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映画『ジャングル・クルーズ』見え隠れする「海賊」の影。信念はどこに?

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Jungle Cruise

 

実写版映画『ジャングル・クルーズ』を観た。

私にしては結構期待していたのである。

そして、これもまた典型的なパターンなのだが、

期待してた分、期待値にはなかなか届かないのである。

(もう私のブログをよく読んでくれている方にはお馴染みだよね)

 

断っておくと、普通に面白かった。

でもさぁ、言いたくなるところはたくさんあるよ。

 

※この記事は現在公開中の映画『ジャングル・クルーズ』のネタバレを含みます。

 

目次

 

『パイレーツ・オブ・カリビアン』の再来

そもそもまず、ディズニーがアトラクション「ジャングル・クルーズ」を映画化するに至ったきっかけとはなんだろうか、というのをまず考えると。

 

まぁ間違いなく『パイレーツ・オブ・カリビアン』の後継シリーズを求めているのだろうな。

ここ数年、ジャック・スパロウを演じたジョニー・デップ周辺のよくないニュースが映画界全体に蔓延しており、さまざまな方面から「ジョニデ外し」が起きている。

 『ファンタスティック・ビースト』シリーズの大ボスであるところのゲラート・グリンデルバルト役を降板させられたのは記憶に新しい。

彼の演技力は他に取って代え難いものではあるが、彼の素行や裁判沙汰は正直「演技力」でカバーできる限界を超えてきているのも確かだろう。

 

その前からちょくちょく炎上はしつつも、大炎上を避けたちょうどいいタイミングで(?)ジャック・スパロウを主人公とした『パイレーツ』シリーズを一応完結させたディズニーではあったが(そもそも『ワールドエンド』で完結していたはずだが)

興行収入もイマイチだったし、主人公をとっかえてシリーズ継続させるのも(一応マーゴット・ロビー主演でシリーズ継続という噂はある)あの強烈なジャック・スパロウに匹敵するキャラクターはなかなか見つからないだろう。

 

じゃあもう、気持ちを切り替えて全く別のシリーズを作ってしまえばいいのだ。

と、ディズニー幹部は思ったに違いない。

そして出来上がったのがこの『ジャングル・クルーズ』である。たぶん。

 

そもそもアトラクションの「ジャングル・クルーズ」といえば、1955年にオープンしたオリジナルのディズニーランドに最初から存在する、ウォルト・ディズニー自身が手がけたアトラクションである。(「カリブの海賊」もウォルトが大きく関わっているが完成するのは死後)

そのためディズニーファンからも、制作側からの熱量も高い上に、世界中のパーク(カリフォルニア、フロリダ、香港、東京)に存在し、そのどれもが若干ながらストーリーが異なる、ということで様々なバージョンからインスパイアされた続編を作ることも可能だろう。

それを、ドウェイン・ジョンソンとエミリー・ブラントという2大スターが演じるのである。

これはもう大ヒット間違いなしだろう。

 

感じざるを得ない「二番煎じ」

映画のあらすじはこうだ。

第一次世界大戦のさなか、アマゾンの奥深くにあるとされる「命の樹」に咲く、どんな病も傷も治癒してしまう伝説の魔法の花を求める植物学者のドクター・リリー・ホートンは、魔法の花を手に入れるのに必要な、「伝説の矢尻」を冒険協会から盗み出す。

同じく魔法の花を狙い、戦争に利用することを企むドイツ帝国のヨアヒム王子に狙われるも、なんとかその手を逃れ、弟のマクレガーとともにブラジルへと向かう。

リリーとマクレガーは現地でクルーズのツアーガイド兼船長をやっているフランク・ウルフを雇い、ヨアヒム王子に追われながらも、危険なジャングルの冒険へと身を投じる。

 

トレジャーハントな冒険モノによくある、極めてシンプルなストーリーだ。

『インディ・ジョーンズ』シリーズ的でもある。

 

当初から予告編で、呪われて体中から蛇が生えているような怪物が登場して主人公たちを襲うシーンがあり、そこらへんはかなり『パイレーツ』シリーズを意識してきたなと思っていた。(こういう探検モノではよくあるモンスター演出ではあるが)

 

そこらへんはまぁ、念頭に置いて映画を見ていたのだが、映画の中盤、

なんと船長のフランク自身も呪われており400年近く生きている存在であるということがわかるのだ。そのため、彼もまた不死身である。

 

これが明らかになった瞬間、この映画の『パイレーツ』っぽさがより浮き彫りになった、その上でこの設定の使い方のあまりの雑さと唐突さに、急に安っぽい映画に感じられてしまった。

 

『パイレーツ・オブ・カリビアン』1作目でジャック・スパロウとバルボッサの因縁については、物語の中で実に丁寧に、そして自然に語られ、無人島に残されたジャックの「弾が一発の拳銃」によりよりドラマティックに強調される。

そして、ジャックが不死身となるのは、視聴者を釘付けにするための「ここぞ」のためにとってあるのだ。

序盤の、ウィル・ターナーに対する「これでお前を撃ちたくない」というセリフ一つから、呪いが解ける最後の瞬間まで「一発の拳銃」と「メダル」という非常に印象的なアイテムとキャラクターを理解しきった数々の名台詞によって強調されている。

 

一方の『ジャングル・クルーズ』は、まずヴィランのキャラが立ってない。

いや、立ってはいるがそれはどちらかというとヨアヒム王子の方で、呪われた怪物と化したアギーレなる人物とその仲間らは、その見た目と存在感の割に、役割的には非常にオマケ感が強い。

