクラル人)を突如ぶん殴るショッキングなシーンが話題を呼んだ。

 

誰が敵で誰が味方か、誰を疑うべきかという気の抜けないサスペンスフルな設定と、さらにそれまでの事前情報のミスリードや、突如逆転してしまう展開に驚かされる。

 

ジェンダーロールからの解放

また劇中キャロルの回想シーンの断片で投げかけられる「女性だから」という理由の差別的な言葉たちは、これもまた我々が持ちうる先入観・偏見のひとつである。

「女性だから力が弱い」

「女性だから危険な任務は任せられない」

「女性だから、・・・・」

「女性だから、・・・・」

 

実際、ヒーロー然として笑顔を見せずポスターに佇む主演のブリー・ラーソンに「少しは笑顔を見せたらどうだ」と揶揄し「修正してあげたよ」と画像を加工した一部の過激なファンたちがいた、彼女は『アイアンマン』や『キャプテン・アメリカ』のポスターをアプリで笑顔に加工してアップロードし、無言で抗議した。「私が男ならこんなことは言われなかったはずだ」と言わんばかりに、そのうえしっかりとジョークとも取れる粋な返しをすることで、役柄と違わぬ振る舞いを見せている。

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「こういう風に生きろ」「女らしくおしとやかにしろ」「お前には無理だ」「怒るな、感情を抑制しろ」と、劇中彼女に向けられる言葉は女性の方々なら身に覚えがあると思う。男性ならば逆に「泣くな、男らしくしろ」「強くなれ」という風に。

 

それらの縛りや呪いの言葉の抑圧は、知らず知らずのうちに相手を蝕み可能性を潰していく。

 

『キャプテン・マーベル』はそんな呪いだらけの世界を打破するかのごとく、キャロルは何度心無い言葉を浴びせられても、諦めずに立ち上がる。

本作でキャロル・ダンバースはヒロインではなく、れっきとしたヒーローである。

一人の自立した女性が、潰されゆく可能性をもぎ取り、自らを、そして様々な縛りの中で生きる人たちを解放する。

キャロルだけではない。この映画に登場する女性のほとんどが、自らの確固たる意思を貫く。

 

「男だから」「女だから」「ゲイだから」「黒人だから」「アジア人だから」「母親だから」

呪いの対象はどんな人々にも当てはまり、同様に彼女が断ち切り解放する対象も、どんな人々にも当てはまる。

 

【ムービー・マスターピース】『キャプテン・マーベル』1/6スケールフィギュア キャプテン・マーベル
 

 戦争と難民

『キャプテン・マーベル』で描かれるもう一つの重要な側面に「戦争」がある。

 本作では宇宙で起きている「クリー人とスクラル人の戦争」を舞台に、戦争の多面性、罪のない人々が被る犠牲・難民について語られる。

 

難民や外国人労働者、そしてテロリストの多くは、直接的にしろ間接的にしろ先進国が利益のために起こした戦争によって生まれたものである。

難民により労働問題やテロが起きているヨーロッパやアメリカでは外国人や異教徒を差別して追放しようとする過激な運動も少なくない。それによりイギリスのE.U離脱が国民投票で決定されたり、ドナルド・トランプが大統領に当選し、メキシコ国境に壁を作るなどと言っている。

だがそもそも難民を産んだのは誰か?政治的、経済的目的で途上国に戦争をさせている国はどこなのか?という視点も忘れてはいけない。

 

また『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』はヴィランであるはずのサノスを主人公として描いたような作品だった。

生物の繁栄により土地や食物が不足する未来を憂いたサノスはインフィニティ・ストーンを用いて生命を半分にするという目的を達成する。

彼の目的ややり方は常軌を逸した方法ではあるが、食糧不足は実際に我々人類が直面している問題でもある。彼は言う「小さな犠牲で多くを救う」と。

『ブラック・パンサー』ではエリック・キルモンガーが世界中で差別や不公平な抑圧に耐えている弱者たちのためにワカンダの武器を与えて救おうとする。

 

『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』や『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』ではヒーローたちも平和とその犠牲について葛藤する。

『アベンジャーズ』では「仲間のために鉄線に身を投げることなんてできないだろ(仲間のために犠牲になれないだろう)」とスティーブに言われたトニー・スタークが「自分ならば鉄線を切る(犠牲を出さずに助ける)」と言っていた。そんな彼も『エイジ・オブ・ウルトロン』で自らが開発したウルトロンにより発生した多大な犠牲のせいで『シビル・ウォー』のソコヴィア協定に賛成する立場を取ってしまう。一方でスティーブ・ロジャースは『キャプテン・アメリカ/ファースト・アベンジャー』で自らが犠牲になりアメリカを救い『シビルウォー』では「犠牲を恐れては誰も救えない」と言いながらも、『インフィニティ・ウォー』では自ら犠牲を申し出るヴィジョンに対して「誰も犠牲にしない」と発言する。

 

ヒーローたちの間でも何が正しく、何が間違っているのか、何が正義で何が悪なのかは常に揺らいでいる。

そのなかで登場したサノスやキルモンガーのようなヴィランは、改めて「本当に正しいのはどちらなのか」という疑問を投げかける存在でもあった。

 

『キャプテン・マーベル』でも依然としてそのテーマは扱われており、前述した先入観の問題と合わせ、見事なツイストとして効いている。

 

「戦争を終わらせる」と呟く彼女は『インフィニティ・ウォー』で「小さな犠牲で多くを救う」とするサノスの対にいる存在であり、同時にトニー・スタークやスティーブ・ロジャースが揺らぎながらも目指す「犠牲を出さずに世界を守る」ことを成し遂げようとする存在でもある。

強大なパワーだけでなく、彼女の信念こそがサノスを倒す鍵として実にふさわしいことを物語っている。

Marvel's Captain Marvel: The Art of the Movie

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まとめ

『キャプテン・マーベル』はいいぞ。

 

またもや賛否両論でびっくりですが、僕は9割方楽しめました。

展開の意外性や伝えたいメッセージが明確であること、それからやはりキャロル・ダンバースのキャラクター性に非常に好感が持てました。

 

一方で過去MCU作品との設定的に怪しい部分、「その伏線回収は別にアツくないぞ!」という部分や、「多分矛盾してはないけどそれは無理がないか?」と思えてしまう部分もちらほらあり、多少はノイズになってしまったかなという感じです。

それでもただの『エンドゲーム』のためのつなぎ作品ではなく、きちんとキャロル・ダンバースというキャラクターに向き合った作品であったことが僕的には最高でした。

 

時系列的にも『キャプテン・アメリカ/ファースト・アベンジャー』の次に古いわけでMCUをここから始める!という人がいても全然ウェルカムな作品だと思います。

 

『アベンジャーズ/エンドゲーム』まであと1ヶ月半。楽しみだぜ。

 

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マーベル・シネマティック・ユニバース

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