物語中盤で唐突に不死身であることがわかり、回想シーンとなり一気に答え合わせを始める。前半の大冒険が楽しかった分、このタイミングでの回想シーンはあらゆる謎が解ける快感以上に「話の腰を折られた」ような感覚が強い。

しかも、フランクの不死身設定(呪われた設定)、正直必要かと言われるとそんなでもないのだ。

ヴィランがフランクを恨む理由づけにはなるが、結局大元としてはフランクらもアギーレらも「魔法の花」を手に入れたいという気持ちがメインにあるので、アギーレらの個人的な思いは「裏切り者!」とわざわざ言葉に出す以外の表現方法が出てこない。

ジャックとバルボッサのような、互いを憎みながらもある部分では大いに信頼を置いている兄弟のような腐れ縁のような、魅力的なライバル関係を彼らの間では見いだすことができなかった。簡単に言えば後付け感がスゴイ。

 

とはいえ全く別の作品なのだから、そんなに比べなくても、とも思うのだが

予告で大々的に「『パイレーツ・オブ・カリビアン』のディズニー最新作!」みたいな感じでいうものだから必然的に比較してしまうし、僕に関してはそもそも『パイレーツ』の二番煎じ感をビンビンに感じているのだ。

それで『パイレーツ』よりも面白ければいいのだけど、シンプルに『パイレーツ』の良さを再確認する映画になってしまっている。

 

ポリコレ的前進か、後退か

ディズニー映画における「ポリコレの意識」は毎度毎度、非常に重要視されている部分で私自身もここから大いに学ぶ部分がある。

個人的にエミリー・ブラントをもう一人の主人公として据えたのは大正解だと思うし、活動的で、学者で、そして第一次大戦の時代にズボンを履く彼女のキャラクター性は、より物語に奥行きを与えたと思う。

また、近年のディズニーが意図的に男女の恋愛描写を省いていたことを考えると、改めて恋愛描写を取り入れた本作は「恋愛する人がいても、しない人がいてもいい」という、ポリコレが本来目指している、あまりにも当たり前な命題に立ち返っているように思う。

 

問題はジャック・ホワイトホール演じるマクレガー・ホートンのキャラクター描写である。

マクレガーは前もってゲイ・キャラクターであるという報道がなされていたらしい。私はそれを知らなかったが、結果的に『ジャングル・クルーズ』の映画の中で「ゲイ」という言葉は一切使われることがなく、彼の性的指向を具体的に表現されることはなかった。

実写版『美女と野獣』におけるルフゥにしろ、ディズニーのキャラクターにLGBTQキャラクターが登場する際は、必ずと言っていいほど「匂わせる」程度の演出止まりで、必ず当事者たちを落胆させる。

現時点でメインキャラクターでLGBTQのキャラクターが出てきたのはピクサーの『殻を破る』くらいではないだろうか。しかもこれはDisney+配信限定作品であり、劇場公開作品ではない。一瞬、カミングアウトのようなシーンがあり、期待したのであるが。

そして、やはりというかなんとうか、ディズニーは今回、ゲイ・キャラクターであるマクレガーを見事にステレオタイプな「ナヨナヨした、臆病なお笑いポジション」に当て込み、敵陣営に人質にされるといった「間抜けで主人公らの足を引っ張るキャラクター」として描いた。これでは全く進歩がない。

物語の後半になるにつれ、マクレガー自身も拳で戦う「強い自分」を見せるようになってはくるが、これでバランスを取ろうとでもしているのだろうか。

 

「恋愛しない男女」はディズニーでも、まぁそれなりに描いてきたと言ってもいいだろう。

でも「ナヨナヨしてないゲイ・キャラクター」は、はっきり言って描いてきていない。描いてきてない段階で「ナヨナヨしてるゲイがいてもいいよね」というのはあまりにも早く、ただのステレオタイプ描写だ。そもそもゲイ・キャラクターを数えるほどしか描いていない。

 

リリーのキャラクターや、アトラクションから輸入されたキャラクターである「トレーダー・サム」を女性キャラクターにするなど、女性方面での演出は非常に好感が持てる一方で、マクレガー周辺のキャラクター描写は非常に杜撰であるような気がする。

 

うーん、ついでに言うと、リリーを「パンツ」呼ばわりするフランクも、フランクの粗野なキャラクター描写や米英の言葉の違いを利用したギャグなんだろうけど、英国人女性にしてみれば「男性用下着」を意味する「パンツ」という呼び名は非常に屈辱的なんじゃないだろうかと想像するに、私は好きではない。

 

面白いより、気になるが勝つ

と言うわけで、私の『ジャングル・クルーズ』感想は、全体的に「がっかり」です。

前半のリバークルーズはかなり面白かったけど、ねぇ。

 

なんというか、全体像が見えていないのかな、という気はした。

どういう映画にしたいのか定まらないまま、主張が曖昧なまま、なので心に響くセリフもキャラクターの信念もそこまで響いてこない。

 

まぁ今回私が『ジャングル・クルーズ』に唯一望んでいた「続編があるよっていう引きで終わらない」を守ってくれたのはよかったかな。

これで興行収入大爆死してもキッチリ終わらせたっていうかっこはつくからね。

 

その上で、パークで感じられるエッセンスというか、今後の展開もあったらいいなぁと思えるイースターエッグも散りばめられていたのはよかった。

S.E.A.のアルバート・フォールズ博士と、「魅惑のチキルーム」のロジータね。

本当にただのイースターエッグで、なんの展開もないのかもしれないけど、本当にできるならやってほしいよS.E.A.ユニバース。

 

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